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第三章
夏だ 海だ 水着回だ!
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「ゲホッ、ゲホッ! 一体なにが起きたんだよ~?」
洞窟内にいたはずが、いつの間にか外にいる。太陽の光が眩しい。
いや違う。洞窟が完全に崩落していたのだ。いち早く気づいたエメラダがバリアを張らなかったら、全員生き埋めになっていた。
「なんだぁ~? まだ生きてるのか、しぶとい連中だな」
この状況をまるで面白がっているような声がした。離れたところに中年の男がいる。
「まぁいいか。直接ぶっ殺せたほうが楽しいからな」
ヤバそうな雰囲気を漂わせる。
「何者ですか!」
「俺はアシスター様の部下イーワンだ。
アシスター様に邪魔者は消すように言われた。お前らはこの俺がなぶり殺してやるよ」
アシスターの部下だって!? 敵はグループで活動してたのか!
「ふん、たかが人間ふぜいが。このアタシに刃向かったことを地獄で後悔する苦痛を与えてやる」
こっちもおっかねー……
だがイーワンと名乗った男はエメラダの気迫に押されることなく、むしろ余裕の笑みを浮かべている。
「ゲヘヘヘ。この姿を見てもその態度を保っていられるかな?」
男は全身にグッと力を込めた。
「グアァァーーーー!!」
天に向かった叫びとともに男の体から魔力柱が立ち上った。
「なっ!?」
一行は驚いた、エメラダやリリルさえも。
男の体がみるみる変化していく。
全身は黒っぽくなり筋肉が盛り上がる。頭からは角が生え、爪が人間と思えぬほど鋭く伸びる。
「な……、なんなんだあの姿は…」
「ガァーッハッハッハ! 見たかっ、これがアシスター様より頂いた力、魔人の姿だ!」
人ならざる者へと変身したイーワン。
「ま、魔人?
エメラダ、あれは魔族とは違うのか?」
「力は魔族のもので間違いないわ。でもあいつが人間であることも確かよ」
エメラダも困惑している。
「その力、どのようにして手に入れたのですか?」
リリルがイーワンに問いかける。
「これから死んでいくお前たちが知る必要のないことだ」
予想していたが、やはり教える気はないらしい。
「アシスター様には邪魔する者は皆殺しにするよう言われたが、そこの2人が俺のものになるなら教えてやってもいいぞ」
エメラダとリリルを指さした。
「キサマッ、誰に向かって口を利いている」
「いいねぇ~、その強気な態度。
特にてめぇが気に入った。快楽に堕ちたらどんな顔で喘ぎ声を上げるか想像しただけでゾクゾクするぜ~」
エメラダを舐めまわすように見つめる。
「ゲス野郎が」
エメラダを隠すようにイーワンとの間に割って入る。
「男に興味はない。まずはお前を殺してやるよ」
イーワンが大地を蹴って迫る。
「『精邪竜流波動』」
俺の背後から蒼白い竜が現れる。
「『爆龍灰燼撃』」
ドバーーーーーーンッ!!
エメラダの放つ強力な攻撃魔法だったが、イーワンの赤い魔法龍に相殺されてしまった。
「風よ!」
お次はリリルが風をつかって周りの崩れた洞窟の岩を投げつける。
「無駄だぁ!」
だがイーワンは素手でそれら全てを粉砕してしまった。
「はぁっ!」
反撃の隙を与えずジョセフが肉薄して上段から剣を振りおろす。
「効かないな」
太い幹でもスパッと斬れそうな鋭い一撃をなんと片腕で受け止めてみせた。
「食らえ!」
「うおぉっ!?」
だがジョセフの本命はこちらだったようだ。
超至近距離からの攻撃魔法がイーワンの腹部を直撃する。
4、5メートル吹き飛ばされるが、体操選手のようにポーズを決めて着地してニヤァ、と笑う。
「つ、強い。SSRクラスの力だ」
「それだけではありませんね。どうやら何かしらの能力を持っているようです」
「その通り。俺の能力は『晴れの戦士』
晴れの日は自身の全てのステータスがアップする能力よ!」
全ステータスアップとかぶっ壊れかよっ!
これで部下ってんなら、アシスターはこれ以上に強いってのか?
「さぁ、続きをしようぜ」
イーワンが両腕に炎を纏いジョセフに接近戦を仕掛ける。
「くっ」
応戦するジョセフだが、爪と刃が交わる度に炎が散って服を焦がす。
「ジョセフ!」
新調した剣を手に加勢しようとするが
「遅い、ザコは引っ込んでろ」
あっけなく回し蹴りを食らってぶっ飛ばされた。
「兄さん!」
注意が逸れた隙を突かれて炎の一撃をうけて転がる。
「うっ、兄さん大丈夫か?」
苦痛に顔を歪めながらも俺の心配をする。
「エメラダのおかげでな」
直前にエメラダとリリルがパートナーに防御魔法を張ってくれてダメージを軽減できたはずだが、それでも決して軽くはなかった。恐ろしい攻撃力だ。
今は2人がイーワンを押さえてくれている。
「『氷花百頭竜』」
数多の頭を持った氷のドラゴンが吐き出す無数の花が回転刃のように対象を襲う。
「『炸裂する聖なる光』」
まばゆい白光が辺り一面を包み込む。
ドカーーーーーンッ!
