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本編
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あの離宮から戻ってきて三年。
覚悟を決めたんだと走り続けていたけれど、思えばそればかりでマチアスの心配の声も何もかも無視していたなと思い至る。
不安を言わないように、怖いと言わないように。マチアスには大丈夫だと言って、ひたすら王太子妃としての教育を終えようとしていた。
そうしなければ誰かがこの場所を取るのではないか、と不安が募ってしまった。
そうしなければカナメは、誰の前でも泣いて叫んだかもしれない。
マチアスがいくらカナメのままでなければいけないと言っても、それが良いのだと言っても、カナメを守ると言ってくれても、カナメはそれだけではいられなかったのだ。
どうしたってカナメにはそんな事、出来なかった。
素晴らしい成績で王太子妃教育を卒業する。自分以上の人が出ないために。
王妃になった後も、マチアスがいくら娶らないと言っても、結局結果側妃ができた時、自分の場所を──────唯一の王妃の変わりを決してさせないために。そのためだけに覚悟を決めたのだと言い訳をして、カナメはただただ周りの気持ちを知らない顔をしてただただ走り続けていた。
(アル様、そういえば、心配そうな顔ばっかりしてたかも)
カナメは自分だけで走っていたことを少しだけ、反省した。だからってすぐに変われるとカナメは思わないけれど、それでも思えただけで進歩かなとカナメは考えるようにした。
そうでなければカナメは覚悟を決めたのだと走り続けたことを、自分で否定しそうで怖かったのだ。
少し落ち着いたのか、カナメは気になってしまった事を素直に聞くことにしたようだ。
多少落ち着くと、そういえば、と言いたくなる様なことはないだろうか。今のカナメはそう言う状態だ。
ノアが「どうかしたの?」と言っている様な、そんな優しい顔で見つめるから思わず口からこぼれた様なものだったかもしれないけれど。
「で、話は変わるけど……ノアは精霊に好かれているから出産できるって。これって、つまりどう言うこと?」
「ああ、うーん……原理とかはよく分からないし、きっと一生分からないままだと思うけれど……闇と光の精霊どちらかに祝福、どちらから加護を貰えているとできるんだ。ぼくだけとかじゃなくて、条件を満たせば大丈夫なんだよ。一人で条件を満たしてもいいし、二人で条件を満たしてもいいんだけど、ぼくの場合は一人で満たしてるんだ」
「つまり、ノアは一人でその条件を満たしているって言うことであってる?」
ノアは頷く。そして「カナメ様の前で遮断の魔法は使っていいのかな?」と聞き、カナメは問題ないよと軽く言う。
次の瞬間、カナメの目が見開いた。
「まだ発表されていないから遮断の魔法が使えないと話せなくて」
「あ、うん」
今まで感じたことのない隙のない遮断の魔法を感じた精霊が、そのままをカナメに伝えたのだ。
カナメと精霊は常に行動を共しているからなのか、精霊が感じるこう言うものを、いつからかカナメも僅かにだけれど感じる様になった。
だから感じたその強度に、カナメは驚きを隠せずにいる。
「ぼく、ちょっと異常で」
「え!?」
王太子妃となる人から『異常』と聞きカナメは驚きを超える驚きで、すっとんきょうな声を上げた。もうさっきの強度に驚いた気持ちなんて、頭の隅に追いやられただろう。
外行きの顔──内面を誤魔化すためなのか口数は少なくなり、外見とその口数の少なさで“クールビューティ”などと呼ばれ令嬢から令息からまでもうっとりとした視線を送られる。それが外行きのカナメの顔である──は初日でかなり食い気味に魔法の質問をしてしまったがために剥がれ切っていたとはいえ、こんな声を上げるのは流石に恥ずかしかったようで、カナメの顔が羞恥でポッと赤くなった。
「精霊からの祝福を、前代未聞の数受けてるんだ。多分、カナメ様に引かれると思う。ちょっと尋常じゃないって自分でも思うくらいなんだけど……ありがたいことに受けているんだ。で、ぼくはそれに加えて闇と光の精霊からの加護ももらっているんだけれど、これも前代未聞なんだ。婚姻するあたりできっと発表する予定なんだけれど」
「他国の人間に言っていいの!?いったらダメなやつでしょ!!?守秘義務とかそういうの、え?存在しないの?」
「でも、カナメ様はそんな他国のぼくに、不安を吐露してくれたでしょ?ぼくを信頼してくれたからだよね?ならぼくも信頼でお返しをするだけだよ。大丈夫!」
「え……ちょ、え?だいじょぶ……じゃないんじゃ……?え、知ったら危ない系では……?口封じ系とか……では?」
いいの?いいのかな?だいじょうぶ系ですか?とカナメはエルランドに視線を送る。エルランドはにっこり笑うだけだ。
その笑顔の意味を図るには知り合ってからの時間が圧倒的に足りないが、きっと大丈夫だと言うことなのだろう。
カナメはそう思うことにした。でなければ心配と不安になりすぎる。
ノアはそんなカナメの気持ちを露知らず、にっこりと笑って続けた。
「だから、それもあって魔法も精霊魔法も得意なんだ」
「すごいなあ。つまり、精霊に愛されすぎてるってことだもんね。ノアは高位精霊とかと普通に契約しちゃいそう。あ、ノアは契約する必要がないのかな?俺にもそういう、高位精霊との契約とかできるのかなあ。正しく契約するのって一度してみたいんだ」
そう言うカナメにノアはきょとんと瞬いて
「カナメ様も多分、高位精霊と契約をしていると思うんですけど……?それに二体、いるようですけれども……?」
と言って、カナメも、そして終始黙ったままであったカナメの後ろに控えていたアーネも絶句させた。
ノアが二人を絶句させた頃、マチアスの気持ちを知ったのはアーロンだ。
この国の貴族に染み付く不文律、それがいかに健全ではないことであるのか、そしてそれを自分が壊そうとしていること。
そしてマチアスは自分は弟のエティエンヌに王族に残ってもらい彼の子供を養子として、次の王を育てると言う思いも語った。
今までの付き合いで、本人が言うところの真面目で硬いところがある優しい友人──アーロンはマチアスを、彼が言うほど不器用ではないと思っている──の熱を知ってアーロンは素直に応援したいと思った。
国の慣習を、しかも当たり前のように感じるほど染みついた悪きそれを、正そうとするのはとても難しい。
けれども婚約者のために決して諦めないのだと言い切り、それのためならなんでもすると言う青年を前に、同じ立場のアーロンは何かしたいと強く感じたのだ。
マチアスの執務室、難しいタイトルの本に囲まれ一切遊びの要素がない彼らしい執務室。
そこで向かい合うマチアスに、アーロンは
「僕、この国ともっと友好的になるいい方法があると思うんだ」
と言う。マチアスはお互いの走り書きの紙を掲げ
「ここにさまざまな交易や互いの強みを支援しあうなどということを」
「いや、うん、そうだけど……いやね、そう言う問題とはまた別に、もっとお互いを近くに感じる方法だよ」
「いくら君の婚約者のノア殿が精霊に愛されようとも、国を移動させるなんて出来ないだろう?それとも動かせるのか?それほど愛されてるのだとしたら、精霊王の愛し子の再来ではないか……!」
「動かせるわけないでしょ!愛し子でもないよ!なんでそうなるの?時々僕ね、マチアスはツッコミを待ってるのかなって思うことがあるよ。仮に出来るとか言われても、そんな世界がひっくり返るようなこと、僕がノアにさせるわけないでしょ!僕のノアが危険に晒されちゃうよ!!」
首を振って言うアーロンにマチアスは不満そうだが、アーロンはそれをしれっと無視して
「将来、お互いに王になって、ノアが女の子を産んでくれたらこの国に嫁入りさせるんだよ。君が選んだ王太子となる王子に。君が選んだ子に、だよ。君の子供である必要はない。君が選んだ王太子に。僕が約束する」
驚いた様な、悔しい様な、不思議な顔のマチアスを見て、少し首を傾げたアーロンは続ける。
「大切な人を守るために必死になってもいいと思う。そんな人間臭い君が僕はいいな。その人間くさいところを君が不器用だと言うのなら、不器用だっていいじゃない。そっちのほうが僕は好きだよ。だから、約束する」
それに僕のノアの子供だよ?可愛いからきっと君の選ぶ王子も気に入ってくれると思うんだ。と屈託なく笑う。
「もしそうなったら、小さい時からお互いを思いやって慈しむことの大切さを教えて、お互いの国を行き来したり、いろいろな方法で交流させたいな。僕ね、それが本当に大切だって、心底思ったんだ。もし二人の反りが合わなかったら、それはその時考えればいいでしょう?だから、そうしたいな。婚姻式の日に、いや婚約式の日に同盟を組むとか、うん、なんだかいい未来だと思わない?楽しそうだね」
僕は、君が言う人間臭くて王子らしくない、君を応援したい。だからまだ見ぬ君の選んだ王子の後見をするよ。
僕をいっぱい助けてくれた君に、たまには恩返しさせてよ。まあ、勝手にしちゃうけど!
