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$3.ここは天国か?地獄か?②
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「何してるんですか?」
『えっ?あー…っと今日からここで働く予定で来たんだけど入り方がわからなくて』
こんな時に限って尋ねる黒服も誰もいなくてどうしたものかと身体もヘトヘトだし暑いし早く中に入りたくて項垂れている初人を中から不思議そうな顔で見ていた若い男が話しかけた。
「上のカメラに向かって喋れば開けてくれますけど」
『カメラに……?』
確かによく見ればカメラの下に小型のマイクとスピーカーみたいなものが付いていて、初人は言葉通り帽子を脱いでカメラに向かって話しかけた。
「あのー今日からお世話になる者ですが、、」
〈名前は?〉
『忽…あっ、新見です!新見慧です』
〈中に入れ。波間、こっちまで案内してあげてくれないか?〉
「わかりました」
ガラガラと重厚な門が開いて再びあの広い庭が出現する。
「中案内しますね」
相変わらず完璧に手入れされた草花にゴミ一つないここが父親を救う"最後の切り札"だ。初人は背筋を伸ばして男の後ろに付いて進む。
「ところで一度ここには来てるはずなのに何で入り方知らないんですか?」
『それはまぁ色々あって……話すと長くなるので、、けどすごい警備ですよね。インターホンすらないなんて』
「あのカメラは警備室に繋がっていて24時間作動して人の体温を察知して反応するんですよ」
初人は早速少しずつ情報を収集し始める。まずはこの家の警備システムを頭に入れておく必要がある。幸い人の良さそうなこの爽やかで歳の近そうなこの男なら引き出せそうだと思った。
『へぇ、、そうなんですね』
「僕も開ける事は出来ないんで」
中で働く使用人ですら開けられないなんて、これはなかなかシビアな計画になりそうだが時間がない初人には一か八かの掛け。ここまで来たら収穫なしで絶対に帰らないと腹をくくっている。
「お連れしました」
「ありがとう。もう仕事に戻っていいぞ」
「失礼します」
「フッ、もう会えないかと思ったのに幸運なやつだな」
案内された部屋にいたのはまさにあの日、初人を押さえつけた黒服の一人だった。バツが悪い顔をしながら初人は周りを見渡す。一面ガラス張りで何も物がない殺風景な部屋、横を見るとモニターが何十個も並び機械がギッシリと埋める部屋があった。
大好きなスパイ映画のような部屋に圧倒されながらしばらく口を開けたまま静止していた初人。
「あーあっちの部屋はこの家の監視カメラ全てを写し出している警備室だ。さっきもここから姿を確認して喋ってたんだ」
『すっご、、あっ!あの……この間はすいませんでした』
「何だよ急に。まぁ不審者じゃないなら問題はない。最近ちょろちょろとこの付近を嗅ぎ回るネズミが多くてな。アレが世間明るみになってから警備を強化してるんだ」
初人は一瞬ドキッとした。"嗅ぎ回るネズミ"はまさに今の自分に向けて言ってるようで手にじっとり汗が滲む。
『、、アレ……って何ですか?』
「あれって事件の事だよ、テレビで連日報道してるだろ?何だ知らなのか?」
『テレビ、、事件?』
「EVO Hotelって聞いた事ないか?」
まだだ!ずっと付いて回るその名前。しかもまさかこんな所に来てまで聞く事になるとはもはや疫病神かと思うほど何だか怖くなってきた初人はブルッと震えてジャージのチャックを首まで締めて身を縮めた。
『……聞いた事ありますけど、それとこの家と何の関係が?』
「ハハッ!えっーと新見くんだっけ?君は最初から変な子だったけどやっぱり変わってるねぇ!その冗談なかなか面白いよ~」
あんなに終始眉間に皺を寄せ鬼の形相していたのにケラケラと笑っている。訳も分からず笑われて初人もさすがにイラッとし、いい子モードをオフにして強く言い返す。
『ちょっ、何がそんなに可笑しいんだよ!』
