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63.『実行再生産指数』の正体

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 ========== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 南部[江角]総子(ふさこ)・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。
 南部寅次郎・・・南部興信所所長。総子の夫。
 大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。
 足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。
 河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。現在は休暇中。
 久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。
 小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
 中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
 海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
 来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長。
 愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった。
 本郷弥生・・・EITO大阪支部、後方支援メンバー。暫く米軍に研修に行っていた。
 大前[白井]紀子・・・EITO大阪支部メンバー。事務担当。ある事件で総子と再会、EITOに就職した。
 神代チエ・・・京都府警の警視。京都府警からのEITO出向。『暴れん坊小町』の異名を持つが、総子には、忠誠を誓った。
 芦屋一美(ひとみ)警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。アパートに住んでいる。
 用賀[芦屋]二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。オスプレイやホバーバイクを運転することもある。後方支援メンバー。総子の上の階に住んでいたが、用賀と結婚して転居した。
 芦屋三美(みつみ)・・・芦屋グループ総帥。EITO大株主。芦屋三姉妹の長女で、総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。芦屋三姉妹と総子は昔。ご近所さんだった。

 小柳警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。
 真壁睦月・・・大阪府警テロ対策室勤務の巡査。
 佐々一郎・・・元曽根崎署刑事。横山と同期。大阪府警テロ対策室勤務。通称佐々ヤン
 指原ヘレン・・・元EITO大阪支部メンバー。愛川いずみに変わって通信担当のEITO隊員になった。
 用賀哲夫空自二曹・・・空自のパイロット。EITO大阪支部への出向が決まった。二美の元カレだったが、二美と結婚した。
 宮田孝之・・・元京都大学准教授。ビールス学の権威。拉致監禁されていたが、EITO大阪支部に救出された。
 大前田警視正・・・京都府警本部長。
 神代警視正・・・京都東山署署長。
 敷島徹・・・かつて、聡子が「囮捜査」に行った時の高校生。チンピラの手下だった。今は・・・。
 デビット・ジョンソン・・・アメリカ空軍軍曹。EITO大阪支部専従パイロット。


 =====================================
 = EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =
 ==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==

