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さまよう、からす
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ゆづかが十二になった。
十の春が終わる頃、忠吾は思案通りにゆづかの初めての相手になったが、これは忠吾が初めて人を抱き高揚感を覚えた夜だった。
拒絶したい心を裏切る散々教え込んだ上手に快楽を拾い上げる体の所為か、一番嫌いな相手に結局一番を渡す屈辱か、それともあの七の時の一件から芽生えた自我の所為か、ゆづかは声が嗄れるのも構わずにひたすら泣いて懇願をした。
強引に事を進めるのは相手が誰であれ忠吾の主義に反するから、ゆづかの幼い精神力が切れるのをじわじわと忠吾は快楽漬けにして待ってやった訳だったのだけれど、それがよりゆづかを追い込んだ事に忠吾は収穫だとほくそ笑んだものだ。
──────ここまで快楽で頭が切れてしまうと、ここまで乱れ愛らしく泣くのか。なんて哀れで愛らしいのだろうか。
それから幾度か店の男にゆづかを宛てがってみた。いや、忠吾の感覚とすればゆづかに店の男を宛てがってやっていたのだろうが、それは双方の感覚の違いだろう。
乱れ泣くゆづかを煙管と酒を片手に眺めるのは忠吾の一番の楽しみである事は変わりはない。
ないのだが、自分が抱く為に夜呼びつける事が増えた。しかしこれは忠吾の中では気まぐれとして処理されていた。
そうして二年もしていれば、ゆづかはすっかり男娼としての顔で抱かれる様になる。
しかし忠吾の見込んだ通りに忠吾が見ている時は、忠吾が相手の時は瞬間顔を歪め睨む様にするのだから、忠吾の充足感を忠吾が望む以上に満たしていたのだった。
十二の夏を、ゆづかは絶望と共に迎えた。
直前に言ってくれれば彼の気持ちが違ったのだろうが、わざわざまだ随分と先になる「初めての客を取る日」について今朝床の中で言われたのだ。
ゆづかはこの抱き主がとても酷い人間だと思っている。それが他の人間の言うそれと違う事をゆづかは知らない。もしかしたら、一生、知らないままかもしれない程にその感情は他の人間と違った。
ゆづかに取って女姿で女らしく、まるでそう、女として生きる事はもはや普通で、同じ様に男の相手をし受け入れ媚を売る事も──今はそのまねごとだったとしても──もう普通。今更それを本来の性別の方向へ変える事はゆづかに取って不可能であるし、そういう生き方がすでにもう分からない。そして同じ様に、他の人間がゆづかを本来の性別へ修正する事も不可能だろう。
人をそう育て上げた事実に対し忠吾の非道さに人は「なんて酷い男だ」と言った様な視線を向けるが、それよりもゆづかはこうして自分を絶望にたたき落とし、そして僅かに漏れた絶望という表情のそれを「愛らしいね」と当然の様に平然と褒める忠吾の方が酷いと思っていた。
ゆづかはもう、忠吾の道具として生涯暮らすのだと思った日から悲しいとも思うし辛いと思えど、他の人と同じ様な意味を持って忠吾を酷いとはなかなか思えなかった。
もしかしたらそう思う心を幼いゆづかの心が閉じ込めてしまったのかもしれないけれど、今のゆづかはそう思っている。
乱れた髪を手で押さえつけ顔に掛かるそれを後ろへと流す。
上半身だけを起こし、肩にかかっただけの寝衣をそっと手で持ちゆるゆると着る。そうしているとゆづかについた花車がゆづかを迎えにくるのだ。
自分の部屋ではない場所でこうなれば、いつも同じ様な時間に迎えにくる自分と同じ様に感情を余り見せない相手をゆづかは大人しく待つ。
忠吾が思った通りあの時顔を合わせた花車は、ゆづかに一切の同情をせずに教育をした。しかし彼女もゆづかから離れれば人と笑い表情を変えるのだから、ゆづかは結局の所一人に変わりがない。誰もゆづかと一緒に笑う事も泣く事もしてくれない。
だからこそ、あの五年前の言葉がゆづかの命を繋いでくれる。
障子の向こうからかかる無表情な声にゆづかは顔を向けて返事をした。
明日も明後日もその次も、今日と同じ様に、もしかしたらもっと酷い日々を暮らすのだろうとゆづかは思っている。
乱れた髪を部屋を出る前に簡単に直している花車の動かす櫛を感じながら、居心地の悪い空気と雰囲気しか無い部屋の中で、十二のゆづかはほぼ全てを投げているにも等しい。
先日、この店ではないが別の店の遊女が自害をしたとゆづかの耳に入った。
相対死なのか、一人なのか、理由は何なのか。ゆづかは何も知らなかったけれど少しだけ羨ましく感じた自分がいた事を知っている。
死んだ後の事なんてゆづかは考えた事が無い。しかしそれは自由という自分には一生縁の無い様な、そんな甘い世界の気がするのだ。
(顔も知らない、赤子の自分を躊躇いもなく売った両親の為に、どうして、こんな事をしているんだろう)
ゆづかはそう思う様になっていた。
ゆづかは年季奉公ではない。年季が明けたら花街をされるのではなく、いくらかも分からない借金の返済をしなければ自由が無い。
しかし、こんな自分が今更外へ出てもどうしようもないとゆづかは強く思っていた。それこそ身請けでもされて可愛いうちだけ主人に愛されている姿くらいしか思いつかないのだ。
いくら諦めていても、人が眉をひそめる事が普通になっても、ゆづかだって耳は有るし目も持っている。人の話を聞くし幸せな姿だって目にした。
そうすればこんな生活だ。
僅かにも無い幸せを少しは見てしまう。そして「私はもう、普通には生きていけないから」と諦めてはやるせなくなるのだ。
櫛の感触がなくなったのを知り、ゆづかは痛む体を起こす。合わせて立ち上がった花車から打掛を受け取りそれを羽織って自分の部屋へと歩き始める。
漏れた小さな溜息も、花車の表情一つ変える事が出来なかった。
一方、朝一番で届けられた包みを開いた忠吾は目を閉じたまま動かない。
しかし忠吾の主義は正しく言われた言葉に正しく返すだけであって、あの時だって──────船宿吉村にゆづかをつれて行った時だってそうだった。
あそこの女将が色々と上手いのは忠吾だって知っていたし、そういう人間の方が付き合う上で忠吾は楽で良いと思っている。
「あの子供には、特殊な事情でも……あるのですか?」
驚く話だが、ゆづかを子供と表現したのはお香が初めてだった。それに少しだけ気を良くした忠吾はゆづかの前で全てを話してやったのだ。
ゆづかとしては初めて聞く話──母親が遊女でありその母親に売られた。それだけだったけど──もあって驚きはしたが、顔色一つ変える事はしなかった。
ここで終わると思ったこの話はこれで終わらず、昨日の朝一番で吉村夫婦がゆづかの身請けを願い出たのだ。
いくら吉村とはいえど払えないだろう身請けの金額を誤魔化さず素直に言えば、今朝こうして番頭がきっちり届けに来た。
それを見て忠吾は解ったのだ。夫婦だけではなく、あの店全体でゆづかを受け入れるつもりなのだと。
忠吾は甘く見積もったな、と僅かな喪失感を己の何かに、別の何かに変換する。
思えば大物さえ安心し使う船宿だ。ゆづか一人くらいの金額を問題なく出せる事実は、冷静に考えれば判断出来る事だっただろうに。その計算違いは一体忠吾のどこからきたのだろうか。
「──────あぁ残念でならない」
コン、と灰吹きへ煙管を叩く忠吾は素直にそう思う。
ゆづかが初めての客に抱かれた後は一体どんな顔をするのだろうか、乱暴に扱われたらどんな風に次の日を迎えるのか、蕩ける程に甘やかされたらどんな顔をするのだろうか、──────心底惚れた相手が出来たらゆづかは一体どうするのだろうか。
それを忠吾は見てみたかったと思っている。
それでも不思議と忠吾は、こうなった今を後悔していなかった。
忠吾自身、ゆづかで充足感を味わい満たされる欲が有る事を知っている。だからこそ自分がゆづかを寵愛しているのだって解っていた。
忠吾の性格なら今こうして残念だとか、惜しいとか、そんな事よりも金子を回収出来た事に良かったと思うくらいであるはずだろう。
忠吾という男はそんな男であるはずなのに、どうしてか手放すのはそれなりに勿体無いと思う自分と、手放してやる事にどこか安心する自分がいるのだから、忠吾は不思議な気持ちになっていた。
それでも後悔をしないと言えるのだから、結局自分はそんな人間なんだろうなと改めて思うに止まるのだが──────、他の人間がこれを知ればまた違うことを忠吾に言うのだろう。けれどもそんな事を忠吾が言う人間はいないし、だからこそ聞く人間もいないのだから結局忠吾はそう思うだけである。
ふわり、と消える煙を横目に忠吾は外にいるだろう下男を呼びつける。
「ゆづかをここへ、直ぐにここへくるようにと伝えておくれ」
「へえ、旦那様」
短い返事を耳にいれ、コン、と灰を落とす。落とした瞬間自分の心が心底安心している事に気が付いて忠吾はガリ、と奥歯を噛み締めた。
「私があれを手放してやれる事に安堵するなんていうそんな感情、私が持ち合わせている訳、ないだろうが。全く、予想していないことが起きるから、私は馬鹿なことを考えただけに違いないよ」
誰に言う訳でもないその言葉を吐き捨てる様に言い、僅かな喪失感さえ灰に残った煙とともに吐き出して目の前の金子が額面通りである事を目だけで確認した。
確認し終えたその時眉が寄り皺が生まれたのは、全て、金色のそれが外の光を反射させ眉が寄ったのだと、そう、忠吾は思いながら。
十の春が終わる頃、忠吾は思案通りにゆづかの初めての相手になったが、これは忠吾が初めて人を抱き高揚感を覚えた夜だった。
拒絶したい心を裏切る散々教え込んだ上手に快楽を拾い上げる体の所為か、一番嫌いな相手に結局一番を渡す屈辱か、それともあの七の時の一件から芽生えた自我の所為か、ゆづかは声が嗄れるのも構わずにひたすら泣いて懇願をした。
強引に事を進めるのは相手が誰であれ忠吾の主義に反するから、ゆづかの幼い精神力が切れるのをじわじわと忠吾は快楽漬けにして待ってやった訳だったのだけれど、それがよりゆづかを追い込んだ事に忠吾は収穫だとほくそ笑んだものだ。
──────ここまで快楽で頭が切れてしまうと、ここまで乱れ愛らしく泣くのか。なんて哀れで愛らしいのだろうか。
それから幾度か店の男にゆづかを宛てがってみた。いや、忠吾の感覚とすればゆづかに店の男を宛てがってやっていたのだろうが、それは双方の感覚の違いだろう。
乱れ泣くゆづかを煙管と酒を片手に眺めるのは忠吾の一番の楽しみである事は変わりはない。
ないのだが、自分が抱く為に夜呼びつける事が増えた。しかしこれは忠吾の中では気まぐれとして処理されていた。
そうして二年もしていれば、ゆづかはすっかり男娼としての顔で抱かれる様になる。
しかし忠吾の見込んだ通りに忠吾が見ている時は、忠吾が相手の時は瞬間顔を歪め睨む様にするのだから、忠吾の充足感を忠吾が望む以上に満たしていたのだった。
十二の夏を、ゆづかは絶望と共に迎えた。
直前に言ってくれれば彼の気持ちが違ったのだろうが、わざわざまだ随分と先になる「初めての客を取る日」について今朝床の中で言われたのだ。
ゆづかはこの抱き主がとても酷い人間だと思っている。それが他の人間の言うそれと違う事をゆづかは知らない。もしかしたら、一生、知らないままかもしれない程にその感情は他の人間と違った。
ゆづかに取って女姿で女らしく、まるでそう、女として生きる事はもはや普通で、同じ様に男の相手をし受け入れ媚を売る事も──今はそのまねごとだったとしても──もう普通。今更それを本来の性別の方向へ変える事はゆづかに取って不可能であるし、そういう生き方がすでにもう分からない。そして同じ様に、他の人間がゆづかを本来の性別へ修正する事も不可能だろう。
人をそう育て上げた事実に対し忠吾の非道さに人は「なんて酷い男だ」と言った様な視線を向けるが、それよりもゆづかはこうして自分を絶望にたたき落とし、そして僅かに漏れた絶望という表情のそれを「愛らしいね」と当然の様に平然と褒める忠吾の方が酷いと思っていた。
ゆづかはもう、忠吾の道具として生涯暮らすのだと思った日から悲しいとも思うし辛いと思えど、他の人と同じ様な意味を持って忠吾を酷いとはなかなか思えなかった。
もしかしたらそう思う心を幼いゆづかの心が閉じ込めてしまったのかもしれないけれど、今のゆづかはそう思っている。
乱れた髪を手で押さえつけ顔に掛かるそれを後ろへと流す。
上半身だけを起こし、肩にかかっただけの寝衣をそっと手で持ちゆるゆると着る。そうしているとゆづかについた花車がゆづかを迎えにくるのだ。
自分の部屋ではない場所でこうなれば、いつも同じ様な時間に迎えにくる自分と同じ様に感情を余り見せない相手をゆづかは大人しく待つ。
忠吾が思った通りあの時顔を合わせた花車は、ゆづかに一切の同情をせずに教育をした。しかし彼女もゆづかから離れれば人と笑い表情を変えるのだから、ゆづかは結局の所一人に変わりがない。誰もゆづかと一緒に笑う事も泣く事もしてくれない。
だからこそ、あの五年前の言葉がゆづかの命を繋いでくれる。
障子の向こうからかかる無表情な声にゆづかは顔を向けて返事をした。
明日も明後日もその次も、今日と同じ様に、もしかしたらもっと酷い日々を暮らすのだろうとゆづかは思っている。
乱れた髪を部屋を出る前に簡単に直している花車の動かす櫛を感じながら、居心地の悪い空気と雰囲気しか無い部屋の中で、十二のゆづかはほぼ全てを投げているにも等しい。
先日、この店ではないが別の店の遊女が自害をしたとゆづかの耳に入った。
相対死なのか、一人なのか、理由は何なのか。ゆづかは何も知らなかったけれど少しだけ羨ましく感じた自分がいた事を知っている。
死んだ後の事なんてゆづかは考えた事が無い。しかしそれは自由という自分には一生縁の無い様な、そんな甘い世界の気がするのだ。
(顔も知らない、赤子の自分を躊躇いもなく売った両親の為に、どうして、こんな事をしているんだろう)
ゆづかはそう思う様になっていた。
ゆづかは年季奉公ではない。年季が明けたら花街をされるのではなく、いくらかも分からない借金の返済をしなければ自由が無い。
しかし、こんな自分が今更外へ出てもどうしようもないとゆづかは強く思っていた。それこそ身請けでもされて可愛いうちだけ主人に愛されている姿くらいしか思いつかないのだ。
いくら諦めていても、人が眉をひそめる事が普通になっても、ゆづかだって耳は有るし目も持っている。人の話を聞くし幸せな姿だって目にした。
そうすればこんな生活だ。
僅かにも無い幸せを少しは見てしまう。そして「私はもう、普通には生きていけないから」と諦めてはやるせなくなるのだ。
櫛の感触がなくなったのを知り、ゆづかは痛む体を起こす。合わせて立ち上がった花車から打掛を受け取りそれを羽織って自分の部屋へと歩き始める。
漏れた小さな溜息も、花車の表情一つ変える事が出来なかった。
一方、朝一番で届けられた包みを開いた忠吾は目を閉じたまま動かない。
しかし忠吾の主義は正しく言われた言葉に正しく返すだけであって、あの時だって──────船宿吉村にゆづかをつれて行った時だってそうだった。
あそこの女将が色々と上手いのは忠吾だって知っていたし、そういう人間の方が付き合う上で忠吾は楽で良いと思っている。
「あの子供には、特殊な事情でも……あるのですか?」
驚く話だが、ゆづかを子供と表現したのはお香が初めてだった。それに少しだけ気を良くした忠吾はゆづかの前で全てを話してやったのだ。
ゆづかとしては初めて聞く話──母親が遊女でありその母親に売られた。それだけだったけど──もあって驚きはしたが、顔色一つ変える事はしなかった。
ここで終わると思ったこの話はこれで終わらず、昨日の朝一番で吉村夫婦がゆづかの身請けを願い出たのだ。
いくら吉村とはいえど払えないだろう身請けの金額を誤魔化さず素直に言えば、今朝こうして番頭がきっちり届けに来た。
それを見て忠吾は解ったのだ。夫婦だけではなく、あの店全体でゆづかを受け入れるつもりなのだと。
忠吾は甘く見積もったな、と僅かな喪失感を己の何かに、別の何かに変換する。
思えば大物さえ安心し使う船宿だ。ゆづか一人くらいの金額を問題なく出せる事実は、冷静に考えれば判断出来る事だっただろうに。その計算違いは一体忠吾のどこからきたのだろうか。
「──────あぁ残念でならない」
コン、と灰吹きへ煙管を叩く忠吾は素直にそう思う。
ゆづかが初めての客に抱かれた後は一体どんな顔をするのだろうか、乱暴に扱われたらどんな風に次の日を迎えるのか、蕩ける程に甘やかされたらどんな顔をするのだろうか、──────心底惚れた相手が出来たらゆづかは一体どうするのだろうか。
それを忠吾は見てみたかったと思っている。
それでも不思議と忠吾は、こうなった今を後悔していなかった。
忠吾自身、ゆづかで充足感を味わい満たされる欲が有る事を知っている。だからこそ自分がゆづかを寵愛しているのだって解っていた。
忠吾の性格なら今こうして残念だとか、惜しいとか、そんな事よりも金子を回収出来た事に良かったと思うくらいであるはずだろう。
忠吾という男はそんな男であるはずなのに、どうしてか手放すのはそれなりに勿体無いと思う自分と、手放してやる事にどこか安心する自分がいるのだから、忠吾は不思議な気持ちになっていた。
それでも後悔をしないと言えるのだから、結局自分はそんな人間なんだろうなと改めて思うに止まるのだが──────、他の人間がこれを知ればまた違うことを忠吾に言うのだろう。けれどもそんな事を忠吾が言う人間はいないし、だからこそ聞く人間もいないのだから結局忠吾はそう思うだけである。
ふわり、と消える煙を横目に忠吾は外にいるだろう下男を呼びつける。
「ゆづかをここへ、直ぐにここへくるようにと伝えておくれ」
「へえ、旦那様」
短い返事を耳にいれ、コン、と灰を落とす。落とした瞬間自分の心が心底安心している事に気が付いて忠吾はガリ、と奥歯を噛み締めた。
「私があれを手放してやれる事に安堵するなんていうそんな感情、私が持ち合わせている訳、ないだろうが。全く、予想していないことが起きるから、私は馬鹿なことを考えただけに違いないよ」
誰に言う訳でもないその言葉を吐き捨てる様に言い、僅かな喪失感さえ灰に残った煙とともに吐き出して目の前の金子が額面通りである事を目だけで確認した。
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