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第2章
03
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ヴェヒテはまず教会の協力を得て、中央の教会が行なっていた『加護なしビジネス』についてと『加護なしの真実』、そして『精霊王の愛し子』について領地で説明をした。
その際中央の教会とはいえ教会が行なっていた『加護なしビジネス』という私服の肥やし方を彼ら──────この領地で領民と共に戦う教会で神に仕える彼らに説明させるのだけはやめようと思ったのだが、司祭は教会の人間であるからこそ自分たちに説明させてほしいと言い、教会がこれら三件の周知を行ってくれた。
幸い、この領地内ではヴァールストレーム辺境伯爵と教会が協力し領地を豊かにしていること、そして中央の教会を知る領民や話を聞いたことがある彼らは『中央の教会』と『辺境の教会』を一切同一視していなかったため辺境の教会に対する不満はなく、「すべての教会がここと同じだったらよかったのにな」と彼らは口々に言っていたそうだ。
もっと明け透けに「中央は王も教会も腐ってるなあ」と言ったものもいるくらいだ。
次にヴェヒテがしたのは、これら三件を領民がしっかり理解したところで、城の人間にハイルのことを明かした。
彼らには、ハイルの生い立ちも含め彼が愛し子であること、そしてハイルが望むのは『ヴァールストレーム辺境伯爵領地でいつものように幸せに暮らしたい』だけであったことも、しっかりと伝える。
これを聞いた彼ら城の使用人や兵士に騎士たち、そして司祭から全てを聞いた教会のものたちにも手伝ってもらい、合わせて領民へ広げる役目を担ってもらった。
その際『どうして一人で王都からの軍に会いに行ったのか』をお節介な人間が説明した様で、ハイルが愛し子であることよりも、そんな恐ろしいことをするほどここを愛してくれていたのかと思う気持ちが膨らみ、早くハイルが帰ってくる様にと領地の教会に祈りを捧げる領民が増えた。
ヴァールストレーム辺境伯爵領は昔から戦の舞台となり、歴代ヴァールストレーム辺境伯爵がここに暮らしここを守る領民をとにかく大切にして治めてきた土地だ。
戦がなくなった今もそれは変わらず、歴代ヴァールストレーム辺境伯爵はいかにここを住みよく、幸せに暮らせる様になるかを考え街が発展する様に勤めている。
だからここに暮らす人間はこの領地を愛している。そうではければ多くの領民が、男女関係なく、武器を手に持ち命をかけここを守るためにと戦う術を学ぶなんてしない。
彼らはここを愛し大切にし領主を敬愛するからこそ、自ら戦いに出ようというのだ。今だって、平和になった今も、男女関係なく武器を手に持ち戦う術を学ぶのは全て、その思いが強いから。彼らは自主的にこれをするのだ。
そんな気質の領民がハイルが一人で会いに行った理由が「ここを愛しているから」と知れば心打たれる。
「彼を守るために戦うべきだった」と教会で泣いて懺悔するものも少なくない。
城の敷地内の神殿には今までより多くの花が捧げられ、もう秋になるというのにどこかから見つけた花が置かれていた。
中には「精霊王さまの導きで、ユスティさまとハイルさまが無事に帰って来られます様に」と膝をつき願い、半日も祈るものもいる。
教会にも同じような領民が多く詰めかけた。
ヴェヒテは無事だった領地を治める領主へ、光の柱についての聞かされた範囲で理解したことを含め認めた書を持たせ自領の民へ知らせる様に、と使いを出した。
その際、領民へ伝えた『加護なしビジネス』についてと『加護なしの真実』、そして『精霊王の愛し子』についても詳細を書いたものも渡す様にしてあるので、きっと各領地で意識改革が起こるだろう。
ハイルの存在はゆるやかに外に向けて知られればいいだろうと、ヴェヒテはそこは何も言わなかった。
ここの領民には説明しろとシュピーラドに言われたが、他の領地に対しては何も言われていない。そこの辺りは是非シュピーラドが適当に上手にお告げでも使ってやってくれた方がヴァールストレーム辺境伯爵領地以外では有効だろうと、ヴェヒテはそう思ったのである。
王家件とハイルの生家であるエングブロム公爵家のした罪は、ハイルやユスティが戻ってきてから発表方法を考えればいいかとヴェヒテは領地のことに集中した。
正直王族として王家のなしたこと、それにつながるエングブロム公爵家のことを今すぐに説明すべきかと思う気持ちがあるが、王家を離れた人間がそこまで突っ込んでいいものかと悩んでいるのだ。
(いっそ精霊王にこれも頼めばいい。そうだ、そうしよう。お告げとして全部言ってくれればそれでいいじゃないか……そうしよう。何でもかんでも俺を使うのだ。俺だって使わせてもらおうじゃないか)
決めたら悩みが減って気持ちが楽になり、仕事が捗る。
他の領地からの応援要請を読みながら、ヴェヒテは小さく笑みを浮かべた。