 午後1時。EITO大阪支部。訓練場。
「参上!」「EITOエンジェルズ!!」「満を持して。」
「参上!」「EITOエンジェルズ!!」「満を持して。」

 松本と大前が入って来る。
「口上の練習か。正しく体育会系、だね。」松本が笑うと、大前が、「気を緩まない練習しようって、総子が言い出して。」と言い訳した。
「ああ。武術の一つですよ、心の鍛錬もね、大前さん。」
「あ。師範。皆、剣道着!!」皆は、着替えに走り、一礼して走る総子と小町。
「あの子も、大分慣れたみたいだね。」
「ええ。増員出来たら1チーム任せたいところやけど、警察の人事異動がいつになるか判らんし。まあ、来た時よりチームワークいいですよ。」
「ふむ。しかし、何が目的なんでしょうね。ダーティー・ブランチは、自分とは関係無いって言ってるそうじゃないですか。」
「こちらの読み違いで、本当は裏切り者の始末だった、陽動だったって説明しても。マスコミの連中はイキってますからねえ。小柳さん、胃薬幾らあっても足りないってぼやいたら、芦屋三美が、芦屋グループのファーマシーから調剤させました。よう効くらしいですよ。」
「それは、良かった。不幸中の幸いですな。あ、揃ったな。」
 皆が剣道着になって現れたので、大前は指令室に戻った。
 午後2時。司令室。
 ヘレンが、東京本部からのメールをディスプレイに出した。
「やっぱり、エイラブのピスミラか。自殺せんように見張りか。大変やな。」
「自殺せんでも、始末されるんでしょ?今回の敵と同じですよね?」
「ああ、ダーティー・ブランチは判らんけどな。SNSでの脅迫状や挑戦状、もう慣れたけど、最初は訳分からんかったなあ。」
「あ、そや。健康診断、もう全部終ってるか?」「総ちゃん・・・チーフだけやったけど、この間の事件で精密検査しましたから、全員クリアです。」
「弥生は、いつ帰って来るんやったっけ?」「明日です。」
 本郷弥生は、後方支援メンバーに組み入れたが、研修のため、アメリカ空軍に行っていた。元々は、陸自からEITO東京本部に出向して来ていた。
 EITOは、馬場と金森の恋愛結婚の為、EITO大阪支部に出向していた馬場と弥生をトレードした。
 庶務担当を勤めていたが、操縦経験があるので、ホバーバイクの隊員兼オスプレイのパイロットも勤めていた。
 用賀が参戦し、オスプレイのパイロットも追加されたので、1ヶ月の研修が許可されたのだ。
 大前は、司令室でじっと考え込んだ。
 何故、ダークレインボウのようなアナグラムもどきを使って、また、闇バイトを使ってウイルスをばら撒こうとしていたのか?そして、失敗した連中を始末したのか?黒幕の狙いは?
「アナグラムと、失敗の時の制裁は、本家のダークレインボウをなぞって、ダークレインボウに眼を向けさせて、自分から遠ざける、という算段だったようね。」
 いつの間にか、大前に肩を並べた三美が言った。
「産業を乗っ取ろうとしている連中が黒幕か?」
「違うわ、コマンダー。産業乗っ取りも関係なくは、ないけど、彼らも『コマ』だと思う。」
 そこに、大阪府警の小柳警視正から連絡が入った。
 午後3時。
 ヘレンが、小柳警視正をディスプレイに映した。
「コマンダー。おお、総帥もいる。丁度いい。『大きな組み合わせビル』で、ヤクの取引がある。うつると死ぬヤクだ。死んだら、おやつが食べられない。』そんなメールが府警に届いた。」
 ディスプレイには、メールが映っている。
「タレコミのメールですか?」「匿名のメールだ。使い捨てだから、返信出来ない。海外サーバーを経由しているらしい。」
「『大きな組み合わせビル』って、ウチのテナントがある、グランドキューバビルね。ヤクって、ビールスのことじゃないかしら、ひょっとしたら。」
「私もそう思う。普通、麻薬覚醒剤は、自分の体内に自分で入れることになる、移らない。死ぬかどうかは別として。間違い無く、コロニーだ。村越警視正を通じて、EITO東京本部にも報せてある。」
 小柳の言葉に、「ウチは後回しですか?」と、大前は僻む口調になった。
「そう言うな、捕り物は、EITO大阪支部だからな、しっかり頼む。」画面から小柳は消えた。
「やっぱり、好かんな。コマンダー、ウチ、気になってたんやけど、最近、マスコミは浦西教授のこと言わん。『実行再生産指数』のことで、あれだけ持ち上げて、宮田先生をこき下ろして。」
「今日子。お前は正しい。煎餅、あげよう。」煎餅を貰った今日子はバリバリ食った。
 今日子は、元看護師の元レディースだった。
 大前は、読めた。そして、作戦を練った。
 翌日。午後3時。大阪。中之島。ググランドキューバ大阪。
 このビルは、芦屋グループのビルで、テナントの9階と上下階は、特殊な出入り口があり、一部は特殊な倉庫になっている。芦屋グループのビルということは、あまり知られていない。表向きは『大阪府立』だが、実は、『貸主』は芦屋グループで、大阪府は『店子』である。
 前に、『人形誘拐事件』で簡単に事件を解決できたのは、芦屋グループのビルだからである。
 三美は、この日、他の階を借りていた会社に『システムトラブルによるメンテナンス』という名目で、『割引』を条件に変更させた。
 9階。
 黒ずくめの集団が入って来る。
 別の入り口から、ビジネスマン風の団体も入ってくる。
 黒ずくめの集団は、特殊な容器に入れた『ブツ』を中央に置いた。
 ビジネスマン風団体は、金の入ったジュラルミンケースを、その前まで持って来た。
「中身を確認出来ないのか?」「かかって、死にたくないならね。苦しんで死ぬよ。」
「どっちも降参して貰おうか?」
 声と共に、総子率いるEITOエンジェルズが現れた。
「天が呼ぶ!地が呼ぶ!人が呼ぶ!!悪を倒せと我らを呼ぶ!!参上!!EITOエンジェルズ。満を持して。」
 今日の口上は、小町が担当した。前からの希望がやっと叶えられた。
 どちらも拳銃を出したが、あっと言う間に平定された。
 EITOエンジェルズは、バトルスティックだけで、拳銃をものともせず、倒した。
 この9階には、隠し扉があり、それを縦横無尽に走って、活用したのだ。
 いずみが、長波ホイッスルを吹いた。長波ホイッスルとは、犬笛に似た通信機でサイレント・ホイッスルである。
 大阪府警の警察官達が駆けつけ、次々と逮捕連行していった。
「チーフ。捕まえたよ。こいつ、倉庫に隠れていやがった。」と、用賀が総子の前に、1人の男を連れて来た。
 二美と一美が、キャスター付きのモニタースタンドを運んで来た。
 モニターは、カメラ内蔵タイプだ。
 モニターには、宮田孝之元教授が映っている。
 宮田は言った。
「もう終わりだね、浦西教授。いや、元教授か。感染症学者を皆追い出して、近江先生をリーダーにした、流行病文化会議を陰で操っていたのは、有識者は皆知っていた。あんたは、『実行再生産指数』を武器に、マスコミを味方に付けて、流行病予測を言い続けた。未知の病気に皆信者になった。でも、実行再生産指数』の正体は『うねり』までの距離の予測だった。『うねり』の『高さ』じゃなかった。だから、被害者予測をしていたんじゃなくて、『うねり』が起こり始める時期を予測していたんだ。冷静に考えれば、なあんだ、っていうマジックだった。『過去の分析』は正しかったよ。でも、未来の予測なんか出来ない。地震予測くらい、あてにならない予測で大儲けをした。那珂国が、こんな都合のいい学者はいない、と利用し始めた。『オマージュ株』は、那珂国マフィアの一つから、半グレを通して輸入したものだった。『予測理論』しか出来ない、あんたは研究者じゃなかった。だから、自分では作れなかったから、『俯瞰株Ⅱ』を使って、『再度』流行らせた。私が『人口ビールスは作れる』と発表したら、あんたは、わざわざ北の方から南下して、京都の大学に再就職した。伝手があったんだろうね。大学の中で私を孤立させるだけでなく、永久に葬ろうと、あんたは考えた。こともあろうに、『MORE3.0』、いや、『俯瞰株Ⅲ』を私に実験することで復讐しようとした。あんたは、やり過ぎたんだよ。僕を拉致した時点で負けてたんだよ。あんたは、那珂国の手下、いや、奴隷になった。名声欲しさにね。さもしいね。考え方が極端な人は、自分と同じ思考傾向で相手を捉えるって、精神科医が言ってたな。正に、あんたがそれだ。」
 浦西の手首に、冷たいものが重なった。小町がかけた手錠だった。
「あんたが好きな銭より、ええ色してるやろ?今の手錠はナア、おしっこかけても錆びへんらしいで。」
 小町から、浦西の身柄を受け取った真壁が連行して去って行った。
 午後5時半。EITO大阪支部。食堂。
 今回は、小町の父である神代警視正、小町の婚約者の白鳥、白鳥の父で、京都府警本部長の大前田警視正、そして、大阪府警の小柳警視正が出席した。ささやかな事件解決式だ。
 小柳警視正の音頭で、『水』での乾杯が行われた。
 事件はいつ起こるか判らない。ドラマでは、飲み屋に移動して・・・だろうが、そんな余裕はない。
 浦西は、大阪府警で取り調べした後、京都府警に移される。
 加計教授の働きで、浦西の告発は進んでいた。
 コロニーは収束した。でも、事件はまだ続いていた。今回は、「タレコミ」のお陰で「事件の終息」を迎えた。
 大前は知っていた。「タレコミ」は、「ダーティー・ブランチ」の仕業だということを。
 ダークレインボウの『幹』は皆、プライドが高い。
 浦西は、宮田が指摘した通り、やり過ぎたのだ。
 コロニーが人工ビールスであることは、世界中の『専門家』が指摘している。
「サ〇ン」同様、逮捕壊滅が試金石になるのだ。
 午後7時。天王寺の、あるホテル。
「一時は、悲田院が本当に狙われると思ったよ。」
「ちゃん、このホテルのお風呂、家族風呂あるで。」
「またー。親を誘惑する暇あったら、白鳥にサービスせんかい!!」
 午後7時。総子のマンション。
 総子は、テレビ電話で、伝子と話していた。
「良かったな、総子。」「ダーティー・ブランチによろしゅう言うといて。」
「おいおい。確かに見事な『タレコミ』だった。大前さんもファインプレーだったな。それは、褒めておきなよ。」「うん。」「あれ、南部さんは?」「トイレ。」
 トイレで、水を流す音がした。総子は、南部のスマホを切り、徹と話していた自分のスマホを切った。
 そして、『鯛の尾頭付き』にレモン汁をかけた。
 ―完―


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