上 下
8 / 8

8.貧すれば鈍する

しおりを挟む
 ========== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 =========================
 夏目房之助・・・有限会社市場リサーチの会社の実質経営者だった。名義代表者は、妻の夏目優香。
 夏目優香・・・有限会社夏目リサーチ社長。
 夏目朱美・・・有限会社夏目リサーチ副社長。
 笠置・・・夏目リサーチ社員。元学者。元経営者。
 高山・・・夏目リサーチ社員。元木工職人。
 榊・・・夏目リサーチ社員。元エンパイヤステーキホテルのレストランのシェフ。元自衛隊員。
 久保田管理官・・・警視庁管理官。テロ組織対策室をサポートしている。

 ===============================================
 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ※夏目リサーチは、阿倍野元総理が現役時代に設立された会社で、警視庁テロ対策室準備室が出来る前に出来た。スーパーや百貨店の市場調査会社が、「隠密に」テロ組織を調査するのに適していると、副総監が判断し、公安のアシストとしてスタートした。
 夏目リサーチは、民間の市場調査を行うのと併行して、危機的状況を調査する、国家唯一の調査機関である。

 午後9時。浅草、浅草寺裏手のビル。夏目リサーチ社分室。
「何てことだ!!」と笠置は叫んだ。
「早いですね。」と、高山が後ろから言った。
「何か、ヤバイ展開でも?」と、仕入れてきた肉類を調理場に運びながら、榊が言った。
「この前、榊さんに話した女社長。大地めぐむ、という男みたいな名前の女、会社を譲った副社長から連絡して来てね。その会社を退職して行方をくらませた、って言うんだ。
 仕事仲間のお通夜で耳にした話だが、横領して逃げたらしい。あの女らしいな、と思ったんだ。会社は倒産、解体したらしいんだが、親族が探しているらしい。らしい、らしいで又聞き情報でね。試しに、このシステムで、と思ってスキャナーで写真を取り込んでみたら出てきたんだ。しかも、先日身元が判明していない、第三の人物と一緒にいる。」
「場所はどこなの?」と、社長の優香と副社長の朱美が入ってきた。
 時刻は、午後9時半になっていた。
 2人は、差し入れの果物を持って来たのだ。
「すみません、プライベートを持ち込んで。」笠置は優香に謝罪した。
「いいのよ。写真しかデータが無い場合のスキャナーなんだから。それより、お手柄じゃないの。場所は?」
 優香の問いに、「何と、新宿の大国屋書店ビルです。待ち合わせ場所で有名な。書店に入ったのか、上の階の劇場に行ったのかはわかりません。バイト君達の仕事じゃないから。」と、笠置が言った。
「瓢箪から駒、って奴ですね。」と、榊が料理をしながら言った。
 いつもより料理の時間が早いな、と笠置が思っていると、「社長が、果物だけじゃなく、鶏肉も差し入れしてくれたから、今夜は、『鶏の唐揚げ』ですよ、メインは。」と、榊が自慢げに言った。
「ダークレインボウの組織に取り込まれているとしたら、『貧すれば鈍する』ですね。」
 午後10時。
 香ばしい匂いを嗅ぎながら、笠置と高山は、いつもの作業に入った。
 作業。それは何か、マッチングシステムによる、『面割り』だ。
 表向きの市場調査は、『通行人調査』だ。カウンターをカチカチ。あれである。
 このとき、隠しカメラで通行人を撮影している。
 遠隔操作の為、カチカチのバイト君には分からない。

 マッチングシステムと一言で言っても、素材データは多岐に亘る。
 運転免許証データ、前科者データ、お名前カードデータ、名簿データ、会員証データ、ポイントカードデータ、キャッシュカードデータ、クレジットカードデータ。そして、『通行人調査』データ。
 それぞれを同時進行でマッチングしていく。組み合わせも多岐に亘る。
 笠置は、取り敢えず、写真と『通行人調査』をマッチングしてみたのだ。行方不明者が、死んだものと判断されるのは、7年だ。親族には何か事情があるのだろうが、笠置は、何となく気になって、早く出勤した。
 今回のように、電子データが間に合わない場合は、アナログデータも含まれる。
 写真だけでなく書類もオッケーだ。
 AIで一致データの『暫定一覧表』が出来上がると、アラームが鳴る。
 笠置達は、その中で、事件に『関係していく』かも知れないデータを警視庁に送る。
 危険なデータと確信したら、警視庁に直接連絡を入れる。または、この会社の社長や副社長に報告をする。
『ながら仕事』が前提の作業の為、いつ何をしながらでも自由、と夏目や優香に言われている。
 無論、危険なデータと確信したら、最優先に連絡や報告をする。
 優香が夏目と久保田管理官に報告した後、5人での、ささやかな宴が始まった。
 ―完―


しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...