神魔ダブル魔法が相乗効果となって大きな威力となった。
やっ……たか?
「今のはさすがに堪えたぜぇ~」
「!!」
「ああっ」
「きゃあっ」
土煙から飛び出したイーワンの拳がエメラダとリリルを捉える。
なんて奴だ…。今のを食らってまだ立っていられるなんて。
やはり本人が言ってたように、攻撃力や防御力など全能力が強化されているようだ。
「グヘヘヘ、まずは抵抗できないように弱らせる。それからは大人のお楽しみだぁ」
下卑た笑みでエメラダとリリルに近づく。
そうはさせるか!
「『陽光爆術』」
「ぐわっ、目が!」
イーワンの眼前で光が爆発する。
目眩ましが効いてる間にジョセフと前線に復帰する。
「ガキが! 調子に乗りおって。
気が変わったぞ。まずはお前らから肉片になるまでこの爪で切り刻んでやる」
「ざけんなクソジジイが! 俺のエメラダに手出しさせねぇ!」
再び両腕に炎を宿して飛びかかってくる。
「『煌魔翠玉弓』」
体勢を立て直したエメラダが放った翡翠の光が両の爪を全て貫き折った!
「うぎゃあーーーっ!!」
激痛にその場でうずくまって悶え苦しむ。
「ずいぶん調子に乗ったこと言ってくれるじゃないの? でも不思議とアンタといると気分がいいわ」
「???」
隣に立ったエメラダはなぜか機嫌がいい。手にはイーワンの爪を射ち抜いた、魔法で生み出された弓が握られている。
翠の魔力が集束して具現化したそれは、太陽の光をキラキラと反射するエメラルドグリーンの海を思わせる輝きをしたとても綺麗な弓だった。
一方、イーワンは血走った目でこちらを睨む。
「ぐそぉ、よくもやりやがったな! 全員ぶち殺してやる」
折れた爪の代わりに炎が爪を形成する。
「援護しなさい、神」
「分かりました」
「グアァーー」
怒りのままに突っ込んでくる。
「『神聖なる裁槍』」
光の槍が大地に突き刺さり、イーワンの行く手を遮った。
「こしゃくな真似を。 まとめて焼き殺してやる!
『爆龍灰燼撃』」
赤い龍が牙をむいて襲いくる。
「『真なる光』」
リリルが得意とする魔法で龍を迎え撃つ………かと思いきや、エメラダに向かって放ったじゃないか!
「何やってんだ!?」
驚く俺とは対照的にエメラダは冷静にリリルの魔法に弓を引く。
「これで終わりよ。あの世で後悔するがいい」
エメラダの射った矢はリリルの光を取り込み、さらには赤龍をも飲み込んで強大な魔力の奔流となってイーワンを射貫いた。
「げぎゃあーーーっ! そ、そんな…魔人となったこの俺が……? バ…カ…な」
イーワンの身体が灰となって風に飛ばされていった。
「す、すごい……」
エメラダが矢を放った跡が、半球状に大地を抉って真っ直ぐに遥か先まで続いていた。
「相手の魔法を吸収して屠る魔王固有の魔法武器・煌魔翠玉弓
私もあの武器には苦しめられました」
当時のことを思い出したのだろうか、重く呟いた。
「やったじゃないかエメラダ!」
「このアタシがあの程度の相手に負けるわけないでしょ」
勝って当然とばかりにフンッ、と鼻を鳴らした。
全盛期の魔王や神ならそうなのかもしれないが、今の戦力では決して油断できる相手ではなかった。特に俺は………
「アシスターのことを聞き出せなかったのは残念だけど、部下が今の男だけとは限らない。
一刻も早くこのことを学園長先生を通して世界各国に知らせないと」
「とはいえ皆さん消耗していますから。今日は近くの村で休みましょう」
夜、宿の部屋のバルコニーでぼーっと外を眺めているところにエメラダが訪ねてきた。
「どうしたのよ、今日の戦いのあとから元気ないわね? 何か考え込んでるみたい」
この旅に出発したときから、いや、それよりも前から感じていたこと、胸の内をエメラダに話す。
「俺っている意味ないよな? 守ってもらってばかりで戦闘では役立たずだし、それどころか今日は俺のせいでジョセフを危険な目にあわせた。
この旅に俺は必要ないんだよ」
口を開くと堰を切ったように自分に対する不満が溢れだす。
ぶっちゃけ俺はエメラダを仲間に引き入れるためのエサで、こんな物語の主人公が経験するような冒険は場違いなだけだ。
「アタシにはアンタが必要よ。アンタがいるから力を失っていても、それ以上の力を発揮できるの」
間接的には役に立てているのかもしれない。けれども俺の心のもやもやは晴れない。
「それでも納得できないのなら、自衛できるようになれば少しは気が楽かしら?」
「そりゃ足を引っ張らなくなれればね。でも今から修行したってどのくらい時間がかかるか分からないぜ?」
それに小さい頃からジョセフと比較され俺もそれなりに努力はしたが、才能のないことがハッキリしただけだった。
「世界には伝説に名を残す装備が存在するわ。そういったものを身に付ければ、これからの戦いでも自分の身を守ることができるじゃない。
この世界でもそういう類いの武器や防具があるんじゃないの?」
「突拍子もない話だな。伝説くらいは聞いたことあるけどそんなどこにあるかも分からないもの、それこそ見つけるのに時間がいくらあっても足りやしないよ」
市販されてる装備に比べれば、使いこなせなくても戦力を大幅にアップすることができるのは分かる。見つけることができればの話だが…。
「誰か伝説の武器に詳しい人間はいないの?」
「都合よくそんな知り合いいるわけが……あっ」
たった一人だけ心当たりがあった。
翌日ジョセフとリリルに話をして、街に戻って二人が学園長に報告に行ってる間に俺とエメラダはその人物に会いに行くことにした。
街に帰ってきて伝説の武器に詳しそうなフィヨルドのもとを訪ねた。
「デカい屋敷だな………」
何十部屋もありそうな巨大な建物はもはや家というより城に近い。
「どちら様でしょうか?」
豪華な屋敷に気圧されながら呼び鈴を鳴らすと、ヴィクトリア朝の装いをしたメイドさんが出てきた。年齢は俺と同じか少し上くらい。まとめ上げた髪をキャップに収め、端正な顔立ちをしている美少女だ。
メイドを雇うことができるのは貴族などの社会的地位のある家だけなのだが、さすがは武器屋商会会長の自宅……。
「あの、えっと……」
メイドさんと話すのは初めてなので緊張しつつ用件を伝える。
「少々お待ち下さい。ご主人様に確認して参ります」
いったん屋敷の中へ戻り、しばらくして奥へ通された。
「お断りだね」
自室で読書中だったフィヨルドに事情を説明し協力を仰いだが、取り付く島もなく断られた。
「確かにウチは商売上、伝説の武器や防具の話は入ってくる。だけどなんで俺がその情報をお前たちに教えてやらないといけないんだ?」
唯一心当たりのある人物・フィヨルドは不機嫌に答えた。
この街で一番大きなお屋敷に住み、可愛いメイドさんが何人も働いてくれているというのにいったい何が不満だというのか?
どうやら自分だけ冒険に出られなかったことをまだ根に持っているらしい。
あれからも召喚をしたのだろう。フィヨルドの側にはSSR魔獣が増えていた。
「主よ、こうして助力を頼ってきているのだ。力になってはどうか?」
話の分かる常識人ルーブさんがフィヨルドを説得してくれる。
だけどそれでもフィヨルドはしかめっ面をしたままだ。
「ならこういうのはどうだ?」
俺はフィヨルドに一つの提案をする。
「もし伝説の装備を手に入れることができたら、この冒険が終わったあとにそれをフィヨルドに譲るよ。武器屋としてはこれ以上にない目玉商品になるだろ?」
フィヨルドの眉がピクッと反応する。次期会長としてまだ勉強中ではあるが、商人の血はしっかりと引き継がれているようだ。
「ま、まあそういうことなら教えてやってもいいけどよ。
それに教えてもどうせ手に入れることは不可能なんだし」
「それってどういう意味だよ?」
「伝説の武器があると言われているのはこの場所だ」
「ほ、ホントにここなのか……?」
フィヨルドが地図で指さしたのは広漠とした海だった。
照りつける太陽 白い砂浜 どこまでも広がる水平線
「海だー」
俺とエメラダはフィヨルドに教えてもらった魔剣が封印されている海底遺跡を調べるため海にやって来た。
いやー、場所を聞いたときは絶対無理だと思った。海の中、しかも海底なんて人間の魔法では潜ることなんて到底できない。
勇者が世界を救うのに使用していた魔石でできた剣。伝説の中ではもっともポピュラーな魔剣だ。
世界を救ったあと、勇者が遺跡に魔剣を封印したのならば何か海底に潜る方法はあるに違いないのだが、それを調べている時間はない。
伝説の剣はあきらめようとしたら、エメラダが海の中でも呼吸できる魔法を使えるのだという。
エメラダ曰く異世界では基本の魔法らしい。シャルルが異世界の魔法に目をつけたのも頷ける。
「お待たせ」
「ぶふぉっ!」
水着に着替えたエメラダを見た瞬間鼻血が噴き出た。
生地が上下に分かれた定番のビキニタイプだ。
後ろは細い紐で止めているだけで、背中がすべて見えている。きゅっとしまったウエストのくびれがセクシーさに輪をかける。
グリーンの布地が肌を隠す割合は体表面積の1割もないのではないか?
