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「うわぁ。こりゃ骨が折れるなぁ……数多くない? 全部やれっかなぁ?」
「あなたね、半月かけてやるクエストなんだから全部は無理に決まってるじゃない」
遠くの荒れ地にのさばるモンスターの群れを眺めながら、俺は早速アリアスに肩をたたかれる。
その横でエミルがショートステッキをクルクル回しながら笑った。
「まぁーでもさー、これ今日で終わらせちゃったらお金がっぽりじゃーん?」
「ででで、ですね! ではでは、さっそく……わたくしから!」
「いやいや、待てユナ」
飛び出そうとしたユナの肩をしっかりと押さえつける。
お前が行くと逆にトラブルになりそうな気がするからやめてくれ。
しかし、これはまいったぞ?
――――俺たちはアリアスの金の冒険者と言う肩書を使ってAランクのクエストの中でもかなり大がかりなものを選んでいた。
というのも、やはり俺とエミルにとって最重要とされているコスパが一番良かったのだ。
俺達は強い。という自信がある。
なので、長期的に行うクエストを一日で片付けるのが一番実入りが良いという考えなのだ。
プラス夜勤だと尚良いのだが、それは無かったので今回は……
――――――――アンデッドモンスターの群れ退治!!!
となりました。
「言っておくけど、私の剣じゃ奴らを退治できないからね。斬っても意味ないんだから」
アリアスはため息をついて眉間にしわを寄せると、首をふる。
「まったく……変な連中とつながってしまったわ……」
「いーじゃーん。アリアスだって私たちと実績つんでクリスタルになれば団長に会えるかもよー?」
「あなたねー。あなたが取り持てば今すぐにでも会えるじゃない!」
「それは無理ー! だってアイツに会いたくないんだもーん!」
アリアスはムキー! と言わんばかりに憤慨するが、エミルはちっとも怖がらない。
ずいぶんと仲良くなったもんだ。仲良いのか?
「まぁ、良いわ。それはそうとケイタ」
「はい」
「昨日、なんか新作出来ちゃったんだけど、読みたい?」
「はい?」
アリアスはアーマーの胸元から冊子を取り出した。
おいおいマジかよ。
「多分、こんな話したら読みたくなっちゃうかなって思って持ってきたのよ」
気持ち息が荒くなっているアリアスは「特別なんだからね」とツンデレっぽく言ってくるが、こっちとしてはいい迷惑である。
「い、いや! それはこのクエスト終わってから読むよ! 落ち着いて読みたいからさ!」
努めて明るく言う。それでもアリアスはひどく残念そうにうなだれた後、「そう、そうよね」と言いながら冊子をまた胸元にしまった。
なんとかセーフ。
いやいや、そんなことよりクエストだ。
なんたって相手はアンデッドの群れ。しかもデッドナイトと呼ばれる騎士のアンデッドだ。
物理攻撃特化型で一体ずつの攻撃力もさることながら、アンデッドにしては連携が取れている事でも有名だ。
その理由はデッドナイトキングの存在。
まれに誕生するデッドナイトの王がいる群れはそれだけで普通のデッドナイトの群れの100倍手ごわいと言われていた。
おかげで廃墟となったあの小さな村は今でも人間が近寄れない。
見習いばかりの下手な冒険者パーティーだったら瞬殺されるであろう。
うーん、これは手ごわい。
そもそもアンデッドは普通の攻撃じゃダメなんだよな。魔法も物理攻撃も足止めくらいにしかならない。
なんたって死なねーんだから。跡形も無く消しても修復されるからビビる。って見たことないけどな。
「唯一の対処法は聖魔法って事だけど……」
俺はナレッジを出す。久々だなこれ。
「あ、出たケイタの魔導書。あんたどうやってそれ収納してんのよ?」
エミルが俺の手元を指さした。アリアスもビックリしているようだったが、ユナは「はて?」と首をかしげている。
「え? これか? これは普通に収納魔法? みたいなやつで」
とりあえず原理が分からないのでごまかしておく。が、それが良くなかった。
「いや、あんたさー。そもそも魔導書はそれ自体が魔力干渉するものだから魔法の効果が反映されないのよそもそもの話ね」
え? マジで?
