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34.オクトパスからの『祝電』
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オクトパスからの『祝電』
========== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。
久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。
愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。
新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。
日向さやか(ひなたさやか)一佐・・空自からのEITO出向。
増田はるか三等海尉・・・海自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
飯星満里奈・・・元陸自看護官。
須藤医官・・・陸自からのEITO出向の医官。
高坂看護官・・・陸自からのEITO出向の看護官。
物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。故人となった蘇我義経の親友。蘇我と結婚した逢坂栞も翻訳部同学年だった。
物部(逢坂)栞・・・物部の妻。蘇我が亡くなってから一人だったが、物部と今年、再婚した。
依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。やすらぎほのかホテル東京支配人。
依田(小田)慶子・・・ある事件で依田と知り合い、結婚。やすらぎほのかホテル東京副支配人。
福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進む。今は建築事務所に就職し、演劇活動は休止している。
福本祥子・・・福本の妻。福本の劇団の看板女優。
服部源一郎・・・伝子の高校のコーラス部後輩。シンガーソングライター。昭和レトロなレコードを探して、伝子達に紹介している。
服部(麻宮)コウ・・・服部の妻。夫を何とか音楽家として世に出したいと願っている。
南原龍之介・・・伝子の高校のコーラス部の後輩。高校の国語教師だったが、今は妻と共に学習塾を経営している。
南原(大田原)文子・・・南原の妻。学習塾を帰営している。
山城順・・・伝子の中学の書道部後輩。愛宕と同窓生。海自の民間登用の事務官。
山城(南原)蘭・・・美容師。伝子の後輩の山城と結婚した。
愛宕寛治・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。階級は警部。みちるの夫。
馬場(金森)和子二尉・・・空自からのEITO出向。馬場の妻になった。
馬場力(ちから)三佐・・・空自からの出向。金森の夫になった。
前田空将・・・空自の、上から2番目に偉い人。金森と馬場の仲人。
渡辺副総監・・・警視庁副総監。あつこの叔父。
村越警視正・・・副総監付きの警察官幹部。あつこがEITOに移ってから、副総監の秘書役を行っている。
斉藤理事官・・・EITO本部司令官。EITO創設者。
久保田嘉三管理官・・・警視庁管理官。久保田警部補の伯父。EITO前司令官。
夏目警視正・・・EITO本部副司令官。夏目リサーチという、表向き市場調査会社の社長。
大前管理官・・・EITO大阪支部司令官。
馬場絹子・・・馬場の母。
金森佐和子・・・金森の母。
小田祐二・・・やすらぎほのかホテル社長。慶子の叔父。
藤井康子・・・伝子マンションの隣に住む。料理教室経営者。
==================================================
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO精鋭部隊である。==
SATの中道の葬式の翌日。午前11時。やすらぎほのかホテル東京。馬場と金森の披露宴会場。
挙式の後、依田がMCをして、新郎新婦の紹介をし、仲人である前田空将を紹介した。