トップは胸のラインに沿うように丸みをおびた曲線をえがいていて、それが胸の形を強調している。豊満な胸が布地を押し返そうとはち切れんばかりだ。大きく開けた谷間に視線が釘付けになる。
すらりと伸びる脚が繋がるボトムはシュッとした三角形で生地面積が少なめだ。
なにより上下ともに花柄のレース編みになっていて、生地の上からでもところどころ肌が見えるようになっている。
(こういうところはしっかりと描写するスタイル)
女子への免疫のない俺にはこれは過激すぎる。
理性を保てるかな?
「へい、彼女。ちょーカワイイね、俺と遊ばない?」
当然といえば当然の展開、これほどまでの美少女がいたら男が寄ってくるのも無理はない。
「気安く話しかけるな。死にたくなければ失せろ」
相変わらず他の人間に対する態度は厳しい。
この手の人間は適当にあしらうのが最善なのだが
「あ? ちょっとばかし可愛いからって調子に乗ってんじゃねぇぞ?」
やっぱりめんどくさいことになった。
「悪いな、俺の彼女なんだ」
その場しのぎの嘘を言ってエメラダの手を引いてこの場を去ろうとする。
「へっ、こんな地味な男が趣味なのかよ。ひょろひょろで情けない奴」
エメラダがピタリと足を止めた。
「キサマ、今なんと言った?」
「女を残して自分だけ逃げ出しそうな情けない男だって言ったんだよ!」
「コイツを侮辱することは許さない!」
エメラダの魔力が高まる。
ヤバイ…、魔法を構成してる。このナンパ男に魔法を放つ気だ。
「そのあたりにしてもらえるかな? その子は僕の友達なんだ」
ナンパ男の後ろから誰かが剣を首筋に突きつけた。
「え? ユイト!?」
「な、なんだよ武器まで出してムキになりやがって」
男は走って去っていった。
「フン。次に視界に入ったら必ず殺すわ」
魔力が治まった。とりあえずは(ナンパ男が)助かった。
「大丈夫かい? こんなところで会うなんて奇遇だね」
なぜかユイトは水着姿だ。いや、海だからおかしくないけど。
エリナとカトレアは服を着たままだ。
「どうしてユイトがここに? バカンスを楽しみに来たとか?」
ユイトの胸元で青い宝石の付いたペンダントがキラリと光った。あんなの前からしてたかな?
「ううん、遊びに来たんじゃないよ。
フォックスと会った街で伝説の魔剣について調べていたんだけど、それがようやくこの海の海底遺跡にあることが分かったんだ」
「なっ!? ユイトもか!」
「“も”ってことはもしかして君たちも?」
ユイトにこちらの事情を話した。
「なるほど、そういうことだったのか。
僕も君たちに協力したいけれど、こちらも別の危機をなんとかするために動いているから手伝うことができないんだ」
ユイトがいたらアシスターもすぐ倒せそうだが仕方がない。
それよりも今問題なのは…
「魔剣は世界を救うためにユイトが手に入れるのよ。そっちは諦めてくれない?」
「そうよ。伝説の剣は勇者であるユイトが持つに相応しいのよ」
エリナとカトレアが言うことももっともだが、俺もみんなと旅を続けるためにはどうしても魔剣の力が必要だ。
「ならこうしたらどうかな?
先に遺跡に辿り着いて魔剣に触れた方が手に入れるというのは?」
「早い者勝ちってことか。分かりやすくていいな」
同時にスタートするため波打ち際に移動する。
「エリナとカトレアは来ないのか?
それにユイトはどうやって海に潜るんだ?」
2人は服を着たまま少し離れたところにいる。
「このペンダントは過去の勇者が遺跡まで潜るのに使ったアイテムでこれを身に付けていれば水の中でも息ができるんだけど、残念ながらこれ一つしかないんだ」
ははぁ、何か方法はあると思ってはいたが、ユイトはちゃんとその方法まで調べて手に入れていたのか。
「よーいスタート!」
カトレアがスタートの合図をする。
3人が海の中へ入っていく。
海の中は小魚がたくさん泳いでいる。日の光が射し込んでオーシャンブルーがとても綺麗だ。
魔法の効果で陸と同じように息ができる。水の中で息ができるというのは不思議な感覚だ。
ふと水面のほうを見るとエメラダが優雅に泳いでいる。
「!」
心臓がドクンとなった。
金色の髪が水の流れでゆらゆらと揺れ、すらりとしたスタイルでしなやかに泳ぐさまを水面に当たる光がキラキラと照らして、言葉にできないほど美しい………。
もうどのくらい泳いだだろか。水深が深くなっても水圧や視界は潜り始めたときとまったく変わらない。ホントにスゴい魔法だ。
遠くに魚たちが泳ぐ海中でひときわ異質な存在感を放つ人工物が見えてきた。
「これが海底遺跡……」
ついに目的の遺跡に到着した。
洞窟内にいたはずが、いつの間にか外にいる。太陽の光が眩しい。
いや違う。洞窟が完全に崩落していたのだ。いち早く気づいたエメラダがバリアを張らなかったら、全員生き埋めになっていた。
「なんだぁ~? まだ生きてるのか、しぶとい連中だな」
この状況をまるで面白がっているような声がした。離れたところに中年の男がいる。
「まぁいいか。直接ぶっ殺せたほうが楽しいからな」
ヤバそうな雰囲気を漂わせる。
「何者ですか!」
「俺はアシスター様の部下イーワンだ。
アシスター様に邪魔者は消すように言われた。お前らはこの俺がなぶり殺してやるよ」
アシスターの部下だって!? 敵はグループで活動してたのか!