「エミルの言う通りね。魔導書に干渉できる魔法なんて聞いたことがないわ」
アリアスまで参加してくる。
「わわわ、わたしは……か、かっこいいと、おも、おもいます!」
ユナは良く分かってないみたいだ。今だけはユナが可愛らしい。
「いや、なんてーか、その……」
なんてーか、その……なんだ? その魔導書はそもそもって話をされても、これ魔導書じゃねーし。
まいったな。ほんとの事話してもきっとこいつら理解しないだろうし、信じないだろうしな。
かといって、俺がこの世界ではありえない魔法が使えるなんて知られたらどうなるか……。
俺は身震いする。
エミルに情報を握られ、ぼろ雑巾になるまで働かされる未来を想像した。
「これ、レアアイテムなんだ。魔法干渉が許された魔導書? まがいのものらしいんだけど、魔導書と同等の効果を持つ魔導書みたいな本っていうのかな」
「それもう魔導書じゃん」
うぐっ! エミルさんその通りです!
「でも確かにそうとしか思えないわよね。それじゃなきゃ説明できないわ」
アリアスさんナイスフォロー!!
「わわわ、私は……かかか、かっこいいと!」
ユナはもう分かったから。寂しいからって無理やり会話に参加するな。悲しくなる。
「ふーん。レアアイテムねー。ま、いっか。そんで? なんか策あるのー?」
エミルの目はまだ疑わし気だったが、なんとか危機を回避できたようだ。
コイツはみょうなとこでしたたかだからな。今後注意が必要だ。
アリアスほど物分かりが良いわけでもなく、ユナほど物知らずでもない。
なるほど厄介だ。性格も悪いし。
とは言え、俺には目下クエスト達成と言う最重要事項がある。
なので、そういうのは一先ず置いておこう。
俺はナレッジのページをめくった。
「――――策ならある。さーて、パーティー組んで以来初めての共同作業と行こうじゃねーか!」
「あなたね、半月かけてやるクエストなんだから全部は無理に決まってるじゃない」
遠くの荒れ地にのさばるモンスターの群れを眺めながら、俺は早速アリアスに肩をたたかれる。
その横でエミルがショートステッキをクルクル回しながら笑った。
「まぁーでもさー、これ今日で終わらせちゃったらお金がっぽりじゃーん?」
「ででで、ですね! ではでは、さっそく……わたくしから!」
「いやいや、待てユナ」
飛び出そうとしたユナの肩をしっかりと押さえつける。
お前が行くと逆にトラブルになりそうな気がするからやめてくれ。
しかし、これはまいったぞ?
――――俺たちはアリアスの金の冒険者と言う肩書を使ってAランクのクエストの中でもかなり大がかりなものを選んでいた。
というのも、やはり俺とエミルにとって最重要とされているコスパが一番良かったのだ。
俺達は強い。という自信がある。
なので、長期的に行うクエストを一日で片付けるのが一番実入りが良いという考えなのだ。
プラス夜勤だと尚良いのだが、それは無かったので今回は……
――――――――アンデッドモンスターの群れ退治!!!
となりました。
「言っておくけど、私の剣じゃ奴らを退治できないからね。斬っても意味ないんだから」
アリアスはため息をついて眉間にしわを寄せると、首をふる。
「まったく……変な連中とつながってしまったわ……」
「いーじゃーん。アリアスだって私たちと実績つんでクリスタルになれば団長に会えるかもよー?」
「あなたねー。あなたが取り持てば今すぐにでも会えるじゃない!」
「それは無理ー! だってアイツに会いたくないんだもーん!」
アリアスはムキー! と言わんばかりに憤慨するが、エミルはちっとも怖がらない。
ずいぶんと仲良くなったもんだ。仲良いのか?