そして、斎藤理事官が、夏目副司令官が、大阪支部の大前管理官が祝辞を述べ、警視庁からは副総監、村越警視正、久保田管理官が祝辞を述べた。
そして、上司として伝子が、友人代表として、なぎさと増田が挨拶をした。
聡子と高遠が懸念した、カラオケの件は、誰一人として口にする者はいなかった。
午後3時。お色直しや、イベントとしての彼らの仕事場での活躍の動画を観て、ゆっくりとした食事も済み、午後3時には『お開き』となった。
その直前、祝電が届いた。依田は、祝電は最初に読んだはずだが、と不審に思い、祝電のカードを開くと、おぞましい文面が現れた。
顔色を変えた依田が言い淀んでいるのを見て、伝子が駆け寄り、さっと読んだ。
マイクを使って、伝子が短く指令を出した。
「なぎさ、あつこ、みちる、あかり。増田、大町。不審者を追え、15分以内に見当たらない場合は引き返せ!」
異変を察知した、伝子の『妹』たちと腹心は直ちに散開した。
伝子から祝電を受け取った、夏目は冷静に読み上げ、皆に注意を呼び掛けた。
「文面には、こうあります。新郎、馬場力君。新婦、和子さん。結婚おめでとう。初めまして、オクトパスです。これから、EITOと長いお付き合いをしたいと思います。折角の門出を『宣戦布告』なんて無粋なことはしたくありません。そこで、提案です。結婚すると、大抵ハネムーンですよね。本格的な宣戦布告は、1ヶ月のハネムーン期間が終ってからにしましょう。手前味噌ですが、私は紳士でね。いつか最終決戦と呼ばれる日が来たら、青山君と是非フェンシングでお手合わせ頂きたい。次回からは、通信手段はtick-tackを使いましょう、SNSのね。ダークレインボーの騎士、オクトパス。」
金森の母親が卒倒した。馬場の母親もハンカチで口を押えた。
須藤が、高坂と飯星に命じて介抱させた。
EITOのメンバーは、外に出て様子を伺う者と、式場の周りで警護する者に別れた。
夏目は、皆に落ち着くように指示をした。依田と慶子と小田社長は、他の利用客に異常がないか、確認した。
15分後。不審者を捜しに行った者も、外の様子を伺った者も帰ってきた。
皆、一様に首を振った。
「やはりな。久保田管理官、念の為、書面のチェックを鑑識に。理事官。文面通り、1ヶ月の猶予を貰いましょう。」と、伝子は言った。
「見ず知らずの敵を全面的に信用するのかね?」と理事官は尋ねた。
「ケンの言葉を思い出して下さい。パウダースノウの闘いの時、既にオクトパスは来ています。混乱に乗じることも出来た筈。詰まり、我々がノーガードの拠点、例えば政府要人を狙うとか出来た筈です。」
「よし。ここは善意に捉えましょう。2人の警備は今から一ヶ月続ける。ハネムーン中にだ。交代でな。今出来ることはそれだけだ。」と、夏目が言った。
「面白いじゃないか。早速敵と知恵比べだな。金森、馬場。覚悟は出来てるな。お前達は、隊長、いや、アンバサダーの命令で結婚したんだ。ハネムーンも、ハネムーン後も任務だ。全うしろ。」と空将は力強く言った。
「了解しました!」金森と馬場は、花嫁花婿の衣装のまま敬礼をした。空将に、理事官に、伝子に。
午後6時。伝子のマンション。
依田夫婦を除く、DDメンバーが集まっていた。福本祥子も、少しくらいなら、と参加した。主賓は何と言っても、金森と馬場だ。新婚のお祝いの会だ。
高遠が、敢えて企画した。実は、マンションの近くでは、筒井、高木、青山が監視している。防犯カメラは以前増設したが、死角になる場所はあるからだ。
敵は、どの程度金森達を、いや、大文字の周りの者を熟知しているか分からない。
言葉通りなら、1ヶ月何もしないことになるが、夏目の言う通り、『念の為』は必要だ。
伝子は、わざと、金森がここに初めて来た時の失態を語った。煎餅を頬張って、喉を詰まらせた事件だ。
「あれは、ヨーダが悪いよな。体でお茶のポットを隠してたから。」と、高遠が弁護した。
「あれ?福本じゃなかったか?」と物部が言うと、「副部長、ヨーダです、依田。」と弁明し、皆の笑いを誘った。
「済みません、私が大食らいだったせいで、皆様にご迷惑をおかけして・・・。」
「申し訳ありません。」金森に続いて、馬場が謝った。
