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118.跳弾

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 ========== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
 大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
 一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」と呼ばれている。
 久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。
 物部一朗太・・・伝子の大学翻訳部同輩。当時、副部長。喫茶店アテロゴのマスター。
 物部(逢坂)栞・・・伝子の大学の翻訳部の同輩。物部とも同輩。美作あゆみ(みまさかあゆみ)というペンネームで童話を書いている。
 依田俊介・・・伝子の翻訳部後輩。元は宅配便配達員だったが、今はやすらぎほのかホテル東京支配人になっている。
 依田(小田)慶子・・・やすらぎほのかホテル東京副支配人。
 福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進むが、今は建設会社非正規社員。演劇は趣味として続けている。
 福本(鈴木)祥子・・・福本の妻。昔、福本と同じ劇団にいた。福本の劇団の看板女優。
 服部源一郎・・・南原と同様、伝子の高校のコーラス部後輩。
 服部(麻宮)コウ・・・服部の妻。服部の人柄と才能に惚れ、結婚。「御主人様」とかしづく古風な女性。
 南原龍之介・・・伝子の高校のコーラス部の後輩。元高校の国語教師。妻の文子と学習塾経営。
 南原(大田原)文子・・・南原の妻。
 南原欄・・・南原の妹。美容師。山城順と婚約している。
 藤井康子・・・伝子マンションの隣に住む。料理教室経営者。
 大文字綾子・・・伝子の母。ずっと、犬猿の仲だったが、仲直り?した。だが、伝子には相変わらず「くそババア」と呼ばれている。
 金森和子二曹・・・空自からのEITO出向。
 増田はるか三等海尉・・・海自からのEITO出向。
 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。
 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
 日向さやか(ひなたさやか)一佐・・空自からのEITO出向。
 夏目警視正・・・警視庁副総監の直属。斉藤理事官(司令官)の代理。
 なる。EITO準隊員。
 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。みちるの夫。
 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
 野口元総理・・・政権交代時の違憲異種党総理。
 大西ひろき・・・違憲異種党議員。


 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO精鋭部隊である。==

 午前10時。伝子のマンション。
 高遠は、Linenでメンバー会議をしていた。
「南部興信所に脅しかあ。驚いたなあ。」と、物部は言った。
「そろそろ、総力戦に備えた方がいいかも。」という高遠に、「備えるって?」と依田が尋ねた。
「うん。社会保険事務所事件の時、こちらの戦力が知られちゃっていますからね。」
「総子ちゃん達も参加したから、本部支部で集まって割り振ると、事件の場所が散開すると・・・。」と、福本が言いかけた。
「そのために、増員するんだよ、本部でも支部でも。」と高遠は言った。
「増員はした方がいいよな。大文字もツワリが激しいとなあ。」と、物部が言うと、「伝子、無理しちゃだめよ。」栞が割り込んできた。
「だから、前線はみんなに任せるさ。往診に来てくれた池上先生にも説教された。」と、伝子は報告をした。
「幸田さんも、1週間も経てば三角巾とれるらしいけどね。南部興信所も大変だから、って、中津興信所が仕事手伝ってくれるらしい。総力戦は、ひょっとしたら、こちらの戦力として大阪支部は考えない方がいいかも。」と、高遠が言うと、「東京大阪で大規模作戦展開をするかも、ってことですか?」と、服部が尋ねた。
「あり得ますね。夏目警視正も、あらゆる分野の救援が必要になるかも知れない、って言っておられた。」と、高遠は応えた。
「みんな、済まないな。私は指揮官として秘密基地から指令を出すことになるが、危険が及ばない範囲でDDメンバーにも手伝って貰いたい、この通りだ。」
 伝子は、そう言うと、画面に向かってお辞儀をした。
「水くさいですよ、先輩。僕も蘭も文子もフォローアップに協力しますよ。その詳細は、アナザー・インテリジェンスの高遠さんにお任せしますから。」と、南原が言い、「自分勝手に行動して迷惑かけたことがあるからこそ、私からもお願いします、先輩。何でも言いつけて下さい。」と、蘭が言った。
「お願いします。」と、文子も同調した。
「先輩、私・・・。」と慶子が言いかけたので、「祈ることも協力だよ。慶子ちゃんは、勝利を祈っていればいいんだ。」と、高遠は言った。
「私、祈ってます。無力だし。怪我も治ったし、高遠さんに教えて貰ったファイリングで、ご主人様の楽譜の整理をしてますのよ。」と、コウが言った。
「ご主人様?服部さん、ご主人様って呼ばれているんですか?」と、依田が素っ頓狂な声で言った。
「はい。まずいですかね?依田さんのところは?」という服部の問いに、「あんた、です。」と、依田は不服そうな声で言った。
「あんた!聞こえたわよ。人聞きの悪いこと言わないでよ。先輩、3回に1回くらいですから。」と横から慶子が言った。
「凄いコントロールだな。ヨーダは幸せ者だな。」と、伝子は笑った。
「ありがとうございます。」と、またしても依田が不服そうな声で言った時、EITO用のPCが起動して、画面に理事官が現れた。
「やあ、諸君。EITO本部の新装開店は明日に決まった。やっと、穴蔵から出られる。EITOメンバーも、秘密基地常駐から開放される。持ち込む私物がある者は準備しておくように。」
 マルチディスプレイの端の、秘密基地ディスプレイには、なぎさ他のEITOメンバーがいて、「了解しました。」という返事が返って来た。
 画面はすぐに消えた。
「良かったな、大文字。おめでとう。」と、物部が言い、皆も「おめでとうございます。」「おめでとう。」と口々に言った。
 午後1時。昼食を終え、洗い物をしている高遠に、伝子は声をかけた。
「学。少し頼みがある。事件が起きてからじゃ、時間がなくなるから。」
 伝子の真剣な表情に、「分かった。10分待って。」と高遠は言った。
 午後3時。綾子がやって来た。
 ドアチャイムがついたので、ドアを開けた瞬間に訪問者ありと分かる。
「いらっしゃい。」と高遠が迎え入れ、伝子は綾子に尋ねた。
「母さん。大学の卒業式に来た衣装、まだある?」
「なあに、藪から棒に。あるわよ。一生物だからって。あ。今度生まれる子は女の子?」「いや、そういう検査はしないから。福本がちょっと借りたい、って言うもんだから。」
「ああ。お芝居に使うのね。暫く公演しないって言って無かったかしら?ああ、お友達に貸すのね。いいわ、明日持って来る。」
「あ。済まないな。」
「卒業式?シーズンよねえ。この間の事件の時、栞さんもサプライズゲストで母校に行ったんだって。どんな童話書いたのか知らなくてゴメンね。でも、母校の誇りよね、有名人が出ると。」
「ウチの婿殿も小説家なんだけどなあ。」「んだと?嫌味言うなよ、くそババア。」
「まあまあ。またコントするの?高遠さん、はい、ペッパーガンの材料。」と、藤井は胡椒の瓶を高遠に渡した。
 実は、ペッパーガンのアイディアは、藤井のものだった。作って敵にぶつけると、思いのほか効果があるので、胡椒等で作った丸薬の弾が生産され、撃ち出す銃が完成した。
 翌日。午前10時。EITO本部。
 ベースワンの面影は、もうない。シェルター出入り口のシャッターが開き、理事官や草薙達が出てきた。
「お帰りなさい、理事官。」伝子が言うと、皆口々に挨拶をした。
「ベースワンのスペースは、そのままトレーニング場に残すが、もう一般に開放はしない。ベースゼロとベースワンの間の空間ももうない。ウーマン銭湯ほどでは無いが、風呂は拡張した。その空間の半分は、ホバーバイク駐車場に確保した。通常のバイクや車の駐車場は従来通りだ。金森、食堂や煎餅の格納庫も大きくなったぞ。」
 理事官の言葉に、顔を赤くしながら、「ありがとうございます。」と金森は言った。
 実は、金森は小さな体に似合わず大食なのである。
 全員が、ベースゼロ領域の会議室に到着した。
 その時、緊急アラームが鳴った。コンピュータ音声が流れる。
「都内5カ所の高校で火災発生!既に警察、消防、MAITOが出動。テロリスト案件としてEITOに出動要請。EITOは直ちに受託した。エマージェンシーガールズは出動せよ!」
 皆が困惑したが、「システムの説明は後回しだ。大文字君。作戦は?」と伝子に尋ねる。
「パーティーケース1の編成で向かう。A班、増田が指揮を執れ。B班、日向が指揮を執れ。C班、なぎさが指揮を執れ。D班、結城が指揮を、E班、あつこが指揮を。私は作戦室に残る。」
「今は歩いて来たが、緊急出動時には、外壁沿いのムービングロードを使え。出動!!」理事官は声を張って命令した。
 午前11時。大西ひろきのマンションの駐車場。
 大西が、自分の自動車に乗り込むと、運転席側から、ガスマスクをした運転手が、催涙ガスを吹きかけた。
 正午。国会議事堂。議員会館。違憲異種党控え室。
 警備員が、慌てて、紙片を持って入って来る。
 渡された泉田代表が、血相を変える。覗き見た、野口が冷静に言った。
「大西君は体調不良の為に欠席ということにしましょう。議会を閉会させる訳には行かない。私が懇意にしている管理官が警視庁にいます。内々で捜査して貰いましょう。誘拐は48時間がヤマと言われています。何か要求の電話をかける積もりかも知れない。私が大西君の家に向かいますから、任せて下さい。」
 野口の強引な言い方に泉田は納得したのか、「では、野口議員も欠席ということでよろしいですか?」と言った。
「勿論です。」野口は出て行った。残った議員は呆然としていた。
 正午。虻蜂高校。
 増田と馬越は、鎮火した校舎を見て回った。講堂に辿り着いた2人は怒号を聞いた。
 逃げ遅れた生徒達が隅に寄せられ、拳銃や機関銃で武装した忍者の一団がいた。50人はいるだろうか?リーダー格の男が言った。
「遅かったな、エマージェンシーガールズ。2人か。」「ああ、困った困った。」
 棒読みの台詞の後、馬越が長波ホイッスルを吹いた。鳴る様子はない。
 首を傾げる。馬越の笛を奪って、増田が吹く。鳴らない。
 忍者達は、笑い出した。「壊れたオモチャ吹いても、救援は来ないだろうぜ。」と、リーダーが言った。
 この長波ホイッスルは、緊急連絡用の特殊な音波が出るが、犬笛のように、人間には聞分けられない音波だ、更に、スイッチを切り替えると、本物の犬笛のように犬を呼び寄せることが出来る、警察犬を。
 間もなく、犬の鳴き声が聞こえ始めた。増田と金森は、銃や機関銃に水流ガンで水流を放射した。圧縮した水は、グミのように変形し、忽ち銃や機関銃を使用不能にした。警察犬たちが飛び込んできた。
 増田と馬越は、犬たちに交じって、集団に向かって行った。犬たちを連れてきた江南も加勢した。
 正午。鼈甲高校。
 火事になった校舎は鎮火されていた。
 体育館に到着した日向と金森は、隅の方で怯えている、生徒達、職員達、PTAを横目に、待ち構えた一団に対峙した。50人はいるようだ。日向はDDバッジを押した。
 DDバッジとは、緊急信号を出すバッジで追跡用にも使われる。
 忍者達は、銃と機関銃を携えていた。金森はブーメランを、日向はシューターを投げ続けた。シューターとは、EITOが開発した、うろこ形の手裏剣である。先端に痺れ薬が塗ってある。
 忍者達は、忍者の格好をしているが、手裏剣等は持っていないようだった。
 戦力を削いだ後、日向と金森はバトルスティックで立ち向かい、倒して行った。
 全員倒した後、金森はDDバッジを押した。
 突然、生徒の一人が出口の方に向かって走り出した。
 日向と金森は、一瞬、その生徒に気を取られた。
 日向は、倒れている忍者が撃った弾の跳弾に倒れた。
 生徒の母親が、泣きじゃくる息子を平手打ちし、皆が避難している隅に連れ戻した。
 愛宕達、警官隊が到着した。
「警部。救急車を・・・。」震える声で言う金森に、頷いて、愛宕は警察無線を使った。
 ―完―

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