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ゆりすみれ

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47【眞空Diary】続く不穏

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 窓際の席で頬杖をつきながらぼんやりと空を見上げている純一に、眞空はつかつかと歩み寄った。授業の合間の休憩時間は、目前に迫った夏休みに浮き足立つ生徒のざわめきでいつもより賑やかだった。

「純一」

 軽く呼んでみるが返事はなく、まだ絶交を貫く気なのだと眞空も身構える。雲ひとつない夏空に視線を奪われている純一に構わず、そのまま話し続けた。

「おれはいいよ、絶交でもなんでも。でも冬夜は関係ないだろ。あいつとは普通にしてやってくれよ」

 ずいぶんと幼い時分に親に捨てられ愛情の量が人より足りなく生きてきた弟だから、もうこの先、あまり人間関係では悩ませたくないという純粋な兄心だった。

「冬夜が傷ついた顔すんの、もう見たくねぇんだよ」

 そんな顔はひばり園にいるときに散々見てきたと、眞空はあまり笑わなかった幼い冬夜を思ってそっと目を伏せる。

「……どーせ、ガキだと思ってんだろ、俺のこと」

 窓の外を見つめたまま、純一が渋々口を開いた。

「冬夜を傷つけたくない……ね。過保護な彼氏ですこと」

「……」

「ま、冬夜は許してやるよ、なんだかんだ言って好きだった子だし」

 あまり抑揚なく、純一は淡々と告げていく。

「でもおまえは……まだなんかムカつくから、しばらくこのままな」

 つまらなそうにそう言い捨てると、純一は眞空の方をちらっとも見ないままに席を立ち、教室から出ていった。眞空は大きなため息を隠すことなく吐き出すと、とぼとぼと自分の席に戻り豪快に机の上に突っ伏す。

 物事ってひとつ歯車がうまく噛み合ったかと思ったら、今度は違うところが噛み合わなくなるんだな……。

 人生ってうまくいかねぇのな……とまだ18年しか生きていない眞空は、うまくいかない人生のもどかしさを思い知ったように、大袈裟に再びため息をついた。
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