「まぁ、良いわ。それはそうとケイタ」
「はい」
「昨日、なんか新作出来ちゃったんだけど、読みたい?」
「はい?」
アリアスはアーマーの胸元から冊子を取り出した。
おいおいマジかよ。
「多分、こんな話したら読みたくなっちゃうかなって思って持ってきたのよ」
気持ち息が荒くなっているアリアスは「特別なんだからね」とツンデレっぽく言ってくるが、こっちとしてはいい迷惑である。
「い、いや! それはこのクエスト終わってから読むよ! 落ち着いて読みたいからさ!」
努めて明るく言う。それでもアリアスはひどく残念そうにうなだれた後、「そう、そうよね」と言いながら冊子をまた胸元にしまった。
なんとかセーフ。
いやいや、そんなことよりクエストだ。
なんたって相手はアンデッドの群れ。しかもデッドナイトと呼ばれる騎士のアンデッドだ。
物理攻撃特化型で一体ずつの攻撃力もさることながら、アンデッドにしては連携が取れている事でも有名だ。
その理由はデッドナイトキングの存在。
まれに誕生するデッドナイトの王がいる群れはそれだけで普通のデッドナイトの群れの100倍手ごわいと言われていた。
おかげで廃墟となったあの小さな村は今でも人間が近寄れない。
見習いばかりの下手な冒険者パーティーだったら瞬殺されるであろう。
うーん、これは手ごわい。
そもそもアンデッドは普通の攻撃じゃダメなんだよな。魔法も物理攻撃も足止めくらいにしかならない。
なんたって死なねーんだから。跡形も無く消しても修復されるからビビる。って見たことないけどな。
「唯一の対処法は聖魔法って事だけど……」
俺はナレッジを出す。久々だなこれ。
「あ、出たケイタの魔導書。あんたどうやってそれ収納してんのよ?」
エミルが俺の手元を指さした。アリアスもビックリしているようだったが、ユナは「はて?」と首をかしげている。
「え? これか? これは普通に収納魔法? みたいなやつで」
とりあえず原理が分からないのでごまかしておく。が、それが良くなかった。
「いや、あんたさー。そもそも魔導書はそれ自体が魔力干渉するものだから魔法の効果が反映されないのよそもそもの話ね」
え? マジで?
「エミルの言う通りね。魔導書に干渉できる魔法なんて聞いたことがないわ」
アリアスまで参加してくる。
「わわわ、わたしは……か、かっこいいと、おも、おもいます!」
ユナは良く分かってないみたいだ。今だけはユナが可愛らしい。
「いや、なんてーか、その……」
なんてーか、その……なんだ? その魔導書はそもそもって話をされても、これ魔導書じゃねーし。
まいったな。ほんとの事話してもきっとこいつら理解しないだろうし、信じないだろうしな。
かといって、俺がこの世界ではありえない魔法が使えるなんて知られたらどうなるか……。
俺は身震いする。
エミルに情報を握られ、ぼろ雑巾になるまで働かされる未来を想像した。
「これ、レアアイテムなんだ。魔法干渉が許された魔導書? まがいのものらしいんだけど、魔導書と同等の効果を持つ魔導書みたいな本っていうのかな」
「それもう魔導書じゃん」
うぐっ! エミルさんその通りです!
「でも確かにそうとしか思えないわよね。それじゃなきゃ説明できないわ」
アリアスさんナイスフォロー!!
「わわわ、私は……かかか、かっこいいと!」
ユナはもう分かったから。寂しいからって無理やり会話に参加するな。悲しくなる。
「ふーん。レアアイテムねー。ま、いっか。そんで? なんか策あるのー?」
エミルの目はまだ疑わし気だったが、なんとか危機を回避できたようだ。
コイツはみょうなとこでしたたかだからな。今後注意が必要だ。
アリアスほど物分かりが良いわけでもなく、ユナほど物知らずでもない。
なるほど厄介だ。性格も悪いし。
とは言え、俺には目下クエスト達成と言う最重要事項がある。
なので、そういうのは一先ず置いておこう。
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