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3章 運命
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2010年4月6日
――二年生になった。
気が付けばもう二年。あっという間だった。相変わらず四人でずっと一緒にいた。
夏の海以来、何度か出かけた。そのたびに悠は碧に惹かれていく――。
それぞれの思いに変化はあるのだろうか。この関係はずっと続くのだろうか。悠は心配していた。
湊は相変わらずだ、二人きりになると碧の話ばかりしてくる。好きな人はいるのか、好きなものはなんだとか、いつ予定空いているのか、そんなこと自分で聞けばいいじゃないか。そう思いながら付き合ってやっている。
何なら俺が聞きたいくらいだ。
湊の碧に対する気持ちはずっと変わっていない。ここ最近は俺に話かけに来てたはずが、碧に会うために毎回来てたな。
そろそろ湊は碧に告白するんじゃないか。もしそうだとして碧が了承して付き合うことになったら。
俺はおかしくなってしまいそうだ。その前に先に伝えよう。そう心に誓った。
四人はいつもと同じく食堂で昼食を食べていた。
「もう俺らも二年生だぜー早いよな。」
「そうね、あっという間だった。」
「今年はどこへ行こうか。」
「もう遊ぶこと考えてるし。」
「いいじゃん、減るもんじゃないし。」
凛と湊が話している。確かに学生は勉強が仕事だ。遊びはその次だ。
この学校は頭のいい方だ、もちろん勉強はそれなりに難しい。ついていくのがやっとの生徒も少なくはない。
凛と湊は勉強についていけているのか。遊びほうけてばっかりだから心配になる。
二年生に進級できたのだからとりあえずは大丈夫なのだろう。
四人は食べ終わり、教室に戻ろうとした時悠は凛に呼び止められた。
「ねぇ悠。今あんた好きな人とかいるの。」
急に予想の斜め上を越えてきた質問に一瞬固まってしまった。
まさか凛からこんなことを聞かれるとは思っていなかった。凛は少しうつむき気味に聞いてきた。
「急になんだよ。いないよ。」
「碧のこと、どう思ってるの。」
とっさに嘘をついてしまった。凛は悠の気持ちを知ってたかのようにそう聞いてきた。
「碧?すごくいい友達だと思ってるよ。今の四人の関係すごく気に入ってるんだ。」
「そっか。」
と。一言残しその場を去ってしまった。
凛には申し訳ないことをしてしまったかな。でもこんなこと言えるはずがない。
なぜこんなことを凛は聞いてきたのだろう。
色々な憶測が飛び交う。今はもう少し様子を見よう、真意はいずれわかるだろう。
悠は歩き出した。
「なぁ悠、放課後ボーリングでも行こうぜ」
「いいねボーリング。行こうか。碧たちも誘う?」
「いや二人で行こう。」
「そうか。わかった。」
珍しく湊は2人きりで遊ぼうといってきた。今までは碧と凛も一緒に遊んできた。
これは何かある。そう悠は予想していた。
放課後、悠と湊は隣駅のボーリングセンターに遊びに来た。
電車で三分。それ程遠くないがあまりここには来ない。なぜならボーリングセンターくらいしかないからだ。
故にここに来るときはボーリングをするときのみ降りる。
駅から歩いて五分の所にそれはある。
お店はガラガラだ。もうボーリングだけで経営しているお店はここ以外に見たことがない。
じきにここも潰れるのだろうか。
2人は用紙に名前とゲーム数を記入してカウンターへ向かった。
優しそうなおじいさんが受付をしてくれた。靴は自己申告しおじいさんが出してくれる。なんともアナログだ。
悠は二十五センチ、湊は二十六センチを希望し靴を受け取った。
それぞれ十一ポンドのボールを使う。
席に着くやいなや、湊が口を開く。
「勝負しようよ。」
「えっ?」
「勝負。勝った方が碧ちゃんに告白する。」
「俺は碧のこと好きだなんて言っていないぞ。」
「言ってなくたってわかるよ。好きなんだろ。」
「まあ、、、」
「じゃあ決まりな。」
「ちょっと勝手に決めるな。」
「じゃあ俺からなげるねー。手加減しないから。」
湊は本気だ。こんな勝負の提案をしてくなんて思いもしなかった。
悠も湊も実力は五分だ。どちらが勝ってもおかしくはない。
湊の一投目は、ストライクだった。
「俺が勝つことは運命で決まってるんだよ。」
ガッツポーズをしながらそう言ってきた。
「運命なんて俺は信じてないけどな。」
悠が投げる。九本倒す。その後スペアを取る。
「いい勝負じゃん?」
湊がそう言い放つと、二投目を投げた――
最終ゲーム。悠が八本以上倒せば勝ちの状況。
八本なんて余裕じゃないか。これは勝てる。悠は勝利を確信していた。湊はただただこちらを見ていた。
最終ゲーム一投目。油断したのかボールは左側の溝へ吸い込まれていく。
「しまった。ガターだ。」
焦りが生まれてくる。落ち着い投げればこんなの余裕だ。悠は深く深呼吸をして構える。
――ボールとピンがはじける音が響いた。結果は――
「俺の勝ちだ――。」
湊がつぶやいた。両端に二本ずつ。計四本残ってしまった。スプリットだ。
「約束だからな。俺は碧ちゃんに告白する。明日する。」
明日?急すぎる。確かにいつするのかは言っていなかったが。それにしても急だ。
湊はもう決めていたのだろう。
もし告白が成功して付き合うことになったら。と考えてしまう。
悠と湊。お互いに今の関係はとても気に入っている。さらには碧と付き合いたいとも思っている。
どちらかが付き合うことになったら、残された者の気持ちはどうなるのだろう。
「やっぱりこのままの関係でいないか。」
悠は提案した。悠は怖いのだ。この関係が崩れることが。
成功しても失敗しても今の関係のままではいられなくなるだろう。そう思って湊に言った。
「悠の言いたいことはわかるよ。この関係を崩したくないんだろう。俺もその気持ちは一緒だ。
でもね、やっぱりこの気持ちを伝えたい。」
悠は何も言い返せなかった。
その日はほとんどしゃべらず帰路についた。
何かを悟ったかのように次の日からしばらく、碧は学校へ来なかった。
外は雨が降っていた。
――二年生になった。
気が付けばもう二年。あっという間だった。相変わらず四人でずっと一緒にいた。
夏の海以来、何度か出かけた。そのたびに悠は碧に惹かれていく――。
それぞれの思いに変化はあるのだろうか。この関係はずっと続くのだろうか。悠は心配していた。
湊は相変わらずだ、二人きりになると碧の話ばかりしてくる。好きな人はいるのか、好きなものはなんだとか、いつ予定空いているのか、そんなこと自分で聞けばいいじゃないか。そう思いながら付き合ってやっている。
何なら俺が聞きたいくらいだ。
湊の碧に対する気持ちはずっと変わっていない。ここ最近は俺に話かけに来てたはずが、碧に会うために毎回来てたな。
そろそろ湊は碧に告白するんじゃないか。もしそうだとして碧が了承して付き合うことになったら。
俺はおかしくなってしまいそうだ。その前に先に伝えよう。そう心に誓った。
四人はいつもと同じく食堂で昼食を食べていた。
「もう俺らも二年生だぜー早いよな。」
「そうね、あっという間だった。」
「今年はどこへ行こうか。」
「もう遊ぶこと考えてるし。」
「いいじゃん、減るもんじゃないし。」
凛と湊が話している。確かに学生は勉強が仕事だ。遊びはその次だ。
この学校は頭のいい方だ、もちろん勉強はそれなりに難しい。ついていくのがやっとの生徒も少なくはない。
凛と湊は勉強についていけているのか。遊びほうけてばっかりだから心配になる。
二年生に進級できたのだからとりあえずは大丈夫なのだろう。
四人は食べ終わり、教室に戻ろうとした時悠は凛に呼び止められた。
「ねぇ悠。今あんた好きな人とかいるの。」
急に予想の斜め上を越えてきた質問に一瞬固まってしまった。
まさか凛からこんなことを聞かれるとは思っていなかった。凛は少しうつむき気味に聞いてきた。
「急になんだよ。いないよ。」
「碧のこと、どう思ってるの。」