決裁を済ませ全てをニコライとグスタフに預け、彼らにそれぞれの部署へ運ぶ様に指示を出した頃には、太陽がオレンジ色の光を纏い沈もうとしている頃である。
紫からオレンジへ、絶妙なグラデーションは美しい。
執務室の窓から見るその色と、その向こうの景色がヴェヒテは好きだった。
彼の養父もよくこの景色を眺めていた。聞かなかったけれど、自分と同じ様に今日も平和であったことに感謝していたのではないだろうかとヴェヒテは思う様になっている。
「さて、夕食の時間まで、本でも……」
珍しくそんな時間が生まれた。
これまでは何かと話し合いをしたドンはもうここにいない。
ふとした拍子にヴェヒテの心に寂しい気持ちがよぎる。
秋になる前に、ドンは息子の待つ領地へ戻っていった。
ガルムステット侯爵領での説明は関係者として全てを見聞きした、ドンに任せたのだ。
シュピーラドからの命を聞くと、自分が一番適任だとすぐにガルムステット侯爵領へと向かった。
妻のカルロッテはヘレナを案じて残っている。
「何を心配なさいますか。わたくしは辺境伯の妻ですよ」と気丈に振る舞う彼女だが、ユスティとハイルの身を案じ眠れないことも多い。常に寄り添っている事が出来ないヴェヒテは、カルロッテの厚意ををありがたく頂戴している。
今日は夕食の時間まで二人で敷地の神殿へ祈りを捧げると言っていた。
本当は迎えに行きたいところだけれど、母娘二人きりがいいと言われてしまっているから大人しく、今日は読書と決め棚から読みかけの本を探す。
そうでもしなければ、妻を迎えに行ってしまいそうだからだ。
「ふむ……これでいいか」
目的の本に手をかけたヴェヒテを、大声で呼ぶ声が廊下から聞こえてきた。その声にヴェヒテは本を床に落としてしまう。
その声の持ち主が従者や使用人、特にグスタフであればまだ驚かなかったかも知れない。けれど今、叫んでこちらへ向かってくるのは、彼の妻。
淑女と言われその所作に心奪われた男も多い、あのヘレナだ。
ヘレナはノックも声をかけることもせず大きな音を立て執務室の扉を開けると、彼女らしからぬ大声で言った。
その際中央の教会とはいえ教会が行なっていた『加護なしビジネス』という私服の肥やし方を彼ら──────この領地で領民と共に戦う教会で神に仕える彼らに説明させるのだけはやめようと思ったのだが、司祭は教会の人間であるからこそ自分たちに説明させてほしいと言い、教会がこれら三件の周知を行ってくれた。
幸い、この領地内ではヴァールストレーム辺境伯爵と教会が協力し領地を豊かにしていること、そして中央の教会を知る領民や話を聞いたことがある彼らは『中央の教会』と『辺境の教会』を一切同一視していなかったため辺境の教会に対する不満はなく、「すべての教会がここと同じだったらよかったのにな」と彼らは口々に言っていたそうだ。
もっと明け透けに「中央は王も教会も腐ってるなあ」と言ったものもいるくらいだ。
次にヴェヒテがしたのは、これら三件を領民がしっかり理解したところで、城の人間にハイルのことを明かした。
彼らには、ハイルの生い立ちも含め彼が愛し子であること、そしてハイルが望むのは『ヴァールストレーム辺境伯爵領地でいつものように幸せに暮らしたい』だけであったことも、しっかりと伝える。
これを聞いた彼ら城の使用人や兵士に騎士たち、そして司祭から全てを聞いた教会のものたちにも手伝ってもらい、合わせて領民へ広げる役目を担ってもらった。
その際『どうして一人で王都からの軍に会いに行ったのか』をお節介な人間が説明した様で、ハイルが愛し子であることよりも、そんな恐ろしいことをするほどここを愛してくれていたのかと思う気持ちが膨らみ、早くハイルが帰ってくる様にと領地の教会に祈りを捧げる領民が増えた。
ヴァールストレーム辺境伯爵領は昔から戦の舞台となり、歴代ヴァールストレーム辺境伯爵がここに暮らしここを守る領民をとにかく大切にして治めてきた土地だ。
戦がなくなった今もそれは変わらず、歴代ヴァールストレーム辺境伯爵はいかにここを住みよく、幸せに暮らせる様になるかを考え街が発展する様に勤めている。
だからここに暮らす人間はこの領地を愛している。そうではければ多くの領民が、男女関係なく、武器を手に持ち命をかけここを守るためにと戦う術を学ぶなんてしない。
彼らはここを愛し大切にし領主を敬愛するからこそ、自ら戦いに出ようというのだ。今だって、平和になった今も、男女関係なく武器を手に持ち戦う術を学ぶのは全て、その思いが強いから。彼らは自主的にこれをするのだ。
そんな気質の領民がハイルが一人で会いに行った理由が「ここを愛しているから」と知れば心打たれる。
「彼を守るために戦うべきだった」と教会で泣いて懺悔するものも少なくない。
城の敷地内の神殿には今までより多くの花が捧げられ、もう秋になるというのにどこかから見つけた花が置かれていた。
中には「精霊王さまの導きで、ユスティさまとハイルさまが無事に帰って来られます様に」と膝をつき願い、半日も祈るものもいる。
教会にも同じような領民が多く詰めかけた。
ヴェヒテは無事だった領地を治める領主へ、光の柱についての聞かされた範囲で理解したことを含め認めた書を持たせ自領の民へ知らせる様に、と使いを出した。
その際、領民へ伝えた『加護なしビジネス』についてと『加護なしの真実』、そして『精霊王の愛し子』についても詳細を書いたものも渡す様にしてあるので、きっと各領地で意識改革が起こるだろう。
ハイルの存在はゆるやかに外に向けて知られればいいだろうと、ヴェヒテはそこは何も言わなかった。
ここの領民には説明しろとシュピーラドに言われたが、他の領地に対しては何も言われていない。そこの辺りは是非シュピーラドが適当に上手にお告げでも使ってやってくれた方がヴァールストレーム辺境伯爵領地以外では有効だろうと、ヴェヒテはそう思ったのである。
王家件とハイルの生家であるエングブロム公爵家のした罪は、ハイルやユスティが戻ってきてから発表方法を考えればいいかとヴェヒテは領地のことに集中した。
正直王族として王家のなしたこと、それにつながるエングブロム公爵家のことを今すぐに説明すべきかと思う気持ちがあるが、王家を離れた人間がそこまで突っ込んでいいものかと悩んでいるのだ。
(いっそ精霊王にこれも頼めばいい。そうだ、そうしよう。お告げとして全部言ってくれればそれでいいじゃないか……そうしよう。何でもかんでも俺を使うのだ。俺だって使わせてもらおうじゃないか)
決めたら悩みが減って気持ちが楽になり、仕事が捗る。
他の領地からの応援要請を読みながら、ヴェヒテは小さく笑みを浮かべた。
決裁を済ませ全てをニコライとグスタフに預け、彼らにそれぞれの部署へ運ぶ様に指示を出した頃には、太陽がオレンジ色の光を纏い沈もうとしている頃である。
紫からオレンジへ、絶妙なグラデーションは美しい。
執務室の窓から見るその色と、その向こうの景色がヴェヒテは好きだった。
彼の養父もよくこの景色を眺めていた。聞かなかったけれど、自分と同じ様に今日も平和であったことに感謝していたのではないだろうかとヴェヒテは思う様になっている。
「さて、夕食の時間まで、本でも……」
珍しくそんな時間が生まれた。
これまでは何かと話し合いをしたドンはもうここにいない。
ふとした拍子にヴェヒテの心に寂しい気持ちがよぎる。
秋になる前に、ドンは息子の待つ領地へ戻っていった。
ガルムステット侯爵領での説明は関係者として全てを見聞きした、ドンに任せたのだ。
シュピーラドからの命を聞くと、自分が一番適任だとすぐにガルムステット侯爵領へと向かった。
妻のカルロッテはヘレナを案じて残っている。
「何を心配なさいますか。わたくしは辺境伯の妻ですよ」と気丈に振る舞う彼女だが、ユスティとハイルの身を案じ眠れないことも多い。常に寄り添っている事が出来ないヴェヒテは、カルロッテの厚意ををありがたく頂戴している。
今日は夕食の時間まで二人で敷地の神殿へ祈りを捧げると言っていた。
本当は迎えに行きたいところだけれど、母娘二人きりがいいと言われてしまっているから大人しく、今日は読書と決め棚から読みかけの本を探す。
そうでもしなければ、妻を迎えに行ってしまいそうだからだ。
「ふむ……これでいいか」
目的の本に手をかけたヴェヒテを、大声で呼ぶ声が廊下から聞こえてきた。その声にヴェヒテは本を床に落としてしまう。
その声の持ち主が従者や使用人、特にグスタフであればまだ驚かなかったかも知れない。けれど今、叫んでこちらへ向かってくるのは、彼の妻。
淑女と言われその所作に心奪われた男も多い、あのヘレナだ。
ヘレナはノックも声をかけることもせず大きな音を立て執務室の扉を開けると、彼女らしからぬ大声で言った。
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こちらの作品と同一世界の話一覧。
■ トリベール国
『セーリオ様の祝福』
『セーリオ様の祝福:カムヴィ様の言う通り』(「セーリオ様の祝福」のIFのお話)
『bounty』
■ ハミギャ国
『運命なんて要らない』
■ ピエニ国
『シュピーラドの恋情』
どの作品も独立しています。また、作品によって時代が異なる場合があります。
仮に他の作品のキャラが出張しても、元の作品がわからなくても問題がないように書いています。
■ トリベール国
『セーリオ様の祝福』
『セーリオ様の祝福:カムヴィ様の言う通り』(「セーリオ様の祝福」のIFのお話)
『bounty』
■ ハミギャ国
『運命なんて要らない』
■ ピエニ国
『シュピーラドの恋情』
どの作品も独立しています。また、作品によって時代が異なる場合があります。
仮に他の作品のキャラが出張しても、元の作品がわからなくても問題がないように書いています。
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