300 / 310
299.失われた『正義感』
しおりを挟む
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダー(平和への案内人)または行動隊長と呼ばれている。。
大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのエーアイ(アナザー・インテリジェンス)と呼ばれている。
一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。降格中だったが、再び副隊長になった。現在、産休中だが・・・。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。通称『片づけ隊』班長をしている。
斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
久保田嘉三管理官・・・EITO前司令官。警察とEITOのパイプ役もするが、『交渉人』が必要な場合は、柴田管理官と交替で交渉人も行う。
久保田誠警部補・・・警視庁警部補。あつこの夫。通称『片づけ隊』を手伝うこともある。
橋爪警部補・・・愛宕の相棒。丸髷書生活安全課の刑事だが、。通称『片づけ隊』
を手伝うこともある。
西部警部補・・・高速エリア署生活安全課の刑事だが、。通称『片づけ隊』
を手伝うこともある。早乙女愛と結婚した。
草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
渡伸也一曹・・・空自からのEITO出向。GPSほか自衛隊のシステム担当。
河野事務官・・・警視庁から出向の事務官。警察、自衛隊、都庁などの連絡も受け持つ。
増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。
馬場(金森)和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
高木(日向)さやか一佐・・・空自からのEITO出向。
馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
江南(えなみ)美由紀・・・、元警視庁警察犬チーム班長。警部補。警視庁からEITOに出向。
工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。
西部(早乙女)愛・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向だったが退職。EITO準隊員。
伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。
飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
七尾伶子・・・警視庁からEITO出向の巡査部長。
大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。EITOガーディアンズ。
青山たかし・・・元丸髷署刑事。EITOに就職。EITOガーディアンズ。
馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。EITOガーディアンズ。
井関五郎・・・鑑識の井関の息子。EITOの爆発物処理担当。EITOガーディアンズ。
筒井隆昭警部・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁テロ対策室からのEITO出向。EITOガーディアンズ。
原田正三警部・・・元新宿風俗担当刑事。戦闘の記録及び隠しカメラ検索を担当。
市橋早苗・・・移民党総裁。総理。
倉敷恒夫・・・コブラ&マングースの『枝』。
北村和樹・・・海上保安庁職員。
=================================================
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
==EITOガーディアンズとは、エマージェンシーガールズの支援部隊である。==
午前0時。Redにドリフト・アイスの声明が上がった。
[お見合いパーティー第十回
日時:翌日。午前11時。
場所: 公園←AAKSI
参加者:有限会社ドリフト・アイス有志の男性。
EITO東京本部の男性及び女性。
主宰:ドリフト・アイス
]
午前9時半。伝子のマンション。
高遠は、PCルームのEITO用ディスプレイの前に座っていた。
そして、久保田管理官から話を聞いていた。
「自殺するはずの無い人だから、殺されていた?そりゃあそうでしょ。」
「勅使河原厚(てしがわらあつし)は、New Tubeのチャンネルのチャット常連だった。ある日、New Tuber宮根は、チャットを妨害している、として、ライブ配信中に、アカウント名ドラコを詰った。勅使河原はアカウント名てっしーと名乗っていた。てっしーこと勅使河原は、ドラコが数回アッパーチャットをしていたのを知っていた。アッパーチャットって分かるかね?」
「やったことないけど、分かります。チャットとは、『おしゃべり』という意味で、アッパーチャットと言うのは、その界隈で定番の「投げ銭」で、電話の口座他で決済される取引で、New Tuberの利益になります。チャットに参加するメンバーには『アパチャ!』というかけ声がかけられ、賞賛されます。単純に投げ銭することも出来ますが、自分の意見を添えて主張することも出来ます。目立つから。で、てっしーは怒った。金貰っている相手を罵るのか、と。つまり、単発の『寄付』ですから。「正義感、ですね。てっしーの。」と、高遠は管理官に言った。
「その正義感があだになったのかどうか分からないが、てっしーは自宅で亡くなっていた。発見者は、彼が常時契約している宅配食従業員だ。所謂『独居老人』だから、前日配達していた宅配ケースの中に弁当が残っているのを見て、もしや熱中症で倒れたか、と声をかけてから家に上がりこんだら、書斎代わりにしていた台所で事切れていた。てっしーは、母親が病院で寝たきりで、週に数回面会に行っていた。面会と言っても、目を開ける確率が低いから、殆ど『一人語り』をして洗濯物を回収して帰宅していた。仏間には、母親の洗濯物が干してあったよ。最初言った、『自殺するはずの無い人』ととは、彼には世話をする親がいたからだ。司法解剖の結果、刺された腎臓からの出血が原因で亡くなったらしい。コブラ&マングースのタトゥーを覚えているかね。あのシールが、てっしーの体の目立たない所に貼られていた。」
「それで、EITOの案件なんですね。」と、伝子が言った。
午前10時。EITO東京本部。指令室。
「それで、EITOの案件なんですね。」と、伝子が言った。
「うん。あの時の『枝』である、倉敷に確認したら、『掘っている暇がないから、デザインを元にPCで作って印刷したんでしょう』と言っていた。」
咳払いをしてから、管理官は「てっしーは、先日クレームを入れた翌々日に、宮根が『謝罪は、しない』とライブで公言したことから、またクレームを入れた。その報復が、チャットの出禁だった。」と、言った。
「できん?」と理事官がくびを傾げたので、草薙が助け船を出した。
「出入り禁止。略して出禁。つまり、てっしーさんは、皆と『おしゃべり』出来なくなった。」
「それって、宮根の『制裁』ですか?報復じゃないですか、一方的に。」
「その通りだよ、原田君。てっしーは、Redや他のSNS、New Tubeの他の番組で不当を訴えた。そして、宮根は、うるさい、とはねのけた。」
「酷いな。人権蹂躙だ。」と、なぎさは呟いた。
「今、宮根と、そのチャンネルの『常連さん』の住所に行って、中津君達が事情を確認している。てっしーはマメな性格でね、『電子日記』を書いていた。事件の経緯も、常連さんのアカウント名も明白になった。」
「分かった。その事件とダークレインボーの関わりが判明したら、連絡を頼む。」
理事官がそう言うと、マルチディスプレイから消えた。
会議室。
「逆恨みかな?宮根は、報復だけじゃ足りなくて・・・。」と馬場が言ったので、「殺したいのは、てっしーの方じゃないの。」と、金森は言った。
「ところで、見つかったか、草薙。」と、理事官は草薙に尋ねた。
「公園←AAKSIですが、高遠さんがアナグラムでなくて、並べ替えると『カサイ』と『サカイ』になるというので、調べました。先ず、『カサイ』の方ですが、江戸川区臨海町の葛西臨海公園のことだと思われます。それと、『サカイ』の方ですが、江戸川区平井の逆井公園のことだと思われます。」と、草薙は応えた。
夏目警視正は、草薙のタブレットから繋がったマルチディスプレイを見た。
「直線距離なのが気になるな。距離は?」「8.1キロです。」
「ひょっとしたら、花火を打ち上げる積もりかも知れませんね。以前、大阪心斎橋付近で市内に撃ち込もうとしましたよね。」と、高遠が割り込んで言った。
「渡。通信妨害装置、準備だ。」と、理事官は言った。
翌日。午前10時半。逆井公園。
あつこ達は、早乙女・工藤達と合流した。盆休みの為、総理は官邸にも私邸にもいない。他の閣僚もだ。
「でかい花火って、なんとか砲ですか?警視。」と工藤は尋ねた。
「見たところ、発射地点は、ここからずらしたのかしら?見えないわね。」早乙女は言った。
「多分、バトルが始まってからね。バトルの集合時間は書いてあったけど、発射時間は書いていない。まあ、当然だけど。」
「副隊長。やって来ました。」馬越があつこに示した方向から、トラックが数台、走ってきた。
「懲りない連中ね。」
午前10時半。葛西臨海公園。
「懲りない連中だな。」なぎさが、増田に示された方向から。トラックが数台走って来た。降りた連中は拳銃や機関銃、日本刀を持っている、多分、真剣だろう。
集団の中から、黒いTシャツを着た男が、機関銃を『着て』、前へ出た。
「誰だ、リーダーは。」「私が副隊長だ。」と、なぎさが前に出た。
「いい体つきだな。名前は?」「エマージェンシーガールズ2号だ。あんたは?」
「黒井だ。」「成程。似合ってるな。口説こうとするなよ。男とは、寝ない主義なんだ。」「そうか、残念だ。」
午前11時。逆井公園。
