25 / 39
すれ違う
しおりを挟む
翌日に元の世界に戻ってくると、みゆちゃんに相談する。
「それでアーノルドさんとまだ気まずいままなの?」
「うん。あれからちゃんと話す機会もなくて」
「そんなのめいが話したいって言えばみんな動いてくれるでしょ。機会がないんじゃなくて、めいが逃げてるだけ」
みゆちゃんの言う通りである。こういう風にはっきりと物事を言えるみゆちゃんが羨ましい。
「でも距離を置いて欲しいって言われちゃったし、私から無理に声を掛けられないよ……。いつまで待てば良いのかな」
どんどん弱気になってしまう。このまま距離を置いたら彼の心もどんどん離れて行くんじゃないかと思う。
「みゆちゃんは不安になったりしないの?」
「不安ってどんな不安よ」
「ちゃんとあっちの世界に滞在出来るようになるかなとか、ライザーと結婚出来るかなとか」
「ならないわよ」
さすがみゆちゃん、強い。最近はこっちの仕事が忙しく、もうひと月近くあっちの世界に行けていない。それなのに不安にならないなんて。そして今でもみゆちゃんは2日経つとこっちの世界に戻ってきてしまう。私がこっちの世界に戻って来れている間に魔法を完成させないと、みゆちゃんはあっちの世界に移ることが出来なくなるのだ。
「だって私はライザーのことを信じてるもん。そのライザーのことを信じてる私のことも」
「信じる……?」
「えぇ、ライザーなら私が向こうの世界にいれるように魔法を完成させるって信じてるの。そしてライザーを信じるって決めた私のことも」
「もしそれでもダメだったら……?」
「それでも私は後悔しない。彼が頑張ってダメだったのなら本当に無理だったのねって。きっと彼は今も寝る間も惜しんで私があちらに残れる為の魔法を研究しているわ。その彼を私が信じないで誰が信じてあげるの?」
「みゆちゃん……」
「めいはアーノルドさんのことを信じてるんじゃないの?」
「……分からないよ。今はアーノルドの気持ちが分からない」
「アーノルドさんはそんな軽い気持ちで思いを告げるような人?」
そんなことない、彼はとても真面目で色々悩んだ上で告げてくれたはずだ。
「めいのこと、聖女であることを受け止めきれないような人なの?」
そんなことも覚悟の上で告白してくれたとライザーが言っていた。私なんかよりも沢山色々なことを分かっていて、それら全てを覚悟していたはずだ。私は首を横に振る。
「だったらあなたもアーノルドのことを信じなさい」
アーノルドを信じるか……。確かに私は自分のことばっかりで相手のことを信じていなかったのかな。もっとアーノルドの立場、気持ちを考えていたら状況は変わったのかも知れない。
◇
もう距離を置こう発言から2週間が経つ。みゆちゃんと話してからちゃんとアーノルドと話をしようとするのだが、なかなか上手く行かない。
「アーノルド、ちょっと時間あるかな?」
「すみません、これから今後の打ち合わせがあるので」
「じゃあ夜にでも……」
「夜も予定が入ってて、出なければならないので」
話しかけようとしても、そうやって断られて彼からも避けられているように感じるのだ。
今回の浄化は、小さな溜池の浄化だったので1日で終わる。その後すぐに移動するかと思ったのだが、何かこの町で調査することがあると言ってそのまま同じ町に滞在しいる。
アーノルドと過ごす時間は取れないかと思ったが、本当に忙しそうにしていて声を掛けれない。
「ねぇライザー、ライザーは今日空いてる?」
「悪い、少し緊急の調査をしていて今みんな忙しいんだ。今回は申し訳ないが宿で3日間過ごしてもらえるか? 何か必要なものがあれば用意させるから」
ライザーにまでそう言われてしまい、私はここ2日間ずっと部屋で過ごしている。暇だったので、刺繍セットを用意して適当に刺していく。上手くできたらみゆちゃんやマーサにプレゼントしよう。しかし今日はもう滞在3日目だから、明日話さないとまた来週まで持ち越しになってしまう。その晩ベットに入りどうしようかと考えていたのだが、結局良い案も浮かばず眠れないので外の空気を吸おうと思い、鞄を手に取り部屋の外に出る。
部屋の前にいた護衛番の人に少し外の空気を吸ってくるから1人にして欲しいと伝えると、彼も気を利かせてくれたのがお辞儀をして通してくれる。中庭に出ようと廊下を曲がると、誰かの話し声が聞こえ思わず立ち止まり壁から様子を伺う。