「ふん、たかが人間ふぜいが。このアタシに刃向かったことを地獄で後悔する苦痛を与えてやる」
こっちもおっかねー……
だがイーワンと名乗った男はエメラダの気迫に押されることなく、むしろ余裕の笑みを浮かべている。
「ゲヘヘヘ。この姿を見てもその態度を保っていられるかな?」
男は全身にグッと力を込めた。
「グアァァーーーー!!」
天に向かった叫びとともに男の体から魔力柱が立ち上った。
「なっ!?」
一行は驚いた、エメラダやリリルさえも。
男の体がみるみる変化していく。
全身は黒っぽくなり筋肉が盛り上がる。頭からは角が生え、爪が人間と思えぬほど鋭く伸びる。
「な……、なんなんだあの姿は…」
「ガァーッハッハッハ! 見たかっ、これがアシスター様より頂いた力、魔人の姿だ!」
人ならざる者へと変身したイーワン。
「ま、魔人?
エメラダ、あれは魔族とは違うのか?」
「力は魔族のもので間違いないわ。でもあいつが人間であることも確かよ」
エメラダも困惑している。
「その力、どのようにして手に入れたのですか?」
リリルがイーワンに問いかける。
「これから死んでいくお前たちが知る必要のないことだ」
予想していたが、やはり教える気はないらしい。
「アシスター様には邪魔する者は皆殺しにするよう言われたが、そこの2人が俺のものになるなら教えてやってもいいぞ」
エメラダとリリルを指さした。
「キサマッ、誰に向かって口を利いている」
「いいねぇ~、その強気な態度。
特にてめぇが気に入った。快楽に堕ちたらどんな顔で喘ぎ声を上げるか想像しただけでゾクゾクするぜ~」
エメラダを舐めまわすように見つめる。
「ゲス野郎が」
エメラダを隠すようにイーワンとの間に割って入る。
「男に興味はない。まずはお前を殺してやるよ」
イーワンが大地を蹴って迫る。
「『精邪竜流波動』」
俺の背後から蒼白い竜が現れる。
「『爆龍灰燼撃』」
ドバーーーーーーンッ!!
エメラダの放つ強力な攻撃魔法だったが、イーワンの赤い魔法龍に相殺されてしまった。
「風よ!」
お次はリリルが風をつかって周りの崩れた洞窟の岩を投げつける。
「無駄だぁ!」
だがイーワンは素手でそれら全てを粉砕してしまった。
「はぁっ!」
反撃の隙を与えずジョセフが肉薄して上段から剣を振りおろす。
「効かないな」
太い幹でもスパッと斬れそうな鋭い一撃をなんと片腕で受け止めてみせた。
「食らえ!」
「うおぉっ!?」
だがジョセフの本命はこちらだったようだ。
超至近距離からの攻撃魔法がイーワンの腹部を直撃する。
4、5メートル吹き飛ばされるが、体操選手のようにポーズを決めて着地してニヤァ、と笑う。
「つ、強い。SSRクラスの力だ」
「それだけではありませんね。どうやら何かしらの能力を持っているようです」
「その通り。俺の能力は『晴れの戦士』
晴れの日は自身の全てのステータスがアップする能力よ!」
全ステータスアップとかぶっ壊れかよっ!
これで部下ってんなら、アシスターはこれ以上に強いってのか?
「さぁ、続きをしようぜ」
イーワンが両腕に炎を纏いジョセフに接近戦を仕掛ける。
「くっ」
応戦するジョセフだが、爪と刃が交わる度に炎が散って服を焦がす。
「ジョセフ!」
新調した剣を手に加勢しようとするが
「遅い、ザコは引っ込んでろ」
あっけなく回し蹴りを食らってぶっ飛ばされた。
「兄さん!」
注意が逸れた隙を突かれて炎の一撃をうけて転がる。
「うっ、兄さん大丈夫か?」
苦痛に顔を歪めながらも俺の心配をする。
「エメラダのおかげでな」
直前にエメラダとリリルがパートナーに防御魔法を張ってくれてダメージを軽減できたはずだが、それでも決して軽くはなかった。恐ろしい攻撃力だ。
今は2人がイーワンを押さえてくれている。
「『氷花百頭竜』」
数多の頭を持った氷のドラゴンが吐き出す無数の花が回転刃のように対象を襲う。
「『炸裂する聖なる光』」
まばゆい白光が辺り一面を包み込む。
ドカーーーーーンッ!
神魔ダブル魔法が相乗効果となって大きな威力となった。
やっ……たか?
「今のはさすがに堪えたぜぇ~」
「!!」
「ああっ」
「きゃあっ」
土煙から飛び出したイーワンの拳がエメラダとリリルを捉える。
なんて奴だ…。今のを食らってまだ立っていられるなんて。
やはり本人が言ってたように、攻撃力や防御力など全能力が強化されているようだ。
「グヘヘヘ、まずは抵抗できないように弱らせる。それからは大人のお楽しみだぁ」
下卑た笑みでエメラダとリリルに近づく。
そうはさせるか!
「『陽光爆術』」
「ぐわっ、目が!」
イーワンの眼前で光が爆発する。
目眩ましが効いてる間にジョセフと前線に復帰する。
「ガキが! 調子に乗りおって。
気が変わったぞ。まずはお前らから肉片になるまでこの爪で切り刻んでやる」
「ざけんなクソジジイが! 俺のエメラダに手出しさせねぇ!」
再び両腕に炎を宿して飛びかかってくる。
「『煌魔翠玉弓』」
体勢を立て直したエメラダが放った翡翠の光が両の爪を全て貫き折った!
「うぎゃあーーーっ!!」
激痛にその場でうずくまって悶え苦しむ。
「ずいぶん調子に乗ったこと言ってくれるじゃないの? でも不思議とアンタといると気分がいいわ」
「???」
隣に立ったエメラダはなぜか機嫌がいい。手にはイーワンの爪を射ち抜いた、魔法で生み出された弓が握られている。
翠の魔力が集束して具現化したそれは、太陽の光をキラキラと反射するエメラルドグリーンの海を思わせる輝きをしたとても綺麗な弓だった。
一方、イーワンは血走った目でこちらを睨む。
「ぐそぉ、よくもやりやがったな! 全員ぶち殺してやる」
折れた爪の代わりに炎が爪を形成する。
「援護しなさい、神」
「分かりました」
「グアァーー」
怒りのままに突っ込んでくる。
「『神聖なる裁槍』」
光の槍が大地に突き刺さり、イーワンの行く手を遮った。
「こしゃくな真似を。 まとめて焼き殺してやる!
『爆龍灰燼撃』」
赤い龍が牙をむいて襲いくる。
「『真なる光』」
リリルが得意とする魔法で龍を迎え撃つ………かと思いきや、エメラダに向かって放ったじゃないか!
「何やってんだ!?」
驚く俺とは対照的にエメラダは冷静にリリルの魔法に弓を引く。
「これで終わりよ。あの世で後悔するがいい」
エメラダの射った矢はリリルの光を取り込み、さらには赤龍をも飲み込んで強大な魔力の奔流となってイーワンを射貫いた。
「げぎゃあーーーっ! そ、そんな…魔人となったこの俺が……? バ…カ…な」
イーワンの身体が灰となって風に飛ばされていった。
「す、すごい……」
エメラダが矢を放った跡が、半球状に大地を抉って真っ直ぐに遥か先まで続いていた。
「相手の魔法を吸収して屠る魔王固有の魔法武器・煌魔翠玉弓
私もあの武器には苦しめられました」
当時のことを思い出したのだろうか、重く呟いた。
「やったじゃないかエメラダ!」
「このアタシがあの程度の相手に負けるわけないでしょ」
勝って当然とばかりにフンッ、と鼻を鳴らした。
全盛期の魔王や神ならそうなのかもしれないが、今の戦力では決して油断できる相手ではなかった。特に俺は………
「アシスターのことを聞き出せなかったのは残念だけど、部下が今の男だけとは限らない。
一刻も早くこのことを学園長先生を通して世界各国に知らせないと」
「とはいえ皆さん消耗していますから。今日は近くの村で休みましょう」
夜、宿の部屋のバルコニーでぼーっと外を眺めているところにエメラダが訪ねてきた。
「どうしたのよ、今日の戦いのあとから元気ないわね? 何か考え込んでるみたい」
この旅に出発したときから、いや、それよりも前から感じていたこと、胸の内をエメラダに話す。
「俺っている意味ないよな? 守ってもらってばかりで戦闘では役立たずだし、それどころか今日は俺のせいでジョセフを危険な目にあわせた。
この旅に俺は必要ないんだよ」
口を開くと堰を切ったように自分に対する不満が溢れだす。
ぶっちゃけ俺はエメラダを仲間に引き入れるためのエサで、こんな物語の主人公が経験するような冒険は場違いなだけだ。
「アタシにはアンタが必要よ。アンタがいるから力を失っていても、それ以上の力を発揮できるの」
間接的には役に立てているのかもしれない。けれども俺の心のもやもやは晴れない。
「それでも納得できないのなら、自衛できるようになれば少しは気が楽かしら?」
「そりゃ足を引っ張らなくなれればね。でも今から修行したってどのくらい時間がかかるか分からないぜ?」
