チートやガチ勢に負けないまったり勢の冒険譚

葉十進部

文字の大きさ
上 下
1 / 17
第一章

チュートリアル

しおりを挟む
「まずは諸君、入学おめでとう」
壇上に上がった初老の男性は眼前の新入生達を見渡して話を始めた。
「わしはこのアプリゲーム学園の学園長ウン・エイだ。
 皆も知っての通り、この世界はモンスターの驚異にさらされている。勇敢な戦士達が日々戦ってはいるが、モンスターの勢いは止まってはいない。
 この学園は冒険に必要な知識を学んでもらうと同時に、新たに開発された召喚魔法で異世界の生物を召喚・契約し、モンスターに対抗する英雄を育成するのが目的である」
 学園長は熱がこもったように握り拳を作り演説を続けた。
「諸君には入り口で一人につき一つ召喚魔法に必要な魔石を配ったが、もらっていない者はおるかな?」
 言われて俺はポケットに入れていた魔石を取り出した。
 魔石はクリスタルのように透き通った綺麗な青色をしていて淡く輝いている。
「この魔石ってかなり高価な物なのに全員に配るって太っ腹だよな」
 魔石に魅入っていると、隣にいた中学からの友人・アオイが話しかけてきた。
「それだけこの学園が新しい冒険者の育成に力を入れているってことだよな」
 入学式に魔石を支給するとパンフレットに書いてあったことがこの学園に入る決め手となって、俺はこのホームの街にやって来た。
 冒険者に憧れはあるが剣や魔法の才能はからっきしだ。だがそんな才能の無い人間でも召喚魔法によって喚ばれた魔獣の力を借りることで、英雄になるチャンスが与えられる。そのため俺は前からこの学園に強い興味を持っていた。
 もし魔石が自腹だったなら一般学生に買えるはずもなく、入学を諦めていただろう。
「ではさっそく召喚をしてもらおうと思うのだが、全員にやり方を説明するために出席番号一番の生徒は前に出てもらえるか」
「オレか? じゃあなフォックス、行ってくるぜ」
 物語が始まってようやく名前を呼ばれたことに安堵しつつアオイを見送った。
「魔方陣はあらかじめここに描かれている。陣の中央に魔石を置けば、自動で魔法が発動する」
 生徒全員に声を届けアオイを魔法陣の中央へと案内する。
「召喚される異世界の生物はその魔力によって、N・R・SR・SSRにランク分けされる。どのランクのものが現れるのかはまったくの運だ。
 召喚が成功すれば、手で触れることで精神にリンクが生まれ契約完了となる」 
 アオイは少し緊張してるっぽく頷いて石を陣に置いた。
「!!」
 魔石に反応して魔法陣が強く光りだした。
 しばらくすると光が収まり、代わりに魔法陣の上の影が一つ増えていた。
 大きさは大型犬くらい。四足で尻尾が二つ、頭には鬼のように2本の角がありその間から背中にかけて黒いたてがみがあった。
 アオイは学園長に促され恐る恐る初めて見る異世界の生き物に手を伸ばした。
 現れた魔獣は喚んだ者が誰なのか理解しているのか、アオイの方をじっと見つめ手が触れるのを待っているみたいだ。
「ふむ」
 その間、学園長は懐から何やら魔道具を取り出し魔獣に向けていた。
「ぐぅ」
 アオイの手が頭に触れると、それまでじっとしていた魔獣がそろりと動きだし主と認めた人間の傍らに移動した。
「おぉーっ!」
 どこからともなく拍手が上がり、瞬く間に会場全体を包み込んだ。
「よくやったな。その魔獣のランクはRだ。
 確率はNが50% R40% SR9% SSRで1%と言われている」
 なるほど、あの魔道具は魔力を計るための物だったんだな。
「それでは出席番号2番から順に並ぶのだ」
 ぞろぞろと動く生徒の波に乗って俺も列へと歩きだした。

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

成長チートと全能神

ハーフ
ファンタジー
居眠り運転の車から20人の命を救った主人公,神代弘樹は実は全能神と魂が一緒だった。人々の命を救った彼は全能神の弟の全智神に成長チートをもらって伯爵の3男として転生する。成長チートと努力と知識と加護で最速で進化し無双する。 戦い、商業、政治、全てで彼は無双する!! ____________________________ 質問、誤字脱字など感想で教えてくださると嬉しいです。

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優
ファンタジー
友人や先輩達と共に異世界に召喚、と言う名の誘拐をされた桂木 博貴(かつらぎ ひろき)は、キャラクターメイキングで失敗し、ステータスオール1の最弱勇者になってしまう。すべてがステータスとスキルに支配された理不尽な異世界で、博貴はキャラクターメイキングで唯一手に入れた用途不明のスキルでチート無双する。

闇属性転移者の冒険録

三日月新
ファンタジー
 異世界に召喚された影山武(タケル)は、素敵な冒険が始まる予感がしていた。ところが、闇属性だからと草原へ強制転移されてしまう。  頼れる者がいない異世界で、タケルは元冒険者に助けられる。生き方と戦い方を教わると、ついに彼の冒険がスタートした。  強力な魔物や敵国と死闘を繰り広げながら、タケルはSランク冒険者を目指していく。 ※週に三話ほど投稿していきます。 (再確認や編集作業で一旦投稿を中断することもあります) ※一話3,000字〜4,000字となっています。

神様のお導き

ヤマト
ファンタジー
 ブラック企業に務める会社員、山上拓斗が仕事の帰り道不良に絡まれ、死にそうになった時、ひょんなことから異世界トリップ。  そこに住む美男美女の神様たちとゆるがみライフを送ることに!  神様の身の回りのお世話をこなす、ゆるくまったりとした日常小説です。 ※序盤のうちは説明多いです。なるべく1話完結目指してます。 ※説明を読むのが面倒でしたら、チュートリアルまで飛ばして下さい。

ユグドラ・ピュセル――世界を支える大樹とうら若き少女――

凄音キミ
ファンタジー
『――ワタシノコエガキコマエスカ』  突如として頭の中に直接響いた不思議な声。主人公(オリヴィエ)がその声の|主《あるじ》(アンジェ)と出会ったのは、年端も行かぬ幼少のころのことだった。  この世界を支え、信仰の対象ともなっている一本の巨大な樹、“世界樹”その世界樹の精であると語るアンジェの言葉を信じ、幼きオリヴィエは世界樹の果実を口にする。

処理中です...