「それで、お前はいつまでメイから逃げているつもりなんだ」
「……」
廊下で話していたのはアーノルドとライザーだった。聞いちゃいけないと頭の中で警報が鳴っているが、話が気になってしまい戻ることも出ていくことも出来ずにその場に佇んでしまう。
「まただんまりか」
「お前には俺たちのことは関係ないだろう」
「別にキスの1つや2つすれば良いじゃないか」
「……良くないんだ。メイは聖女だから普通のキスと違うんだ」
「何だそれ? このままじゃ前言った通り他の誰かに取られてしまうぞ。今はお前が婚約者に収まっているが、聖女様との結婚を狙っている奴なんてうじゃうじゃいるんだ。第2王子だって狙っているという噂だぞ。王子にメイを渡してもいいのか」
「……あぁ分かってるよ。でもその方がメイにとっても良いのかも知れないな。結局俺ではメイに相応しくなかったんだよ。俺ではメイの期待には応えられない」
アーノルドがそう言った瞬間もう聞いていられなくてその場を離れる。あそこから離れたい一心でふらふらと宿の外に出て座り込んでしまう。
「っっ。アーノルド……」
涙が止まらない。彼にフラれてしまった。私の世界は彼がいなきゃ成り立たないのに。彼が離れてしまったらまた生きる意味を見失ってしまう。どうすれば良いの? もう彼を信じることも出来なくなってしまうのだろうか。
暫くその場から立ち上がることが出来なかった。どれくらい時間が経ったのだろう。涙も止まり落ち着いてきて、そろそろ部屋に戻ろうと立ち上がると、見知らぬ男が目の前にいた。黒い帽子に黒のマントをつけており、見るからに怪しい雰囲気を醸し出している。
「……女か」
「……っ!」
やばい、逃げなきゃいけない。声を上げれば誰かが気づいてくれるはず。そう思うのに、恐怖で声が出てこない。
「ちょうど良い。1人壊してしまったから、追加で増やせば数も合うし良いだろう」
男はそう言うと何か呪文のようなものを呟いた。しまった、宿に戻らなきゃと思った瞬間、私は気を失っていたのだ。
また私はやってしまった。自分の浅はかな行動のせいでみんなに迷惑をかけて、本当に嫌になる。
「それでアーノルドさんとまだ気まずいままなの?」
「うん。あれからちゃんと話す機会もなくて」
「そんなのめいが話したいって言えばみんな動いてくれるでしょ。機会がないんじゃなくて、めいが逃げてるだけ」
みゆちゃんの言う通りである。こういう風にはっきりと物事を言えるみゆちゃんが羨ましい。
「でも距離を置いて欲しいって言われちゃったし、私から無理に声を掛けられないよ……。いつまで待てば良いのかな」
どんどん弱気になってしまう。このまま距離を置いたら彼の心もどんどん離れて行くんじゃないかと思う。
「みゆちゃんは不安になったりしないの?」
「不安ってどんな不安よ」
「ちゃんとあっちの世界に滞在出来るようになるかなとか、ライザーと結婚出来るかなとか」
「ならないわよ」
さすがみゆちゃん、強い。最近はこっちの仕事が忙しく、もうひと月近くあっちの世界に行けていない。それなのに不安にならないなんて。そして今でもみゆちゃんは2日経つとこっちの世界に戻ってきてしまう。私がこっちの世界に戻って来れている間に魔法を完成させないと、みゆちゃんはあっちの世界に移ることが出来なくなるのだ。
「だって私はライザーのことを信じてるもん。そのライザーのことを信じてる私のことも」
「信じる……?」
「えぇ、ライザーなら私が向こうの世界にいれるように魔法を完成させるって信じてるの。そしてライザーを信じるって決めた私のことも」
「もしそれでもダメだったら……?」
「それでも私は後悔しない。彼が頑張ってダメだったのなら本当に無理だったのねって。きっと彼は今も寝る間も惜しんで私があちらに残れる為の魔法を研究しているわ。その彼を私が信じないで誰が信じてあげるの?」
「みゆちゃん……」
「めいはアーノルドさんのことを信じてるんじゃないの?」
「……分からないよ。今はアーノルドの気持ちが分からない」
「アーノルドさんはそんな軽い気持ちで思いを告げるような人?」
そんなことない、彼はとても真面目で色々悩んだ上で告げてくれたはずだ。
「めいのこと、聖女であることを受け止めきれないような人なの?」
そんなことも覚悟の上で告白してくれたとライザーが言っていた。私なんかよりも沢山色々なことを分かっていて、それら全てを覚悟していたはずだ。私は首を横に振る。
「だったらあなたもアーノルドのことを信じなさい」
アーノルドを信じるか……。確かに私は自分のことばっかりで相手のことを信じていなかったのかな。もっとアーノルドの立場、気持ちを考えていたら状況は変わったのかも知れない。
◇
もう距離を置こう発言から2週間が経つ。みゆちゃんと話してからちゃんとアーノルドと話をしようとするのだが、なかなか上手く行かない。
「アーノルド、ちょっと時間あるかな?」
「すみません、これから今後の打ち合わせがあるので」
「じゃあ夜にでも……」
「夜も予定が入ってて、出なければならないので」
話しかけようとしても、そうやって断られて彼からも避けられているように感じるのだ。
今回の浄化は、小さな溜池の浄化だったので1日で終わる。その後すぐに移動するかと思ったのだが、何かこの町で調査することがあると言ってそのまま同じ町に滞在しいる。
アーノルドと過ごす時間は取れないかと思ったが、本当に忙しそうにしていて声を掛けれない。
「ねぇライザー、ライザーは今日空いてる?」
「悪い、少し緊急の調査をしていて今みんな忙しいんだ。今回は申し訳ないが宿で3日間過ごしてもらえるか? 何か必要なものがあれば用意させるから」
ライザーにまでそう言われてしまい、私はここ2日間ずっと部屋で過ごしている。暇だったので、刺繍セットを用意して適当に刺していく。上手くできたらみゆちゃんやマーサにプレゼントしよう。しかし今日はもう滞在3日目だから、明日話さないとまた来週まで持ち越しになってしまう。その晩ベットに入りどうしようかと考えていたのだが、結局良い案も浮かばず眠れないので外の空気を吸おうと思い、鞄を手に取り部屋の外に出る。
部屋の前にいた護衛番の人に少し外の空気を吸ってくるから1人にして欲しいと伝えると、彼も気を利かせてくれたのがお辞儀をして通してくれる。中庭に出ようと廊下を曲がると、誰かの話し声が聞こえ思わず立ち止まり壁から様子を伺う。
「それで、お前はいつまでメイから逃げているつもりなんだ」
「……」
廊下で話していたのはアーノルドとライザーだった。聞いちゃいけないと頭の中で警報が鳴っているが、話が気になってしまい戻ることも出ていくことも出来ずにその場に佇んでしまう。
「まただんまりか」
「お前には俺たちのことは関係ないだろう」
「別にキスの1つや2つすれば良いじゃないか」
「……良くないんだ。メイは聖女だから普通のキスと違うんだ」
「何だそれ? このままじゃ前言った通り他の誰かに取られてしまうぞ。今はお前が婚約者に収まっているが、聖女様との結婚を狙っている奴なんてうじゃうじゃいるんだ。第2王子だって狙っているという噂だぞ。王子にメイを渡してもいいのか」
「……あぁ分かってるよ。でもその方がメイにとっても良いのかも知れないな。結局俺ではメイに相応しくなかったんだよ。俺ではメイの期待には応えられない」
アーノルドがそう言った瞬間もう聞いていられなくてその場を離れる。あそこから離れたい一心でふらふらと宿の外に出て座り込んでしまう。
「っっ。アーノルド……」
涙が止まらない。彼にフラれてしまった。私の世界は彼がいなきゃ成り立たないのに。彼が離れてしまったらまた生きる意味を見失ってしまう。どうすれば良いの? もう彼を信じることも出来なくなってしまうのだろうか。
暫くその場から立ち上がることが出来なかった。どれくらい時間が経ったのだろう。涙も止まり落ち着いてきて、そろそろ部屋に戻ろうと立ち上がると、見知らぬ男が目の前にいた。黒い帽子に黒のマントをつけており、見るからに怪しい雰囲気を醸し出している。
「……女か」
「……っ!」
やばい、逃げなきゃいけない。声を上げれば誰かが気づいてくれるはず。そう思うのに、恐怖で声が出てこない。
「ちょうど良い。1人壊してしまったから、追加で増やせば数も合うし良いだろう」
男はそう言うと何か呪文のようなものを呟いた。しまった、宿に戻らなきゃと思った瞬間、私は気を失っていたのだ。
また私はやってしまった。自分の浅はかな行動のせいでみんなに迷惑をかけて、本当に嫌になる。
0
こちらも良かったらよろしくお願いします。思い出屋〜幸せな思い出と引き換えにあなたの願いを叶えます〜
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆

侯爵令嬢セリーナ・マクギリウスは冷徹な鬼公爵に溺愛される。 わたくしが古の大聖女の生まれ変わり? そんなの聞いてません!!
友坂 悠
恋愛
「セリーナ・マクギリウス。貴女の魔法省への入省を許可します」
婚約破棄され修道院に入れられかけたあたしがなんとか採用されたのは国家の魔法を一手に司る魔法省。
そこであたしの前に現れたのは冷徹公爵と噂のオルファリド・グラキエスト様でした。
「君はバカか?」
あたしの話を聞いてくれた彼は開口一番そうのたまって。
ってちょっと待って。
いくらなんでもそれは言い過ぎじゃないですか!!?
⭐︎⭐︎⭐︎
「セリーナ嬢、君のこれまでの悪行、これ以上は見過ごすことはできない!」
貴族院の卒業記念パーティの会場で、茶番は起きました。
あたしの婚約者であったコーネリアス殿下。会場の真ん中をスタスタと進みあたしの前に立つと、彼はそう言い放ったのです。
「レミリア・マーベル男爵令嬢に対する数々の陰湿ないじめ。とても君は国母となるに相応しいとは思えない!」
「私、コーネリアス・ライネックの名においてここに宣言する! セリーナ・マクギリウス侯爵令嬢との婚約を破棄することを!!」
と、声を張り上げたのです。
「殿下! 待ってください! わたくしには何がなんだか。身に覚えがありません!」
周囲を見渡してみると、今まで仲良くしてくれていたはずのお友達たちも、良くしてくれていたコーネリアス殿下のお付きの人たちも、仲が良かった従兄弟のマクリアンまでもが殿下の横に立ち、あたしに非難めいた視線を送ってきているのに気がついて。
「言い逃れなど見苦しい! 証拠があるのだ。そして、ここにいる皆がそう証言をしているのだぞ!」
え?
どういうこと?
二人っきりの時に嫌味を言っただの、お茶会の場で彼女のドレスに飲み物をわざとかけただの。
彼女の私物を隠しただの、人を使って階段の踊り場から彼女を突き落とそうとしただの。
とそんな濡れ衣を着せられたあたし。
漂う黒い陰湿な気配。
そんな黒いもやが見え。
ふんわり歩いてきて殿下の横に縋り付くようにくっついて、そしてこちらを見て笑うレミリア。
「私は真実の愛を見つけた。これからはこのレミリア嬢と添い遂げてゆこうと思う」
あたしのことなんかもう忘れたかのようにレミリアに微笑むコーネリアス殿下。
背中にじっとりとつめたいものが走り、尋常でない様子に気分が悪くなったあたし。
ほんと、この先どうなっちゃうの?

召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました
群青みどり
恋愛
国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。
どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。
そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた!
「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」
こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!
このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。
婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎
「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」
麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる──
※タイトル変更しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる