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それからと言うもの、クラスの団結力は一気に高まり、合唱練習は毎日行われる事になった。毎日学校に集まる僕らは、自分で言うのもなんだけど物凄い早さで遅れを取り戻していって、今となっては遅れを取り戻すどころか軽々超えてしまっている。もう前の合唱が嘘だったみたいに思えてしまう程、その成長っぷりはめざましかった。
あれから灰坂もクラスのみんなも変わった。特に灰坂の周りは随分変化したと思う。
ユキやソプラノパートの女子達と笑って話している灰坂を見て僕は何だか嬉しくもあり、寂しくもあった。
「……晴れて、お役御免」
昔、テレビで見た時代劇の言葉を呟く。秘密の特訓、これにて終了。
「なーに溜め息ついてんだよ!」
カズは僕の頭を指揮棒で叩いてきた。
「痛いぞ! カズ!」
「全くよー。もしかして灰坂に惚れたんじゃねーだろうな? まぁあいつもユキ程じゃねーけど可愛いと思うぜ? お前にはお似合いだな」
僕らの作戦が成功した後、僕やユキから全ての経緯を聞いたカズはあれからずっと変な疑いを僕にかけている。
ちなみに禁ユキ生活はあの日で解禁したらしく、毎日の様にユキの家に来るらしい。灰坂が遊びに行った時にも来たと灰坂からメールで聞いた。
「はい! じゃあ明日はいよいよ本番ね! みんな! 歴史を変えるわよ!」
「おー!」
声が合わさる。みんなの心は一つだ。大成功間違い無し。
◇◆◇◆◇◆◇◆
――――四人で学校から帰る。カズと、ユキと、灰坂と、僕。
あれからはこの形が多くなった。カズとユキの二人とは途中で別れるから、僕と灰坂はそこから二人きりになる。灰坂は毎回、僕の家の前を通って帰って行った。
「じゃあ明日頑張ろうね! あ! おじさん! さようなら!」
父さんも仕事が夏休みに入っていて、灰坂が家の前に来ると毎回、玄関から顔を出して満面の笑みで手を振った。
「ホタルじゃあね」
「うん。また明日」
灰坂が見えなくなるまで見送って、家に入る。父さんは笑みを浮かべたまま楽しそうに居間でビールを飲んでいた。
「なあ蛍。明日、祭りで弾く曲聞かせてくれないか?」
「え? 何で? 嫌だよ。明日見れるんだからいいじゃん」
「そうなんだけどな。なんか今聞きたいんだよ。頼む!」
何故か、いつもと違ってしつこい。面倒くさいけれど、これで断って明日また好物でもない唐揚げを出されても困るし、仕方なく僕はピアノを弾く事を了承して、父さんを部屋に入れた。
「一回だけだよ」
「ああ。ありがとう」
父さんは畳の上に胡座をかいて、コップに半分くらい入ったビールを一口飲む。
僕は溜め息をついてピアノの鍵盤蓋を開けると、のらない気持ちで演奏を始めた。
あれだけのらなかった気分が演奏を始めると和らいでいく。
カズの指揮が頭に浮かんできた。悔しいけど心地いい。
僕は目を瞑って曲に身を預ける。色んな事が心の中から溢れ出て来た。
引っ越した時の事。
学校の事。
プールの事。
神社の事。
カズの事。
ユキの事。
スギの事。
タダシの事。
みんなの事。
――――灰坂の事。
色んな夏の景色と共に思い出が溢れてくる。
ここに来てから色々あり過ぎだ。
こうやってピアノも弾けてるし。一体何なんだろうこの村は。
「————うん……うん。懐かしいな」
「懐かしいって何が? って……え?」
演奏を終えて振り向くと、父さんは泣いていた。
「蛍……お前に言っておかなきゃならない事があるんだ」
「な、何?」
僕の体に、まるで引っ越しを切り出された時のような緊張が走る。
父さんはあの時と同じような顔をして、重たげに口を開いた。
「実はな……転勤じゃないんだ……父さんは、仕事を辞めてここに来たんだ」
「……は?」
突然の訳の分からないカミングアウトに、僕は開いた口が塞がらない。
そして、心の中で叫ぶ。
……じゃ、何で僕たち引っ越したの?
父さんは僕の心の内を理解したのか、していないのか、煽るようにビールを飲み干してコップを置いた。
「もちろん。こっちで仕事が決まったから引っ越せたんだが……蛍……ここはな」
――――母さんの住んでた場所なんだ。
父さんの言葉に僕の手がふるえだす。
「え……嘘でしょ? だってそれは前に住んでたところのはずじゃ……」
「そう。最終的にはな。母さん、小さい頃は親の転勤が多くてしょっちゅう転校していたんだそうだ。それでようやく落ち着いた所があそこだったらしい。でも母さんなぁ、俺と出会った時からよくここの話をしていたんだ。一番楽しかった場所だって、いっつも懐かしそうに話してたっけなぁ。たった一年間しか居なかったけど、ここには色んな思い出が詰まっていて、いつかはここに住みたいって。もちろんそれは叶わなかったが……父さんな。もしかしたら、母さんここにいるんじゃないかって思ってな。そう考えだしたらもう止まらなくて。お前には迷惑かけると思ったんだけどな。父さん、どうしても……母さん……すみれに会いたかった。すまんな黙ってて。俺の我が儘で引っ越しなんてお前絶対に納得しないだろうし、それに俺もお前も全然あの事故を消化できてないだろ?」
父さんは真っ直ぐに僕を見る。
僕は黙って頷いた。言葉は発せなかった。
父さんは話しながらずっと泣いていて、つられて僕まで泣いてしまいそうだったから。
「もうあの場所から離れないと、俺もお前もダメになる気がしたってのもある。もう一度お前と二人でやり直すにはどこか別の場所に行かないとってな。でも、そんなのただの言い訳だな。父さんは勝手にここを選んだんだから。父さんな、やっぱりここですみれに会える気がしてたんだよ。だからお前がピアノを弾きだした時、ほんとにビックリした。もしかしてすみれが弾いているんじゃないかって……」
父さんが母さんを名前で呼ぶのを初めて聞いた気がした。
僕が知る限りではいつだって父さんは「母さん」と呼んでいた。
僕よりもずっと長い間、母さんのそばで過ごして来た父さんが母さんを追うのを攻められる筈がない。僕だっていまだに母さんを追っている気がするんだ。
それに、今ならここも悪くない気がしている。
いや、むしろここに来て良かったと思えている。
ここで確かに僕も父さんも変わったんだ。
それは充分、分かっている。
「父さん。もしかして……ピアノ。母さんが弾けるようにしてくれたのかな」
「……そうかもな」
父さんは乱暴に手首で涙を拭いた。それでも涙は止まらない。
「……以上。お前に黙っていた事だ。本当に……本当にすまない!」
父さんは畳に両手をついて頭を下げた。
僕はピアノの椅子に座ったまま、自分の目から溢れる涙を止められなかった。
――――母さん。会いたいよ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
二人でどうしようもなく泣いた後、ようやく落ち着いた僕と父さんは二人隣り合わせてソーメンを啜った。もちろん縁側で。
「ちょっと情けない姿を見せちゃったな」
父さんはソーメンを啜りながら、真っ赤な目で笑う。
「ううん。話してくれてありがと。僕、ここに来て良かったよ」
「父さん。また泣いても良いか?」
「やめてよもう!」
僕らは互いに笑い合って、ソーメンを啜る音を揃わせた。
「ねえ。そう言えばさっきピアノ聞いて懐かしいって言ったよね? もしかして母さんが居たのって……」
「ああ。中学二年生の時だ。そして今のお前と一緒で、お祭りでピアノを弾いた。お前が小さい頃は良くピアノでその時の曲を弾いていたよ。楽しそうに歌いながらな。ホントに幸せそうだった。その時の母さんは」
僕は脱力して、箸を下ろした。
どうりで聞き覚えがあるはずだ。僕は小さい頃からずっと聞いていたんだ。
僕が本格的にピアノを弾く様になってからはクラシックばっかりだったけれど。
今、思い出せば母さんは時折、一人で弾いていたような気がする。とても楽しそうに。
「母さん……いるかもね。ここ」
「ああ。いるかもな」
僕は幽霊とかそう言う類いのもの、スピリチュアル的なものはあんまり信じていない。
でも、ピアノは母さんが弾ける様にしてくれた気がしてならなかった。
良い曲だよ、楽しいよって母さんが教えてくれた気がするんだ。
何だか、明日は思いっきり頑張れそうな気がして来た。
月を見ながら父さんが最後の一口を啜って、少しつゆを飲んだ。
「蛍……灰坂さんって、母さんに似てるよな」
僕は返事もせず、頷きもせず、月を見た。
――――知ってるよそんな事、最初から。
あれから灰坂もクラスのみんなも変わった。特に灰坂の周りは随分変化したと思う。
ユキやソプラノパートの女子達と笑って話している灰坂を見て僕は何だか嬉しくもあり、寂しくもあった。
「……晴れて、お役御免」
昔、テレビで見た時代劇の言葉を呟く。秘密の特訓、これにて終了。
「なーに溜め息ついてんだよ!」
カズは僕の頭を指揮棒で叩いてきた。
「痛いぞ! カズ!」
「全くよー。もしかして灰坂に惚れたんじゃねーだろうな? まぁあいつもユキ程じゃねーけど可愛いと思うぜ? お前にはお似合いだな」
僕らの作戦が成功した後、僕やユキから全ての経緯を聞いたカズはあれからずっと変な疑いを僕にかけている。
ちなみに禁ユキ生活はあの日で解禁したらしく、毎日の様にユキの家に来るらしい。灰坂が遊びに行った時にも来たと灰坂からメールで聞いた。
「はい! じゃあ明日はいよいよ本番ね! みんな! 歴史を変えるわよ!」
「おー!」
声が合わさる。みんなの心は一つだ。大成功間違い無し。
◇◆◇◆◇◆◇◆
――――四人で学校から帰る。カズと、ユキと、灰坂と、僕。
あれからはこの形が多くなった。カズとユキの二人とは途中で別れるから、僕と灰坂はそこから二人きりになる。灰坂は毎回、僕の家の前を通って帰って行った。
「じゃあ明日頑張ろうね! あ! おじさん! さようなら!」
父さんも仕事が夏休みに入っていて、灰坂が家の前に来ると毎回、玄関から顔を出して満面の笑みで手を振った。
「ホタルじゃあね」
「うん。また明日」
灰坂が見えなくなるまで見送って、家に入る。父さんは笑みを浮かべたまま楽しそうに居間でビールを飲んでいた。
「なあ蛍。明日、祭りで弾く曲聞かせてくれないか?」
「え? 何で? 嫌だよ。明日見れるんだからいいじゃん」
「そうなんだけどな。なんか今聞きたいんだよ。頼む!」
何故か、いつもと違ってしつこい。面倒くさいけれど、これで断って明日また好物でもない唐揚げを出されても困るし、仕方なく僕はピアノを弾く事を了承して、父さんを部屋に入れた。
「一回だけだよ」
「ああ。ありがとう」
父さんは畳の上に胡座をかいて、コップに半分くらい入ったビールを一口飲む。
僕は溜め息をついてピアノの鍵盤蓋を開けると、のらない気持ちで演奏を始めた。
あれだけのらなかった気分が演奏を始めると和らいでいく。
カズの指揮が頭に浮かんできた。悔しいけど心地いい。
僕は目を瞑って曲に身を預ける。色んな事が心の中から溢れ出て来た。
引っ越した時の事。
学校の事。
プールの事。
神社の事。
カズの事。
ユキの事。
スギの事。
タダシの事。
みんなの事。
――――灰坂の事。
色んな夏の景色と共に思い出が溢れてくる。
ここに来てから色々あり過ぎだ。
こうやってピアノも弾けてるし。一体何なんだろうこの村は。
「————うん……うん。懐かしいな」
「懐かしいって何が? って……え?」
演奏を終えて振り向くと、父さんは泣いていた。
「蛍……お前に言っておかなきゃならない事があるんだ」
「な、何?」
僕の体に、まるで引っ越しを切り出された時のような緊張が走る。
父さんはあの時と同じような顔をして、重たげに口を開いた。
「実はな……転勤じゃないんだ……父さんは、仕事を辞めてここに来たんだ」
「……は?」
突然の訳の分からないカミングアウトに、僕は開いた口が塞がらない。
そして、心の中で叫ぶ。
……じゃ、何で僕たち引っ越したの?