それに小さい頃からジョセフと比較され俺もそれなりに努力はしたが、才能のないことがハッキリしただけだった。
「世界には伝説に名を残す装備が存在するわ。そういったものを身に付ければ、これからの戦いでも自分の身を守ることができるじゃない。
この世界でもそういう類いの武器や防具があるんじゃないの?」
「突拍子もない話だな。伝説くらいは聞いたことあるけどそんなどこにあるかも分からないもの、それこそ見つけるのに時間がいくらあっても足りやしないよ」
市販されてる装備に比べれば、使いこなせなくても戦力を大幅にアップすることができるのは分かる。見つけることができればの話だが…。
「誰か伝説の武器に詳しい人間はいないの?」
「都合よくそんな知り合いいるわけが……あっ」
たった一人だけ心当たりがあった。
翌日ジョセフとリリルに話をして、街に戻って二人が学園長に報告に行ってる間に俺とエメラダはその人物に会いに行くことにした。
街に帰ってきて伝説の武器に詳しそうなフィヨルドのもとを訪ねた。
「デカい屋敷だな………」
何十部屋もありそうな巨大な建物はもはや家というより城に近い。
「どちら様でしょうか?」
豪華な屋敷に気圧されながら呼び鈴を鳴らすと、ヴィクトリア朝の装いをしたメイドさんが出てきた。年齢は俺と同じか少し上くらい。まとめ上げた髪をキャップに収め、端正な顔立ちをしている美少女だ。
メイドを雇うことができるのは貴族などの社会的地位のある家だけなのだが、さすがは武器屋商会会長の自宅……。
「あの、えっと……」
メイドさんと話すのは初めてなので緊張しつつ用件を伝える。
「少々お待ち下さい。ご主人様に確認して参ります」
いったん屋敷の中へ戻り、しばらくして奥へ通された。
「お断りだね」
自室で読書中だったフィヨルドに事情を説明し協力を仰いだが、取り付く島もなく断られた。
「確かにウチは商売上、伝説の武器や防具の話は入ってくる。だけどなんで俺がその情報をお前たちに教えてやらないといけないんだ?」
唯一心当たりのある人物・フィヨルドは不機嫌に答えた。
この街で一番大きなお屋敷に住み、可愛いメイドさんが何人も働いてくれているというのにいったい何が不満だというのか?
どうやら自分だけ冒険に出られなかったことをまだ根に持っているらしい。
あれからも召喚をしたのだろう。フィヨルドの側にはSSR魔獣が増えていた。
「主よ、こうして助力を頼ってきているのだ。力になってはどうか?」
話の分かる常識人ルーブさんがフィヨルドを説得してくれる。
だけどそれでもフィヨルドはしかめっ面をしたままだ。
「ならこういうのはどうだ?」
俺はフィヨルドに一つの提案をする。
「もし伝説の装備を手に入れることができたら、この冒険が終わったあとにそれをフィヨルドに譲るよ。武器屋としてはこれ以上にない目玉商品になるだろ?」
フィヨルドの眉がピクッと反応する。次期会長としてまだ勉強中ではあるが、商人の血はしっかりと引き継がれているようだ。
「ま、まあそういうことなら教えてやってもいいけどよ。
それに教えてもどうせ手に入れることは不可能なんだし」
「それってどういう意味だよ?」
「伝説の武器があると言われているのはこの場所だ」
「ほ、ホントにここなのか……?」
フィヨルドが地図で指さしたのは広漠とした海だった。
照りつける太陽 白い砂浜 どこまでも広がる水平線
「海だー」
俺とエメラダはフィヨルドに教えてもらった魔剣が封印されている海底遺跡を調べるため海にやって来た。
いやー、場所を聞いたときは絶対無理だと思った。海の中、しかも海底なんて人間の魔法では潜ることなんて到底できない。
勇者が世界を救うのに使用していた魔石でできた剣。伝説の中ではもっともポピュラーな魔剣だ。
世界を救ったあと、勇者が遺跡に魔剣を封印したのならば何か海底に潜る方法はあるに違いないのだが、それを調べている時間はない。
伝説の剣はあきらめようとしたら、エメラダが海の中でも呼吸できる魔法を使えるのだという。
エメラダ曰く異世界では基本の魔法らしい。シャルルが異世界の魔法に目をつけたのも頷ける。
「お待たせ」
「ぶふぉっ!」
水着に着替えたエメラダを見た瞬間鼻血が噴き出た。
生地が上下に分かれた定番のビキニタイプだ。
後ろは細い紐で止めているだけで、背中がすべて見えている。きゅっとしまったウエストのくびれがセクシーさに輪をかける。
グリーンの布地が肌を隠す割合は体表面積の1割もないのではないか?
トップは胸のラインに沿うように丸みをおびた曲線をえがいていて、それが胸の形を強調している。豊満な胸が布地を押し返そうとはち切れんばかりだ。大きく開けた谷間に視線が釘付けになる。
すらりと伸びる脚が繋がるボトムはシュッとした三角形で生地面積が少なめだ。
なにより上下ともに花柄のレース編みになっていて、生地の上からでもところどころ肌が見えるようになっている。
(こういうところはしっかりと描写するスタイル)
女子への免疫のない俺にはこれは過激すぎる。
理性を保てるかな?
「へい、彼女。ちょーカワイイね、俺と遊ばない?」
当然といえば当然の展開、これほどまでの美少女がいたら男が寄ってくるのも無理はない。
「気安く話しかけるな。死にたくなければ失せろ」
相変わらず他の人間に対する態度は厳しい。
この手の人間は適当にあしらうのが最善なのだが
「あ? ちょっとばかし可愛いからって調子に乗ってんじゃねぇぞ?」
やっぱりめんどくさいことになった。
「悪いな、俺の彼女なんだ」
その場しのぎの嘘を言ってエメラダの手を引いてこの場を去ろうとする。
「へっ、こんな地味な男が趣味なのかよ。ひょろひょろで情けない奴」
エメラダがピタリと足を止めた。
「キサマ、今なんと言った?」
「女を残して自分だけ逃げ出しそうな情けない男だって言ったんだよ!」
「コイツを侮辱することは許さない!」
エメラダの魔力が高まる。
ヤバイ…、魔法を構成してる。このナンパ男に魔法を放つ気だ。
「そのあたりにしてもらえるかな? その子は僕の友達なんだ」
ナンパ男の後ろから誰かが剣を首筋に突きつけた。
「え? ユイト!?」
「な、なんだよ武器まで出してムキになりやがって」
男は走って去っていった。
「フン。次に視界に入ったら必ず殺すわ」
魔力が治まった。とりあえずは(ナンパ男が)助かった。
「大丈夫かい? こんなところで会うなんて奇遇だね」
なぜかユイトは水着姿だ。いや、海だからおかしくないけど。
エリナとカトレアは服を着たままだ。
「どうしてユイトがここに? バカンスを楽しみに来たとか?」
ユイトの胸元で青い宝石の付いたペンダントがキラリと光った。あんなの前からしてたかな?
「ううん、遊びに来たんじゃないよ。
フォックスと会った街で伝説の魔剣について調べていたんだけど、それがようやくこの海の海底遺跡にあることが分かったんだ」
「なっ!? ユイトもか!」
「“も”ってことはもしかして君たちも?」
ユイトにこちらの事情を話した。
「なるほど、そういうことだったのか。
僕も君たちに協力したいけれど、こちらも別の危機をなんとかするために動いているから手伝うことができないんだ」
ユイトがいたらアシスターもすぐ倒せそうだが仕方がない。
それよりも今問題なのは…
「魔剣は世界を救うためにユイトが手に入れるのよ。そっちは諦めてくれない?」
「そうよ。伝説の剣は勇者であるユイトが持つに相応しいのよ」
エリナとカトレアが言うことももっともだが、俺もみんなと旅を続けるためにはどうしても魔剣の力が必要だ。
「ならこうしたらどうかな?
先に遺跡に辿り着いて魔剣に触れた方が手に入れるというのは?」
「早い者勝ちってことか。分かりやすくていいな」
同時にスタートするため波打ち際に移動する。
「エリナとカトレアは来ないのか?
それにユイトはどうやって海に潜るんだ?」
2人は服を着たまま少し離れたところにいる。
「このペンダントは過去の勇者が遺跡まで潜るのに使ったアイテムでこれを身に付けていれば水の中でも息ができるんだけど、残念ながらこれ一つしかないんだ」
ははぁ、何か方法はあると思ってはいたが、ユイトはちゃんとその方法まで調べて手に入れていたのか。
「よーいスタート!」
カトレアがスタートの合図をする。
3人が海の中へ入っていく。
海の中は小魚がたくさん泳いでいる。日の光が射し込んでオーシャンブルーがとても綺麗だ。
魔法の効果で陸と同じように息ができる。水の中で息ができるというのは不思議な感覚だ。
ふと水面のほうを見るとエメラダが優雅に泳いでいる。
「!」
心臓がドクンとなった。
金色の髪が水の流れでゆらゆらと揺れ、すらりとしたスタイルでしなやかに泳ぐさまを水面に当たる光がキラキラと照らして、言葉にできないほど美しい………。
もうどのくらい泳いだだろか。水深が深くなっても水圧や視界は潜り始めたときとまったく変わらない。ホントにスゴい魔法だ。
遠くに魚たちが泳ぐ海中でひときわ異質な存在感を放つ人工物が見えてきた。
「これが海底遺跡……」
ついに目的の遺跡に到着した。
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