「もう、一心同体ね。」と、栞が取りなした。
「今日は、お茶菓子もお茶類もちゃんと配置しましたからね。」と、蘭が言った。
「そう言えば、馬場さんはオサケ飲めるんですか?」と山城が尋ねた。
「はい。少しだけなら。皆さんが飲む人いないって聞いてびっくりしました。」と馬場が言った。
「特に決まりはないんですよ。何故か、大文字先輩の後輩には飲まない人が多い。皆あまり気にしなくってましたね、愛宕さん。」と福本が言った。
「そうですね。別に先輩の前だから遠慮してってことじゃなく、偶然ですね。」と、煎餅を頬張りながら、愛宕は応えた。
「あ。誤解しないで下さいよ、馬場さん。皆馬場さんの『事件』のことでイジメようなんてしてませんから。」と、南原が言い、「イジメがあるようなら、愛宕さんに逮捕して貰わなくちゃね。」と文子が言った。
「ね、この際、披露して貰ったら?イジメかどうかは馬場さん次第だし。ねえ、あなた。」と、コウは夫の南原龍之介に言った。
「ほい来た。今日は、ギター持参ですからね。」と、服部がギターを構えた。
高遠は、電源の入らないマイクを馬場に渡した。
馬場が立つと、「チカラ。1回だけにしなさいよ。お代わりなし。」と、新妻は優しく注意した。
馬場は、深呼吸すると、歌い出した。
[
ここで一緒に死ねたらいいと
すがる涙の いじらしさ
その場しのぎの なぐさめ云って
みちのく ひとり旅
うしろ髪ひく かなしい声を
背(せな)でたちきる 道しるべ
生きていたなら いつかは逢える
夢でも逢えるだろう
時の流れに 逆らいながら
ひとりゆく身の 胸のうち
俺は男と つぶやきながら
みちのく ひとり旅
月の松島 しぐれの白河
昨日と明日は ちがうけど
遠くなるほど いとしさつのる
みれんが つのるだけ
たとえどんなに 恨んでいても
たとえどんなに 灯りがほしくても
お前が俺には 最後の女
俺にはお前が 最後の女
たとえどんなに つめたく別れても
お前が俺には 最後の女
たとえどんなに 流れていても
お前が俺には 最後の女
]
皆の拍手に馬場は大いに照れた。
「体格がいいせいか、声が響くなあ。」と、物部が感心した。
チャイムが鳴った。筒井だった。
「異常なし。いい声だ。これ、ピザな。高遠、ここに置くぞ。」そう言って、すぐに筒井は去った。
ピザは、順繰りに配られた。「しかし、2人は囮ってことになるのかなあ。」と、蘭が心配そうに言った。
「大丈夫だ、蘭。最高の護衛軍団が守っている。万一賊が近寄っても、ブーメランの名手と柔道剣道有段者の夫婦に勝てないよ。一生後悔する。」と、伝子は断言した。
「そうだ、伝子。金森さんに『模範演技』して貰おうよ。」「そうだな。」
伝子は一番奥のAVルームの端の押し入れから、何やら取り出してきた。
「ほい!」と伝子が金森に投げたのは、薄いブーメランだった。
金森は、すかさず受け取った。
伝子が自分の席に戻ったのを見てから、金森は立って、「じゃあ、物部さんに向かって投げて、福本さんの耳元をかすって、戻しますね。動かないで下さいよ。」と言い、ブーメランを投げた。
ブーメランは見事に金森の手に戻って来た。皆、拍手をした。
「じゃあ、今度は、服部さんとコウさんの間に投げて、蘭ちゃんの側を通って、戻します。」ブーメランは、また予言通りの動きをした。
皆、大きな拍手をした。「な、凄いだろ。馬場、いい嫁貰ったな。」「はい、ありがとうございます。」と馬場は照れながら言った。
「これ、子供の頃、おじさんに買って貰ったんだ。いつまでもやってるから、病気に違いない、って母に病院に連れて行かれた。止めさせたかったんだろうな。止めなかったけど。」と、伝子は笑った。
「同じです。その頃は、父はまだ生きてて、引っぱたかれました。それが父を見た最後でした。」「辛いこと思い出させたか?すまん。」「いいんです。隊長のお陰で、自分にも特技があったって分かりました。」
「そう言えば先輩。警視も名手ですよね。」「ああ。あつこも子供の頃夢中になったと聞いている。あつこは自宅にトレーニング場を作って貰った。今より、もっと簡素なものだが。」と、伝子は説明した。
「前に言ってたよな、福本。練習を欠かさない者に、恐い本番はない、って。演劇も同じだろ。」と言う高遠に、「ある意味な。いつかまた再開するから、よろしくな。」と、福本は応えた。
福本の言葉を最後に、雑談タイムに入り、皆が帰宅したのは9時半を過ぎていた。
伝子と高遠が後片付けをしていると、「盛り上がってたわね。いい夕餉だったわ。」と、玄関の所で声がした。
「藤井さんも入れば良かったのに。」「チケット買ってなかったから。」
「お前、皆から金取ったのか?」「それ、マジで聞いてる?面白すぎる嫁さんだな。」
伝子は高遠の後頭部をコツンと叩いた。
3人は爆笑した。
「今日は、あの二人だけだったのね。大文字シスターズは?」と、藤井が尋ねた。
「なぎさは、一ノ瀬家で『花嫁修業』、あつこは、中道家のお通夜、みちるは子育て。あかりは、新人の小坂と下條の特訓。今回はEITO本部。さやかは、今夜は当直だ。多分、特訓を見てるな。」
「あかりちゃんって、シューターの名手って子よね。総子ちゃんは?依田君のホテルに泊まったの?ここには泊まらないの?」
「うん・・・藤井さん、泊まってく?隣だけど。」
「防犯システムは自動録画だしね。たまにはいいんじゃない?」と、高遠は玄関の鍵をかけた。
藤井のところは、自動ロックだから心配ない。たまには、3人で夜中まで語るか。高遠はそう思った。大きな闘いは終った。取り敢えず、は。
【みちのくひとり旅】
作詞:市場馨
作曲:三島大輔
歌:山本譲二
―完―
========== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。
久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。
愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。
新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。
日向さやか(ひなたさやか)一佐・・空自からのEITO出向。
増田はるか三等海尉・・・海自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
飯星満里奈・・・元陸自看護官。
須藤医官・・・陸自からのEITO出向の医官。
高坂看護官・・・陸自からのEITO出向の看護官。
物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。故人となった蘇我義経の親友。蘇我と結婚した逢坂栞も翻訳部同学年だった。
物部(逢坂)栞・・・物部の妻。蘇我が亡くなってから一人だったが、物部と今年、再婚した。
依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。やすらぎほのかホテル東京支配人。
依田(小田)慶子・・・ある事件で依田と知り合い、結婚。やすらぎほのかホテル東京副支配人。
福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進む。今は建築事務所に就職し、演劇活動は休止している。
福本祥子・・・福本の妻。福本の劇団の看板女優。
服部源一郎・・・伝子の高校のコーラス部後輩。シンガーソングライター。昭和レトロなレコードを探して、伝子達に紹介している。
服部(麻宮)コウ・・・服部の妻。夫を何とか音楽家として世に出したいと願っている。
南原龍之介・・・伝子の高校のコーラス部の後輩。高校の国語教師だったが、今は妻と共に学習塾を経営している。
南原(大田原)文子・・・南原の妻。学習塾を帰営している。
山城順・・・伝子の中学の書道部後輩。愛宕と同窓生。海自の民間登用の事務官。
山城(南原)蘭・・・美容師。伝子の後輩の山城と結婚した。
愛宕寛治・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。階級は警部。みちるの夫。
馬場(金森)和子二尉・・・空自からのEITO出向。馬場の妻になった。
馬場力(ちから)三佐・・・空自からの出向。金森の夫になった。
前田空将・・・空自の、上から2番目に偉い人。金森と馬場の仲人。
渡辺副総監・・・警視庁副総監。あつこの叔父。
村越警視正・・・副総監付きの警察官幹部。あつこがEITOに移ってから、副総監の秘書役を行っている。
斉藤理事官・・・EITO本部司令官。EITO創設者。
久保田嘉三管理官・・・警視庁管理官。久保田警部補の伯父。EITO前司令官。
夏目警視正・・・EITO本部副司令官。夏目リサーチという、表向き市場調査会社の社長。
大前管理官・・・EITO大阪支部司令官。
馬場絹子・・・馬場の母。
金森佐和子・・・金森の母。
小田祐二・・・やすらぎほのかホテル社長。慶子の叔父。
藤井康子・・・伝子マンションの隣に住む。料理教室経営者。
==================================================
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO精鋭部隊である。==
SATの中道の葬式の翌日。午前11時。やすらぎほのかホテル東京。馬場と金森の披露宴会場。
挙式の後、依田がMCをして、新郎新婦の紹介をし、仲人である前田空将を紹介した。
そして、斎藤理事官が、夏目副司令官が、大阪支部の大前管理官が祝辞を述べ、警視庁からは副総監、村越警視正、久保田管理官が祝辞を述べた。
そして、上司として伝子が、友人代表として、なぎさと増田が挨拶をした。
聡子と高遠が懸念した、カラオケの件は、誰一人として口にする者はいなかった。
午後3時。お色直しや、イベントとしての彼らの仕事場での活躍の動画を観て、ゆっくりとした食事も済み、午後3時には『お開き』となった。
その直前、祝電が届いた。依田は、祝電は最初に読んだはずだが、と不審に思い、祝電のカードを開くと、おぞましい文面が現れた。
顔色を変えた依田が言い淀んでいるのを見て、伝子が駆け寄り、さっと読んだ。
マイクを使って、伝子が短く指令を出した。
「なぎさ、あつこ、みちる、あかり。増田、大町。不審者を追え、15分以内に見当たらない場合は引き返せ!」
異変を察知した、伝子の『妹』たちと腹心は直ちに散開した。
伝子から祝電を受け取った、夏目は冷静に読み上げ、皆に注意を呼び掛けた。
「文面には、こうあります。新郎、馬場力君。新婦、和子さん。結婚おめでとう。初めまして、オクトパスです。これから、EITOと長いお付き合いをしたいと思います。折角の門出を『宣戦布告』なんて無粋なことはしたくありません。そこで、提案です。結婚すると、大抵ハネムーンですよね。本格的な宣戦布告は、1ヶ月のハネムーン期間が終ってからにしましょう。手前味噌ですが、私は紳士でね。いつか最終決戦と呼ばれる日が来たら、青山君と是非フェンシングでお手合わせ頂きたい。次回からは、通信手段はtick-tackを使いましょう、SNSのね。ダークレインボーの騎士、オクトパス。」
金森の母親が卒倒した。馬場の母親もハンカチで口を押えた。
須藤が、高坂と飯星に命じて介抱させた。
EITOのメンバーは、外に出て様子を伺う者と、式場の周りで警護する者に別れた。
夏目は、皆に落ち着くように指示をした。依田と慶子と小田社長は、他の利用客に異常がないか、確認した。
15分後。不審者を捜しに行った者も、外の様子を伺った者も帰ってきた。
皆、一様に首を振った。
「やはりな。久保田管理官、念の為、書面のチェックを鑑識に。理事官。文面通り、1ヶ月の猶予を貰いましょう。」と、伝子は言った。
「見ず知らずの敵を全面的に信用するのかね?」と理事官は尋ねた。
「ケンの言葉を思い出して下さい。パウダースノウの闘いの時、既にオクトパスは来ています。混乱に乗じることも出来た筈。詰まり、我々がノーガードの拠点、例えば政府要人を狙うとか出来た筈です。」
「よし。ここは善意に捉えましょう。2人の警備は今から一ヶ月続ける。ハネムーン中にだ。交代でな。今出来ることはそれだけだ。」と、夏目が言った。
「面白いじゃないか。早速敵と知恵比べだな。金森、馬場。覚悟は出来てるな。お前達は、隊長、いや、アンバサダーの命令で結婚したんだ。ハネムーンも、ハネムーン後も任務だ。全うしろ。」と空将は力強く言った。
「了解しました!」金森と馬場は、花嫁花婿の衣装のまま敬礼をした。空将に、理事官に、伝子に。
午後6時。伝子のマンション。
依田夫婦を除く、DDメンバーが集まっていた。福本祥子も、少しくらいなら、と参加した。主賓は何と言っても、金森と馬場だ。新婚のお祝いの会だ。
高遠が、敢えて企画した。実は、マンションの近くでは、筒井、高木、青山が監視している。防犯カメラは以前増設したが、死角になる場所はあるからだ。
敵は、どの程度金森達を、いや、大文字の周りの者を熟知しているか分からない。
言葉通りなら、1ヶ月何もしないことになるが、夏目の言う通り、『念の為』は必要だ。
伝子は、わざと、金森がここに初めて来た時の失態を語った。煎餅を頬張って、喉を詰まらせた事件だ。
「あれは、ヨーダが悪いよな。体でお茶のポットを隠してたから。」と、高遠が弁護した。
「あれ?福本じゃなかったか?」と物部が言うと、「副部長、ヨーダです、依田。」と弁明し、皆の笑いを誘った。
「済みません、私が大食らいだったせいで、皆様にご迷惑をおかけして・・・。」
「申し訳ありません。」金森に続いて、馬場が謝った。
「もう、一心同体ね。」と、栞が取りなした。
「今日は、お茶菓子もお茶類もちゃんと配置しましたからね。」と、蘭が言った。
「そう言えば、馬場さんはオサケ飲めるんですか?」と山城が尋ねた。
「はい。少しだけなら。皆さんが飲む人いないって聞いてびっくりしました。」と馬場が言った。
「特に決まりはないんですよ。何故か、大文字先輩の後輩には飲まない人が多い。皆あまり気にしなくってましたね、愛宕さん。」と福本が言った。
「そうですね。別に先輩の前だから遠慮してってことじゃなく、偶然ですね。」と、煎餅を頬張りながら、愛宕は応えた。
「あ。誤解しないで下さいよ、馬場さん。皆馬場さんの『事件』のことでイジメようなんてしてませんから。」と、南原が言い、「イジメがあるようなら、愛宕さんに逮捕して貰わなくちゃね。」と文子が言った。
「ね、この際、披露して貰ったら?イジメかどうかは馬場さん次第だし。ねえ、あなた。」と、コウは夫の南原龍之介に言った。
「ほい来た。今日は、ギター持参ですからね。」と、服部がギターを構えた。
高遠は、電源の入らないマイクを馬場に渡した。
馬場が立つと、「チカラ。1回だけにしなさいよ。お代わりなし。」と、新妻は優しく注意した。
馬場は、深呼吸すると、歌い出した。
[
ここで一緒に死ねたらいいと
すがる涙の いじらしさ
その場しのぎの なぐさめ云って
みちのく ひとり旅
うしろ髪ひく かなしい声を
背(せな)でたちきる 道しるべ
生きていたなら いつかは逢える
夢でも逢えるだろう
時の流れに 逆らいながら
ひとりゆく身の 胸のうち
俺は男と つぶやきながら
みちのく ひとり旅
月の松島 しぐれの白河
昨日と明日は ちがうけど
遠くなるほど いとしさつのる
みれんが つのるだけ
たとえどんなに 恨んでいても
たとえどんなに 灯りがほしくても
お前が俺には 最後の女
俺にはお前が 最後の女
たとえどんなに つめたく別れても
お前が俺には 最後の女
たとえどんなに 流れていても
お前が俺には 最後の女
]
皆の拍手に馬場は大いに照れた。
「体格がいいせいか、声が響くなあ。」と、物部が感心した。
チャイムが鳴った。筒井だった。
「異常なし。いい声だ。これ、ピザな。高遠、ここに置くぞ。」そう言って、すぐに筒井は去った。
ピザは、順繰りに配られた。「しかし、2人は囮ってことになるのかなあ。」と、蘭が心配そうに言った。
「大丈夫だ、蘭。最高の護衛軍団が守っている。万一賊が近寄っても、ブーメランの名手と柔道剣道有段者の夫婦に勝てないよ。一生後悔する。」と、伝子は断言した。
「そうだ、伝子。金森さんに『模範演技』して貰おうよ。」「そうだな。」
伝子は一番奥のAVルームの端の押し入れから、何やら取り出してきた。
「ほい!」と伝子が金森に投げたのは、薄いブーメランだった。
金森は、すかさず受け取った。
伝子が自分の席に戻ったのを見てから、金森は立って、「じゃあ、物部さんに向かって投げて、福本さんの耳元をかすって、戻しますね。動かないで下さいよ。」と言い、ブーメランを投げた。
ブーメランは見事に金森の手に戻って来た。皆、拍手をした。
「じゃあ、今度は、服部さんとコウさんの間に投げて、蘭ちゃんの側を通って、戻します。」ブーメランは、また予言通りの動きをした。
皆、大きな拍手をした。「な、凄いだろ。馬場、いい嫁貰ったな。」「はい、ありがとうございます。」と馬場は照れながら言った。
「これ、子供の頃、おじさんに買って貰ったんだ。いつまでもやってるから、病気に違いない、って母に病院に連れて行かれた。止めさせたかったんだろうな。止めなかったけど。」と、伝子は笑った。
「同じです。その頃は、父はまだ生きてて、引っぱたかれました。それが父を見た最後でした。」「辛いこと思い出させたか?すまん。」「いいんです。隊長のお陰で、自分にも特技があったって分かりました。」
「そう言えば先輩。警視も名手ですよね。」「ああ。あつこも子供の頃夢中になったと聞いている。あつこは自宅にトレーニング場を作って貰った。今より、もっと簡素なものだが。」と、伝子は説明した。
「前に言ってたよな、福本。練習を欠かさない者に、恐い本番はない、って。演劇も同じだろ。」と言う高遠に、「ある意味な。いつかまた再開するから、よろしくな。」と、福本は応えた。
福本の言葉を最後に、雑談タイムに入り、皆が帰宅したのは9時半を過ぎていた。
伝子と高遠が後片付けをしていると、「盛り上がってたわね。いい夕餉だったわ。」と、玄関の所で声がした。
「藤井さんも入れば良かったのに。」「チケット買ってなかったから。」
「お前、皆から金取ったのか?」「それ、マジで聞いてる?面白すぎる嫁さんだな。」
伝子は高遠の後頭部をコツンと叩いた。
3人は爆笑した。
「今日は、あの二人だけだったのね。大文字シスターズは?」と、藤井が尋ねた。
「なぎさは、一ノ瀬家で『花嫁修業』、あつこは、中道家のお通夜、みちるは子育て。あかりは、新人の小坂と下條の特訓。今回はEITO本部。さやかは、今夜は当直だ。多分、特訓を見てるな。」
「あかりちゃんって、シューターの名手って子よね。総子ちゃんは?依田君のホテルに泊まったの?ここには泊まらないの?」
「うん・・・藤井さん、泊まってく?隣だけど。」
「防犯システムは自動録画だしね。たまにはいいんじゃない?」と、高遠は玄関の鍵をかけた。
藤井のところは、自動ロックだから心配ない。たまには、3人で夜中まで語るか。高遠はそう思った。大きな闘いは終った。取り敢えず、は。
【みちのくひとり旅】
作詞:市場馨
作曲:三島大輔
歌:山本譲二
―完―
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春の残骸
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共同生活を始めて一ヶ月、落ち着いてきたころ、私は奇妙な夢を見た。それは過去の、中学二年の始業式の夢で、当時の彼女が現れた。私は思わず彼女に告白してしまった。それはただの夢だと思っていたが、本来知らないはずの彼女のアドレスや、身に覚えのない記憶が私の中にあった。
あの夢は私が忘れていた記憶なのか。あるいは夢の中の行動が過去を変え、現実を改変するのか。そしてなぜこんな夢を見るのか、現象が起きたのか。そしてこの現象に、私の死が関わっているらしい。
私はその謎を解くことに興味はない。ただ彼女を、杏奈を救うために、この現象を利用することに決めた。
解けない。
相沢。
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「なんだっていいです。
動機も。殺意の有無も。
どんな強さで、どんな思いで殺したとか、
どうでもいいです。
何であろうと、
貴方は罪を犯した
ただの殺人犯です。」
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はじめまして、閲覧ありがとうございます。
相沢と申します。
推理小説ってなんだろう。
どうしてそこまで
相手のテリトリーに踏み込むんだろう。
いっその事踏み込まないでやろう。
そんな想いで書き進めました。
短編小説です。よろしくお願いします。
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