ハーミタリアン

Romans 8:28 And we know

Day８４ The nature of fire（火の本質）

Day８４　夜９時　ちょいすぎ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

”パチ　パチ　パチ　パチ”

男は　今　草原の中で焚火たきびをしている
明日の為の備えは全て出来ている
ナイフとハンドハチェットは磨といである
ドローンとタブレットと携帯は充電してある
銃火器のメインテナンスは丁寧に
弾丸の作成も同じく丁寧に
携帯食も用意してある
日帰りできない可能性も考え馬屋、ヤギ小屋、鳥小屋に多めの餌
山猫達の口笛での号令も大丈夫であろう

”パチ　パチ　パチ　パチ”

ゆらゆら揺れ動く火を眺めながら男はエールを飲む
風もあまりなく　曇りの夜の中の焚火
暗闇の中　そこだけが　まるで篝火かがりびの様に明るくなっている
その異様な光景に　草原の動物達も近寄りがたくなっている

”パチ　パチ　パチ　パチ”
男　　：「ごくごくごくごくごく　はーー」

男は考えていた
明日　狼を倒しに行く　　　　それはいい
この世界にも人がいる　　　　それはいい
この世界でも生きていける　　それはいい

でも　何故　自分がこの世界に来たのか？
自分の様に才能の無い人間が何故ここに来たのか？

男　　：「Rapture？（携挙？）」

敬虔 けいけんであった信者が選ばれ天に昇る現象
シンプソンズというアニメであったっけ
あとは　Left Behind: The Movie　というショーもない映画
ブラッドジョンソンとトムベレンジャーの違いが判らなかったっけ

でも　男はそこまで信心深い訳ではない
教会に行く訳でもない
どちらかと言うとラプチャーから遠い存在である
いやいや　この世界は天国とは違い辛すぎる
だいたい　この世界は携挙にしては過酷すぎるだろう

なら　どうしてだ？　
元々　テネシー州の郊外に住んでいた男
アメリカから消えても気にされない存在だからか？

この異世界に来てからずっと考えているが答えが出ない

何故なぜ　自分が？
どうして　この世界なのか？
何の為に　ここにいるのか？

男　　：「Oh God, Why me？　　（神よ　何故　自分が？）
　　　　 why I am here, WHY！?（どうしてここに？　何故だ！？）」

問いかけても答えは返ってこない
”パチ　パチ　パチ　パチ”
男の問いをあざ笑うかのように火が揺らめく

男はエールを飲んでから静かに目を閉じる
この危険な場所で自殺行為ともとれる行動
ただ　焚火をしてから動物達が既に１時間以上経っても来ない
角ウサギより斑の蛇の方が厄介なのだが
それも来る気配はない
酔いと眠気が来たので　眼を開け　再び火を見つめる

男　　：「。。。。。。。。。。。。。」

”パチ　パチ　パチ　パチ”
”シュタ　コロ　ガラ　トッ”

男は火が消えないように枝をどんどん足していく
マシュマロでも焼ければ最高なんだが
そして　暫しばらくジッと焚火を見ている

揺らめく火

時折　強く燃え盛り　また踊る様に揺らめく火
色んな時代の色んな場所での色んな人間が心を落ち着かせる為に
見てきた現象の中の１つ

川に流れる水と音、波打つ海の水と音、 暗闇の中の風と音
そして今回　男が選んだ夜の焚火と音
それぞれ色んな形を成す

男　　：「。。。。。。。。。。。。。」

ただ男には少し解かった事がある
全ての行動には　なんらかの結果が伴う
そして　それは大いなる意志の流れの中の行動であるのではないか？
だとしたら　それには必ず何か理由がある！

今この見知らぬ大地に男がいる
何か理由があるはずだ！

叔父さんと昔ジャンヌダルクの映画を見た
そこで印象的だったのが
Sword in the field
ジャンヌダルクは自分が選ばれた人間の為
草原で天から与えられし剣を拾ったと信じ込む
ただし彼女の良心が具現化した老人が問いかける

本当にそうなのか？
草原で拾って剣は草原で拾った剣以外の何物でもない

兵隊がたまたま剣を落としたのでは？
決闘で負けた人が剣を落としたのでは？
追われている人間が剣が重いので捨てたのでは？
追われている人間が殺されて剣を落としたのでは？
剣士がただ剣を捨てたのでは？
ジャンヌダルクは自分が選ばれた人間の為
剣は壮大な音楽と共に天から降りて来たと思い込む

なぜ他の可能性を捨て
自分が一番理想的で選びたい可能性を選んだのか？　っと

”パチ　パチ　パチ　パチ”

男は自分の限界を知っている
男よりも銃の扱いが上手うまい人間など掃いて捨てる程いる
男よりも狩に慣れた人間など　ごまんといる
男よりも孤独になれた人間も数えきれない程いる
男よりもサバイバルに長たけた人間なんて無数にいる
男よりも何かを成し遂げるのに最適な人間なんか。。。。。

だから男は度々たびたび　思う
何故自分なのか？
そして　それは神のイタズラか？　何らかの間違えなのか？

いや　間違えではない
それは確かだ！
それだけは絶対だ！

男　　：「God Almighty（万能な神）」　間違えであるはずがない！

男は天を見上げる
曇り空、月と星明りの全くない暗闇
まるで闇に吸い込まれそうになる感覚を火を見て戻す

”パチ　パチ　パチ　パチ”

答えは出ない
気分も穏やかではない
それでも明日　やらなければならな事がある
危険ではある
が　鈍く青く光る鎧があるから　そう簡単にはやられないであろう

男　　：「。。。。。。。。。。。。。」

そろそろ家に戻りベッドに入るか
男は焚火を消す
そして野原は本来の純黒の世界になる

そんな中　男は明かりも点つけずに家路へ
ほんの数歩　歩いただけで闇に飲み込まれる感覚
それを内側から沸き起こる　ほろ酔いによる温かさが
搔き消していく

狐、蛇、角ウサギ、ウルバリン、ネズミ、斑の蛇、鳥
ありとあらゆる動物が男が闇に紛れ歩いているのに気付いている
が　どれ１つ男を襲おうとはしない
体格さがある
襲うに値しない
食べるに値しない

ただ闇夜に止まる事なく歩き続ける男
持っているランタン型の懐中電灯を点ければ良いのに　それすらしない男

”さっ　さっ　さっ　さっ”

風もなく　男が歩く音だけが暗闇の野原に響き渡る

＊＊＊数分後＊＊＊
男は家に着き
温いシャワーを浴び
ウィスキーを　一杯ひっかけ
ベッドへダイブするのであった