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#スイーツ男子のお悩み事は甘くてほろ苦いティラミスの味
ティラミス 5食目
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「こんな時間になってもうたな」
夜9時、朝カフェで摂取した勉強用のブドウ糖はとうに切れている。三人で苦手な教科を教え合いながら時々どうでもいい雑談もしてるうちに閉校時間になっていた。
「あー!滝川、ちょっと!」
『はっ、、はい!』
小学生の頃から先生に名前を呼ばれると何も悪い事してないのに背筋がピンッとして口吃ってしまうのは無意識だ。自習ルームを出たところで白髪混じりで恰幅のいい担任に呼び止められる。
「滝川は面談まだだったよな?」
『はい、、まだです』
「来週木曜日、授業後やるから改めて志望校考えとけよ。それじゃ気をつけて帰れ」
そう言ってスタスタと大きな体を揺らして講師室に入って行った。背後からズシっと体重をかけて肩を組んできた明希が顔を近づけ意地悪く企んだ表情を見せる。
「……ん?、、何?」
「そっかー、暖は面談まだやったんやな。あのセンコーの言うことは容赦ないからな。泣かされんように気ぃつけえや」
『もう脅すの辞めてよ!あぁ嫌だな……なんか現実見たくない』
「分かる!けどその為に時間とお金使って来てる訳だしねー。私浪人は今年一年だけって親に言われてるから絶対合格しないとなんだよね」
「俺もやで。次あかんかったら大阪帰って来い言われてるわ」
何だか二人とも本気で受験に向き合ってるのに自分だけ他人事みたい。進学は自分の意思で決めたのにもう先の事が分からなくなってきた。
「じゃあねーまた月曜日」
明希といつみは同じ方向の電車に乗って僕一人、反対方向のホームで電車を待つ。数分後にやってきた電車の中は金曜日の仕事帰りの会社員で混み合っていて、隙間を割ってドア付近に立つ。
「面談、、志望校か……」
今ここいる人達は夢があってやりたい仕事をして満足した日常を送っているのだろうか。電車がホームに入って降車する人達を目で追いながら、そんな答えのない事を考えていた。
19歳はまた大人と呼ぶには幼くて、子どもと呼ぶには成長し過ぎている。
"やりたい事ってどうしたら見つかる?"
帰宅すると電気が消えたキッチンで冷えた水をグイッと飲んだ。食卓にはお皿にラップがかかって置かれていた。夜10時半、帰宅が遅い時は一人でレンジで温めて適当なテレビを見ながら黙々と食べる。
ニャーと愛猫が足元に擦り寄ってきて、ふわふわの毛を撫でると気持ち良そうに目を細める。
『お前はいいよな~将来への不安なんてなくてさ。ねぇ僕と代わってくれない?』
するとその言葉を理解したかのように態度を変えてそっぽ向いて行ってしまった。愛猫にまで"現実を見ろ"と言われたようだった。
さすがに朝5時起きで夜まで勉強すればヘトヘトの身体。いつもは余裕で起きてる夜11時だけど今日はすでに眠い。部屋に入るなりベッドに倒れ込んだ。あれ?でも何か大事な事を忘れてるような、、、。
『あっ!投稿しないと』
身体を起こして重い瞼に逆らいながらレビューノートを開いてカフェの風景や香りをSNSに再現させる。レビューを書く際のモットーがある、それは読む人にその場にいる感覚になり擬似体験出来るような投稿にしている。写真や文章から甘~い味を感じて満たされて欲しい。
だからもちろん顔出しなんてしない。きっと顔出しなんてしたら誰も見てくれなくなるだろう。地味でダサい浪人生男子が書いてるスイーツレビューなんて誰か見たいと思う?
