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high school education
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日に日に、メールの内容がバカとアホになってきている事に龍二は大きく息を吐く。
「おい、中町」
「はい?」
「お前、このメール見てもまだ奏に学校行かせたほうがいいか?」
「は?」
手で招き寄せ、正面に来た祥之助に龍二は画面を見せた。
並んでいるのはひたすら文句。
女が絡んで面倒臭い。また屋上に呼ばれて嫉妬のオンパレード、女も男も嫉妬の文句が一緒とか発見したくなかった。バカアホ龍二さん。
言葉が違えどこんな内容が続くこと続くこと。
笑い出しそうになった祥之助は、しかし内容にはたと気がつき目の前の龍二をマジマジと見つめた。
「あん?なんだよ」
「いや、屋上にとか、廊下で喧嘩売られそうになったとか、奏さん何に目をつけられいるんだ……?」
「何って、“ありがちなオンナ”とそのオンナの“ありがちなオトコ”だと」
そこで区切って、はたと思い出して付け加える。
「奏曰く『凄まれても怖くないし、一発殴られてから帰るって帰ってるしで、向こうも困ってる風ではある』らしいぜ?ま、普通の新一年生は不良の先輩が恐ろしいはずだから、奏の反応に困ってるんだろうなぁ」
「……そりゃ、こんなクソみたいな環境で三年、異常な生活送れば、まあ、下手な事にならない限りそうかも知れな──────って殴られて帰るって、奏さんを殴ってるって……はあ。しかし“最近の普通の不良くん”は一発殴れば止めるようになったのか?」
「そういや、あいつ、どうやってその場を切り抜けてきてるんだろうなぁ」
「聞いとけよ」
呆れて背を向けた祥之助は、異常な三年間を過ごした奏にはもう普通の年相応な生活は難しいのだろうか、と顎を撫でた。
(おかしい。普通の年相応の高校生活をしていく上で、それらしい友人が出来て楽しい生活を送れるはずだったんだが──────なぜだ?なにが理由でこうなってしまったんだ)
少し先の未来だが、奏に“高校での年相応な生活”は無理でも奏に着く四人の護衛のおかげで、確かに奏は年相応な楽しい生活を送る時間も増える日が来る。きっと祥之助はその時、良かったと安堵するだろう。
しかし予知能力もない、そんな事は当然知らない祥之助はどうしたものかと息を吐いた。
「あー、もう!ほんとうにぼく、限界だから!」
放課後の教室にこだましたのは奏の叫び声。
「かなでちゃん、ストレスたまってるー?かわいい!」
「ストレスたまってかわいいなんて、変ですよ」
「ねえねえ、ストレスたまってるなら、遊びにいこーよ。いろんな遊び、知ってるよ?」
奏はゆっくり立ち上がる。
「いろんなって?どんな?」
首を傾げて聞いてみれば、ついに食いついたとマナとジュリも奏の席の周囲から適当に持って来ていた椅子から立ち上がった。
「えー、ここでいうのお?」
「それちょっと、何プレイー?」
「三人の時に話すからあ、いこ──────ってかなでちゃん、まってよお」
アホくさい会話に奏は呆れて足早に教室を出る。
階段を駆け下りて外に出て、嫌になって立ち止まったのがいけない。
結局追いつかれた。
「ね、いこ?」
可愛さをアピールする仕草。可愛くなんてなくて、嫌気がさす。
(あざと可愛いとかいうわけ?これ?ないない。あざといだけじゃん)
ちらりと二人の顔を見てそのまま奏はマンションとは違う方向に歩く。
二人が両隣を陣取り奏の手を取ろうするから、奏はピタリと立ち止まった。
「かなでちゃん?」
