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ミラー様が決断したそうです。
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「おはようございますユリ様」
「おはようローラン」
「昨日は色々と申し訳ありませんでした」
そう言って頭を下げるローランに謝らないで大丈夫だと告げるが、頭を上げてもらうまでに相当時間が掛かった。
「昨日の今日で申し訳ないのですが、後でミラー様が来られるそうなので準備させて頂きますね」
そういうといつものローランらしく私の身だしなみを整えて初めてくれる。
ここ最近は肌や髪のケアも適当になってしまっていたので、念入りにマッサージをし、香油も塗ってもらい大分ツヤツヤになっている。
朝食を持ってきてくれた際には、念のため鑑定をして下さいと言われてしまい、鑑定を行ったが異常はなかった。
ミラー様達の食事を鑑定しようかと聞いたのだが、別の鑑定士を呼んできているので問題ないとのことだ。普段は食事なんかに鑑定士を使うのは勿体無いとのことで使ってないそうなのだが、暫くは毒味と鑑定でのダブルチェックを続けるという。
それなら安心だ。
「昨日のはローランも大変だったでしょ? ちゃんと休めたの?」
そう言うと大丈夫ですよと言われてしまうが、目の下には大きな隈が出来ている。きっと彼女も夜通し働いていたのだろう。ミラー様が来たらちゃんと休んでもらおうと心に決める。
しかしミラー様が来たのは結局お昼過ぎだった。
「やぁ、遅くなって悪かったね。昨日はすぐに寝れたかい?」
「はい、大丈夫です」
ユーリとの電話の後はすぐ寝れたからね。
ミラー様がいつ来るかも分からなかったので、つい先程までローランとゆったりティータイムを過ごしていたところだ。
「お茶でも……と思ったけどもう飲んでいるようだね。まだいけそうかな? 昨日のお詫びにケーキを用意したんだが……」
「ケーキは別腹ですよ! ありがとうございます」
私の返事を聞きすぐさまローランが紅茶を用意する。
先程までは香りが強めのハーブティーを飲んでいたから、次はケーキに合うお茶をきっと用意してくれるはずだ。
ミラー様に言われてケーキを鑑定してみるが、毒は入っていないようだ。
「毒はないみたいです」
「そうか……。僕たちも毒が入れられることはないだろうと思っている。あれだけ大々的に調査を行っているから、犯人もよっぽどのバカか自信家じゃなければすぐに仕掛けて来ないだろう」
確かに。
ローランとお茶をしている間も廊下でドタバタ走る音が聞こえていた。きっと今は城中を調査しているのだろう。
「……それは犯人はまだ捕まってないってことですよね?」
犯人が捕まっているのなら、こんなに大掛かりな調査や鑑定だってしなくて良いはずだ。
「残念ながらね。どうやら犯人はとても足が早いらしい……。いや、足で動いてるかも分からないんだが……」
少し考え込んだミラー様は、君には全て話そうとと言って話してくれた。もちろんローランは控え室に下がり、聞かないように配慮している。
「……そうなんですね。誰かが城に転移した……」
「あぁ。入場記録は全てチェックし、本人確認も全部終えているが怪しい人物は居なかった。そして昨日、2名の城への転移の形跡がある」
「そのうちの1人が私……。残り1人が不明……」
ミラー様が言うには、城に入場する者は全て記録されている。昨日城へ入場した者全てを調べ上げ、本人確認も行ったらしい。もちろん城で働いている人の全てだ。
本人確認にはスキルカードの提示をしてもらえば一発で分かるとのことだ。あれは偽造出来るものではないらしい。
そして城への転移の形跡が2人。ここが問題で、通常城に転移できるのは登録された者だけ。
その登録者以外に2人転移された魔法の跡があったらしい。
さらに通常は登録した人以外は転移しようとしても弾く魔法が施されているそうで、今回2人も侵入者が出たのは前代未聞のこと。
それでその調査で今はドタバタしているらしい。
「君に転移するよう命じたのは僕だから、君に関しては問題になっていないよ。落界人は魔力が特殊だから、転移も弾かれなかったんだ。だからもう1人の侵入者の行方を今は追っている」
「例えばそのもう1人の侵入者も落界人というのは考えられませんか?」
そう私が問いかけるが、否定される。
落界人が落ちる時は、瀕死の状態なんだそう。私の時もそうだったが、2週間から1ヶ月は昏睡状態でこの世界に馴染むように体が作り替えられるそう。
その時にさすがに誰も近くにいない状態では生きていけない。誰かが魔力供給をして初めて、この世界の身体に作り替えられるらしい。
「だから君の場合はユーリが国へ報告をしつつ、君に魔力提供をして介助していたんだ」
「ただ面倒を見てくれていただけじゃないんですね……」
「あぁ。それに落界人が落ちる時は、時空の歪みが生じる。この国ではその歪みがあればすぐ反応する魔道具があるから、落ちたかどうかはすぐに分かるんだ。君の時にもその反応はあったが、君以外ここ100年そういった反応はない」
「……なるほど」
あの神官長が怪しいと思っていたのだが、彼は落界人ではないのか……。
そうなると全く別の所に犯人はいるの?
