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$2.正直者がバカをみる④
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「新見 慧さんですね。それでこの仕事はどこで?」
『知人の紹介です。ここで働いていた知人の勧めで来ました』
もちろんこれは偽物の身分証で10枚あるコレクション内の一枚。その時に応じて使い分ける身分証から選んで、ここでは"新見慧 25歳 静岡県出身 国立大学卒"としてした初人はこの為になけなしのお金で買ったジャケットを着てと髪型を変えて別人に成りすます。
もちろん長居なんてするつもりはない。盗るたけ盗ったら消えるつもりの初人はすぐにでもこの豪邸の一員になってお金を作る必要があった。
『とても素晴らしい環境だっとお聞きしたので働いてみたいと思い清掃員の経験もありまして経験も活かせるかと思いました』
「そうですか。それはありがたいお言葉ですね」
『自分なんかでお役に立てれば一生懸命やらせて頂きます』
面接用のセリフと成りすます人物をしっかり事前に準備し頭に叩き込んで予定通りに進む面接。子ども頃から勉強もスポーツも誇れるものはないが、嘘には自信がある初人は絶対にバレないその自信でその後の質問も難なく答えていく。
待遇や給料の話もするが、給料なんて貰う間も無くおさらばしているだろうから軽く聞き流した。話を聞きながらチラチラッと田ノ上を見ても疑う様子は微塵もない。賢そうな田ノ上に少し身構えたが要注意人物でもなさそうと表情も緩くなる初人。
「わかりました。以上です。では明後日から来ていただけますか?」
『それは採用って…事ですか?ありがとうございます!』
「いえこちらこそ一緒に働けるのを楽しみにしていますよ」
意外とあっさりと終わった面接。もっと根掘り葉掘り聞かれると思っていたが、用意していたシナリオは3分の1程の出番だった。そしてすぐにでも働きたいと言う要望も受け入れてくれて、明後日から住み込みでの仕事が決まった。
玄関を出て田ノ上の後ろについて歩く。庭にいた黒服二人に心の中で"ばーか"と言いながら横目で睨んだ。
「それでは明後日お待ちしてます」
『よろしくお願いします』
「それから次いらっしゃる時はこの正面門扉からお入り下さいね。神崎家の一員としてお迎え致しますので」
ニコリと笑顔でそう言った田ノ上は軽い会釈をして離れて行った。初めて踏み入れた別世界にいつも以上に気力を使いこんで自然に大きな溜め息を漏らす。
『はぁ、、マジ疲れたな』
外に黒服は数人いたけど家の中は意外と人の気配はなくて応接室にはカメラらしき物は見当たらなかった。
家周りは万全だが、いざ中に入るとセキュリティーが手薄な典型的なパターンかと早速いけそうな気がして家を離れた。ひとまず第一段階は無事に突破だ。
『待てよ、、神崎って言ってた?なんか最近よくその名前聞いた気がしたけど、、誰だっけ?まっそんな名前いっぱいいるし関係ないか!』
来た道を同じ電車で下り方面へ走る。あれこれ考えているうちに気付けば地元に着いていた。しばらくこの街から離れて嫌いな東京の知らない家の使用人として働く。この街を長く離れた事がない初人にとってはちょっとした冒険の様でもあった。
『知人の紹介です。ここで働いていた知人の勧めで来ました』
もちろんこれは偽物の身分証で10枚あるコレクション内の一枚。その時に応じて使い分ける身分証から選んで、ここでは"新見慧 25歳 静岡県出身 国立大学卒"としてした初人はこの為になけなしのお金で買ったジャケットを着てと髪型を変えて別人に成りすます。
もちろん長居なんてするつもりはない。盗るたけ盗ったら消えるつもりの初人はすぐにでもこの豪邸の一員になってお金を作る必要があった。
『とても素晴らしい環境だっとお聞きしたので働いてみたいと思い清掃員の経験もありまして経験も活かせるかと思いました』
「そうですか。それはありがたいお言葉ですね」
『自分なんかでお役に立てれば一生懸命やらせて頂きます』
面接用のセリフと成りすます人物をしっかり事前に準備し頭に叩き込んで予定通りに進む面接。子ども頃から勉強もスポーツも誇れるものはないが、嘘には自信がある初人は絶対にバレないその自信でその後の質問も難なく答えていく。
待遇や給料の話もするが、給料なんて貰う間も無くおさらばしているだろうから軽く聞き流した。話を聞きながらチラチラッと田ノ上を見ても疑う様子は微塵もない。賢そうな田ノ上に少し身構えたが要注意人物でもなさそうと表情も緩くなる初人。
「わかりました。以上です。では明後日から来ていただけますか?」
『それは採用って…事ですか?ありがとうございます!』
「いえこちらこそ一緒に働けるのを楽しみにしていますよ」
意外とあっさりと終わった面接。もっと根掘り葉掘り聞かれると思っていたが、用意していたシナリオは3分の1程の出番だった。そしてすぐにでも働きたいと言う要望も受け入れてくれて、明後日から住み込みでの仕事が決まった。
玄関を出て田ノ上の後ろについて歩く。庭にいた黒服二人に心の中で"ばーか"と言いながら横目で睨んだ。
「それでは明後日お待ちしてます」
『よろしくお願いします』
「それから次いらっしゃる時はこの正面門扉からお入り下さいね。神崎家の一員としてお迎え致しますので」
ニコリと笑顔でそう言った田ノ上は軽い会釈をして離れて行った。初めて踏み入れた別世界にいつも以上に気力を使いこんで自然に大きな溜め息を漏らす。
『はぁ、、マジ疲れたな』
外に黒服は数人いたけど家の中は意外と人の気配はなくて応接室にはカメラらしき物は見当たらなかった。
家周りは万全だが、いざ中に入るとセキュリティーが手薄な典型的なパターンかと早速いけそうな気がして家を離れた。ひとまず第一段階は無事に突破だ。
『待てよ、、神崎って言ってた?なんか最近よくその名前聞いた気がしたけど、、誰だっけ?まっそんな名前いっぱいいるし関係ないか!』
来た道を同じ電車で下り方面へ走る。あれこれ考えているうちに気付けば地元に着いていた。しばらくこの街から離れて嫌いな東京の知らない家の使用人として働く。この街を長く離れた事がない初人にとってはちょっとした冒険の様でもあった。
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