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117.犯行予告の時計

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 ========== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
 大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
 一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」と呼ばれている。
 久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。
 物部一朗太・・・伝子の大学翻訳部同輩。当時、副部長。
 依田俊介・・・伝子の翻訳部後輩。元は宅配便配達員だったが、今はホテル支配人になっている。
 福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進むが、今は建設会社非正規社員。演劇は趣味として続けている。
 福本祥子・・・福本の妻。昔、福本と同じ劇団にいた。福本の劇団の看板女優。
 みゆき出版社編集長山村・・・伝子と高遠が原稿を収めている、出版社の編集長。
 藤井康子・・・伝子マンションの隣に住む。料理教室経営者。
 大文字綾子・・・伝子の母。ずっと、犬猿の仲だったが、仲直り?した。だが、伝子には相変わらず「くそババア」と呼ばれている。
 金森和子二曹・・・空自からのEITO出向。
 増田はるか三等海尉・・・海自からのEITO出向。
 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。
 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
 日向さやか(ひなたさやか)一佐・・空自からのEITO出向。
 夏目警視正・・・警視庁副総監の直属。斉藤理事官(司令官)の代理。
 なる。EITO準隊員。
 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。みちるの夫。
 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO精鋭部隊である。==

 午前10時。伝子のマンション。
 高遠は、Linenでメンバー会議をしていた。
「そりゃあ、怒るさ。ひょっとことおかめの面じゃなあ。」物部が率直に感想を言った。
「みちるちゃんご贔屓のあの店は?先輩。」と福本が言った。
「仮面舞踏会用のならある。余計変だ。編集長が紹介してくれたデザイナーに発注してあるが、間に合わなかった。」伝子の言葉に、「エマージェンシーガールズのコスチュームデザインした人ですよね。じゃあ、待っていればいいんだ。」と、依田が言った。
「まあな。」と、伝子は口を歪めたが、机から写真を持って来た。
「これを見てくれ。」と、伝子は写真を見せた。
「ひょっとして、西陣織?」と写真を覗き込んだ藤井が言った。
「いつの間に?」「って、玄関、開いてたわよ。」「嘘つき。」
 また、親子喧嘩始めそうだと思った高遠は、玄関横のスイッチを入れ、ドアの開閉をした。ドアチャイムが鳴った。
「大蔵さんに頼んで、EITOのPCの調整して貰うついでに、ドアチャイム着けて貰ったんだ。」と、高遠は自慢げに言った。
「これで、アリバイ証明出来ますね。」と、愛宕が言った。
「紫頭巾に銀頭巾か。時代劇に出てきそうだわ。あ。先輩、今から入院してきますね。」と祥子が言った。祥子は2週間後が予定日だ。
「ああ。丈夫な子供、産んでくれ。」「先輩、名前は?」と、伝子に福本は返した。
 伝子は、名付け親になることを約束していた。「男なら、カツミ。女ならカツミ。」
「同じじゃないですかあ。」と不服を言う福本に、「嫌なら、自分でつけろよ。お前が親なんだから。」と、伝子は返した。
「勝美でいいです。ショウブの、美しいですよね。」「うん。」
「了解です。」「福本、産まれてから確認すればいいじゃん。」高遠が割り込んで言った。
 EITO用のPCが起動し、ディスプレイの夏目が現れた。
「アンバサダー。モールで事件だ。腹にダイナマイト巻いた人物が、松明持って。走り回っている、と通報があった。既にオスプレイが向かっている。」
「了解しました。」伝子は言うが早いか、身支度を始めた。高遠は洗濯物を退かせて、台所の緊急ハッチを開けた。
 伝子がベランダに出ると、ロープが降りて来た。伝子は出撃した。
「サーカスも、当面行かなくて済みそうだわ。」と藤井が言った。
 午前11時半。モール。
 走って来た伝子に見えたのは、警官隊のバリケードだった。その手前に物部がいた。
「ああ、大文字。立てこもりだ。気分次第で爆発しそうだ。愛宕氏!!」
 物部は愛宕を呼んだ。「立てこもりは、不動産屋の2階住居部分です。」愛宕は敬礼した上で報告した。
「裏口は?」「閉まっているようですが、隣のベランダから侵入出来ます。」
「ん。取り押さえたら、バッジで合図するから、逮捕しに来てくれ。」と、いつもの打ち合わせをした。
 伝子は、なぎさと裏口に回った。
 隣のベランダから侵入すると、ダイナマイトを腹に巻いた男は倒れていた。松明は、台所に放り込まれていた。
 なぎさは、男の脈を取ったが、すぐに首を横に振った。
 伝子は、DDバッジを押して、愛宕達を呼んだ。
 DDバッジとは、緊急連絡用バッジで、DDのメンバー、EITOのメンバー全員が持っている。
 愛宕達がやって来た。「先輩?」「死んでいるから、救急が先かな?」
「了解しました。」
 午後2時。伝子のマンション。
 警視庁にいる、あつこから伝子に電話があった。
「おねえさま。死んでいた男ですが、三池為吉、40歳。左官業の会社に勤務。『コーン被害者遺族の会』の会員です。死因は後頭部打撃による陥没。凶器は見つかっていません。ダイナマイトはダミー、オモチャです。あの部屋で待ち受けていた人物に殺害され、すぐに犯人は逃亡。愛宕君が裏口を見に行った時は既に逃亡していたものと思われます。また、井関さんが気づいたんですが、時計の日付が明日です。つまり、コーン信義教の、『地下鉄毒ガス事件』の日です。」
「コーンの仲間割れでは無さそうだな。」「コーンは、コルクと名称変更しましたが、公安の重大監視対象になっています。寧ろ、被害者遺族の会が行動を起す積もりかも知れません。」
「ふむ。また、何か分かったら知らせてくれ。」伝子は電話を切った後、被害者の会とダークレインボーが手を組むかな?」」「お互いにメリットはありそうだけどね。」
「明日が当日だとすると、今日と間違えたから殺された?」「普通は、厳重注意でしょ、日付間違いくらいなら。愛宕さん達が、多分遺族の会に行っている筈です。」
 午後7時。
 伝子と高遠と綾子は、お好み焼きを作って食べていた。
「待てよ。」「なあに。待つわよ。」と綾子は返事をしたが、伝子はスマホを取り出し、あつこに電話した。
「あつこ。昼間の松明男だが、時計は動いていたのか?」「ちょっと待って。」
 あつこは、ゴソゴソと捜査資料をひっくり返していたようだ。
「おねえさま。お待たせしました。時計は止まっていました。だから、井関さんは気になったんでしょう。時刻は正午・・・かな。12時で止まっていました。」「12時丁度だな。」「はい。犯行時刻は12時の筈はない。犯人が止めたんだ。いやセットしたんだ。詰まり、3月20日正午に。死んだ男は何て名前だっけ?」「三池為吉です。」
「死んだ男の会は何と言っている。明日、イベントがあるのか?」「ありそうですね。答は返って来ませんでしたが。」
「分かった。3月20日正午に3つの池で事件を起す。偶然でもダイイングメッセージでもない。犯人からの犯行予告だ。草薙さんに調べて貰おう。お前は、犯行予告のことを皆に知らせてくれ。場所と班分けは、明日朝、私が連絡する。」「了解しました。」
 高遠は、自分のスマホで草薙に既に電話していた。伝子はスマホを受け取ると、事情を説明した。「了解しました。三つの代表的な池ですね。」
 午後8時。
 草薙から、折り返しの電話があった。「アンバサダー。三つの代表的な池は、上野の不忍池、新宿の井の頭池、蒲田の洗足池のことだと思います。面白いことに、元コーンの本部支部がこの3カ所にあり、被害者遺族の会もこの3カ所にあります。」
「あの男は、これを知らせる為に、『死体で』利用されたんだ。恐らく松明持って走れば褒美をやると言って、前金を渡されて。」「酷いな。」
 翌日。3月20日。正午。不忍池。
『コーン被害者遺族の会』の集団が、「奴らに悟られないように見張ろう。」と打ち合わせをしていた。
「いやいや、悟って貰おうぜ。」そう言って、忍者の集団が現れた。
「いやいや、そうは行かないねえ。」ブーメランが飛んできた。ついで、シューターが幾つも飛んできて、忍者の手首や足に刺さったシューターとは、EITOが開発した、うろこ形の手裏剣で、先端に痺れ薬が塗ってある。。忍者達は拳銃や機関銃を持っていたが、皆、地面に落ちた。エマージェンシーガールズが現れ、バトルスティックや三節棍で、倒された。闘っているチームとは別に、増田達は、遺族の会を避難させた。
「あなた方が狙われるという情報がありました。コーンを助ける為じゃない。あなた方の気持ちは分からないでも無いが、コーンは警察の公安も見張り続けていることをお忘れ無いように。」と、エマージェンシーガールズ姿のあつこは言った。警官隊が現れ、たちまち逮捕連行された。
 正午。井の頭池。
『コーン被害者遺族救済の会』の集団が集まった所に忍者が現れた。しかし、エマージェンシーガールズが現れ、ペッパーガンで忍者の集団を攪乱した。ペッパーガンとは、胡椒等の調味料を丸薬状にした弾を撃つ武器である。拡散することで、鼻孔等が麻痺する。忍者の衣装の上からでも有効だった。銃や機関銃を落させた後はバトルスティックでエマージェンシーガールズは簡単に倒した。バトルスティックの先端にも痺れ薬が塗ってある。エマージェンシーガールズ姿のなぎさが、あつこと同じように、避難させていた遺族の会を諭した。警官隊が現れ、たちまち逮捕連行された。
 正午。洗足池。
『コーン被害を忘れない遺族の会』の集団が、コルク本部に向かおうとしていたが、忍者の集団に囲まれた。
 忍者の集団は、不忍池、井の頭池同様、エマージェンシーガールズに倒された。
 エマージェンシーガールズ姿のみちるは、あつこと同じように、避難させていた遺族の会を諭した。警官隊が現れ、たちまち逮捕連行された。
 そして、騒ぎを聞きつけた、コルク本部から人が出てきた。
 エマージェンシーガールズ姿の日向は言った。
「遺族の会と貴方たち両方を狙っているという情報がありました。あなた方だけを助けに来た訳じゃ無い。マフィアの狙いは、日本人同士が憎み合うこと、分断することです。では・・・。」エマージェンシーガールズは直ちに撤退した。
 午後2時。EITO秘密基地。
「幸い、3カ所以外に忍者は現れなかったよ。どうやら、遺族の会とコルクの争いに見せかけ、両方を倒す気でいたようだね。しかし、何故だろうな。」「戦線布告かと思いましたが、2種類の枝ではないか、つまり、2本の枝、つまり、幹である闇頭巾の2人の枝がいるのではないか、と、ウチの亭主が申しております。」
「ははは。そうか。社会保険事務所襲撃を指揮した枝Aと、ヤクザを同士討ちのようにして殺した枝Bか。枝同士は仲がいいわけじゃ無さそうだな。枝Aからヒントを貰ったことになるし。道具のように殺人をしたことは許せんが。」
 夏目と伝子の会話に、「今回は、おねえさまは参加しなかったけど、珍しいですわね。」と、なぎさが口を挟んだ。
「ごめん。『つわり』が激しくて・・・。」と、伝子は首をすくめて言った。
「ええええええええっ!!」
 皆の驚いた声が、秘密基地に響き渡った。
 ―完―
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