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輝きの7月
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期末テストも終わり、夏休みに向けて生徒たちが浮き足立ってきた頃。たった一人、日に日に落ち込んでいく人物が、今まさに隣にいた。ちなみに言っておくと、試験結果が悪かったわけではない。そのため、理由がわからないでいた。
「はあー……」
どちらかというと、通常がにこにこしている方なので、こうあからさまに溜息ばかり吐かれると、気にするなという方が無理な話だったりする。まあ、そのいつもの状態だって、表面上に過ぎないところがあるのだけれど……。
これは、あれかな? 聞いて欲しいというサインだったりするのかな? いや、彼はそういうことをするタイプではない――はずだ。
「そういえば、今日は七夕だね」
先程まで重たい息を吐き出していた口で、突然何を言いだすかと思えば……。
「そうなんだ?」
私の日付の感覚は、正確ではない。曜日は、なんとなく学校の様子でわかるけれど、日にちはこうやって聞いたりしないと、わからないのだ。
「さくらさんは、短冊に願い事を書くとしたら、何て書く?」
「え? もしかして、高校生にもなって、まだそんなことをしているの?」
「我が家は、行事を大切にするんだってさ。こういう文化を、気に入ってるってだけみたいだけど」
「ふうん……」
短冊に書くこと、ねえ……。いったい、この私に何を願えと言うのだろうか――なんて過ったことは、微笑みに隠しておこう。
「そういえば、知っている? 願い事は、書く時に『なりますように』って書くんじゃなくて、『なる』って断言する言葉で書いた方が、叶う可能性が高くなるらしいよ」
なんて、答えにならないことを言ってみる。しかし、彼は気にも留めずに、驚いた顔をした。
「えっ、そうなんだ。知らなかった……。じゃあ、今年はそう書こう」
いったい、何を書くのだろうか。何はともあれ、素直って素晴らしい。
「……まあ結局、誰かに頼っていちゃダメってことだよね」
願いは、勝手に叶ったりなんかしない。
「そうだね……あーでもさ、天気、夕方から崩れるらしいんだよね」
じゃあ、今夜は雨か。だいたいがこの日は、天気に恵まれないイメージだ。ここで、旧暦がどうこうというつもりはないが、現代の織姫と彦星は、ほとほと出会えないらしい。
「雨が降ってもさ、ソラは晴れてるよね」
彼の言うソラが、果たして空なのか、宇宙なのか――そんなどうでもいいことを思考しそうになって、やめた。どちらにせよ、雲の上は晴れている。そういうことだ。
「じゃあ、やっぱり二人は出会えるよね」
そんなロマンチストな言葉も、彼にとっては願望なのだろう。目が、憂いを帯びていた。
「予鈴、鳴ったよ」
「うん。じゃあ、行くね。またね、さくらさん」
ゆっくり、振り返りながら歩いて行く彼。姿が見えなくなって、私も上げていた右手を下ろした。
「七夕か……」
短冊に彼が願いそうなことなんて、容易に想像できてしまった。予鈴を理由に、話を無理矢理切り上げさせてしまったけれど、あのままだったら触れていただろうか? それともこれは、自惚れが過ぎるというものだろうか――
「なーんて。知ったことか」
私たちは、織姫でも彦星でもない。年に一度でも会えるような、同じ時間を生きる者同士ではない。ならば、最初から破綻しているのだ。私たちはこの先、どう足掻いても共に生きていくことなど、できはしないのだから。
それをわかっていても尚、願ってしまうのは何故だろう。離れられないのは、どうしてだろう。
「奇跡なんて、そんなことがあるわけもないのに」
一人、青い空を見上げる。西の空に、雲が広がっていた。予報は、的中するのだろう。それでも、雲の上は晴れている。
今年は彼のおかげで、穏やかに天の川を思い浮かべることができそうだった。
「はあー……」
どちらかというと、通常がにこにこしている方なので、こうあからさまに溜息ばかり吐かれると、気にするなという方が無理な話だったりする。まあ、そのいつもの状態だって、表面上に過ぎないところがあるのだけれど……。
これは、あれかな? 聞いて欲しいというサインだったりするのかな? いや、彼はそういうことをするタイプではない――はずだ。
「そういえば、今日は七夕だね」
先程まで重たい息を吐き出していた口で、突然何を言いだすかと思えば……。
「そうなんだ?」
私の日付の感覚は、正確ではない。曜日は、なんとなく学校の様子でわかるけれど、日にちはこうやって聞いたりしないと、わからないのだ。
「さくらさんは、短冊に願い事を書くとしたら、何て書く?」
「え? もしかして、高校生にもなって、まだそんなことをしているの?」
「我が家は、行事を大切にするんだってさ。こういう文化を、気に入ってるってだけみたいだけど」
「ふうん……」
短冊に書くこと、ねえ……。いったい、この私に何を願えと言うのだろうか――なんて過ったことは、微笑みに隠しておこう。
「そういえば、知っている? 願い事は、書く時に『なりますように』って書くんじゃなくて、『なる』って断言する言葉で書いた方が、叶う可能性が高くなるらしいよ」
なんて、答えにならないことを言ってみる。しかし、彼は気にも留めずに、驚いた顔をした。
「えっ、そうなんだ。知らなかった……。じゃあ、今年はそう書こう」
いったい、何を書くのだろうか。何はともあれ、素直って素晴らしい。
「……まあ結局、誰かに頼っていちゃダメってことだよね」
願いは、勝手に叶ったりなんかしない。
「そうだね……あーでもさ、天気、夕方から崩れるらしいんだよね」
じゃあ、今夜は雨か。だいたいがこの日は、天気に恵まれないイメージだ。ここで、旧暦がどうこうというつもりはないが、現代の織姫と彦星は、ほとほと出会えないらしい。
「雨が降ってもさ、ソラは晴れてるよね」
彼の言うソラが、果たして空なのか、宇宙なのか――そんなどうでもいいことを思考しそうになって、やめた。どちらにせよ、雲の上は晴れている。そういうことだ。
「じゃあ、やっぱり二人は出会えるよね」
そんなロマンチストな言葉も、彼にとっては願望なのだろう。目が、憂いを帯びていた。
「予鈴、鳴ったよ」
「うん。じゃあ、行くね。またね、さくらさん」
ゆっくり、振り返りながら歩いて行く彼。姿が見えなくなって、私も上げていた右手を下ろした。
「七夕か……」
短冊に彼が願いそうなことなんて、容易に想像できてしまった。予鈴を理由に、話を無理矢理切り上げさせてしまったけれど、あのままだったら触れていただろうか? それともこれは、自惚れが過ぎるというものだろうか――
「なーんて。知ったことか」
私たちは、織姫でも彦星でもない。年に一度でも会えるような、同じ時間を生きる者同士ではない。ならば、最初から破綻しているのだ。私たちはこの先、どう足掻いても共に生きていくことなど、できはしないのだから。
それをわかっていても尚、願ってしまうのは何故だろう。離れられないのは、どうしてだろう。
「奇跡なんて、そんなことがあるわけもないのに」
一人、青い空を見上げる。西の空に、雲が広がっていた。予報は、的中するのだろう。それでも、雲の上は晴れている。
今年は彼のおかげで、穏やかに天の川を思い浮かべることができそうだった。
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