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185.トリプル誘拐

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 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
 大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
 一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。
 久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
 愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。
 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。
 斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
 夏目警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。
 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。
 金森和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
 馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。
 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。
 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
 日向さやか(ひなたさやか)一佐・・空自からのEITO出向。伝子の影武者担当。
 飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向。
 江南(えなみ)美由紀・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。
 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
 下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。
 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。
 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。
 青山たかし元警部補・・・以前は丸髷署生活安全課勤務だったが、退職。EITOに再就職した。
 河野事務官・・・警視庁からのEITO出向。
 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
 久保田管理官・・・EITO前司令官。斉藤理事官の命で、伝子達をEITOにスカウトした。
 山城順・・・伝子の中学の後輩。愛宕と同窓生。今は、非常勤の海自事務官。
 山城(南原)蘭・・・山城の妻。南原の妹。
 物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。故人となった蘇我義経の親友。
 依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。やすらぎほのかホテル東京支配人。
 依田(小田)慶子・・・依田の妻。やすらぎほのかホテル東京副支配人。
 福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進む。今は建築設計事務所に非常勤で勤務。
 福本(鈴木)祥子・・・福本が「かつていた」劇団の仲間。福本の妻。
 南原龍之介・・・伝子の高校のコーラス部の後輩。元高校の国語教師。妻文子と塾を経営している。
 南原(大田原)文子・・・南原の妻。
 服部源一郎・・・南原と同様、伝子の高校のコーラス部後輩。
 服部(麻宮)コウ・・・服部の妻。
 渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。
 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
 大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。
 藤井康子・・・伝子マンションのお隣さん。EITO準隊員待遇。
 中津健二・・・中津警部補(中津刑事)の弟。興信所を経営している。大阪の南部興信所と提携している。
 西園寺公子・・・中津健二の恋人。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。
 高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。
 泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
 根津あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。
 本郷隼人二尉・・・海自からEITOに出向。
 大蔵太蔵(おおくらたいぞう)・・・EITOシステム管理部長。
 須藤桃子医官・・・陸自からのEITO出向。基本的に診療室勤務。
 高坂一郎看護官・・・陸自からのEITO出向。基本的に診療室勤務。
 和知南・・・国枝大学学生?