「今回の件は少し複雑でね。昨日君に話そうとしていたことなんだが……」
そう言うとミラー様は真剣な表情でこちらを見る。
「実は……、僕は王太子になったんだ。まだ公にはしていないんだけどね」
「え!? そうなんですか!? おめでとうございます!!」
私が驚きつつもお祝いの言葉を告げると少し照れたように笑うミラー様。
うん、イケメンの照れ顔の破壊力はやばい。そんな私の様子に気づかず話を続けるミラー様。
「今まで死ぬ運命だからと拒否していたんだが、君に会って考えが変わった。異世界に来ても前向きに、一緒に戦ってくれる姿を見て、僕も運命を受け入れるのではなく、戦ってみようと思ったんだ」
「ミラー様……」
そう語るミラー様はあの諦めたような笑いではなく、前向きで、本当に未来を変えようとしているのだと伝わってくる。
「もちろん、あの陛下が居た部屋に入る為には王位継承が必須だったこともある。それがきっかけに決意出来たんだけどね」
そうおどけてみせるが、多分本人の中ではもう決めていたのだろう。じゃなきゃこんなに晴れ晴れと語ることが出来ないはずだ。
「もちろん僕がまだ運命に勝てるかは分からないから、魔王を倒すまではごく一部の者しか知らないから内密にね」
「そんな重要な話、私が聞いても大丈夫だったんですか?」
そう聞くと、私の手に両手を添えるミラー様。
手の平の体温から、ミラー様の情熱が伝わってきそう。
「君には伝えておきたかったから。僕が変われたのは君のお陰だから」
「ミラー様……」
真剣な瞳からミラー様の思いが伝わってくる。ミラー様が私に望んでいるであろうことも。
……しかしその望みに今答えることは出来ない。
きっと私の心なんてミラー様にお見通しなのだろう。少し寂しそうに笑うと今回の事件についての見解を話してくれる。
「このことがあって、狙いが何か複雑になっているんだ。神殿を調べていることに対する牽制なのか、それとも王太子になるのを阻もうとしているのか」
「確かにそれは複雑ですね……。狙いが分からないと犯人を絞り込むのも……」
「そうなんだ。だから調査には暫く時間が掛かると思う。君は念の為、自分に防御系の魔法を掛けるのを忘れずにね。それと今日の依頼を終えたら神殿に戻ってくれ。あっちの方がユーリ殿もリア殿も居て安全だろうから」
「分かりました」
話を終えると、そのまま案内するとのことで、ミラー様に着いて歩く。ローランは部屋でお留守番、護衛の者達が私たちの後ろを歩いていくが、ある建物の前に来ると皆頭を下げてその場に留まる。
「ここだよ。もう分かっていると思うが、あの部屋の魔石を君に鑑定してもらう」
「……はい。分かりました。よろしくお願いします」
「そんなに難しいことはないと思うから、気軽にね」
そう優しく微笑むが気軽に出来るはずがない。だって建物からやってくる人……あれは見間違いじゃなければ王様のはずだ……。
「おはようローラン」
「昨日は色々と申し訳ありませんでした」
そう言って頭を下げるローランに謝らないで大丈夫だと告げるが、頭を上げてもらうまでに相当時間が掛かった。
「昨日の今日で申し訳ないのですが、後でミラー様が来られるそうなので準備させて頂きますね」
そういうといつものローランらしく私の身だしなみを整えて初めてくれる。
ここ最近は肌や髪のケアも適当になってしまっていたので、念入りにマッサージをし、香油も塗ってもらい大分ツヤツヤになっている。
朝食を持ってきてくれた際には、念のため鑑定をして下さいと言われてしまい、鑑定を行ったが異常はなかった。
ミラー様達の食事を鑑定しようかと聞いたのだが、別の鑑定士を呼んできているので問題ないとのことだ。普段は食事なんかに鑑定士を使うのは勿体無いとのことで使ってないそうなのだが、暫くは毒味と鑑定でのダブルチェックを続けるという。
それなら安心だ。
「昨日のはローランも大変だったでしょ? ちゃんと休めたの?」
そう言うと大丈夫ですよと言われてしまうが、目の下には大きな隈が出来ている。きっと彼女も夜通し働いていたのだろう。ミラー様が来たらちゃんと休んでもらおうと心に決める。
しかしミラー様が来たのは結局お昼過ぎだった。
「やぁ、遅くなって悪かったね。昨日はすぐに寝れたかい?」
「はい、大丈夫です」
ユーリとの電話の後はすぐ寝れたからね。
ミラー様がいつ来るかも分からなかったので、つい先程までローランとゆったりティータイムを過ごしていたところだ。
「お茶でも……と思ったけどもう飲んでいるようだね。まだいけそうかな? 昨日のお詫びにケーキを用意したんだが……」
「ケーキは別腹ですよ! ありがとうございます」
私の返事を聞きすぐさまローランが紅茶を用意する。
先程までは香りが強めのハーブティーを飲んでいたから、次はケーキに合うお茶をきっと用意してくれるはずだ。
ミラー様に言われてケーキを鑑定してみるが、毒は入っていないようだ。
「毒はないみたいです」
「そうか……。僕たちも毒が入れられることはないだろうと思っている。あれだけ大々的に調査を行っているから、犯人もよっぽどのバカか自信家じゃなければすぐに仕掛けて来ないだろう」
確かに。
ローランとお茶をしている間も廊下でドタバタ走る音が聞こえていた。きっと今は城中を調査しているのだろう。
「……それは犯人はまだ捕まってないってことですよね?」
犯人が捕まっているのなら、こんなに大掛かりな調査や鑑定だってしなくて良いはずだ。
「残念ながらね。どうやら犯人はとても足が早いらしい……。いや、足で動いてるかも分からないんだが……」
少し考え込んだミラー様は、君には全て話そうとと言って話してくれた。もちろんローランは控え室に下がり、聞かないように配慮している。
「……そうなんですね。誰かが城に転移した……」
「あぁ。入場記録は全てチェックし、本人確認も全部終えているが怪しい人物は居なかった。そして昨日、2名の城への転移の形跡がある」
「そのうちの1人が私……。残り1人が不明……」
ミラー様が言うには、城に入場する者は全て記録されている。昨日城へ入場した者全てを調べ上げ、本人確認も行ったらしい。もちろん城で働いている人の全てだ。
本人確認にはスキルカードの提示をしてもらえば一発で分かるとのことだ。あれは偽造出来るものではないらしい。
そして城への転移の形跡が2人。ここが問題で、通常城に転移できるのは登録された者だけ。
その登録者以外に2人転移された魔法の跡があったらしい。
さらに通常は登録した人以外は転移しようとしても弾く魔法が施されているそうで、今回2人も侵入者が出たのは前代未聞のこと。
それでその調査で今はドタバタしているらしい。
「君に転移するよう命じたのは僕だから、君に関しては問題になっていないよ。落界人は魔力が特殊だから、転移も弾かれなかったんだ。だからもう1人の侵入者の行方を今は追っている」
「例えばそのもう1人の侵入者も落界人というのは考えられませんか?」
そう私が問いかけるが、否定される。
落界人が落ちる時は、瀕死の状態なんだそう。私の時もそうだったが、2週間から1ヶ月は昏睡状態でこの世界に馴染むように体が作り替えられるそう。
その時にさすがに誰も近くにいない状態では生きていけない。誰かが魔力供給をして初めて、この世界の身体に作り替えられるらしい。
「だから君の場合はユーリが国へ報告をしつつ、君に魔力提供をして介助していたんだ」
「ただ面倒を見てくれていただけじゃないんですね……」
「あぁ。それに落界人が落ちる時は、時空の歪みが生じる。この国ではその歪みがあればすぐ反応する魔道具があるから、落ちたかどうかはすぐに分かるんだ。君の時にもその反応はあったが、君以外ここ100年そういった反応はない」
「……なるほど」
あの神官長が怪しいと思っていたのだが、彼は落界人ではないのか……。
そうなると全く別の所に犯人はいるの?