マナが呼びかけ、ジュリは覗き込む。
奏は足元に視線をやって暫く俯いていたが、息を吐き出すと同時に顔を上げた。
「センパイたち、どうしたいんですか?センパイたちが付きまとうと、屋上に呼び出されたり、文句を言われたりして大変なんです。顔とか目立つところを殴る勇気はないみたいですけど、痛いの嫌いなんです、ぼく。何度言っても、センパイたちってやめてくれませんけど、どうしたいんですか?」
二人は奏の手をそれぞれ取って、正面に回り込んでニコニコ笑う。
「かなでちゃんが遊んでくれたら、マナがまもったげる」
「ジュリも守ってあげるよ」
「どうやって?」
「えー、んー、わかんないけど、できるよ」
「んふふ、だってかなでくん好きだもん」
ね、ね、と急かす二人に奏は笑った。
「じゃぁ、センパイたち、ぼくとあそんでくるって、言ってください」
「──────え?」
「これからはぼくと遊ぶから、もう無理って、ついでにぼくに手を出さないでって、言ってください」
「え、と、えー、と、うん、いいよお」
「約束ですよ?」
「マナできるもん、ジュリも協力してくれるよね?」
「え、う、うん、できるよぉ」
「あとね、ぼくの持ち主にもちゃんと遊びたいから遊ばせてって言ってくれる?」
「持ち主ー?かなでくん、パパとママに、それひどー」
「マナだってそんなふーに言わないよー」
「言ってくれる?」
「ちょういい先輩で挨拶しちゃうー。ね、マナ!」
「お嫁さんにしたいって言われちゃうかもー?」
マナもジュリも「なら、遊びに行きましょ」と笑った奏が歩き出した後ろで顔を見合わせる。
そして奏に聞こえないように顔を少し寄せて会話を交わす。
「どーせ、ばれないもんね」
「うん、ばれないばれない」
「だって、いつもばれないもんね」
「ね」
そんな会話は聞こえていない奏だが、眉間にはくっきりとシワがよっている。
いい加減、もういい加減我慢の限界だ。
勘違いして纏わり付いてくるこの二人も、この二人のせいで殴られるのも、もう奏は嫌で仕方がない。龍二が学校に行けというから頑張って我慢したいけれど
(もう、やだ)
龍二の、今ではもう名ばかりになった妻に詰られるのも、自称愛人に文句を言われ叩かれるのも、奏は嫌いだし嫌だけれど我慢も出来る。だって彼女たちは“龍二の愛がもらえない可哀想な人”なのだ。奏が龍二の愛を、しかも彼女たちが本当は欲しかっただろう“龍二の本当の愛”を独り占めしている結果だ。
腹も立つしやり返しもするが、その代償だと思えば多少は溜飲もなんとやらだ。
しかしこれは違う。
スタスタとどんどん歩く奏と距離が開いている事に気がついて、少し後方を歩いていた二人は慌ててまた両隣を陣取る。
「かなでくん、どこいくの?ジュリとマナ、かなでくんの行きたいとこでいーよ」
「なら、賑やかで危険そうなところ」
「えー、ちょーアバウト!かなでちゃんっていがいにてきとう?かわいい」
「ってか危険そうって危ないじゃーん」
きゃっきゃと話している二人だが、奏が賑やかな通りをつっきり、駅の周辺にもかかわらず、不良少女からすれば“守ってくれる人”がいないと不安になる治安の悪い地域に進路を定めたと気がついた時、顔から余裕が消え、ジュリが慌てて奏の腕を掴んだ。
「か、かなでくん、こっちは危ないよ?」
この辺りは奏達が通う高校なんて目じゃない、不良の吹き溜まりみたいな高校に通うチームが大きな顔をしているところ。
「ちょ、かなでちゃん、帰ろ?もっと楽しいところ、行こうよ」
慌て始めた二人に奏は何も知らない顔で首をかしげる。
「なんで?ぼく、言ったもん。賑やかで、危険なとこがいいって」
「ちょ、待って待って。でもね、かなでちゃん知らないかもだけど──────ジュリ、電話して電話!」
「なんでセンパイ、電話するの?」
「こんな、とこから帰るとか、ないよ!三人でなんて、あり得ない」
「なんで?」
「かなでくん、マナとジュリ、守れる?」
「さあ」
悪気なく返事する奏に二人の顔が蒼ざめた。
ここのあたりに幅を効かせるチームはよそ者が嫌いだ。“ただの一般人”にはなにもしないけれど、チームに属しているとかそれに近い立場の人間が通る事だって許さない。そしてそれは実際にそうである。
見つかったら自分たちはどうなるのか、と慌てる二人はそれぞれ自分たちの都合のいい相手に電話をかけ出す。
奏が勝手に連れてきたのだのなんだのと騒ぎ立てていて、奏は涼しい顔でそれを聞いた。
汚い壁に背を預けてスマートフォンをいじる奏と、 その横で小さくなって座り込んだ二人の傍に、二人が泣きついた都合いい相手が現れたのは三十分ほど経った頃だ。
二人からすればもっと長く感じた事だろう。
マナの彼氏とジュリに片思い中の少年は、二人を立ち上がらせると奏をそれぞれが殴りつけた。
「てめぇ!マナを連れ回しやがって」
「痛いな」
「ジュリに何かあったらどうするんだよ!」
「遊んでって、しつこいから」
「はあ?マナとジュリにつきまとってるやろうが何言ってやがんだよ!」
ガツ、と奏の鳩尾に少年の膝が入る。
マナとジュリはビクッと肩を震わせ、けれど自分たちの言い分がまだ彼らに信じられてるのだと安堵した。
もし嘘がバレたら、殴られるのは自分たち。
そんな想像は怖くてしたくない。
様々な不安で肩を寄せ合っている二人の前で、奏はもう一発殴られコンクリートの地面に倒れこんだ。
「い、て、ほんと、もうや」
息を吐きながら溢れた声を、奏を見下ろす彼らは聞き逃さない。
「なら、人の彼女に手ェ出してるんじゃねぇよ」
「調子に乗って、自業自得なんだよ」
ニヤニヤ笑ったマナの彼氏が足を振り上げる。
サッカーボールを蹴る要領で振り下ろされる足。
狙いは奏の顎だ。
「おい、中町」
「はい?」
「お前、このメール見てもまだ奏に学校行かせたほうがいいか?」
「は?」
手で招き寄せ、正面に来た祥之助に龍二は画面を見せた。
並んでいるのはひたすら文句。
女が絡んで面倒臭い。また屋上に呼ばれて嫉妬のオンパレード、女も男も嫉妬の文句が一緒とか発見したくなかった。バカアホ龍二さん。
言葉が違えどこんな内容が続くこと続くこと。
笑い出しそうになった祥之助は、しかし内容にはたと気がつき目の前の龍二をマジマジと見つめた。
「あん?なんだよ」
「いや、屋上にとか、廊下で喧嘩売られそうになったとか、奏さん何に目をつけられいるんだ……?」
「何って、“ありがちなオンナ”とそのオンナの“ありがちなオトコ”だと」
そこで区切って、はたと思い出して付け加える。
「奏曰く『凄まれても怖くないし、一発殴られてから帰るって帰ってるしで、向こうも困ってる風ではある』らしいぜ?ま、普通の新一年生は不良の先輩が恐ろしいはずだから、奏の反応に困ってるんだろうなぁ」
「……そりゃ、こんなクソみたいな環境で三年、異常な生活送れば、まあ、下手な事にならない限りそうかも知れな──────って殴られて帰るって、奏さんを殴ってるって……はあ。しかし“最近の普通の不良くん”は一発殴れば止めるようになったのか?」
「そういや、あいつ、どうやってその場を切り抜けてきてるんだろうなぁ」
「聞いとけよ」
呆れて背を向けた祥之助は、異常な三年間を過ごした奏にはもう普通の年相応な生活は難しいのだろうか、と顎を撫でた。
(おかしい。普通の年相応の高校生活をしていく上で、それらしい友人が出来て楽しい生活を送れるはずだったんだが──────なぜだ?なにが理由でこうなってしまったんだ)
少し先の未来だが、奏に“高校での年相応な生活”は無理でも奏に着く四人の護衛のおかげで、確かに奏は年相応な楽しい生活を送る時間も増える日が来る。きっと祥之助はその時、良かったと安堵するだろう。
しかし予知能力もない、そんな事は当然知らない祥之助はどうしたものかと息を吐いた。
「あー、もう!ほんとうにぼく、限界だから!」
放課後の教室にこだましたのは奏の叫び声。
「かなでちゃん、ストレスたまってるー?かわいい!」
「ストレスたまってかわいいなんて、変ですよ」
「ねえねえ、ストレスたまってるなら、遊びにいこーよ。いろんな遊び、知ってるよ?」
奏はゆっくり立ち上がる。
「いろんなって?どんな?」
首を傾げて聞いてみれば、ついに食いついたとマナとジュリも奏の席の周囲から適当に持って来ていた椅子から立ち上がった。
「えー、ここでいうのお?」
「それちょっと、何プレイー?」
「三人の時に話すからあ、いこ──────ってかなでちゃん、まってよお」
アホくさい会話に奏は呆れて足早に教室を出る。
階段を駆け下りて外に出て、嫌になって立ち止まったのがいけない。
結局追いつかれた。
「ね、いこ?」
可愛さをアピールする仕草。可愛くなんてなくて、嫌気がさす。
(あざと可愛いとかいうわけ?これ?ないない。あざといだけじゃん)
ちらりと二人の顔を見てそのまま奏はマンションとは違う方向に歩く。
二人が両隣を陣取り奏の手を取ろうするから、奏はピタリと立ち止まった。
「かなでちゃん?」
マナが呼びかけ、ジュリは覗き込む。
奏は足元に視線をやって暫く俯いていたが、息を吐き出すと同時に顔を上げた。
「センパイたち、どうしたいんですか?センパイたちが付きまとうと、屋上に呼び出されたり、文句を言われたりして大変なんです。顔とか目立つところを殴る勇気はないみたいですけど、痛いの嫌いなんです、ぼく。何度言っても、センパイたちってやめてくれませんけど、どうしたいんですか?」
二人は奏の手をそれぞれ取って、正面に回り込んでニコニコ笑う。
「かなでちゃんが遊んでくれたら、マナがまもったげる」
「ジュリも守ってあげるよ」
「どうやって?」
「えー、んー、わかんないけど、できるよ」
「んふふ、だってかなでくん好きだもん」
ね、ね、と急かす二人に奏は笑った。
「じゃぁ、センパイたち、ぼくとあそんでくるって、言ってください」
「──────え?」
「これからはぼくと遊ぶから、もう無理って、ついでにぼくに手を出さないでって、言ってください」
「え、と、えー、と、うん、いいよお」
「約束ですよ?」
「マナできるもん、ジュリも協力してくれるよね?」
「え、う、うん、できるよぉ」
「あとね、ぼくの持ち主にもちゃんと遊びたいから遊ばせてって言ってくれる?」
「持ち主ー?かなでくん、パパとママに、それひどー」
「マナだってそんなふーに言わないよー」
「言ってくれる?」
「ちょういい先輩で挨拶しちゃうー。ね、マナ!」
「お嫁さんにしたいって言われちゃうかもー?」
マナもジュリも「なら、遊びに行きましょ」と笑った奏が歩き出した後ろで顔を見合わせる。
そして奏に聞こえないように顔を少し寄せて会話を交わす。
「どーせ、ばれないもんね」
「うん、ばれないばれない」
「だって、いつもばれないもんね」
「ね」
そんな会話は聞こえていない奏だが、眉間にはくっきりとシワがよっている。
いい加減、もういい加減我慢の限界だ。
勘違いして纏わり付いてくるこの二人も、この二人のせいで殴られるのも、もう奏は嫌で仕方がない。龍二が学校に行けというから頑張って我慢したいけれど
(もう、やだ)
龍二の、今ではもう名ばかりになった妻に詰られるのも、自称愛人に文句を言われ叩かれるのも、奏は嫌いだし嫌だけれど我慢も出来る。だって彼女たちは“龍二の愛がもらえない可哀想な人”なのだ。奏が龍二の愛を、しかも彼女たちが本当は欲しかっただろう“龍二の本当の愛”を独り占めしている結果だ。
腹も立つしやり返しもするが、その代償だと思えば多少は溜飲もなんとやらだ。
しかしこれは違う。
スタスタとどんどん歩く奏と距離が開いている事に気がついて、少し後方を歩いていた二人は慌ててまた両隣を陣取る。
「かなでくん、どこいくの?ジュリとマナ、かなでくんの行きたいとこでいーよ」
「なら、賑やかで危険そうなところ」
「えー、ちょーアバウト!かなでちゃんっていがいにてきとう?かわいい」
「ってか危険そうって危ないじゃーん」
きゃっきゃと話している二人だが、奏が賑やかな通りをつっきり、駅の周辺にもかかわらず、不良少女からすれば“守ってくれる人”がいないと不安になる治安の悪い地域に進路を定めたと気がついた時、顔から余裕が消え、ジュリが慌てて奏の腕を掴んだ。
「か、かなでくん、こっちは危ないよ?」
この辺りは奏達が通う高校なんて目じゃない、不良の吹き溜まりみたいな高校に通うチームが大きな顔をしているところ。
「ちょ、かなでちゃん、帰ろ?もっと楽しいところ、行こうよ」
慌て始めた二人に奏は何も知らない顔で首をかしげる。
「なんで?ぼく、言ったもん。賑やかで、危険なとこがいいって」
「ちょ、待って待って。でもね、かなでちゃん知らないかもだけど──────ジュリ、電話して電話!」
「なんでセンパイ、電話するの?」
「こんな、とこから帰るとか、ないよ!三人でなんて、あり得ない」
「なんで?」
「かなでくん、マナとジュリ、守れる?」
「さあ」
悪気なく返事する奏に二人の顔が蒼ざめた。
ここのあたりに幅を効かせるチームはよそ者が嫌いだ。“ただの一般人”にはなにもしないけれど、チームに属しているとかそれに近い立場の人間が通る事だって許さない。そしてそれは実際にそうである。
見つかったら自分たちはどうなるのか、と慌てる二人はそれぞれ自分たちの都合のいい相手に電話をかけ出す。
奏が勝手に連れてきたのだのなんだのと騒ぎ立てていて、奏は涼しい顔でそれを聞いた。
汚い壁に背を預けてスマートフォンをいじる奏と、 その横で小さくなって座り込んだ二人の傍に、二人が泣きついた都合いい相手が現れたのは三十分ほど経った頃だ。
二人からすればもっと長く感じた事だろう。
マナの彼氏とジュリに片思い中の少年は、二人を立ち上がらせると奏をそれぞれが殴りつけた。
「てめぇ!マナを連れ回しやがって」
「痛いな」
「ジュリに何かあったらどうするんだよ!」
「遊んでって、しつこいから」
「はあ?マナとジュリにつきまとってるやろうが何言ってやがんだよ!」
ガツ、と奏の鳩尾に少年の膝が入る。
マナとジュリはビクッと肩を震わせ、けれど自分たちの言い分がまだ彼らに信じられてるのだと安堵した。
もし嘘がバレたら、殴られるのは自分たち。
そんな想像は怖くてしたくない。
様々な不安で肩を寄せ合っている二人の前で、奏はもう一発殴られコンクリートの地面に倒れこんだ。
「い、て、ほんと、もうや」
息を吐きながら溢れた声を、奏を見下ろす彼らは聞き逃さない。
「なら、人の彼女に手ェ出してるんじゃねぇよ」
「調子に乗って、自業自得なんだよ」
ニヤニヤ笑ったマナの彼氏が足を振り上げる。
サッカーボールを蹴る要領で振り下ろされる足。
狙いは奏の顎だ。
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