「何ってだってここはEVO Hotelの社長の家だろ!?神崎一家が住む家で君は今日からこの家の使用人だろ」
『えっ?あー…っと今日からここで働く予定で来たんだけど入り方がわからなくて』
こんな時に限って尋ねる黒服も誰もいなくてどうしたものかと身体もヘトヘトだし暑いし早く中に入りたくて項垂れている初人を中から不思議そうな顔で見ていた若い男が話しかけた。
「上のカメラに向かって喋れば開けてくれますけど」
『カメラに……?』
確かによく見ればカメラの下に小型のマイクとスピーカーみたいなものが付いていて、初人は言葉通り帽子を脱いでカメラに向かって話しかけた。
「あのー今日からお世話になる者ですが、、」
〈名前は?〉
『忽…あっ、新見です!新見慧です』
〈中に入れ。波間、こっちまで案内してあげてくれないか?〉
「わかりました」
ガラガラと重厚な門が開いて再びあの広い庭が出現する。
「中案内しますね」
相変わらず完璧に手入れされた草花にゴミ一つないここが父親を救う"最後の切り札"だ。初人は背筋を伸ばして男の後ろに付いて進む。
「ところで一度ここには来てるはずなのに何で入り方知らないんですか?」
『それはまぁ色々あって……話すと長くなるので、、けどすごい警備ですよね。インターホンすらないなんて』
「あのカメラは警備室に繋がっていて24時間作動して人の体温を察知して反応するんですよ」
初人は早速少しずつ情報を収集し始める。まずはこの家の警備システムを頭に入れておく必要がある。幸い人の良さそうなこの爽やかで歳の近そうなこの男なら引き出せそうだと思った。
『へぇ、、そうなんですね』
「僕も開ける事は出来ないんで」
中で働く使用人ですら開けられないなんて、これはなかなかシビアな計画になりそうだが時間がない初人には一か八かの掛け。ここまで来たら収穫なしで絶対に帰らないと腹をくくっている。
「お連れしました」
「ありがとう。もう仕事に戻っていいぞ」
「失礼します」
「フッ、もう会えないかと思ったのに幸運なやつだな」
案内された部屋にいたのはまさにあの日、初人を押さえつけた黒服の一人だった。バツが悪い顔をしながら初人は周りを見渡す。一面ガラス張りで何も物がない殺風景な部屋、横を見るとモニターが何十個も並び機械がギッシリと埋める部屋があった。
大好きなスパイ映画のような部屋に圧倒されながらしばらく口を開けたまま静止していた初人。
「あーあっちの部屋はこの家の監視カメラ全てを写し出している警備室だ。さっきもここから姿を確認して喋ってたんだ」
『すっご、、あっ!あの……この間はすいませんでした』
「何だよ急に。まぁ不審者じゃないなら問題はない。最近ちょろちょろとこの付近を嗅ぎ回るネズミが多くてな。アレが世間明るみになってから警備を強化してるんだ」
初人は一瞬ドキッとした。"嗅ぎ回るネズミ"はまさに今の自分に向けて言ってるようで手にじっとり汗が滲む。
『、、アレ……って何ですか?』
「あれって事件の事だよ、テレビで連日報道してるだろ?何だ知らなのか?」
『テレビ、、事件?』
「EVO Hotelって聞いた事ないか?」
まだだ!ずっと付いて回るその名前。しかもまさかこんな所に来てまで聞く事になるとはもはや疫病神かと思うほど何だか怖くなってきた初人はブルッと震えてジャージのチャックを首まで締めて身を縮めた。
『……聞いた事ありますけど、それとこの家と何の関係が?』
「ハハッ!えっーと新見くんだっけ?君は最初から変な子だったけどやっぱり変わってるねぇ!その冗談なかなか面白いよ~」
あんなに終始眉間に皺を寄せ鬼の形相していたのにケラケラと笑っている。訳も分からず笑われて初人もさすがにイラッとし、いい子モードをオフにして強く言い返す。
『ちょっ、何がそんなに可笑しいんだよ!』
「何ってだってここはEVO Hotelの社長の家だろ!?神崎一家が住む家で君は今日からこの家の使用人だろ」
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