笑うアーロンがそう言っている気がして、マチアスは取り敢えずと言ったように小さく笑った。
覚悟を決めたんだと走り続けていたけれど、思えばそればかりでマチアスの心配の声も何もかも無視していたなと思い至る。
不安を言わないように、怖いと言わないように。マチアスには大丈夫だと言って、ひたすら王太子妃としての教育を終えようとしていた。
そうしなければ誰かがこの場所を取るのではないか、と不安が募ってしまった。
そうしなければカナメは、誰の前でも泣いて叫んだかもしれない。
マチアスがいくらカナメのままでなければいけないと言っても、それが良いのだと言っても、カナメを守ると言ってくれても、カナメはそれだけではいられなかったのだ。
どうしたってカナメにはそんな事、出来なかった。
素晴らしい成績で王太子妃教育を卒業する。自分以上の人が出ないために。
王妃になった後も、マチアスがいくら娶らないと言っても、結局結果側妃ができた時、自分の場所を──────唯一の王妃の変わりを決してさせないために。そのためだけに覚悟を決めたのだと言い訳をして、カナメはただただ周りの気持ちを知らない顔をしてただただ走り続けていた。
(アル様、そういえば、心配そうな顔ばっかりしてたかも)
カナメは自分だけで走っていたことを少しだけ、反省した。だからってすぐに変われるとカナメは思わないけれど、それでも思えただけで進歩かなとカナメは考えるようにした。
そうでなければカナメは覚悟を決めたのだと走り続けたことを、自分で否定しそうで怖かったのだ。
少し落ち着いたのか、カナメは気になってしまった事を素直に聞くことにしたようだ。
多少落ち着くと、そういえば、と言いたくなる様なことはないだろうか。今のカナメはそう言う状態だ。
ノアが「どうかしたの?」と言っている様な、そんな優しい顔で見つめるから思わず口からこぼれた様なものだったかもしれないけれど。
「で、話は変わるけど……ノアは精霊に好かれているから出産できるって。これって、つまりどう言うこと?」
「ああ、うーん……原理とかはよく分からないし、きっと一生分からないままだと思うけれど……闇と光の精霊どちらかに祝福、どちらから加護を貰えているとできるんだ。ぼくだけとかじゃなくて、条件を満たせば大丈夫なんだよ。一人で条件を満たしてもいいし、二人で条件を満たしてもいいんだけど、ぼくの場合は一人で満たしてるんだ」
「つまり、ノアは一人でその条件を満たしているって言うことであってる?」
ノアは頷く。そして「カナメ様の前で遮断の魔法は使っていいのかな?」と聞き、カナメは問題ないよと軽く言う。
次の瞬間、カナメの目が見開いた。
「まだ発表されていないから遮断の魔法が使えないと話せなくて」
「あ、うん」
今まで感じたことのない隙のない遮断の魔法を感じた精霊が、そのままをカナメに伝えたのだ。
カナメと精霊は常に行動を共しているからなのか、精霊が感じるこう言うものを、いつからかカナメも僅かにだけれど感じる様になった。
だから感じたその強度に、カナメは驚きを隠せずにいる。
「ぼく、ちょっと異常で」
「え!?」
王太子妃となる人から『異常』と聞きカナメは驚きを超える驚きで、すっとんきょうな声を上げた。もうさっきの強度に驚いた気持ちなんて、頭の隅に追いやられただろう。
外行きの顔──内面を誤魔化すためなのか口数は少なくなり、外見とその口数の少なさで“クールビューティ”などと呼ばれ令嬢から令息からまでもうっとりとした視線を送られる。それが外行きのカナメの顔である──は初日でかなり食い気味に魔法の質問をしてしまったがために剥がれ切っていたとはいえ、こんな声を上げるのは流石に恥ずかしかったようで、カナメの顔が羞恥でポッと赤くなった。
「精霊からの祝福を、前代未聞の数受けてるんだ。多分、カナメ様に引かれると思う。ちょっと尋常じゃないって自分でも思うくらいなんだけど……ありがたいことに受けているんだ。で、ぼくはそれに加えて闇と光の精霊からの加護ももらっているんだけれど、これも前代未聞なんだ。婚姻するあたりできっと発表する予定なんだけれど」
「他国の人間に言っていいの!?いったらダメなやつでしょ!!?守秘義務とかそういうの、え?存在しないの?」
「でも、カナメ様はそんな他国のぼくに、不安を吐露してくれたでしょ?ぼくを信頼してくれたからだよね?ならぼくも信頼でお返しをするだけだよ。大丈夫!」
「え……ちょ、え?だいじょぶ……じゃないんじゃ……?え、知ったら危ない系では……?口封じ系とか……では?」
いいの?いいのかな?だいじょうぶ系ですか?とカナメはエルランドに視線を送る。エルランドはにっこり笑うだけだ。
その笑顔の意味を図るには知り合ってからの時間が圧倒的に足りないが、きっと大丈夫だと言うことなのだろう。
カナメはそう思うことにした。でなければ心配と不安になりすぎる。
ノアはそんなカナメの気持ちを露知らず、にっこりと笑って続けた。
「だから、それもあって魔法も精霊魔法も得意なんだ」
「すごいなあ。つまり、精霊に愛されすぎてるってことだもんね。ノアは高位精霊とかと普通に契約しちゃいそう。あ、ノアは契約する必要がないのかな?俺にもそういう、高位精霊との契約とかできるのかなあ。正しく契約するのって一度してみたいんだ」
そう言うカナメにノアはきょとんと瞬いて
「カナメ様も多分、高位精霊と契約をしていると思うんですけど……?それに二体、いるようですけれども……?」
と言って、カナメも、そして終始黙ったままであったカナメの後ろに控えていたアーネも絶句させた。
ノアが二人を絶句させた頃、マチアスの気持ちを知ったのはアーロンだ。
この国の貴族に染み付く不文律、それがいかに健全ではないことであるのか、そしてそれを自分が壊そうとしていること。
そしてマチアスは自分は弟のエティエンヌに王族に残ってもらい彼の子供を養子として、次の王を育てると言う思いも語った。
今までの付き合いで、本人が言うところの真面目で硬いところがある優しい友人──アーロンはマチアスを、彼が言うほど不器用ではないと思っている──の熱を知ってアーロンは素直に応援したいと思った。
国の慣習を、しかも当たり前のように感じるほど染みついた悪きそれを、正そうとするのはとても難しい。
けれども婚約者のために決して諦めないのだと言い切り、それのためならなんでもすると言う青年を前に、同じ立場のアーロンは何かしたいと強く感じたのだ。
マチアスの執務室、難しいタイトルの本に囲まれ一切遊びの要素がない彼らしい執務室。
そこで向かい合うマチアスに、アーロンは
「僕、この国ともっと友好的になるいい方法があると思うんだ」
と言う。マチアスはお互いの走り書きの紙を掲げ
「ここにさまざまな交易や互いの強みを支援しあうなどということを」
「いや、うん、そうだけど……いやね、そう言う問題とはまた別に、もっとお互いを近くに感じる方法だよ」
「いくら君の婚約者のノア殿が精霊に愛されようとも、国を移動させるなんて出来ないだろう?それとも動かせるのか?それほど愛されてるのだとしたら、精霊王の愛し子の再来ではないか……!」
「動かせるわけないでしょ!愛し子でもないよ!なんでそうなるの?時々僕ね、マチアスはツッコミを待ってるのかなって思うことがあるよ。仮に出来るとか言われても、そんな世界がひっくり返るようなこと、僕がノアにさせるわけないでしょ!僕のノアが危険に晒されちゃうよ!!」
首を振って言うアーロンにマチアスは不満そうだが、アーロンはそれをしれっと無視して
「将来、お互いに王になって、ノアが女の子を産んでくれたらこの国に嫁入りさせるんだよ。君が選んだ王太子となる王子に。君が選んだ子に、だよ。君の子供である必要はない。君が選んだ王太子に。僕が約束する」
驚いた様な、悔しい様な、不思議な顔のマチアスを見て、少し首を傾げたアーロンは続ける。
「大切な人を守るために必死になってもいいと思う。そんな人間臭い君が僕はいいな。その人間くさいところを君が不器用だと言うのなら、不器用だっていいじゃない。そっちのほうが僕は好きだよ。だから、約束する」
それに僕のノアの子供だよ?可愛いからきっと君の選ぶ王子も気に入ってくれると思うんだ。と屈託なく笑う。
「もしそうなったら、小さい時からお互いを思いやって慈しむことの大切さを教えて、お互いの国を行き来したり、いろいろな方法で交流させたいな。僕ね、それが本当に大切だって、心底思ったんだ。もし二人の反りが合わなかったら、それはその時考えればいいでしょう?だから、そうしたいな。婚姻式の日に、いや婚約式の日に同盟を組むとか、うん、なんだかいい未来だと思わない?楽しそうだね」
僕は、君が言う人間臭くて王子らしくない、君を応援したい。だからまだ見ぬ君の選んだ王子の後見をするよ。
僕をいっぱい助けてくれた君に、たまには恩返しさせてよ。まあ、勝手にしちゃうけど!
笑うアーロンがそう言っている気がして、マチアスは取り敢えずと言ったように小さく笑った。
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