とっさに嘘をついてしまった。凛は悠の気持ちを知ってたかのようにそう聞いてきた。
「碧?すごくいい友達だと思ってるよ。今の四人の関係すごく気に入ってるんだ。」
「そっか。」
と。一言残しその場を去ってしまった。
凛には申し訳ないことをしてしまったかな。でもこんなこと言えるはずがない。
なぜこんなことを凛は聞いてきたのだろう。
色々な憶測が飛び交う。今はもう少し様子を見よう、真意はいずれわかるだろう。
悠は歩き出した。
「なぁ悠、放課後ボーリングでも行こうぜ」
「いいねボーリング。行こうか。碧たちも誘う?」
「いや二人で行こう。」
「そうか。わかった。」
珍しく湊は2人きりで遊ぼうといってきた。今までは碧と凛も一緒に遊んできた。
これは何かある。そう悠は予想していた。
放課後、悠と湊は隣駅のボーリングセンターに遊びに来た。
電車で三分。それ程遠くないがあまりここには来ない。なぜならボーリングセンターくらいしかないからだ。
故にここに来るときはボーリングをするときのみ降りる。
駅から歩いて五分の所にそれはある。
お店はガラガラだ。もうボーリングだけで経営しているお店はここ以外に見たことがない。
じきにここも潰れるのだろうか。
2人は用紙に名前とゲーム数を記入してカウンターへ向かった。
優しそうなおじいさんが受付をしてくれた。靴は自己申告しおじいさんが出してくれる。なんともアナログだ。
悠は二十五センチ、湊は二十六センチを希望し靴を受け取った。
それぞれ十一ポンドのボールを使う。
席に着くやいなや、湊が口を開く。
「勝負しようよ。」
「えっ?」
「勝負。勝った方が碧ちゃんに告白する。」
「俺は碧のこと好きだなんて言っていないぞ。」
「言ってなくたってわかるよ。好きなんだろ。」
「まあ、、、」
「じゃあ決まりな。」
「ちょっと勝手に決めるな。」
「じゃあ俺からなげるねー。手加減しないから。」
湊は本気だ。こんな勝負の提案をしてくなんて思いもしなかった。
悠も湊も実力は五分だ。どちらが勝ってもおかしくはない。
湊の一投目は、ストライクだった。
「俺が勝つことは運命で決まってるんだよ。」
ガッツポーズをしながらそう言ってきた。
「運命なんて俺は信じてないけどな。」
悠が投げる。九本倒す。その後スペアを取る。
「いい勝負じゃん?」
湊がそう言い放つと、二投目を投げた――
最終ゲーム。悠が八本以上倒せば勝ちの状況。
八本なんて余裕じゃないか。これは勝てる。悠は勝利を確信していた。湊はただただこちらを見ていた。
最終ゲーム一投目。油断したのかボールは左側の溝へ吸い込まれていく。
「しまった。ガターだ。」
焦りが生まれてくる。落ち着い投げればこんなの余裕だ。悠は深く深呼吸をして構える。
――ボールとピンがはじける音が響いた。結果は――
「俺の勝ちだ――。」
湊がつぶやいた。両端に二本ずつ。計四本残ってしまった。スプリットだ。
「約束だからな。俺は碧ちゃんに告白する。明日する。」
明日?急すぎる。確かにいつするのかは言っていなかったが。それにしても急だ。
湊はもう決めていたのだろう。
もし告白が成功して付き合うことになったら。と考えてしまう。
悠と湊。お互いに今の関係はとても気に入っている。さらには碧と付き合いたいとも思っている。
どちらかが付き合うことになったら、残された者の気持ちはどうなるのだろう。
「やっぱりこのままの関係でいないか。」
悠は提案した。悠は怖いのだ。この関係が崩れることが。
成功しても失敗しても今の関係のままではいられなくなるだろう。そう思って湊に言った。
「悠の言いたいことはわかるよ。この関係を崩したくないんだろう。俺もその気持ちは一緒だ。
でもね、やっぱりこの気持ちを伝えたい。」
悠は何も言い返せなかった。
その日はほとんどしゃべらず帰路についた。
何かを悟ったかのように次の日からしばらく、碧は学校へ来なかった。
外は雨が降っていた。
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