58 / 75
58.押し売りセールス
しおりを挟む
○月〇日。
俺は、倉持と待ち構えていた。
インターホンが鳴った。
「〇〇社のモノですが。」
数分経って、男は、「では、お伺いします。」と言って、門扉を開け、ピッキングをして侵入した。
「〇〇社のモノですがって、言うたよな?」と、俺は優しく男に声をかけた。
「え?あ、いや、そのう・・・。」男が口籠もるのに倉持が追い打ちをかけた。
「今、ピッキングしたよね。」
「いや、開いてたよ。」倉持は、玄関天井の防犯カメラを指さした。
「下手な言い訳で取り繕える場合か!!」と俺は怒鳴った。
「はい、逮捕。現行犯ね。」道上刑事は、にっこり笑った。
道上刑事は、阿倍野署の窃盗係だ。横ヤンこと横山元刑事の後輩に当たる。
道上が困っているのを見かねた横ヤンが、「囮捜査」を提言したのだ。
俺達は「浮気調査」ということにすれば、どこにでも潜り込める。
警察が引き揚げた後、やって来た町内会長に俺は言った。
「回覧板、廻した方がいいと思いますよ。」
午後2時。南部興信所。所長室。
俺と倉持が帰って来ると、所長が「ええ、退職祝い貰ったって言ってたわ。ウチに誘ったたら、好きな囲碁でも打ちに行きますわ、って言ってた。」
「そうですか。少しは退職金増えますかね?」「少しは、な。ところで、幸田。あのクスリ、効くか?」「うーん、どちらかと言えば、前の方が良かったかも。」
倉持は、クビを傾げていた。
実は、所長と俺は、「実験」を兼ねて芦屋グループから「精力剤」のモニターという名目で提供を受けている。
お互い、嫁はんの「勢力」に追いつくのに難儀している。「精力」でなく、「勢力」である。
「ほな、前に戻すように言うとくわ。しかし、ウチはともかく、澄ちゃんは、産めるんか?」
「先生は、その内、妊娠促進剤もええものができるやろう、って笑ってましたけど。」
俺は、ワコが不倫したがっているのを報告しなかった。
ワコは、本気で「兄ちゃん、ウチが替わりに産んでもええんよ。里子に出したらええやん。」などと言う。
辻先輩が煽っているのだ。
「明日な。中津くんの手伝いに行ってくれ。花ヤンと一緒にな。」「ダークレインボー絡みですか?」「いや、浮気調査。昔の顧客に頼み込まれたらしい。ピンチヒッターやな。」
「了解しました。」
俺らは、何でも屋の探偵や。文句は言ワヘン。好きやんネン、この仕事。
―完―
俺は、倉持と待ち構えていた。
インターホンが鳴った。
「〇〇社のモノですが。」
数分経って、男は、「では、お伺いします。」と言って、門扉を開け、ピッキングをして侵入した。
「〇〇社のモノですがって、言うたよな?」と、俺は優しく男に声をかけた。
「え?あ、いや、そのう・・・。」男が口籠もるのに倉持が追い打ちをかけた。
「今、ピッキングしたよね。」
「いや、開いてたよ。」倉持は、玄関天井の防犯カメラを指さした。
「下手な言い訳で取り繕える場合か!!」と俺は怒鳴った。
「はい、逮捕。現行犯ね。」道上刑事は、にっこり笑った。
道上刑事は、阿倍野署の窃盗係だ。横ヤンこと横山元刑事の後輩に当たる。
道上が困っているのを見かねた横ヤンが、「囮捜査」を提言したのだ。
俺達は「浮気調査」ということにすれば、どこにでも潜り込める。
警察が引き揚げた後、やって来た町内会長に俺は言った。
「回覧板、廻した方がいいと思いますよ。」
午後2時。南部興信所。所長室。
俺と倉持が帰って来ると、所長が「ええ、退職祝い貰ったって言ってたわ。ウチに誘ったたら、好きな囲碁でも打ちに行きますわ、って言ってた。」
「そうですか。少しは退職金増えますかね?」「少しは、な。ところで、幸田。あのクスリ、効くか?」「うーん、どちらかと言えば、前の方が良かったかも。」
倉持は、クビを傾げていた。
実は、所長と俺は、「実験」を兼ねて芦屋グループから「精力剤」のモニターという名目で提供を受けている。
お互い、嫁はんの「勢力」に追いつくのに難儀している。「精力」でなく、「勢力」である。
「ほな、前に戻すように言うとくわ。しかし、ウチはともかく、澄ちゃんは、産めるんか?」
「先生は、その内、妊娠促進剤もええものができるやろう、って笑ってましたけど。」
俺は、ワコが不倫したがっているのを報告しなかった。
ワコは、本気で「兄ちゃん、ウチが替わりに産んでもええんよ。里子に出したらええやん。」などと言う。
辻先輩が煽っているのだ。
「明日な。中津くんの手伝いに行ってくれ。花ヤンと一緒にな。」「ダークレインボー絡みですか?」「いや、浮気調査。昔の顧客に頼み込まれたらしい。ピンチヒッターやな。」
「了解しました。」
俺らは、何でも屋の探偵や。文句は言ワヘン。好きやんネン、この仕事。
―完―
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
生贄の花嫁~鬼の総領様と身代わり婚~
硝子町玻璃
キャラ文芸
旧題:化け猫姉妹の身代わり婚
多くの人々があやかしの血を引く現代。
猫又族の東條家の長女である霞は、妹の雅とともに平穏な日々を送っていた。
けれどある日、雅に縁談が舞い込む。
お相手は鬼族を統べる鬼灯家の次期当主である鬼灯蓮。
絶対的権力を持つ鬼灯家に逆らうことが出来ず、両親は了承。雅も縁談を受け入れることにしたが……
「私が雅の代わりに鬼灯家に行く。私がお嫁に行くよ!」
妹を守るために自分が鬼灯家に嫁ぐと決心した霞。
しかしそんな彼女を待っていたのは、絶世の美青年だった。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合系サキュバス達に一目惚れされた
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる