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32.【鳩と婆ちゃん】

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 ○月〇日。
「只今―。早朝から疲れたわ。」
「お疲れさま。」と、澄子は、俺にドリンク剤を差し出した。
 後が恐いが、まあ、有り難い。今朝の一件を澄子に話してやった。途中、わらび餅を出して来た。
「やっぱり。『亀の甲より年の功』やね。流石、南部さんやわ。結局、お婆ちゃんは、猫が可哀想とか、鳩が可哀想で餌あげてた訳やないのね。」
「うん、所長が、何匹に餌あげてた?って尋ねると、最初の頃のことしか覚えてなかった。つまり、淋しいストレスが解消されれば良かったんや。」
 そこへ、倉持がやって来た。
「倉持君、これ、お食べ。」と、澄子は倉持の分のわらび餅を差し出した。
「ありがとうございます。」「で、どうやった?」
「喧嘩の原因は、亡くなったご主人ですね。ご主人の遺産を相続する時、生前贈与しろと、娘や娘の連れ合いが言い出したらしいです。で、一人暮らし。先輩、本当に吉本知事が、あの富樫お婆ちゃんに、猫をプレゼントするんですか?」
「んな訳はない。そんなんしたら、後でぎゃあぎゃあ言われるがな。所長のポケットマネーや。お婆ちゃんは、大した罪にならんやろう、って佐々ヤンが言ってた。何せ大量の鳩は、あの半グレと、半グレと組んでるNPO法人や。だんだん増やして、騒ぎ立てる計画やったらしい。お婆ちゃんは、利用されてたんや。増やしといて、大量の鳩がー、可哀想な鳩がーって騒ぐ、所謂マッチポンプは見事に見破られた。まあ、最初におかしい、って言い出したのは、芦屋総帥やけどな。そやから、マジシャンみたいに、鳩をさらうことになったんや。鳩は、鳥でも際だって『鳥目』や。そやから、一瞬暗くなると身動き出来んようになる。マジシャンの登場自体がマジックや。胡椒弾をついばんだ鳩は、どうしたらいいか、固まった。そこへ。暗闇。『鳩は巣に戻せ』って言うから、アジトに運んだら、あいつらパニクって、殺してしまうた。文字通り『自業自得』。麻薬やら拳銃やら、オマケで出てくるに違いないで。あ、マジシャン言うのはナア、この間、東京の事件で捕まった、元マジシャン麻生海の娘や。総帥の『鶴の一声』で、二美さんがオスプレイで運んだんや。因みに、テグス張ると、寄って来なくなるのは、鳩には『見えないバリア』に思えるかららしい。」
「鳩の一声やなかったんや。」「うまいこと言うな。」
「名コンビですね。」と、倉持が言い、皆で爆笑した。
 ―完―

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