「今回の件は少し複雑でね。昨日君に話そうとしていたことなんだが……」
そう言うとミラー様は真剣な表情でこちらを見る。
「実は……、僕は王太子になったんだ。まだ公にはしていないんだけどね」
「え!? そうなんですか!? おめでとうございます!!」
私が驚きつつもお祝いの言葉を告げると少し照れたように笑うミラー様。
うん、イケメンの照れ顔の破壊力はやばい。そんな私の様子に気づかず話を続けるミラー様。
「今まで死ぬ運命だからと拒否していたんだが、君に会って考えが変わった。異世界に来ても前向きに、一緒に戦ってくれる姿を見て、僕も運命を受け入れるのではなく、戦ってみようと思ったんだ」
「ミラー様……」
そう語るミラー様はあの諦めたような笑いではなく、前向きで、本当に未来を変えようとしているのだと伝わってくる。
「もちろん、あの陛下が居た部屋に入る為には王位継承が必須だったこともある。それがきっかけに決意出来たんだけどね」
そうおどけてみせるが、多分本人の中ではもう決めていたのだろう。じゃなきゃこんなに晴れ晴れと語ることが出来ないはずだ。
「もちろん僕がまだ運命に勝てるかは分からないから、魔王を倒すまではごく一部の者しか知らないから内密にね」
「そんな重要な話、私が聞いても大丈夫だったんですか?」
そう聞くと、私の手に両手を添えるミラー様。
手の平の体温から、ミラー様の情熱が伝わってきそう。
「君には伝えておきたかったから。僕が変われたのは君のお陰だから」
「ミラー様……」
真剣な瞳からミラー様の思いが伝わってくる。ミラー様が私に望んでいるであろうことも。
……しかしその望みに今答えることは出来ない。
きっと私の心なんてミラー様にお見通しなのだろう。少し寂しそうに笑うと今回の事件についての見解を話してくれる。
「このことがあって、狙いが何か複雑になっているんだ。神殿を調べていることに対する牽制なのか、それとも王太子になるのを阻もうとしているのか」
「確かにそれは複雑ですね……。狙いが分からないと犯人を絞り込むのも……」
「そうなんだ。だから調査には暫く時間が掛かると思う。君は念の為、自分に防御系の魔法を掛けるのを忘れずにね。それと今日の依頼を終えたら神殿に戻ってくれ。あっちの方がユーリ殿もリア殿も居て安全だろうから」
「分かりました」
話を終えると、そのまま案内するとのことで、ミラー様に着いて歩く。ローランは部屋でお留守番、護衛の者達が私たちの後ろを歩いていくが、ある建物の前に来ると皆頭を下げてその場に留まる。
「ここだよ。もう分かっていると思うが、あの部屋の魔石を君に鑑定してもらう」
「……はい。分かりました。よろしくお願いします」
「そんなに難しいことはないと思うから、気軽にね」
そう優しく微笑むが気軽に出来るはずがない。だって建物からやってくる人……あれは見間違いじゃなければ王様のはずだ……。
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