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𝐷𝐴𝑌 𝟞 ⇨ 𝐷𝐴𝑌 𝟙𝟘 𝑆𝑈𝑁
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温度計は29度を表示した海開きの儀式が終わったばかりの須野海岸。
時間が経つにつれ海水浴客が賑わいをみせ白い砂浜は、パラソルやレジャーシートでカラフルに染まり始めた。
海岸中央にあるメインの監視塔には救助器材、機材応急手当器材等の必要な器材がセットアップされ、4メートル上から双眼鏡で遊泳区域を見ているキャプテンの東の姿があった。
小さな屋根が意味もなさないくらい日光が照り付け、海開き初日から透明度の高い海水で人気のこの須野を歓迎するかの様にキラキラした海。
「おわっっと、、!」
突然ぐらっと揺れた監視塔にバランスを崩し双眼鏡を下ろした。塔の足元に視線を向けた東は揺れの原因がわかると呆れ顔で、再び双眼鏡で視線を海に戻した。
「ダメだね~これぐらいでぐらついてるなんて体幹がなってない!トレーニングをサボってんじゃん?キャプテン失格!!」
「つばさ、お前こそ何が朝イチで帰るだって?今何時か分かってるのか?」
腰に手を当てて上を見上げる同じ黄色のユニフォームを着ている男と東はタメ口で会話し親密さが伺える。
「んー、8時くらい」
「昼前だ」
「いやさぁ予定通り朝イチに出たんだけどさぁ、道路混んでて時間かかったんだよ」
「ホントかよ。どうせ寝坊したんだろっ」
「あのさっ、これだけは言う。早起きは波乗りの基本中の基本!俺の得意分野!」
「はいはい。いいから監視交代だ」
監視塔からサングラスをかけて降りてきた東は肩にポンっと手を置いて立ち去ろうとする。
「ちょっと待って、結果聞かないの?」
「何だよ、内心悔しいだろうからあえて言わないでやったのに」
「そういう気遣いする間柄じゃないっしょ」
「準優勝おめでとう。じゃ、しっかり働け!」
東が監視本部に戻ると見た目小学校低学年の小さな女の子がぐすんっとすすり泣きながらちょこんと座っていた。
「どうした?」
「はい。お孫さんと来ていた70代の女性が気分が悪いと。体温が高く、立ちくらみの症状が出ていたので状況から見て熱中症の疑いです」
かろうじて意識はあるものの、会話や受け答えは出来ず朦朧としている。医者ではないため安易な診断はできず救急車を呼び委ねることにした。
「大丈夫だよ。おばあちゃんすぐよくなるからね!それまで一緒にここにいようね。あとお家の電話番号分かるかな?」
女子ライフセーバーは女の子の目を見て優しく問いかけ手を握ると涙を拭いて泣き止んだ。鞄の中からスマホを出して"おかあさん"と表示された画面にして差し出した。
「、、これ。おかあさんの電話」
「ありがと。じゃぁ姉ちゃんがお母さんにばあちゃんのことをお話するね」
救急車到着までの間テキパキとマニュアルに沿った応急処置行われ、息のあった無駄のない連携プレイで各自で適切な対応をする。
「救急車すぐ着きます。外の道路で待機、誘導します」
「お願いします!」
救急車は数分で到着地し担架で運ばれた女性。家族の者とも連絡がつき女の子を迎えに来てすぐに病院に向かった。
ひとまずライフセーバーにできることはすべて行い後は回復の連絡を待つだけ。
そんな一連の様子を間近で見ていた礼。何かあればいつでも加勢して出て行くつもりでいたがそんな心配は無用なほど優秀なライフセーバー達に自分がここにいる間、役に立てる事あるのかと少し頭を悩ませてその場を離れ浜辺を歩き出した。
初日から救急車が出動する事態になった午後の須野海岸。もちろん何も起こらない事が理想だが起きてしまうのが自然界の怖いところ。
だからこそライフセーバーと言う存在がいる。
浜辺を歩く礼の前から歩いてくる黄色のユニフォームは海の沖合の方を見ながら大股でザクザクと砂を蹴って向かってくる。
昨日も今日もまだ見かけない顔に礼が先に話かけた。
「あーっと、、すいません初めましてですよね!?」
「ん?はい、こんにちは!」
「自分は真壁礼っていいます。ライフセービングー…」
「あー!聞いてます聞いてます!協会から1人くるって。へえ~思った以上にイケメンですね~どうです!?須野の海は!?あっ俺、国武つばさです。一応副キャプテンやらしてもらってて、この近くに住んでます。それからー…」
噺家かと言うくらい次々と言葉が飛んでくるつばさの身振り手振りのジェスチャーは徐々に距離がなくなって顔のすぐそばまで来る。
礼は少し体を反らせながら小さく頷きながら聞いていた。
「自分はまだ来たばっかりでまだ須野をよく分かってなくて。そういえば東さんから試合って伺ってたんですが今朝お帰りに?」
「そうです。さっきそれで東に遅いって怒られてたとこですけどね、はははっ」
すると"つばささーーん"と車道から聞こえ声は明らかに幼く、何だろうと振り向くと学校帰りだろうかランドセルを背負った小学生二人組。手を振って返事するつばさは地元で人気の良いお兄さんの風格を出していた。
「あー、あの子達は地元の学校の子で去年からここで夏休みにやってるサーフィンスクールに通ってる子達なんですよ」
「そうなんですか?もしかして、国武さんがコーチを?」
「いや俺は選手しながらライフセーバーしてて教えてはいません。それにしても今日みたいなほとんど風がない日は海水浴客としては条件いいですよね、波乗りとしては少しつまんないかなーって。あっ!すいません。俺サーフィンバカで一日中サーフィンのことばかり考えてます。どうせ東にそのうち言われるだろうから先に言っちゃいましたっ!あはっ!」
「東さんと国武さんは昔からのお知り合い?」
「10年くらいの付き合いですかね。あっそれと、つばさって呼んでください。ここで俺の事を名字で呼ぶ人いないんで!気軽に!しばらくはこの海を守る仲間ですからね」
天性の人懐っこい子キャラと物怖じせずポジティブな性格がまさにサーファー気質と言える。
あまり進んで輪の中に入っていくタイプではない
礼にとってはありがたい存在。
"つばさこっち戻ってきてくれないか"手にした無線機から東の呼び出しがかかる。
「あー呼ばれたんで行ってきますね。ではまた!」
時間が経つにつれ海水浴客が賑わいをみせ白い砂浜は、パラソルやレジャーシートでカラフルに染まり始めた。
海岸中央にあるメインの監視塔には救助器材、機材応急手当器材等の必要な器材がセットアップされ、4メートル上から双眼鏡で遊泳区域を見ているキャプテンの東の姿があった。
小さな屋根が意味もなさないくらい日光が照り付け、海開き初日から透明度の高い海水で人気のこの須野を歓迎するかの様にキラキラした海。
「おわっっと、、!」
突然ぐらっと揺れた監視塔にバランスを崩し双眼鏡を下ろした。塔の足元に視線を向けた東は揺れの原因がわかると呆れ顔で、再び双眼鏡で視線を海に戻した。
「ダメだね~これぐらいでぐらついてるなんて体幹がなってない!トレーニングをサボってんじゃん?キャプテン失格!!」
「つばさ、お前こそ何が朝イチで帰るだって?今何時か分かってるのか?」
腰に手を当てて上を見上げる同じ黄色のユニフォームを着ている男と東はタメ口で会話し親密さが伺える。
「んー、8時くらい」
「昼前だ」
「いやさぁ予定通り朝イチに出たんだけどさぁ、道路混んでて時間かかったんだよ」
「ホントかよ。どうせ寝坊したんだろっ」
「あのさっ、これだけは言う。早起きは波乗りの基本中の基本!俺の得意分野!」
「はいはい。いいから監視交代だ」
監視塔からサングラスをかけて降りてきた東は肩にポンっと手を置いて立ち去ろうとする。
「ちょっと待って、結果聞かないの?」
「何だよ、内心悔しいだろうからあえて言わないでやったのに」
「そういう気遣いする間柄じゃないっしょ」
「準優勝おめでとう。じゃ、しっかり働け!」
東が監視本部に戻ると見た目小学校低学年の小さな女の子がぐすんっとすすり泣きながらちょこんと座っていた。
「どうした?」
「はい。お孫さんと来ていた70代の女性が気分が悪いと。体温が高く、立ちくらみの症状が出ていたので状況から見て熱中症の疑いです」
かろうじて意識はあるものの、会話や受け答えは出来ず朦朧としている。医者ではないため安易な診断はできず救急車を呼び委ねることにした。
「大丈夫だよ。おばあちゃんすぐよくなるからね!それまで一緒にここにいようね。あとお家の電話番号分かるかな?」
女子ライフセーバーは女の子の目を見て優しく問いかけ手を握ると涙を拭いて泣き止んだ。鞄の中からスマホを出して"おかあさん"と表示された画面にして差し出した。
「、、これ。おかあさんの電話」
「ありがと。じゃぁ姉ちゃんがお母さんにばあちゃんのことをお話するね」
救急車到着までの間テキパキとマニュアルに沿った応急処置行われ、息のあった無駄のない連携プレイで各自で適切な対応をする。
「救急車すぐ着きます。外の道路で待機、誘導します」
「お願いします!」
救急車は数分で到着地し担架で運ばれた女性。家族の者とも連絡がつき女の子を迎えに来てすぐに病院に向かった。
ひとまずライフセーバーにできることはすべて行い後は回復の連絡を待つだけ。
そんな一連の様子を間近で見ていた礼。何かあればいつでも加勢して出て行くつもりでいたがそんな心配は無用なほど優秀なライフセーバー達に自分がここにいる間、役に立てる事あるのかと少し頭を悩ませてその場を離れ浜辺を歩き出した。
初日から救急車が出動する事態になった午後の須野海岸。もちろん何も起こらない事が理想だが起きてしまうのが自然界の怖いところ。
だからこそライフセーバーと言う存在がいる。
浜辺を歩く礼の前から歩いてくる黄色のユニフォームは海の沖合の方を見ながら大股でザクザクと砂を蹴って向かってくる。
昨日も今日もまだ見かけない顔に礼が先に話かけた。
「あーっと、、すいません初めましてですよね!?」
「ん?はい、こんにちは!」
「自分は真壁礼っていいます。ライフセービングー…」
「あー!聞いてます聞いてます!協会から1人くるって。へえ~思った以上にイケメンですね~どうです!?須野の海は!?あっ俺、国武つばさです。一応副キャプテンやらしてもらってて、この近くに住んでます。それからー…」
噺家かと言うくらい次々と言葉が飛んでくるつばさの身振り手振りのジェスチャーは徐々に距離がなくなって顔のすぐそばまで来る。
礼は少し体を反らせながら小さく頷きながら聞いていた。
「自分はまだ来たばっかりでまだ須野をよく分かってなくて。そういえば東さんから試合って伺ってたんですが今朝お帰りに?」
「そうです。さっきそれで東に遅いって怒られてたとこですけどね、はははっ」
すると"つばささーーん"と車道から聞こえ声は明らかに幼く、何だろうと振り向くと学校帰りだろうかランドセルを背負った小学生二人組。手を振って返事するつばさは地元で人気の良いお兄さんの風格を出していた。
「あー、あの子達は地元の学校の子で去年からここで夏休みにやってるサーフィンスクールに通ってる子達なんですよ」
「そうなんですか?もしかして、国武さんがコーチを?」
「いや俺は選手しながらライフセーバーしてて教えてはいません。それにしても今日みたいなほとんど風がない日は海水浴客としては条件いいですよね、波乗りとしては少しつまんないかなーって。あっ!すいません。俺サーフィンバカで一日中サーフィンのことばかり考えてます。どうせ東にそのうち言われるだろうから先に言っちゃいましたっ!あはっ!」
「東さんと国武さんは昔からのお知り合い?」
「10年くらいの付き合いですかね。あっそれと、つばさって呼んでください。ここで俺の事を名字で呼ぶ人いないんで!気軽に!しばらくはこの海を守る仲間ですからね」
天性の人懐っこい子キャラと物怖じせずポジティブな性格がまさにサーファー気質と言える。
あまり進んで輪の中に入っていくタイプではない
礼にとってはありがたい存在。
"つばさこっち戻ってきてくれないか"手にした無線機から東の呼び出しがかかる。
「あー呼ばれたんで行ってきますね。ではまた!」
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