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⑩
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「なぁ、オレ今からB組の女の子たちとカラオケ行くけど、今日は桜助も一緒に行かね?」
歩きスマホの郁弥が、半歩前を行く桜助に朗らかにそう言った。返信でも打っているのか指だけは忙しく動かし、ほとんど感覚だけで桜助の背についていく。
「……は? なんで?」
進行方向から視線を動かさないまま、桜助は面倒そうに理由を問う。
「たまにはいいじゃん! 桜助連れてこいってちょくちょく言われてんだよ。おまえと仲良くしたがってる女子、結構いるからさー」
「……行かね」
女子と聞いて桜助が秒で答えた。考える余地もないと、ばっさりと切り捨てる。
「わー、冷たー。たまにはオレの顔立ててくれたっていいのにさー。毎回桜助を連れてこないオレ、マジで使えねぇやつなんだけど!」
すべての授業が終わり、桜助と郁弥は下校のため昇降口に向かって廊下を歩いていた。くたびれた鞄を気だるげに肩に掛けてだらだらと歩いているだけなのだが、容姿の派手な二人が並んでいるとそれだけで目立つらしく、すれ違う女子たちがざわざわと色めき立つ。
郁弥くん! 高橋くん! などと声を掛けられると、郁弥だけは律儀にスマホから顔を上げ、愛想よく手を振ったり微笑みかけたりしていた。ほとんど本能的に自分の存在を売り込んで人をたらし込むのが得意な郁弥を横目に、桜助は改めてこの男と自分は正反対の性質なのだと認識させられる。何故いつも一緒にいるのか、時々本当に理解に苦しむくらいだった。
歩きながらずっと携帯に釘付けになっている郁弥と違って、今日の桜助は携帯をまったくいじっていなかった。いつもなら毎日どころか数時間おきにチェックしている『Bloody Swan』も、今日は閲覧する余力がない。桜助は朝からずっと、ただひとりのことを思ってひどく落ち込んでいた。
昨日紘夢とあんな風に別れてしまって、さすがに子供じみていたと反省する。突然部屋に押しかけたのは自分の方なのに、一方的に責め立てて自分勝手に傷つき、逃げるように帰ってきてしまった。自転車で夜風を切りながら駅までの帰路をたどったときの乾いた虚しさや、ホームで地下鉄を待っているときの白けた静寂を思い出し、桜助は昨夜のどうかしていた自分をひたすらに悔い続ける。あまりにも冷静ではなかった。
そもそも紘夢は、百瀬が部屋に来ていた事情をきちんと説明してくれていた。ただの仕事だと、紘夢は言っていた。それを素直に受け入れられずに一方的な疑いのまなざしで恋人を責めてしまったのは自分の非でしかない。いくら頭に血がのぼっていたとはいえこんなにも余裕のない男では本当に紘夢に愛想を尽かされてしまうと、桜助は考えれば考えるほど肩を落とすばかりだった。
ひどい臆病者だ。当然だ、藁にもすがる恋なのだから。
裏切られることも、捨てられることも、ただ絶望的に怖い。つなぎとめておく術を知りたくて、もがく。
「なー、行こうぜ! なっ! 今日は絶対行った方がいいって!」
朝から一日中沈んでいる桜助にもちろん気づいていた郁弥が、親友を浮上させてやろうと明るく誘ってやる。ほとんど何も入っていないペタンコの鞄をだるそうに持ち直した桜助のしおれた目は、朝から変わらずに虚空を漂っていた。
「うるせぇな……行かねぇって言ってんだろ。……つうか俺なんかが行ったら逆におまえの顔が立たねぇんじゃねぇの」
そういう遊びの場でうまく立ち回れる自信はまったくなく、かえって郁弥の印象を悪くしかねないと思っている桜助は、こんな風に誘われてもいつも行きたがらなかった。今日なんてなおさら絶対に行くべきではない。
「あー、自意識過剰ね、それ。オレのこと誰だと思ってんの。おまえの空気読めない無愛想くらいでオレの株下がるわけないでしょ」
郁弥は自信満々にそう言ったあと、少し調子を落として桜助に告げる。
「てかさ真面目な話、おまえ一回リセットした方がいいわ。今日ずっと、すっげーひどい顔してる。見るに堪えないって感じ」
「……っ」
郁弥にまで気を遣われるとは思っていなかった桜助が、悔しさと情けなさで口唇を引き結んだ。勘のいい、周りがよく見えている聡い親友が憎くて、やさしくて、桜助はますます自分が惨めになる。
「そういうときはさ、何もかも忘れてパーッと騒いじゃうのがいいんだって。おまえあんま女子としゃべんないけど、一緒に遊んでみたら意外と楽しいかもよ? ……な? そんな難しく考えずに行こうぜ」
桜助が気負わないように、郁弥は抑え気味に楽しさを伝えた。とにかく今はどこか楽しいところへ連れ出して、この滅入っている友人を少しでも楽にしてやれたらと郁弥の正義が疼く。
「そんな死にそうな顔してたら普通に心配すんだよ。……とく……」
徳ちゃん、とは言ってやれなくて、言葉を切る。
郁弥は桜助の口からそれを聞くまで、知らない振りをしてやろうと心に決めていた。それでも親友が落ち込んでいる理由の在り処は、教室にいればすぐにわかった。
「……好きな人と、なんかあった?」
「……」
何も答えてやれない桜助が、廊下の角を曲がったところで急に立ち止まった。スマホを片手に半歩後ろから適当についてきていた郁弥は、立ち止まった桜助に気づかずそのままその大きな背中に突っ込んでしまう。
「わ!?」
ぶつかった反動でよろけた郁弥の手からは携帯が勢いよく飛び出し、桜助の足元にカランと音を立てて落ちた。
「イッテ……なんだよ急に止まんなよ。あーもう! 画面割れてねぇよな!? 替えたばっかなんですけどこれ!」
わぁわぁ文句を言いながら同じように立ち止まった郁弥は、桜助の足元に転がった携帯を拾って親友の隣に並ぶ。一体どうしたのかと郁弥が隣を見ると、桜助は虚ろな眼で少し先に見える光景をじっと眺めていた。
「好きな人となんかあった……って言ったら、おまえ助けてくれんの……?」
隣にいる郁弥にさえ聞こえづらいほどの弱々しい声でつぶやいた桜助の視線の先には、数人の女子生徒に囲まれている紘夢と百瀬の姿があった。職員室に戻る途中の廊下でつかまったらしい二人は、輪の中心に置かれて、まだ全然しゃべり足りない女子たちの怒涛の会話に巻き込まれている。それは百瀬が実習に来てから嫌というほどよく目にする光景だった。
「桜助?」
桜助から救いを求める声を聞くのはおそらく初めてで、郁弥は少し驚いて友の名を呼んだ。見ていられないほどに憔悴している桜助は、目の前で繰り広げられている光景を呆然と目に映す。
紘夢は相変わらず頼れるさわやかお兄さん先生の顔で楽しそうに女子たちと談笑していたが、百瀬は少し億劫そうにそんな紘夢と女子生徒のやり取りを傍観していた。指導教員の手前その輪から自分だけ抜け出すこともできず、渋々その場に留まっているような味気なさで百瀬は立ち尽くしている。
「徳ちゃんと百瀬センセってホント仲いいよねー! いっつも一緒にいるし、べったりって感じ!」
周囲を気にせずわいわいとはしゃぐ女子たちの大きな声は、心を手放しかけている桜助の耳にも否応なしに滑り込んできた。
「っていうか、なんか怪しくなーい? 二人とも彼女いないんでしょ? わたし実はちょっと疑ってるんだよねぇ」
「え! マジ!? 実はそういう関係なの!? あー、でも似合っちゃうかもね、二人なら」
「百瀬先生は徳ちゃんの教え子だったんでしょ? 卒業から数年を経て教育実習で再会、そして運命的に指導教員……アリだよね、芽生えちゃうよね」
言いたい放題の女子たちの頭に、紘夢がエアげんこつを順番にくらわせていく。それさえも楽しそうに、女子たちは紘夢のげんこつの仕種をきゃっきゃとかわしていた。
「おいおい、おまえらおれらのことそんな目で見てたわけ? どこをどう見たらそうなるんだよ……」
呆れた紘夢が参った顔で隣の百瀬に視線を流すと、さすがの百瀬も微かに苦い表情を浮かべて紘夢を見返す。
「どっからどう見てもそう見えちゃうよ! 徳ちゃんってみんなにやさしいから誰か特別な人っていなさそうだけど、百瀬センセはなんか違う気がする。すごく大事に面倒見てるって感じ」
「そうそう! 過保護だよね」
「二人のことそういう風に噂してる子、結構いるよね。まぁ女子は妄想するのが仕事みたいなとこあるし、あきらめなよ」
「あきらめるってなんだよ……。おれはね、指導教員としての責務を全うしてるだけなの。百瀬って賢いのに授業のセンスないからさ、面倒見ざるを得ないっていうか……放っておけないだろ。それに実習の出来はおれの評価にも関わるし。一緒にがんばってんの、おれたち。な? 百瀬」
同意を強制するような言い方で紘夢が百瀬に微笑みかけたが、百瀬は相変わらずの仏頂面でツンと不機嫌そうにしているだけだった。早く帰りたそうに苛立ちを募らせている。
「わぁー、徳ちゃんってやっぱ超やさしいし! 手の掛かる子ほど可愛いって言うしね」
「百瀬先生愛されてるー」
百瀬が何も言わないのをいいことに、また女子たちがいい加減なことをあれこれと騒ぎ出した。何を言っても火に油を注ぐだけだと悟った紘夢は、女子たちの勢いに負けてうっすらと苦笑いを浮かべるだけである。
「……大丈夫?」
その場から動けないでいる桜助に、郁弥が不安そうに訊く。このままでは引き上げられなくなるほど桜助が深く沈むだけな気がして、郁弥は早く親友を明るい場所へと連れ出してやりたかった。
「ほら桜助、帰るぞ」
「……なんで」
重たい口を開いた桜助からは、誰かを責める三文字だけが弱く告げられる。
昨日あんな風にすれ違ってしまったのに、なんで何もなかったようにけろっとしていられるのか。勝手にそんな噂をされて、なんで平気でいられるのか。なんでそんな穏やかな顔で、百瀬に微笑みかけられるのか。
桜助の中でまっすぐに張られている心の均衡を保つ糸に、左右から強い力が加えられる。糸はきつく引っ張られ、触れたものすべてを傷つけそうなほど鋭利に張られていく。
こんなに動揺して落ち込んでいるのに、いちばん気を遣われたくない郁弥にさえ気を遣われるほど沈んでいるのに、紘夢にとっては所詮その程度のことだったのかと桜助が絶望する。
紘夢はずるい。この程度のことでいちいち落ちる自分の方がどうかしているのかと、桜助はもうよくわからなくなった。これもみんな自分が17のガキで、紘夢が28の大人だからなのか。自分が生徒で、紘夢が教師だからなのか。
歳だって立場だって本当はそんなものなんの言い訳にもならないのに、桜助は自分の足りてない部分にどうにか理由を付けて辻褄を合わせようとする。歳の差も、教師と生徒であることも、いちばん指摘されたくないことのはずなのに、わざわざ過剰にハンデにしてしまっているのは他の誰でもない桜助自身だった。
──紘夢はずるい。なんで俺ばっか……俺ばっかりが……!
極限まで張り詰めた糸が、ギンッと音を立てて切れた。荒々しくて醜いものが桜助の中を駆け巡る。いつも掲げているはずの自分が守ってやらねばというあたたかい正義は、その荒々しくて醜いものにあっさりと呑み込まれた。紘夢に対して初めて芽生えた悪は、大切なものを傷つけるためだけに桜助の理性を引っ掻き回す。
目に前に広がる生ぬるい平和をぶち壊して、怒り狂う感情のままに、恋人を傷つけたかった。
「……郁弥、カラオケ、今度また誘え」
視線は紘夢が見える輪に残したまま、怒りに震えそうになる声を精一杯に抑えて桜助が言った。
「え? カラオケ来てくれんの……? え? 今からじゃなくて、今度?」
「たまには女と遊ぶのもいいよな……なーんも考えずにさ……。でもまぁ、今度だ今度」
まるで気持ちの入ってないうわ言に、郁弥が桜助の狂気を見る。
「……カラオケ、今からでもいいん……」
「悪ぃ郁弥、俺……今から全部ぶっ壊しちまうかもしんねぇわ」
すると桜助は郁弥をその場に置いて、突然勢いよく駆け出した。
「え!? 桜助!? ちょ、どうした!?」
引き止めようと思わず伸ばしてしまった手を、瞬時に我に返った郁弥は慌てて引っ込める。野暮なことはしないのが郁弥の正義だ。置き去りにされた者は置き去りにされた者らしく、郁弥は大人しく廊下の端でぽつんと取り残されてやった。
桜助は、紘夢に向かって一目散に走った。周りにいた女子たちを割って紘夢に近づき、輪の中心にいた担任教師の手首を乱暴につかむ。
突然背後から自分たちの間をすり抜けてきた長身の男に驚いて、女子たちがキャッと短い悲鳴を上げた。その長身が桜助だとわかると、怪訝そうな、それでいて好奇に満ちたような視線を、まるで示し合わせたかのように一斉に桜助と紘夢に向ける。
さっきまで無愛想と無表情の見本のようだった百瀬でさえも、桜助の突発的な乱入には目を丸くしていた。桜助が何をするつもりなのかと、あまり尋常ではなさそうな問題児を警戒して様子をうかがう。
紘夢はその輪の中の誰よりもいちばん驚いていて、強くつかまれた手首を冗談にしてやさしく解いてやることも、いつも教室でしているように桜助の名を呼んでやることも、何かを訴えるように駆け寄ってきた桜助の目をまっすぐに見て笑いかけてやることもできなかった。紘夢はただ驚いて、何もできなかった。
「ちょっと、いい? ……徳ちゃん」
紘夢が嫌がるカモフラージュの呼び方で桜助が恋人の名を呼ぶ。みんながいる前では、そうとしか呼べない。先生の特別で、いてはいけない。
聞いておいて結局紘夢に否応の返事をする暇を与えないまま、桜助はつかんだ手首の力を緩めることなく、先生をさらうように連れ出した。
何も寄せ付けようとしない、紘夢以外のすべてを拒絶するような気迫の桜助に、輪の中の誰もがただ圧倒されていた。誰も桜助を呼び止めることはできなかった。紘夢もされるがままに手首を引かれ、輪の中から抜け出す。
残された百瀬と女子たちは唖然として、足早に遠ざかる二人の背中をしばらく見つめていた。この短い時間に一体何が起こったのかと、竜巻のような出来事に誰もが目を瞬く。
「えー、あいつ徳ちゃん誘拐しちゃってんじゃん……」
まだ衝撃から解放されない輪に郁弥が近づいて、ちゃっかり百瀬の隣に滑り込んだ。女子たちは女子たちで突然降ってきた謎の考察に忙しいらしく、郁弥が近づいてきたことには目もくれない。
少し離れたところから一連の出来事を観察していた郁弥もさすがに意表を突かれたらしく、呆れながら百瀬に話しかけてみる。
「桜助ってさ、いっつも涼しい顔をしてなんでもわかってますーみたいにオトナぶっちゃってるくせに、一旦思い込んだら結構イノシシ型なんだよなぁ。チョトツ……なんとかってやつ? 根本がガキなのに普段無理してっからこうなるんだよ」
百瀬に話しても仕方のないことだと思ったが、郁弥は桜助をただの悪にはしたくなかった。これが、桜助が葛藤の末に選んだ最良だったのだと信じている。
「……うーん、でもあれ大丈夫か? あいつ結構追い込まれてたけど。徳ちゃん無事でいられる? なんか、校舎裏に連れていかれて殴られたりとかしねぇよな……?」
とても平常心を保っていたとは思えない親友の様子に、郁弥がふと不安になる。
「あれが思春期の暴走ってやつか。……放っておけ。あの人なら大丈夫だろうし、あんな風になった高橋をなだめられんのはあの人しかいねぇだろ」
郁弥が驚いて、隣の百瀬を見た。
「あれあれ百瀬サン? もしかして、話がわかる人だったりする……?」
「さぁな」
互いに深く探り合うのもなんだかおかしい気がして、郁弥と百瀬は二人で顔を見合わせて呆れた。
「ったく、手の掛かる親友を持つと大変だよ。ドラマチックを校内に持ち込むなっつの」
「目の前でやられるとうんざりするな。しかもこれから俺は徳田先生が職員室に戻らない言い訳を考えて、他の先生に説明しないといけなくなった。最悪だ」
「あー、それはすごく同情するかも……」
郁弥が百瀬を盛大に憐れんだところで、手の掛かる二人の背中が廊下の角を曲がり、とうとうこちらの視界から消える。
「でもまぁ、自分の足で動けたのはいいことだな」
その場に立ちすくんでいる友の手を引いてやるばかりが正義ではないと郁弥が知る。救いを求めた桜助の弱々しい声は、もうすっかり忘れてやった。
「別にオレの助けいらねぇじゃん。……ちゃんと、しっかりやれよー」
郁弥のあたたかいエールを聞いていた隣の百瀬が奇跡的にやさしく微笑んだのを、二人が去って行った廊下の先を見つめたままだった郁弥は、もちろん気づいていなかった。
歩きスマホの郁弥が、半歩前を行く桜助に朗らかにそう言った。返信でも打っているのか指だけは忙しく動かし、ほとんど感覚だけで桜助の背についていく。
「……は? なんで?」
進行方向から視線を動かさないまま、桜助は面倒そうに理由を問う。
「たまにはいいじゃん! 桜助連れてこいってちょくちょく言われてんだよ。おまえと仲良くしたがってる女子、結構いるからさー」
「……行かね」
女子と聞いて桜助が秒で答えた。考える余地もないと、ばっさりと切り捨てる。
「わー、冷たー。たまにはオレの顔立ててくれたっていいのにさー。毎回桜助を連れてこないオレ、マジで使えねぇやつなんだけど!」
すべての授業が終わり、桜助と郁弥は下校のため昇降口に向かって廊下を歩いていた。くたびれた鞄を気だるげに肩に掛けてだらだらと歩いているだけなのだが、容姿の派手な二人が並んでいるとそれだけで目立つらしく、すれ違う女子たちがざわざわと色めき立つ。
郁弥くん! 高橋くん! などと声を掛けられると、郁弥だけは律儀にスマホから顔を上げ、愛想よく手を振ったり微笑みかけたりしていた。ほとんど本能的に自分の存在を売り込んで人をたらし込むのが得意な郁弥を横目に、桜助は改めてこの男と自分は正反対の性質なのだと認識させられる。何故いつも一緒にいるのか、時々本当に理解に苦しむくらいだった。
歩きながらずっと携帯に釘付けになっている郁弥と違って、今日の桜助は携帯をまったくいじっていなかった。いつもなら毎日どころか数時間おきにチェックしている『Bloody Swan』も、今日は閲覧する余力がない。桜助は朝からずっと、ただひとりのことを思ってひどく落ち込んでいた。
昨日紘夢とあんな風に別れてしまって、さすがに子供じみていたと反省する。突然部屋に押しかけたのは自分の方なのに、一方的に責め立てて自分勝手に傷つき、逃げるように帰ってきてしまった。自転車で夜風を切りながら駅までの帰路をたどったときの乾いた虚しさや、ホームで地下鉄を待っているときの白けた静寂を思い出し、桜助は昨夜のどうかしていた自分をひたすらに悔い続ける。あまりにも冷静ではなかった。
そもそも紘夢は、百瀬が部屋に来ていた事情をきちんと説明してくれていた。ただの仕事だと、紘夢は言っていた。それを素直に受け入れられずに一方的な疑いのまなざしで恋人を責めてしまったのは自分の非でしかない。いくら頭に血がのぼっていたとはいえこんなにも余裕のない男では本当に紘夢に愛想を尽かされてしまうと、桜助は考えれば考えるほど肩を落とすばかりだった。
ひどい臆病者だ。当然だ、藁にもすがる恋なのだから。
裏切られることも、捨てられることも、ただ絶望的に怖い。つなぎとめておく術を知りたくて、もがく。
「なー、行こうぜ! なっ! 今日は絶対行った方がいいって!」
朝から一日中沈んでいる桜助にもちろん気づいていた郁弥が、親友を浮上させてやろうと明るく誘ってやる。ほとんど何も入っていないペタンコの鞄をだるそうに持ち直した桜助のしおれた目は、朝から変わらずに虚空を漂っていた。
「うるせぇな……行かねぇって言ってんだろ。……つうか俺なんかが行ったら逆におまえの顔が立たねぇんじゃねぇの」
そういう遊びの場でうまく立ち回れる自信はまったくなく、かえって郁弥の印象を悪くしかねないと思っている桜助は、こんな風に誘われてもいつも行きたがらなかった。今日なんてなおさら絶対に行くべきではない。
「あー、自意識過剰ね、それ。オレのこと誰だと思ってんの。おまえの空気読めない無愛想くらいでオレの株下がるわけないでしょ」
郁弥は自信満々にそう言ったあと、少し調子を落として桜助に告げる。
「てかさ真面目な話、おまえ一回リセットした方がいいわ。今日ずっと、すっげーひどい顔してる。見るに堪えないって感じ」
「……っ」
郁弥にまで気を遣われるとは思っていなかった桜助が、悔しさと情けなさで口唇を引き結んだ。勘のいい、周りがよく見えている聡い親友が憎くて、やさしくて、桜助はますます自分が惨めになる。
「そういうときはさ、何もかも忘れてパーッと騒いじゃうのがいいんだって。おまえあんま女子としゃべんないけど、一緒に遊んでみたら意外と楽しいかもよ? ……な? そんな難しく考えずに行こうぜ」
桜助が気負わないように、郁弥は抑え気味に楽しさを伝えた。とにかく今はどこか楽しいところへ連れ出して、この滅入っている友人を少しでも楽にしてやれたらと郁弥の正義が疼く。
「そんな死にそうな顔してたら普通に心配すんだよ。……とく……」
徳ちゃん、とは言ってやれなくて、言葉を切る。
郁弥は桜助の口からそれを聞くまで、知らない振りをしてやろうと心に決めていた。それでも親友が落ち込んでいる理由の在り処は、教室にいればすぐにわかった。
「……好きな人と、なんかあった?」
「……」
何も答えてやれない桜助が、廊下の角を曲がったところで急に立ち止まった。スマホを片手に半歩後ろから適当についてきていた郁弥は、立ち止まった桜助に気づかずそのままその大きな背中に突っ込んでしまう。
「わ!?」
ぶつかった反動でよろけた郁弥の手からは携帯が勢いよく飛び出し、桜助の足元にカランと音を立てて落ちた。
「イッテ……なんだよ急に止まんなよ。あーもう! 画面割れてねぇよな!? 替えたばっかなんですけどこれ!」
わぁわぁ文句を言いながら同じように立ち止まった郁弥は、桜助の足元に転がった携帯を拾って親友の隣に並ぶ。一体どうしたのかと郁弥が隣を見ると、桜助は虚ろな眼で少し先に見える光景をじっと眺めていた。
「好きな人となんかあった……って言ったら、おまえ助けてくれんの……?」
隣にいる郁弥にさえ聞こえづらいほどの弱々しい声でつぶやいた桜助の視線の先には、数人の女子生徒に囲まれている紘夢と百瀬の姿があった。職員室に戻る途中の廊下でつかまったらしい二人は、輪の中心に置かれて、まだ全然しゃべり足りない女子たちの怒涛の会話に巻き込まれている。それは百瀬が実習に来てから嫌というほどよく目にする光景だった。
「桜助?」
桜助から救いを求める声を聞くのはおそらく初めてで、郁弥は少し驚いて友の名を呼んだ。見ていられないほどに憔悴している桜助は、目の前で繰り広げられている光景を呆然と目に映す。
紘夢は相変わらず頼れるさわやかお兄さん先生の顔で楽しそうに女子たちと談笑していたが、百瀬は少し億劫そうにそんな紘夢と女子生徒のやり取りを傍観していた。指導教員の手前その輪から自分だけ抜け出すこともできず、渋々その場に留まっているような味気なさで百瀬は立ち尽くしている。
「徳ちゃんと百瀬センセってホント仲いいよねー! いっつも一緒にいるし、べったりって感じ!」
周囲を気にせずわいわいとはしゃぐ女子たちの大きな声は、心を手放しかけている桜助の耳にも否応なしに滑り込んできた。
「っていうか、なんか怪しくなーい? 二人とも彼女いないんでしょ? わたし実はちょっと疑ってるんだよねぇ」
「え! マジ!? 実はそういう関係なの!? あー、でも似合っちゃうかもね、二人なら」
「百瀬先生は徳ちゃんの教え子だったんでしょ? 卒業から数年を経て教育実習で再会、そして運命的に指導教員……アリだよね、芽生えちゃうよね」
言いたい放題の女子たちの頭に、紘夢がエアげんこつを順番にくらわせていく。それさえも楽しそうに、女子たちは紘夢のげんこつの仕種をきゃっきゃとかわしていた。
「おいおい、おまえらおれらのことそんな目で見てたわけ? どこをどう見たらそうなるんだよ……」
呆れた紘夢が参った顔で隣の百瀬に視線を流すと、さすがの百瀬も微かに苦い表情を浮かべて紘夢を見返す。
「どっからどう見てもそう見えちゃうよ! 徳ちゃんってみんなにやさしいから誰か特別な人っていなさそうだけど、百瀬センセはなんか違う気がする。すごく大事に面倒見てるって感じ」
「そうそう! 過保護だよね」
「二人のことそういう風に噂してる子、結構いるよね。まぁ女子は妄想するのが仕事みたいなとこあるし、あきらめなよ」
「あきらめるってなんだよ……。おれはね、指導教員としての責務を全うしてるだけなの。百瀬って賢いのに授業のセンスないからさ、面倒見ざるを得ないっていうか……放っておけないだろ。それに実習の出来はおれの評価にも関わるし。一緒にがんばってんの、おれたち。な? 百瀬」
同意を強制するような言い方で紘夢が百瀬に微笑みかけたが、百瀬は相変わらずの仏頂面でツンと不機嫌そうにしているだけだった。早く帰りたそうに苛立ちを募らせている。
「わぁー、徳ちゃんってやっぱ超やさしいし! 手の掛かる子ほど可愛いって言うしね」
「百瀬先生愛されてるー」
百瀬が何も言わないのをいいことに、また女子たちがいい加減なことをあれこれと騒ぎ出した。何を言っても火に油を注ぐだけだと悟った紘夢は、女子たちの勢いに負けてうっすらと苦笑いを浮かべるだけである。
「……大丈夫?」
その場から動けないでいる桜助に、郁弥が不安そうに訊く。このままでは引き上げられなくなるほど桜助が深く沈むだけな気がして、郁弥は早く親友を明るい場所へと連れ出してやりたかった。
「ほら桜助、帰るぞ」
「……なんで」
重たい口を開いた桜助からは、誰かを責める三文字だけが弱く告げられる。
昨日あんな風にすれ違ってしまったのに、なんで何もなかったようにけろっとしていられるのか。勝手にそんな噂をされて、なんで平気でいられるのか。なんでそんな穏やかな顔で、百瀬に微笑みかけられるのか。
桜助の中でまっすぐに張られている心の均衡を保つ糸に、左右から強い力が加えられる。糸はきつく引っ張られ、触れたものすべてを傷つけそうなほど鋭利に張られていく。
こんなに動揺して落ち込んでいるのに、いちばん気を遣われたくない郁弥にさえ気を遣われるほど沈んでいるのに、紘夢にとっては所詮その程度のことだったのかと桜助が絶望する。
紘夢はずるい。この程度のことでいちいち落ちる自分の方がどうかしているのかと、桜助はもうよくわからなくなった。これもみんな自分が17のガキで、紘夢が28の大人だからなのか。自分が生徒で、紘夢が教師だからなのか。
歳だって立場だって本当はそんなものなんの言い訳にもならないのに、桜助は自分の足りてない部分にどうにか理由を付けて辻褄を合わせようとする。歳の差も、教師と生徒であることも、いちばん指摘されたくないことのはずなのに、わざわざ過剰にハンデにしてしまっているのは他の誰でもない桜助自身だった。
──紘夢はずるい。なんで俺ばっか……俺ばっかりが……!
極限まで張り詰めた糸が、ギンッと音を立てて切れた。荒々しくて醜いものが桜助の中を駆け巡る。いつも掲げているはずの自分が守ってやらねばというあたたかい正義は、その荒々しくて醜いものにあっさりと呑み込まれた。紘夢に対して初めて芽生えた悪は、大切なものを傷つけるためだけに桜助の理性を引っ掻き回す。
目に前に広がる生ぬるい平和をぶち壊して、怒り狂う感情のままに、恋人を傷つけたかった。
「……郁弥、カラオケ、今度また誘え」
視線は紘夢が見える輪に残したまま、怒りに震えそうになる声を精一杯に抑えて桜助が言った。
「え? カラオケ来てくれんの……? え? 今からじゃなくて、今度?」
「たまには女と遊ぶのもいいよな……なーんも考えずにさ……。でもまぁ、今度だ今度」
まるで気持ちの入ってないうわ言に、郁弥が桜助の狂気を見る。
「……カラオケ、今からでもいいん……」
「悪ぃ郁弥、俺……今から全部ぶっ壊しちまうかもしんねぇわ」
すると桜助は郁弥をその場に置いて、突然勢いよく駆け出した。
「え!? 桜助!? ちょ、どうした!?」
引き止めようと思わず伸ばしてしまった手を、瞬時に我に返った郁弥は慌てて引っ込める。野暮なことはしないのが郁弥の正義だ。置き去りにされた者は置き去りにされた者らしく、郁弥は大人しく廊下の端でぽつんと取り残されてやった。
桜助は、紘夢に向かって一目散に走った。周りにいた女子たちを割って紘夢に近づき、輪の中心にいた担任教師の手首を乱暴につかむ。
突然背後から自分たちの間をすり抜けてきた長身の男に驚いて、女子たちがキャッと短い悲鳴を上げた。その長身が桜助だとわかると、怪訝そうな、それでいて好奇に満ちたような視線を、まるで示し合わせたかのように一斉に桜助と紘夢に向ける。
さっきまで無愛想と無表情の見本のようだった百瀬でさえも、桜助の突発的な乱入には目を丸くしていた。桜助が何をするつもりなのかと、あまり尋常ではなさそうな問題児を警戒して様子をうかがう。
紘夢はその輪の中の誰よりもいちばん驚いていて、強くつかまれた手首を冗談にしてやさしく解いてやることも、いつも教室でしているように桜助の名を呼んでやることも、何かを訴えるように駆け寄ってきた桜助の目をまっすぐに見て笑いかけてやることもできなかった。紘夢はただ驚いて、何もできなかった。
「ちょっと、いい? ……徳ちゃん」
紘夢が嫌がるカモフラージュの呼び方で桜助が恋人の名を呼ぶ。みんながいる前では、そうとしか呼べない。先生の特別で、いてはいけない。
聞いておいて結局紘夢に否応の返事をする暇を与えないまま、桜助はつかんだ手首の力を緩めることなく、先生をさらうように連れ出した。
何も寄せ付けようとしない、紘夢以外のすべてを拒絶するような気迫の桜助に、輪の中の誰もがただ圧倒されていた。誰も桜助を呼び止めることはできなかった。紘夢もされるがままに手首を引かれ、輪の中から抜け出す。
残された百瀬と女子たちは唖然として、足早に遠ざかる二人の背中をしばらく見つめていた。この短い時間に一体何が起こったのかと、竜巻のような出来事に誰もが目を瞬く。
「えー、あいつ徳ちゃん誘拐しちゃってんじゃん……」
まだ衝撃から解放されない輪に郁弥が近づいて、ちゃっかり百瀬の隣に滑り込んだ。女子たちは女子たちで突然降ってきた謎の考察に忙しいらしく、郁弥が近づいてきたことには目もくれない。
少し離れたところから一連の出来事を観察していた郁弥もさすがに意表を突かれたらしく、呆れながら百瀬に話しかけてみる。
「桜助ってさ、いっつも涼しい顔をしてなんでもわかってますーみたいにオトナぶっちゃってるくせに、一旦思い込んだら結構イノシシ型なんだよなぁ。チョトツ……なんとかってやつ? 根本がガキなのに普段無理してっからこうなるんだよ」
百瀬に話しても仕方のないことだと思ったが、郁弥は桜助をただの悪にはしたくなかった。これが、桜助が葛藤の末に選んだ最良だったのだと信じている。
「……うーん、でもあれ大丈夫か? あいつ結構追い込まれてたけど。徳ちゃん無事でいられる? なんか、校舎裏に連れていかれて殴られたりとかしねぇよな……?」
とても平常心を保っていたとは思えない親友の様子に、郁弥がふと不安になる。
「あれが思春期の暴走ってやつか。……放っておけ。あの人なら大丈夫だろうし、あんな風になった高橋をなだめられんのはあの人しかいねぇだろ」
郁弥が驚いて、隣の百瀬を見た。
「あれあれ百瀬サン? もしかして、話がわかる人だったりする……?」
「さぁな」
互いに深く探り合うのもなんだかおかしい気がして、郁弥と百瀬は二人で顔を見合わせて呆れた。
「ったく、手の掛かる親友を持つと大変だよ。ドラマチックを校内に持ち込むなっつの」
「目の前でやられるとうんざりするな。しかもこれから俺は徳田先生が職員室に戻らない言い訳を考えて、他の先生に説明しないといけなくなった。最悪だ」
「あー、それはすごく同情するかも……」
郁弥が百瀬を盛大に憐れんだところで、手の掛かる二人の背中が廊下の角を曲がり、とうとうこちらの視界から消える。
「でもまぁ、自分の足で動けたのはいいことだな」
その場に立ちすくんでいる友の手を引いてやるばかりが正義ではないと郁弥が知る。救いを求めた桜助の弱々しい声は、もうすっかり忘れてやった。
「別にオレの助けいらねぇじゃん。……ちゃんと、しっかりやれよー」
郁弥のあたたかいエールを聞いていた隣の百瀬が奇跡的にやさしく微笑んだのを、二人が去って行った廊下の先を見つめたままだった郁弥は、もちろん気づいていなかった。
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