 =================================================

 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==

 午前9時。伝子のマンション。
「大幅に移動していますね。清水市で点滅しています。」
「清水市?静岡県ですか?」「そう。あ。今は合併して静岡市清水区ですが・・・。」
 高遠は愕然とした。綾子は何者かに拉致されたことは間違いない。
「ガラケーは?」と、高遠は尋ね直した。「あ。清水区じゃない!!」と、高遠の問いに草薙は叫んだ。
 この場合のガラケーは、『追跡用ガラケー』で、コンパクトながら、通称大文字システムの一つで、大きな振動させあれば点滅を続ける。12時間というバッテリーの制限があるが、システムが収集したデータで軌跡が描かれる。詰まり、どういうルートで移動したかが把握出来る。
 DDバッジより目立たない。DDバッジも以前と違って『押して起動』ではないが、敵に広く知れ渡っている可能性がある。ガラケーの方は、大きな振動があって初めて起動する。
 高遠が、念の為確認したのは、以前の事件で『陽動』にDDバッジが使われてしまったからだ。本郷や大蔵に『第三の追跡手段』を模索して貰っているが、まだアイディア段階でもない。
 午前10時。EITO本部。会議室。
 仮眠から目覚めたエマージェンシーガールズメンバーは集められた。
「で、どこです?」なぎさが問うと、「エジプト大使館。正確にはエジプト・アラブ大使館です。」と、草薙が応えた。
「高遠君から連絡を受けた大文字君は、めげずにすぐに総理に電話をして、打ち合わせをした。今、理事官と一緒に都庁に向かったよ。」
「でも、何で都庁に?」と、みちるが言うと、「エジプトと言えば、御池都知事だろ?あのオバサンは嫉妬深いからな。逆に持ち上げに行ったのさ。」と筒井が笑って言った。
 同じ頃。午前10時。東京都庁。知事室。
 御池都知事の前で、総理、理事官、伝子が頭を下げていた。伝子は黒いリクルートスーツを着ている。
 数秒見ていた御池は、「どうぞ頭を上げて下さい。どうせ、私がうんと言うまで頭を下げる積もりなんでしょ。私もEITOに何度か助けて貰っています。いやとは言いません。でも、総理なら直接大使館に行けるのでは?」と総理に尋ねた。
 総理は、「実は、捉えられているのは、こちらの、EITOの特別隊員、潜入捜査官なんです。」と口火を切った。
 EITO本部。会議室。
「理事官も総理も、下げたくない頭を下げに行ったのは、後々のことを考えてのことだ。どういう展開になろうとも、都知事を巻き込めば、後始末しやすくなる。何しろ、『便宜を図って頂く』訳だからな。単に大使に繋ぎを取って貰うのじゃなくて、食事会に招いて貰って、その間に救出をする。勿論、大使には差し支えない範囲で話して協力して貰う。」
 夏目の言葉に、「我々にも『協力して貰う』だろ?指揮官代理。」と言いながら、須藤医官が高坂管理官と共に入って来た。
 本郷隼人と大蔵も続いた。
「御池都知事の医療スタッフという触れ込みで須藤先生達には、随行して貰い、これを運んで貰う。パルスオキシメータだ。だが、本物ではない。」
「高坂さんが、丁度壊れたパルスオキシメータを持っていて良かった。適当な部品を詰め込んだよ。」
 本郷と大蔵の説明に皆がピンと来ないようなので、ディスプレイから高遠が言った。
「僕が頼んだんです。最初、何故DDバッジとガラケーの信号が違う場所で光っているか?って渡さんや草薙さんと話していたんです。以前、2つが違う場所で光ったことがあったでしょ?」
「神奈川県と千葉県、ですよね。」「何故追跡出来たか?が彼らには不思議だった筈です。それで、また、陽動を取った。DDバッジが追跡可能な装置だということは既にバレてしまっている。ガラケーは不明。そこで、第3の追跡装置です。逢坂先輩に、介護士として持っていて不思議無い持ち物をあげて貰ったんです。」
「その中で、パルスオキシメータがあった。体温計や血圧計じゃ無理がある。それで、改造している暇はないが、それらしきモノは用意出来るか、ということになった。」
 本郷と高遠のやりとりを聞いていた越後が、「ちょっと待って下さい。隊長のお母さんは介護士ですよね?看護師さんなら不自然じゃないけど。」と言った。
「先輩の話だと、今は、被介護者どこでどうなるか分からない時代だから、持っているらしい。先輩の話だと、看護師と介護士には微妙にテリトリーの違いがある。歯磨きは看護師も介護士もオッケー、爪切りの場合、看護師はオッケーだが介護士はNG。聴診器の場合、看護師はオッケーだが介護士はNG。今言っていた体温計血圧計パルスオキシメータは看護師も介護士もオッケーだ。介護制度が始まった時、介護士は看護師の仕事の一部を受け持つことになった。看護師は医師の代理だからね。ああ。注射も看護師はオッケーで介護士はNGだ。早い話、『医療行為』は看護師にはある程度許されているが、介護士にはない。爪切りは行き過ぎだと思うけどね。特殊な爪の形だったらともかく。」
 伊知地は、「じゃ、偽の通信機としてパルスオキシメータを持って行くんですね。救出する際に入れ替えるとか。」と言い、日向は「よく分かってるじゃないか。でも、隊長はともかく、須藤先生と高坂さんで大丈夫ですか?」と、夏目に尋ねた。
「飯星は、今日の日の為にプロレス看護師して来たんだよな。高坂。大事にしろよ。」と、須藤医官はニッと笑った。
 須藤は、高坂と飯星を連れて出て行った。
 午前10時半。
 Redにサンドシンドロームからのメッセージがアップロードされた、と警視庁からあった、と河野事務官が言って来た。
 今、画面に出します。
 《
 やあ、EITOのラスボス君。ラスボス君の身内のことは心配だろうが、そんなの放っておけばいい。部下を見殺しにしたこともあるようだしな。あ?俺ってインショウ悪い?普通というか古典的というか、博物館行きものだぜ。さあ、お昼休みは、何食べようかな?
 》

「わざわざラスボスって言っているなあ。完全に大文字君に挑戦している。高遠君。ナゾナゾは解けたかな?」と、枝山事務官は言った。
「まあ、ラスボスは伝子のことでしょう。お昼休みと言っているから、午後1時に攻撃するぞ、と言っていますね。『インショウ』とは、判子のことでしょう。博物館は・・・今日、何かイベントないですかね?草薙さん。」高遠の言葉に、「至急調べます。」と応えた。
 そこへ、清水区に行っていた、あつこが帰って来た。
「ポーチが見つかりました。区役所に『忘れ物』として届けられていました。信号は、区役所の忘れ物保管庫から出ていました。ポーチの中には、ハンカチにくるんだDDバッジがありました。高遠さん、ポーチ、見覚えありますか?」
「勿論。キティちゃんのストラップを付けているなは、特徴です。お義母さんは、いつも大きめのバッグ持っているから、さっき話した道具はバッグにあるかも。ああ。今、思いついたんですけど、これで我々がDDバッジを常備されていることがバレてしまっていることが判明しました。夏目さん、大蔵さん、隼人君。DDバッジを2個ずつ持つことにするのはどうですか?製造大変だけど。」
「詰まり、捕まった場合に1個目を奪われても『保険』の2個目があると・・・理事官に話して見るよ。3種類目を開発するよりは早く出来るかも知れないが・・・奇抜だなあ。」と夏目は笑った。
 午後1時。エジプト・アラブ共和国大使館。
 アーキル大使は流ちょうな日本語で言った。クォーターで、日本語は通訳なしで話せる。
「誰の案内も無しにSPさんはやって来たようですが、この部屋で合っていますか?普段使っていない、予備の部屋ですが。」
「合っている筈です。」と、伝子が言うより早く、総理は応えた。
 大使館の警備員が開けると、綾子がいた。隅に片づけられた長テーブルに、綾子は横たわっていた。手首、足首、猿ぐつわで拘束されていた。伝子は猿ぐつわを取ると同時に、体を陰にして自分の唇に指を当て言った。
「総理のSPの手塚と言います。草笛捜査官。大丈夫ですか?」
 綾子は何が何だか分からないが、兎に角頷いた。
「お願いします。」と、伝子は須藤に言った。
「身体検査をしますので、殿方は、暫く待機を。」と看護師姿の飯星が言い、高坂が大使と警備員を連れて出た。
「御池さん、私たちも外に出ましょう。連絡電話もしなくちゃいけないし。すぐ終るでしょう。」「そうですね。私も連絡電話をします。」
 数分後、2人が連絡電話を終える頃、飯星が出てきて、総理に言った。
「レイプはされていません。」「良かったわー、御池さん。」
「そうですね、総理。」御池は、釣られて言った。
「持病があるので、すぐに救急車を。」と須藤は言った。
「いや、その必要はない。」と警備員は言った。手には拳銃を持っている。
 数人の男達がやって来た。男達は、大使や総理、都知事、そして伝子達に拳銃を向けた。
 午後1時。東京都立産業貿易センター浜松町館。TOKYOスタンプフェスタ会場。
 会場を出た、デジタル庁加納大臣は、公用車に乗った。
 公用車は、後援会に向かう筈が、違う方角に向かった。
「君。方向が違うよ。寄道はしなくていいよ。」「いや、寄道しましょう。大臣は、弓道をやられるんでしたね?」「ああ。学生時代。少しね。」「じゃ、旧芝離宮恩賜庭園は?」
「ああ、よく・・・なんで?なんでそこに向かうの?」「待っている方がおられるので。」
 数分で、旧芝離宮恩賜庭園に車は着いた。待っていたのは、手足を縛られた妻だった。
 午後1時。地下鉄博物館。東京メトロ東西線 葛西駅近く。
 鉄道オタク、所謂『てっちゃん』の国交省補佐官は、プライベートでイベントの見学に来ていた。
 タクシーを拾って、自宅に戻る筈が、葛西東公園にタクシーは到着していた。
「君。行き先が・・・あ。ひろこ。」見ると、前方に妻ひろこがベンチに括り付けられていた。
 午後1時半。エジプト大使館。
 どこからともなく、ブーメランが跳んできた。
 すかさず、飯星は、フライングヘッドシザースで一人を倒し、伝子は大外刈りで倒した。
 他の者が拳銃を撃とうとしたとき、フレキシブルドローンが、男達の回りを飛び始めた。フレキシブルドローンとは、EITOが開発した。AI搭載のドローン3機は、男達を翻弄した。伊知地、大町達が、総理、都知事、大使を逃がした。総理は、気を利かして言った。
「ありがとう、エマージェンシーガールズ。」
 入れ替わりに、伝子、なぎさ、みちるが、五節棍、三節棍、ヌンチャクで敵に突進した。
 フレキシブルドローンは、すぐに庭から外に出ていった。
 十数分後。男達は、天井を眺めていた。
 村松警視正率いる、警官隊が逮捕連行した。
 高坂看護官は、捕らわれていた部屋の長テーブルから少し離れた床にパルスオキシメータを『置き忘れる』のを忘れなかった。
 皆が引き上げ、静まった頃、清掃員日本人スタッフの女は部屋に入って確認、パルスオキシメータを発見した。
 午後1時半。旧芝離宮恩賜庭園。
 大臣が、拘束された妻と対面した直後。弓道場から、田坂、安藤、浜田が弓を使って、男達のふくらはぎや太ももを刺した。EITOは殺傷武器を使わない建前になっている。
 従って、矢は貫通までは行かない。通常の『やじり』とは違う。目標物に当たると、へしゃげて『痺れ薬』の液が出る。
 機関銃で武装して一団だったが、シュータやブーメランで『足止め』させた上でのバトルスティックでの攻撃をする、増田、結城、あかり、小坂、下條、越後、葉月のエマージェンシーガールズだった。トドメは、青山、高木、馬場のEITOボーイズによる放水銃で、多くの敵を近くの池の中に放り込んだ。
 午後1時半。葛西東公園。
 大臣夫妻を縛り上げた一団だったが、そこに隙が生まれた。
 黒い雲が彼らを覆ったかと思うと、水流バルーンがMAITOのオスプレイから落された。
 あつこの合図で、稲森は、濡れた一団の男達に鞭打ち、江南が率いて来た警察犬が男達に噛みついた。警察犬が引き上げた後、あつこ、大町、仁礼、財前、静音はバトルスティックでなぎ倒して行った。
 総理私邸に向かっていた一団のバイクがあったが、工藤率いる白バイ隊と、金森と馬越が乗ったマセラティに邪魔をされ、逮捕連行された。
 午後2時半。東京都庁。知事室。
 総理は、伝子のことも綾子のことも全て話した。
「御池さん。テロリストには断固たる決意が必要です。なかなか言えなかったけれど、あなたとの協力関係こそ、この国の治安を守るに必要なことだと思います。これからも力を貸して下さい。」総理は、最敬礼をした。
 途端に、御池は土下座をした。「今までの無礼、許して下さい。総理、大文字さん。私こそお願いします。東京を、日本を守る為に『おんなの力』を結集しましょう。」
『おんなの力』は余計だな、と思いながら、伝子は言った。
「心強いです。母も喜びます。」
 午後6時。池上病院。栞の病室。
 物部のスマホに伝子からのLinenのメッセージが届いた。
 見舞いに来ている、依田、慶子、山城、欄、服部、コウ、南原、文子は物部から説明を受けた。
「ほらね。高遠君の奥さんは、何とかしちゃうのよ。誰かさんみたいに病院を抜け出さなくても大丈夫なのよ。良かったわ。検査しようと思ったら、『伝子の家に帰る』って、言い出して。飯星さんからも須藤先生からも報告受けてるから、帰って貰ったの。」
 栞は、シーツを頭から被った。
 愛宕と橋爪警部補が入って来た。「朗報です。」「スパイは、ちゃんとパルスオキシメータを『回収』してくれたらしいです。」と、橋爪が言い、「皆さんに後日、『予備』のDDバッジを配るらしいです。高遠さんのアイディアが通りました。」と愛宕が言った。
「ウチのラスボスに勝てる敵なんていないよな。」と依田が言い、皆は頷いた。
 午後7時。伝子のマンション。
 予備の部屋から伝子が出てくる。伝子は、藤井に「子供のような寝顔だ。疲れたんだね。」と言った。
 高遠と藤井は、ただ頷いた。
 ―完―


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