ゴングが鳴った訳ではないが、バトルは始まった。トレーラーが入って来た。
あつこは、トレーラーから、機関銃を持った男達が降りるのを見たが、違和感を覚え、川の方を見ると、小型クルーザーが、どこからか移動してきた。
そして、海側から迫ってきたのは、海上保安庁の巡視艇『こまかぜ』だった。
渡は、海上保安庁の北村の好意で、通信妨害装置を載せて貰った。
停泊と同時に、渡は装置のスイッチを入れた。
午前11時。葛西臨海公園。
バトルは始まった。
なぎさのインカムに、伝子の声が入った。「今から、インカムは正常に使えない。アイコンタクトで闘え!」
正午。逆井公園。
あつこは、長波ホイッスルを吹いた。集団の連中は、空を仰いで大の字になっていた。
間もなく、西部警部補、久保田警部補率いる片づけ隊がやって来た。
長波ホイッスルとは、犬笛に似た簡易通信機だ。通常の大人の耳には聞こえない。
川を見ると、海上保安庁職員に逮捕された者達が、次々と陸揚げされていた。
正午。葛西臨海公園。
なぎさは、長波ホイッスルを吹いた。集団の連中は、黒井を除いて空を仰いで大の字になっていた。間もなく、愛宕警部、橋爪警部補率いる警官隊がやって来た。
なぎさは、黒井に尋ねた。「あんたらの仲間は、New Tube利用者を殺したか?」
「あんたは器量よしだから、答えてやろう。ノーだ。多分、あっちの公園の連中も船の連中も関係ない。」「正直なあんたを信じよう。」
橋爪警部補達に逮捕連行されていく集団を見送る、なぎさに愛宕は言った。
「一佐。宮根が全部吐きました。New Tube利用者の事件は、『勝手に』殺されていたらしいです。脅迫に負けて、真犯人に金を振り込んだらしいです。ネットでのやりとりを傍受していて、ピスミラに目をつけられていたらしい。あの番組の『常連さん』にスパイとして紛れ込んでいたとか。そもそも、宮根が悪ふざけをしなければ発生しなかった事件でした。」「わるふざけ?チャット禁止が?」「言語道断、ですね。New Tubeは、番組運営権利を奪ったそうです。少しは、浮かばれますかね、てっしーさんは。」
「愛宕さん。どっちの方角?」「え?」てっしーさんの自宅。」「東だから、こっちですね。」
なぎさは、東に向いて手を合せて黙祷した。愛宕も、それに合わせた。
それを見た、大空や仁礼、他のエマージェンシーガールズが手を合わせて黙祷した。
今日もまだ真夏。エマージェンシーガールズのユニフォームは、特殊な空調扇風機が仕込んである。だが、限界もある。バトルは、なるべく1時間を越えないよう、注意されている。
今年は、夏が長いらしい。
―完―
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダー(平和への案内人)または行動隊長と呼ばれている。。
大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのエーアイ(アナザー・インテリジェンス)と呼ばれている。
一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。降格中だったが、再び副隊長になった。現在、産休中だが・・・。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。通称『片づけ隊』班長をしている。
斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
久保田嘉三管理官・・・EITO前司令官。警察とEITOのパイプ役もするが、『交渉人』が必要な場合は、柴田管理官と交替で交渉人も行う。
久保田誠警部補・・・警視庁警部補。あつこの夫。通称『片づけ隊』を手伝うこともある。
橋爪警部補・・・愛宕の相棒。丸髷書生活安全課の刑事だが、。通称『片づけ隊』
を手伝うこともある。
西部警部補・・・高速エリア署生活安全課の刑事だが、。通称『片づけ隊』
を手伝うこともある。早乙女愛と結婚した。
草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
渡伸也一曹・・・空自からのEITO出向。GPSほか自衛隊のシステム担当。
河野事務官・・・警視庁から出向の事務官。警察、自衛隊、都庁などの連絡も受け持つ。
増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。
馬場(金森)和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
高木(日向)さやか一佐・・・空自からのEITO出向。
馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
江南(えなみ)美由紀・・・、元警視庁警察犬チーム班長。警部補。警視庁からEITOに出向。
工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。
西部(早乙女)愛・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向だったが退職。EITO準隊員。
伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。
飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
七尾伶子・・・警視庁からEITO出向の巡査部長。
大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。EITOガーディアンズ。
青山たかし・・・元丸髷署刑事。EITOに就職。EITOガーディアンズ。
馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。EITOガーディアンズ。
井関五郎・・・鑑識の井関の息子。EITOの爆発物処理担当。EITOガーディアンズ。
筒井隆昭警部・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁テロ対策室からのEITO出向。EITOガーディアンズ。
原田正三警部・・・元新宿風俗担当刑事。戦闘の記録及び隠しカメラ検索を担当。
市橋早苗・・・移民党総裁。総理。
倉敷恒夫・・・コブラ&マングースの『枝』。
北村和樹・・・海上保安庁職員。
=================================================
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
==EITOガーディアンズとは、エマージェンシーガールズの支援部隊である。==
午前0時。Redにドリフト・アイスの声明が上がった。
[お見合いパーティー第十回
日時:翌日。午前11時。
場所: 公園←AAKSI
参加者:有限会社ドリフト・アイス有志の男性。
EITO東京本部の男性及び女性。
主宰:ドリフト・アイス
]
午前9時半。伝子のマンション。
高遠は、PCルームのEITO用ディスプレイの前に座っていた。
そして、久保田管理官から話を聞いていた。
「自殺するはずの無い人だから、殺されていた?そりゃあそうでしょ。」
「勅使河原厚(てしがわらあつし)は、New Tubeのチャンネルのチャット常連だった。ある日、New Tuber宮根は、チャットを妨害している、として、ライブ配信中に、アカウント名ドラコを詰った。勅使河原はアカウント名てっしーと名乗っていた。てっしーこと勅使河原は、ドラコが数回アッパーチャットをしていたのを知っていた。アッパーチャットって分かるかね?」
「やったことないけど、分かります。チャットとは、『おしゃべり』という意味で、アッパーチャットと言うのは、その界隈で定番の「投げ銭」で、電話の口座他で決済される取引で、New Tuberの利益になります。チャットに参加するメンバーには『アパチャ!』というかけ声がかけられ、賞賛されます。単純に投げ銭することも出来ますが、自分の意見を添えて主張することも出来ます。目立つから。で、てっしーは怒った。金貰っている相手を罵るのか、と。つまり、単発の『寄付』ですから。「正義感、ですね。てっしーの。」と、高遠は管理官に言った。
「その正義感があだになったのかどうか分からないが、てっしーは自宅で亡くなっていた。発見者は、彼が常時契約している宅配食従業員だ。所謂『独居老人』だから、前日配達していた宅配ケースの中に弁当が残っているのを見て、もしや熱中症で倒れたか、と声をかけてから家に上がりこんだら、書斎代わりにしていた台所で事切れていた。てっしーは、母親が病院で寝たきりで、週に数回面会に行っていた。面会と言っても、目を開ける確率が低いから、殆ど『一人語り』をして洗濯物を回収して帰宅していた。仏間には、母親の洗濯物が干してあったよ。最初言った、『自殺するはずの無い人』ととは、彼には世話をする親がいたからだ。司法解剖の結果、刺された腎臓からの出血が原因で亡くなったらしい。コブラ&マングースのタトゥーを覚えているかね。あのシールが、てっしーの体の目立たない所に貼られていた。」
「それで、EITOの案件なんですね。」と、伝子が言った。
午前10時。EITO東京本部。指令室。
「それで、EITOの案件なんですね。」と、伝子が言った。
「うん。あの時の『枝』である、倉敷に確認したら、『掘っている暇がないから、デザインを元にPCで作って印刷したんでしょう』と言っていた。」
咳払いをしてから、管理官は「てっしーは、先日クレームを入れた翌々日に、宮根が『謝罪は、しない』とライブで公言したことから、またクレームを入れた。その報復が、チャットの出禁だった。」と、言った。
「できん?」と理事官がくびを傾げたので、草薙が助け船を出した。
「出入り禁止。略して出禁。つまり、てっしーさんは、皆と『おしゃべり』出来なくなった。」
「それって、宮根の『制裁』ですか?報復じゃないですか、一方的に。」
「その通りだよ、原田君。てっしーは、Redや他のSNS、New Tubeの他の番組で不当を訴えた。そして、宮根は、うるさい、とはねのけた。」
「酷いな。人権蹂躙だ。」と、なぎさは呟いた。
「今、宮根と、そのチャンネルの『常連さん』の住所に行って、中津君達が事情を確認している。てっしーはマメな性格でね、『電子日記』を書いていた。事件の経緯も、常連さんのアカウント名も明白になった。」
「分かった。その事件とダークレインボーの関わりが判明したら、連絡を頼む。」
理事官がそう言うと、マルチディスプレイから消えた。
会議室。
「逆恨みかな?宮根は、報復だけじゃ足りなくて・・・。」と馬場が言ったので、「殺したいのは、てっしーの方じゃないの。」と、金森は言った。
「ところで、見つかったか、草薙。」と、理事官は草薙に尋ねた。
「公園←AAKSIですが、高遠さんがアナグラムでなくて、並べ替えると『カサイ』と『サカイ』になるというので、調べました。先ず、『カサイ』の方ですが、江戸川区臨海町の葛西臨海公園のことだと思われます。それと、『サカイ』の方ですが、江戸川区平井の逆井公園のことだと思われます。」と、草薙は応えた。
夏目警視正は、草薙のタブレットから繋がったマルチディスプレイを見た。
「直線距離なのが気になるな。距離は?」「8.1キロです。」
「ひょっとしたら、花火を打ち上げる積もりかも知れませんね。以前、大阪心斎橋付近で市内に撃ち込もうとしましたよね。」と、高遠が割り込んで言った。
「渡。通信妨害装置、準備だ。」と、理事官は言った。
翌日。午前10時半。逆井公園。
あつこ達は、早乙女・工藤達と合流した。盆休みの為、総理は官邸にも私邸にもいない。他の閣僚もだ。
「でかい花火って、なんとか砲ですか?警視。」と工藤は尋ねた。
「見たところ、発射地点は、ここからずらしたのかしら?見えないわね。」早乙女は言った。
「多分、バトルが始まってからね。バトルの集合時間は書いてあったけど、発射時間は書いていない。まあ、当然だけど。」
「副隊長。やって来ました。」馬越があつこに示した方向から、トラックが数台、走ってきた。
「懲りない連中ね。」
午前10時半。葛西臨海公園。
「懲りない連中だな。」なぎさが、増田に示された方向から。トラックが数台走って来た。降りた連中は拳銃や機関銃、日本刀を持っている、多分、真剣だろう。
集団の中から、黒いTシャツを着た男が、機関銃を『着て』、前へ出た。
「誰だ、リーダーは。」「私が副隊長だ。」と、なぎさが前に出た。
「いい体つきだな。名前は?」「エマージェンシーガールズ2号だ。あんたは?」
「黒井だ。」「成程。似合ってるな。口説こうとするなよ。男とは、寝ない主義なんだ。」「そうか、残念だ。」
午前11時。逆井公園。
ゴングが鳴った訳ではないが、バトルは始まった。トレーラーが入って来た。
あつこは、トレーラーから、機関銃を持った男達が降りるのを見たが、違和感を覚え、川の方を見ると、小型クルーザーが、どこからか移動してきた。
そして、海側から迫ってきたのは、海上保安庁の巡視艇『こまかぜ』だった。
渡は、海上保安庁の北村の好意で、通信妨害装置を載せて貰った。
停泊と同時に、渡は装置のスイッチを入れた。
午前11時。葛西臨海公園。
バトルは始まった。
なぎさのインカムに、伝子の声が入った。「今から、インカムは正常に使えない。アイコンタクトで闘え!」
正午。逆井公園。
あつこは、長波ホイッスルを吹いた。集団の連中は、空を仰いで大の字になっていた。
間もなく、西部警部補、久保田警部補率いる片づけ隊がやって来た。
長波ホイッスルとは、犬笛に似た簡易通信機だ。通常の大人の耳には聞こえない。
川を見ると、海上保安庁職員に逮捕された者達が、次々と陸揚げされていた。
正午。葛西臨海公園。
なぎさは、長波ホイッスルを吹いた。集団の連中は、黒井を除いて空を仰いで大の字になっていた。間もなく、愛宕警部、橋爪警部補率いる警官隊がやって来た。
なぎさは、黒井に尋ねた。「あんたらの仲間は、New Tube利用者を殺したか?」
「あんたは器量よしだから、答えてやろう。ノーだ。多分、あっちの公園の連中も船の連中も関係ない。」「正直なあんたを信じよう。」
橋爪警部補達に逮捕連行されていく集団を見送る、なぎさに愛宕は言った。
「一佐。宮根が全部吐きました。New Tube利用者の事件は、『勝手に』殺されていたらしいです。脅迫に負けて、真犯人に金を振り込んだらしいです。ネットでのやりとりを傍受していて、ピスミラに目をつけられていたらしい。あの番組の『常連さん』にスパイとして紛れ込んでいたとか。そもそも、宮根が悪ふざけをしなければ発生しなかった事件でした。」「わるふざけ?チャット禁止が?」「言語道断、ですね。New Tubeは、番組運営権利を奪ったそうです。少しは、浮かばれますかね、てっしーさんは。」
「愛宕さん。どっちの方角?」「え?」てっしーさんの自宅。」「東だから、こっちですね。」
なぎさは、東に向いて手を合せて黙祷した。愛宕も、それに合わせた。
それを見た、大空や仁礼、他のエマージェンシーガールズが手を合わせて黙祷した。
今日もまだ真夏。エマージェンシーガールズのユニフォームは、特殊な空調扇風機が仕込んである。だが、限界もある。バトルは、なるべく1時間を越えないよう、注意されている。
今年は、夏が長いらしい。
―完―
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる