14 / 31
『生物研究部』活動記録 弐
熊井栗鼠という女 弐
しおりを挟む
「あはは~、ちょっとふざけ過ぎたね~。そうそう、自己紹介だよ、自己紹介。とは言っても、私のターンで話すことはもう無いかな~。じゃあ~、水仙くん、どうぞ~。」
「えっ!? あたし!?」
「どうぞ~。」
突如順番が回ってきた水仙は、先ほどまでの威勢から一転して、困惑した様子だ。どうやら、『見てください』と言わんばかりの派手な外見をしておきながら、注目されるのは苦手らしい。
「えっと……真珠田水仙……2年生デス……。」
「ん~? 終わり~?」
「お、終わりっ! なにも話すことない!」
「いやいやァ、好きなものとかさ~?」
「そんなの、先生も言わなかったでしょ!」
「おや、たしかに。じゃあ、せっかくだし発表しちゃうか~。私の好きなものは、第一に『男』、第二に『酒』、第三に『生き物』さ。」
こんな風体でありながら、『生き物』は置いておいても、『男』と『酒』が好物とは、意外である。この『生物研究部』に出会ってから、俺の中の『人間観』みたいなものがどんどん更新されていっている感覚がある。
まぁ……それも、俺がこれまで他人と深く関わることが少なかったからかもしれない。他人は見た目からは想像がつかない内面をもっている。
そんな当たり前のことに、実感をもって気づくことができた。それだけでもここに入った意味はあったと言えよう。
「へ、へぇー……! いちいち順番も決めてるあたり、理由を訊かれ待ちしてる感じするケド……。」
「お~、水仙くんにしてはご明察だね~。」
「ひと言余計っ!」
「そう、『男』は私にとって人生の生産性を上げるのに必要不可欠さ。『パートナー』と言ったほうが良いのかな? まぁ、私の対象が男性というだけの話だよ~。」
「『扶養者』を第一に欲しているんですね、先生は。」
「それは少し違うよ、青蓮く~ん。私はなにも被扶養者になりたいワケじゃないんだ。共に働き、共に生き、そして豊かな性交渉を求めているのさ~。」
「……なるほど。本当に求めているのは後ろのほうですね?」
「い~や、それも私にとっては『生産性』を上げる一因に過ぎないよ~。つまり、私が最も重視し、求めているのは、『幸せ』と言っていいね~。この世界では、『幸せ』はほぼ『金』と同義、イコール『生産性』の高さなのさ~。」
「そう言って『人生』を因数分解していくと、なんとも味気ない感じがしますね。」
「ん~? たしかに、数式みたいにXやYで表してしまえば、そうなんだけどね~。そこには『代入可能』だろう? ……
「つまり、私の第二と第三の好物はそれさ。『酒』は私のストレスを緩和し、『生き物』は私を奮い立たせる。どちらも、私の『生産性』におけるモチベーションを高めるのに一役買ってくれているのさ~。」
「……『生き物』というのは、その『男』も包含しているようにも思えますが、順位が下ですね?」
「あ~、私の言う『生き物』は、家で飼ってるペットちゃんをはじめとした『観察対象』のことさ~。『男』も、生物的な目線でみれば同じだけどね~。」
なるほどな、と俺は黙って聞いていた。となると、彼女の第一から第三までのランキングは、彼女自身の『生産性』とやらを高める順なのだろう。一見、全てを『生産性があるか否か』で判断する淡白な人物かと思いきや、聞いてみると、しっかりと『好き』がある、人間らしい一面が垣間見えた。
「少し長くなったね~。じゃあそろそろ、水仙くんの好きなものとその理由を聞こうじゃないか~!」
「はぁっ!?」
「とか驚いたふりしちゃって~。ずっと黙って俯いてたのは、話す内容を考えていたからなんだろう~?」
「う、うぅぅ……!」
盛大なフリから繰り出される彼女の『好きなもの』は一体なんなのだろうか。非常に……そう、ヒジョーーに聞きごたえのある回答をしてくれるに違いない。
涙目の水仙を見ながら、俺は心の中でほくそ笑んでいた。
「えっ!? あたし!?」
「どうぞ~。」
突如順番が回ってきた水仙は、先ほどまでの威勢から一転して、困惑した様子だ。どうやら、『見てください』と言わんばかりの派手な外見をしておきながら、注目されるのは苦手らしい。
「えっと……真珠田水仙……2年生デス……。」
「ん~? 終わり~?」
「お、終わりっ! なにも話すことない!」
「いやいやァ、好きなものとかさ~?」
「そんなの、先生も言わなかったでしょ!」
「おや、たしかに。じゃあ、せっかくだし発表しちゃうか~。私の好きなものは、第一に『男』、第二に『酒』、第三に『生き物』さ。」
こんな風体でありながら、『生き物』は置いておいても、『男』と『酒』が好物とは、意外である。この『生物研究部』に出会ってから、俺の中の『人間観』みたいなものがどんどん更新されていっている感覚がある。
まぁ……それも、俺がこれまで他人と深く関わることが少なかったからかもしれない。他人は見た目からは想像がつかない内面をもっている。
そんな当たり前のことに、実感をもって気づくことができた。それだけでもここに入った意味はあったと言えよう。
「へ、へぇー……! いちいち順番も決めてるあたり、理由を訊かれ待ちしてる感じするケド……。」
「お~、水仙くんにしてはご明察だね~。」
「ひと言余計っ!」
「そう、『男』は私にとって人生の生産性を上げるのに必要不可欠さ。『パートナー』と言ったほうが良いのかな? まぁ、私の対象が男性というだけの話だよ~。」
「『扶養者』を第一に欲しているんですね、先生は。」
「それは少し違うよ、青蓮く~ん。私はなにも被扶養者になりたいワケじゃないんだ。共に働き、共に生き、そして豊かな性交渉を求めているのさ~。」
「……なるほど。本当に求めているのは後ろのほうですね?」
「い~や、それも私にとっては『生産性』を上げる一因に過ぎないよ~。つまり、私が最も重視し、求めているのは、『幸せ』と言っていいね~。この世界では、『幸せ』はほぼ『金』と同義、イコール『生産性』の高さなのさ~。」
「そう言って『人生』を因数分解していくと、なんとも味気ない感じがしますね。」
「ん~? たしかに、数式みたいにXやYで表してしまえば、そうなんだけどね~。そこには『代入可能』だろう? ……
「つまり、私の第二と第三の好物はそれさ。『酒』は私のストレスを緩和し、『生き物』は私を奮い立たせる。どちらも、私の『生産性』におけるモチベーションを高めるのに一役買ってくれているのさ~。」
「……『生き物』というのは、その『男』も包含しているようにも思えますが、順位が下ですね?」
「あ~、私の言う『生き物』は、家で飼ってるペットちゃんをはじめとした『観察対象』のことさ~。『男』も、生物的な目線でみれば同じだけどね~。」
なるほどな、と俺は黙って聞いていた。となると、彼女の第一から第三までのランキングは、彼女自身の『生産性』とやらを高める順なのだろう。一見、全てを『生産性があるか否か』で判断する淡白な人物かと思いきや、聞いてみると、しっかりと『好き』がある、人間らしい一面が垣間見えた。
「少し長くなったね~。じゃあそろそろ、水仙くんの好きなものとその理由を聞こうじゃないか~!」
「はぁっ!?」
「とか驚いたふりしちゃって~。ずっと黙って俯いてたのは、話す内容を考えていたからなんだろう~?」
「う、うぅぅ……!」
盛大なフリから繰り出される彼女の『好きなもの』は一体なんなのだろうか。非常に……そう、ヒジョーーに聞きごたえのある回答をしてくれるに違いない。
涙目の水仙を見ながら、俺は心の中でほくそ笑んでいた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

マッスル書店へようこそ!
ねこ沢ふたよ
キャラ文芸
コメディです。
脳みそを筋肉に変えて、プロテイン片手にお楽しみください。
何も考えずに、どうぞ! むしろ考えたら負けです。考えてはいけません。
「訳分かんねえ!」と思いながら、作者は書いてます。
本の数よりトレーニング器具の方が多いというイカれた書店、それが「マッスル書店」
ゴリマッチョ店長の本因坊が、筋肉の力で、悩みを抱えて本を求める客を幸せにします。
アルバイト店員の佐々木君は、きょうも爆走暴走する本因坊店長の所業を生温かく見守るのです。
※ごめんなさい、一話完結のつもりでしたが、続けました。

切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる