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69.自殺幇助

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 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 大文字伝子・・・主人公。翻訳家。EITOアンバサダー。
 大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。
 愛宕寛治・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。階級は巡査。
 愛宕(白藤)みちる・・・愛宕の妻。巡査部長。
 青山警部補・・・丸髷署生活安全課刑事。愛宕の相棒。
 久保田(渡辺)あつこ警視・・・みちるの警察学校の同期。みちるより4つ年上。
 橘なぎさ二佐・・・陸自隊員。叔父は副総監と小学校同級生。
 金森和子空曹長・・・空自からのEITO出向。
 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。
 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
 右門一尉・・・空自からのEITO出向。
 斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者の1人。
 久保田管理官・・・EITO前司令官。斉藤理事官の命で、伝子達をEITOにスカウトした。
 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署勤務。EITOに出向。
 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課の刑事。EITOに出向。
 物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。モールで喫茶店を経営している。
 依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。宅配便ドライバー。
 小田慶子・・・依田の婚約者。
 南原蘭・・・伝子の高校のコーラス部の後輩南原の妹。美容師をしている。
 服部源一郎・・・伝子の高校のコーラス部後輩。シンガーソングライター。
 山城順・・・伝子の中学の書道部後輩。愛宕と同窓生。
 福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。
 福本(鈴木)祥子・・・福本が「かつていた」劇団の仲間。福本と結婚している。
 藤村警部補・・・高速エリア署刑事。
 早乙女愛巡査部長・・・白バイ隊隊長。
 南部(江角)総子・・・伝子の従妹。EITO大阪支部チーフ。
 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
 池上葉子・・・池上病院院長。
 江南(えなみ)美由紀警部補・・・警察犬チーム班長
 副島はるか・・・伝子の小学校の書道部の先輩。書道塾を経営しているが、EITOに準隊員として参加。
 中山ひかる・・・推理好きの高校生。アナグラムが得意。
 青木新一・・・Linenを使いこなす高校生。友人の致傷事件の関係者。後に伝子達の協力者になる。
 ジョー・ジョーンズ・・・オスプレイパイロット。
 本庄尚子・・・本庄病院院長の姪。弁護士。

 =======================================

 午後1時。大文字邸。「自殺幇助?」
 高遠は思わず理事官に聞き返した。珍しく、斉藤理事官はEITOからの画面越しではなく、直接来ていた。愛宕と青山警部補も来ていた。
 伝子が、彼らに『めずらしく』お茶を出していた。「実際は殺人・・・じゃないんですか?」と尋ねる伝子に、「はっきり分かるケースは少なくてねえ。遺族にとっては、たまらないですよね。」と青山警部補が言った。
「この頃は、SNSで巧みに呼び出して、好き勝手する輩が多いですからね。」と高遠が、ため息をついた。
「証拠を残さないから、厄介なんですよ。模倣犯的な流行りでやる奴が多いんでしょうけど、『死の商人』が、というより『死の商人』を操っているマフィアが目を付けてもおかしくない、って思うんです。オレオレ詐欺だって、表にでている奴らは『罪の意識』がないでしょ。丸髷署に相談する件数が増えているんです。僕の同期の警察官の配属先でも多いらしいし。」と愛宕が言った。
「どう思うね、大文字君。」と理事官が尋ねると、「EITOで親玉退治すれば、芋づるに・・・って難しいでしょうね。小芋がいくつか収穫出来れば、見せしめになるかも知れないけど。」と、腕組みをした。
「もし、囮を使うとなると、自衛隊勢は使えませんね。リスクが大きい。」と、高遠が言うと、「流石は高遠君だ。よく分かっているね。」と理事官が感心した。
 暫く考えていた伝子だが、「今回は本庄弁護士にも手伝って貰っていいですか?」と理事官に言った。
「何か策が?」「いや、これからですが・・・。」「情報収集なら、中津興信所にも委託しても構わんよ。」「じゃあ、そろりそろりと行きますか。あ。学。煎餅は?」
 高遠が慌てて煎餅を取りに行った。キッチンではなく、倉庫に。
 午後2時。
 理事官は帰って行った。高遠はLinenのテレビ電話でひかるや青木と話していた。
「以前、プロフが流行った時も問題になったけどね。孤独な生徒は多いんだよ。」とひかるは言った。
「本人が『証拠』を残すことを約束した上でSNSを許可するようにしないとね、親は。」と青木は主張した。「とにかく、片鱗が見つかれば、報告するよ。自信満々な奴ほど、どこかで自慢するもんだから。」
「あ。僕らそこに行けないの?」とひかるが尋ねるので、伝子は「愛宕と一緒ならいいよ。」と応えた。
 伝子は本庄弁護士に電話をして、事情を話した。「本当は自殺幇助じゃなくて殺人じゃないか?って裁判で争おうとする親は少なくはないわね。でも、大抵の場合は立証できないのよ。被害者が証拠を残せるくらいなら、友人に相談すると思うの。食い止めるのも難しい。本人は、犯人の言いなりだろうし。SNSが本格的に警察と協力体制を敷かない限り、闇の中ね。とにかく、データは送ってあげる。ホントに生きてて良かったわ。」
 午後3時。伝子と高遠の仕事場。
 中津健二から伝子のスマホに電話がかかった。「理事官から連絡ありましたよ。被害者の情報しか集められないかも知れませんが、いいですか?」と中津は尋ねた。
「勿論。」「了解しました。」
 伝子は、久しぶりに翻訳の作業を始め、高遠は手伝った。
 午後7時。ダイニングキッチン。
「もう、こんな時間か。メシにするか。学。その後は、分かっているな?」
「はい。女王様。」と高遠は笑った。
 高遠がTVを点けると、ニュースで芸能人の訃報が流れていた。「こういう時は神妙なのになあ。なんで偏向報道ばかりするようになったのかな?TVは。」
「那珂国のせいだ、って言いますよ。政治家もだけど、マスコミも那珂国に金貰って言いなりになっているって。局員にも那珂国人が多いとか。」
「国葬儀だって、散々ケチつけていたなあ。庶民感覚国民の味方。そんな顔して高給だから見下しているんだ、って前に青木君が言ってたな。若い人間の方が冷めているよな。高齢者みたいに欺されないよな。」
 午後8時。高遠と伝子は二人で風呂に入っていた。
「久しぶりだね、伝子。」「後でサービスしろよ、学。」
「ふふ。ここ、いつまで借りられるの?」「私が安全になるまで。」「何十年先?」
「さあな。駆け出しの小説家、大門まなぶ邸にしては豪華な家だな。10LDKだっけ?」
「そうらしいね。あ。2階、回廊式になっているって知ってた?」「いや。どうなってんの?」「吹き抜けで、真ん中辺に階段があって、部屋が並んでるでしょ。」「うん。」「その部屋、それぞれ廊下に向かって2カ所出入り口あるでしょ。」「ああ。そういうことか。私たちに子供が出来たら、毎日運動会だね。」「ちょっと早いけど、今日の子作りタイムにする?」「いいよ。望むところだ。朝までしよう。」「朝まで?いつもそう言いながら、眠りこける癖に。」
 二人は風呂を出ると、寝室に向かった。表に人影があるのも知らずに。
 翌日。午前9時。二人がテレビを観ていると、チャイムが鳴った。
 高遠が出ると、江南警部補だった。「ジュンコが吠えるので確認すると、この男が大門さん宅に侵入しようとしていました。あ。来た。連行します。」「ご苦労様です。」と高遠が言うと、江南は片手で敬礼をして、手錠をかけた男を、応援のパトカーに押し込み、去って行った。
 リビングに高遠が戻ると、「今のは?パフォーマンス?」と伝子は笑った。
「何処で見られているか分からないからね。僕は大文字伝子の遺産で悠々自適で独身生活を送る、小説家、だからね。ご近所には、見せつけておかないとね。」
 午前9時半。青山警部補から伝子のスマホに電話があった。
「大文字さん、大変です。」「何です?」と伝子は訝った。
「誘拐候補が現れました。今、交通安全教室を一つ波小学校で実施しているんですが、無断でスマホを持ち込んだ生徒がいて、校長先生が確認すると、SNSで知り合った男性と待ち合わせているんです。」
「では、校長先生とご両親を説得して、捜査協力の許可を貰ってください。その子の名前は?」
「如月優子です。優は優しいです。」「まずは、そのスマホですね。こちらに預けて貰ってください。あつこにとりに行かせましょう。」
 午前11時。EITOベースゼロ。会議室。
「ひかり、飲み込めたか?」と伝子が優しくあかりに尋ねた。
「如月優子ちゃんの身代わりですね。でも、なんで私が・・・。」と、あかりが言うので、結城警部が、この中で小学生に見えるのは?」と皆に言った。
 皆が、あかりを指さした。「理解したか?新町。」と結城は言った。
「草薙さん、時間と場所は?」と伝子が尋ねると、「午後2時。モール。喫茶アテロゴ。向こうの指定です。」と草薙は応えた。「物部が喜ぶな。」と、伝子は笑った。
「なぎさ。化けられそうか?」「さっき、祥子ちゃんに確認しました。駆けつけてくれます。蘭ちゃんにも手伝って貰います。」
「よし、囮作戦実行だ。」
 午後2時。喫茶アテロゴ。辰巳が、あかりと、向かい合わせの男の前にコーヒーを置いた。
 男は暫く、あかりと雑談していたが、「じゃあ、遊園地のチケット買ってあるから行こうか。」と立った。男が勘定を済まして、二人が出ていった後、アテロゴの客は一斉に出ていった。尾行である。
 青山警部補が勘定を払おうとすると、「いいよ。大文字の『ツケ』にしておくから。」と、物部は断った。青山も慌ただしく出て行った。
 午後3時。男のアパート。
「遊園地、行かないの?」と、あかりが言うと、「あ。ごめん。日付よく見ると、明日だったんだ。今日泊まって、明日一緒に行こうね。最後のお楽しみは明日だね。本当に死にたいの?」「うん。みんな虐めるから。」「そうか、イジメは良くないよね。ちょっと練習してもいいかな?」と、男は、あかりの首を手で抱え締めようとした。
 あかりは、DDバッジを押し、男の手を払いのけた。そして、シューターを足首に刺した。「な、何を・・・。」と、あかりに言った男は罠に気づいた。
「古田昭夫。殺人未遂現行犯で逮捕します。」あかりは、警察手帳をかざしながら、「あなたには黙秘権があります。他は・・・後で聞いてね。」と言った。
 愛宕達がやって来て、古田を逮捕連行した。
 その頃。午後3時。EITOベースゼロ。会議室。
「という訳で、元テンバイヤーの岡迫ゆずるが浮かび上がって来ました。」と、草薙が説明した。DBの言う通りに、ホウジョの『ウケコ』を探していたら、3人見つかった、チョロイもんだ、とSNSで仲間に自慢していることが分かりました。DBとは詰まり・・・。」
 草薙を遮って、伝子が言った。「デス・バイヤー、即ち『死の商人』だということですね。」
「すぐに、岡迫を別件で逮捕しよう。管理官。」と、理事官は久保田管理官に目配せした。
「理事官。愛宕君のチームが、先日の小学生の相手を逮捕しました。青山警部補が尋問中です。」とあつこが報告した。
 午後5時。ある会社に、岡迫がやって来た。「ブツなら、ねえよ。」
 振り返った、この会社の社長の神崎としおは言った。「おい。約・・・。」
 隣室から、数人の警察官が現れ、「密売の現行犯だ。」と中津警部補が宣言し、逮捕連行した。
 警察官達が出ていくと、「これで『貸し借りなし』ですぜ、旦那。」と神崎は中津に言った。
「ああ。お前が、那珂国人になんかショバを荒らされたくない、って言った心意気は立派だ。個人の感想だが。」と、中津は笑った。
 午後6時。中津警部補の自動車の中。
「兄貴。役に立ったろう?」「ああ、いい弟だ。ラーメンくらいなら奢るよ。」「じゃあ、塩ラーメンだな。醤油や味噌は勘弁してくれ。ところで、『しらべ』は、いいのか?」「それは、久保田警部補に任せた。明日は『手入れ』で忙しいし。」「手入れ、ってまさか?」
「ああ。そうだ。」「兄貴もワルだなあ。」「兄貴に向かってワルはないだろう。警察官だぞ。」「へいへい。あ。俺、大盛りね。」「了解した。」
 午後7時。大文字邸。
「それで、岡迫経由で芋づるになる?」「分からないな。麻婆豆腐もたまにはいいな。ひかる君情報は?」「ざっと、100件。」「100件?何それ。」「ネットに死にたいって書いている生徒の数。」「絞れないのか?被害者候補は?」「実際に殺してくれって書き込んだ人間がいた場合に追いかけていくしかない。膨大な作業だけど、スパコンにやらせる、って草薙さんが言っていた。それと、愛宕さんから聞いた話だけど、殺人犯の90%以上が『本人に頼まれた』って言い訳するんだって。」
「だろうな。この間ニュースになった自殺幇助事件だって、ネットやスマホの履歴消していて、証拠残していないらしいからな。取り敢えず、明日は『定時出勤』だ。寝坊させるなよ。」「伝子は変な指示出すの、得意だね。」と、高遠は感心した。
「あ?避妊しているのを誰にも言うな、とか?」「まあ、その内、『人手不足』になるんだし、伝子のリーダーシップがないと、事件を解決していけないからね。有能すぎる妻は、母になる暇はないのさ。」
「あ。あの優子ちゃんのスマホは?」「愛宕さんが返したよ。校長先生にもご両親にも報告したって。犯人は見付けました。事件に巻き込まれないように、スマホと娘さんの管理をしっかりお願いしますって言ったんだって。」「愛宕、成長したなあ。」
「あ。ひかりちゃんね、ご褒美に『おねえさま』って呼んで貰えるかなあ、だって。」
「知るか。それに、お前に聞いてどうすんのさ。」「だよねえ。」
 翌日。午前9時半。EITOベースゼロ。会議室。
「昨日、逮捕した岡迫だが、徹夜して久保田警部補が落とした。ウケコの3人だが、田岡守、福島光男、連清美と判明した。古田は入っていない。古田は模倣犯に過ぎない。すぐに3人を逮捕に向かわせたが、田岡は正に凶行の最中で現行犯逮捕、連は逃亡、福島は七七山に埋めた、と自供した。七七山にはオスプレイが向かった。そして、連だが・・・大文字君。」
 伝子は理事官の指名で説明を始めた。「既にご存じの方もおられると思いますが、青木君という、ある事件で知り合った高校生に『Linenによる目撃情報』で、時々協力をして貰っています。逃亡中の連の情報が入れば、知らせてくれます。」
「では、吉報を待とう。散会。」
 午前11時。
 伝子のスマホに青木からLinenのメッセージが入った。
『例のコスプレ衣装店に、開店からずっと悩んでいる人がいるって情報が入っています。』
 メッセージを読んだ伝子は、みちるに言った。「みちる。手下に足止めさせろ。」
「おねえさま。手下って言い方は・・・。」「じゃ、奴隷?お前の言うことは何でも聞くんだろ?」「相手が私に惚れているだけのことなのよ。いいわ、おねえさま。手下に命令します。」
 みちるは、すぐに店長に何とか足止めしろ、と電話で命じた。
「凄いなあ、白藤は手下がいたんだ。」と理事官が感心した。草薙や渡がクスクスと笑っていた。エマージェンシーガールズのメンバーの多くも唖然としていた。
 河野事務官が言った。「店の近くに警邏の警察官がいたので、職質をかけるよう、依頼しました。」
 午前11時半。オスプレイのジョーから連絡が入った。
「今、七七山のある地点で熱反応を確認しました。金森一曹と馬越一曹が降りて、確認に向かいます。」
「了解した。ジョーも大分慣れたな。」「ありがとうございます。」と、ジョーは理事官に礼を言った。
 午後1時。久保田管理官から連絡が入った。「連は今、取り調べを受けている。どうやら、逃亡の衣装に凝りすぎたのが仇になったようだ。福島が殺した女子大生は発見され、逮捕連行した。大文字君。マスコミの記者会見を待てとは、どういう計画かな?」
 久保田管理官の質問に伝子が応えた。「岡迫にゴネさせます。DBの反応がみたいんです。」
「おびき出すのか。では、司法取引をして、岡迫をおびき出し役にするのだね。了解した。」
 午後7時。ある古寺。
 現れた女は、ひどく腹を立てていた。「簡単なことだと言ったじゃないか。何か失敗したのか?」と女は岡迫に言った。
「いやねえ。奴らが欲を出して、ギャラのそのう・・・。」「臭い芝居だな。お前が連れて来た奴らは何人だ?」「は?」
 女は岡迫に拳銃を向け、引き金を引いた。
 2つのブーメランが飛んできて、女の拳銃は宙に舞い、落ちた。女が一歩踏み出した時、女のアキレス腱に矢が刺さった。「くそっ!お前達!!」
 パラパラと、色んな武器を持った一団が、お堂の中から出てきた。
 暗闇から、黒い衣装のエマージェンシーガールズが現れた。女は言った。
「どいつが大文字伝子だ?」
「私だ。」「私だ。」「私だ。」エマージェンシーガールズは全員、口々に言った。
「いや、私だ。」弓矢を構えた狐面の女が言った。
「ええいっ、やっちまえ!!」
 女の配下とエマージェンシーガールズ達の乱闘は、わずか30分だった。
 愛宕達、逮捕チームが到着した。女は担架に乗せられた。
 狐面の女の扮装を解いた伝子が、女に尋ねた。
「まだ、テンバイヤーに頼んでいるのか?岡迫以外にもいるのか?」
「いや、一人だ。」「『血』というキーワードを聞いた事はないか?あるいは『段ボール作戦』は?」
「知らないな。他を当たってくれ。私からも尋ねる。私は、歩けなくなるのか?正義の味方にしては、思い切ったことをやるな。」
「怪我のことは医者に聞いてくれ。」伝子は合図して、警官隊は担架を運び、到着した救急隊員に女を引き渡した。
 静かになった、境内に伝子とエマージェンシーガールズだけが残った。
「やはり、副島先輩か田坂でないと、無理な狙撃だったな、大町。必要以上に傷つけてしまった。」と、伝子が言うと、「田坂には今は言いません。でも、アンバサダーがそこまで見込んでいてくれたことには感謝すると思います。」と、大町は言った。
「相手は悪党ですよ。アンバサダーが気に病むことはありませんよ。」と早乙女は言った。
「悪党にも優しい人なのよ。だから、私は、おねえさまに惚れた。」「私も。」「私も。」と、なぎさとあつことみちるが口々に言った。
「あ。今の言葉は尊敬している、って意味だからな、新町。」と結城はあかりに注釈した。
「そうなんですか。私も尊敬しています、おねえさま。」と、あかりは言った。
「まだ早い、って言いたいところだが、今回はよくやった。あかり。お前もおねえさま、って呼んでいいぞ。さ、帰ろう。」
 上空には、2機のオスプレイが浮かんでいた。
 ―完―

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