誰にも言っていないこのアカウントを唯一知ってるのは明希だけ。始めた頃は誰かに知られたい気持ちもあったが考えてみれば知らせる友達もいなかった。
『うん、、こんな感じでいいかなー…』
"送信"のボタンを押すと大きなあくびと同時にウトウトと身体を揺らせ、そのままベットにパタンとうつ伏せで眠ってしまった。
スマホの画面は開きっぱなしのSNS。通知が来る度に画面が明るくなり顔が照らされる。あまりに深く寝入ってしまって眩しく感じる事もなかったがこの時の通知の数は今まで見た事もない数字になっていた。
夜9時、朝カフェで摂取した勉強用のブドウ糖はとうに切れている。三人で苦手な教科を教え合いながら時々どうでもいい雑談もしてるうちに閉校時間になっていた。
「あー!滝川、ちょっと!」
『はっ、、はい!』
小学生の頃から先生に名前を呼ばれると何も悪い事してないのに背筋がピンッとして口吃ってしまうのは無意識だ。自習ルームを出たところで白髪混じりで恰幅のいい担任に呼び止められる。
「滝川は面談まだだったよな?」
『はい、、まだです』
「来週木曜日、授業後やるから改めて志望校考えとけよ。それじゃ気をつけて帰れ」
そう言ってスタスタと大きな体を揺らして講師室に入って行った。背後からズシっと体重をかけて肩を組んできた明希が顔を近づけ意地悪く企んだ表情を見せる。
「……ん?、、何?」
「そっかー、暖は面談まだやったんやな。あのセンコーの言うことは容赦ないからな。泣かされんように気ぃつけえや」
『もう脅すの辞めてよ!あぁ嫌だな……なんか現実見たくない』
「分かる!けどその為に時間とお金使って来てる訳だしねー。私浪人は今年一年だけって親に言われてるから絶対合格しないとなんだよね」
「俺もやで。次あかんかったら大阪帰って来い言われてるわ」
何だか二人とも本気で受験に向き合ってるのに自分だけ他人事みたい。進学は自分の意思で決めたのにもう先の事が分からなくなってきた。
「じゃあねーまた月曜日」
明希といつみは同じ方向の電車に乗って僕一人、反対方向のホームで電車を待つ。数分後にやってきた電車の中は金曜日の仕事帰りの会社員で混み合っていて、隙間を割ってドア付近に立つ。
「面談、、志望校か……」
今ここいる人達は夢があってやりたい仕事をして満足した日常を送っているのだろうか。電車がホームに入って降車する人達を目で追いながら、そんな答えのない事を考えていた。
19歳はまた大人と呼ぶには幼くて、子どもと呼ぶには成長し過ぎている。
"やりたい事ってどうしたら見つかる?"
帰宅すると電気が消えたキッチンで冷えた水をグイッと飲んだ。食卓にはお皿にラップがかかって置かれていた。夜10時半、帰宅が遅い時は一人でレンジで温めて適当なテレビを見ながら黙々と食べる。
ニャーと愛猫が足元に擦り寄ってきて、ふわふわの毛を撫でると気持ち良そうに目を細める。
『お前はいいよな~将来への不安なんてなくてさ。ねぇ僕と代わってくれない?』
するとその言葉を理解したかのように態度を変えてそっぽ向いて行ってしまった。愛猫にまで"現実を見ろ"と言われたようだった。
さすがに朝5時起きで夜まで勉強すればヘトヘトの身体。いつもは余裕で起きてる夜11時だけど今日はすでに眠い。部屋に入るなりベッドに倒れ込んだ。あれ?でも何か大事な事を忘れてるような、、、。
『あっ!投稿しないと』
身体を起こして重い瞼に逆らいながらレビューノートを開いてカフェの風景や香りをSNSに再現させる。レビューを書く際のモットーがある、それは読む人にその場にいる感覚になり擬似体験出来るような投稿にしている。写真や文章から甘~い味を感じて満たされて欲しい。
だからもちろん顔出しなんてしない。きっと顔出しなんてしたら誰も見てくれなくなるだろう。地味でダサい浪人生男子が書いてるスイーツレビューなんて誰か見たいと思う?
誰にも言っていないこのアカウントを唯一知ってるのは明希だけ。始めた頃は誰かに知られたい気持ちもあったが考えてみれば知らせる友達もいなかった。
『うん、、こんな感じでいいかなー…』
"送信"のボタンを押すと大きなあくびと同時にウトウトと身体を揺らせ、そのままベットにパタンとうつ伏せで眠ってしまった。
スマホの画面は開きっぱなしのSNS。通知が来る度に画面が明るくなり顔が照らされる。あまりに深く寝入ってしまって眩しく感じる事もなかったがこの時の通知の数は今まで見た事もない数字になっていた。
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