父さんは僕の心の内を理解したのか、していないのか、煽るようにビールを飲み干してコップを置いた。
「もちろん。こっちで仕事が決まったから引っ越せたんだが……蛍……ここはな」
――――母さんの住んでた場所なんだ。
父さんの言葉に僕の手がふるえだす。
「え……嘘でしょ? だってそれは前に住んでたところのはずじゃ……」
「そう。最終的にはな。母さん、小さい頃は親の転勤が多くてしょっちゅう転校していたんだそうだ。それでようやく落ち着いた所があそこだったらしい。でも母さんなぁ、俺と出会った時からよくここの話をしていたんだ。一番楽しかった場所だって、いっつも懐かしそうに話してたっけなぁ。たった一年間しか居なかったけど、ここには色んな思い出が詰まっていて、いつかはここに住みたいって。もちろんそれは叶わなかったが……父さんな。もしかしたら、母さんここにいるんじゃないかって思ってな。そう考えだしたらもう止まらなくて。お前には迷惑かけると思ったんだけどな。父さん、どうしても……母さん……すみれに会いたかった。すまんな黙ってて。俺の我が儘で引っ越しなんてお前絶対に納得しないだろうし、それに俺もお前も全然あの事故を消化できてないだろ?」
父さんは真っ直ぐに僕を見る。
僕は黙って頷いた。言葉は発せなかった。
父さんは話しながらずっと泣いていて、つられて僕まで泣いてしまいそうだったから。
「もうあの場所から離れないと、俺もお前もダメになる気がしたってのもある。もう一度お前と二人でやり直すにはどこか別の場所に行かないとってな。でも、そんなのただの言い訳だな。父さんは勝手にここを選んだんだから。父さんな、やっぱりここですみれに会える気がしてたんだよ。だからお前がピアノを弾きだした時、ほんとにビックリした。もしかしてすみれが弾いているんじゃないかって……」
父さんが母さんを名前で呼ぶのを初めて聞いた気がした。
僕が知る限りではいつだって父さんは「母さん」と呼んでいた。
僕よりもずっと長い間、母さんのそばで過ごして来た父さんが母さんを追うのを攻められる筈がない。僕だっていまだに母さんを追っている気がするんだ。
それに、今ならここも悪くない気がしている。
いや、むしろここに来て良かったと思えている。
ここで確かに僕も父さんも変わったんだ。
それは充分、分かっている。
「父さん。もしかして……ピアノ。母さんが弾けるようにしてくれたのかな」
「……そうかもな」
父さんは乱暴に手首で涙を拭いた。それでも涙は止まらない。
「……以上。お前に黙っていた事だ。本当に……本当にすまない!」
父さんは畳に両手をついて頭を下げた。
僕はピアノの椅子に座ったまま、自分の目から溢れる涙を止められなかった。
――――母さん。会いたいよ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
二人でどうしようもなく泣いた後、ようやく落ち着いた僕と父さんは二人隣り合わせてソーメンを啜った。もちろん縁側で。
「ちょっと情けない姿を見せちゃったな」
父さんはソーメンを啜りながら、真っ赤な目で笑う。
「ううん。話してくれてありがと。僕、ここに来て良かったよ」
「父さん。また泣いても良いか?」
「やめてよもう!」
僕らは互いに笑い合って、ソーメンを啜る音を揃わせた。
「ねえ。そう言えばさっきピアノ聞いて懐かしいって言ったよね? もしかして母さんが居たのって……」
「ああ。中学二年生の時だ。そして今のお前と一緒で、お祭りでピアノを弾いた。お前が小さい頃は良くピアノでその時の曲を弾いていたよ。楽しそうに歌いながらな。ホントに幸せそうだった。その時の母さんは」
僕は脱力して、箸を下ろした。
どうりで聞き覚えがあるはずだ。僕は小さい頃からずっと聞いていたんだ。
僕が本格的にピアノを弾く様になってからはクラシックばっかりだったけれど。
今、思い出せば母さんは時折、一人で弾いていたような気がする。とても楽しそうに。
「母さん……いるかもね。ここ」
「ああ。いるかもな」
僕は幽霊とかそう言う類いのもの、スピリチュアル的なものはあんまり信じていない。
でも、ピアノは母さんが弾ける様にしてくれた気がしてならなかった。
良い曲だよ、楽しいよって母さんが教えてくれた気がするんだ。
何だか、明日は思いっきり頑張れそうな気がして来た。
月を見ながら父さんが最後の一口を啜って、少しつゆを飲んだ。
「蛍……灰坂さんって、母さんに似てるよな」
僕は返事もせず、頷きもせず、月を見た。
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