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4.民間の『対テロ組織』大阪支部

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 ========== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。
 南部寅次郎・・・南部興信所所長。江角総子と年の差婚をしている。
 大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。夏目警視正と、警察学校同期。
 足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元事務担当。
 石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。
 宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元通信担当。
 丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。
 河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。資材担当。
 北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー普段は、動物園勤務。
 久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。
 小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。
 指原ヘレン ・・・ EITO大阪支部メンバー。
 白井紀子・・・EITO大阪支部メンバー。総子の幼なじみ。祐子に変わって、事務をすることになった。
 芦屋一美(ひとみ)警部・・・三つ子の芦屋三姉妹長女。大阪府警からの出向。阿倍野区夕陽丘署出身。花菱元刑事と同期。普段は大阪府警にいて、EITOとの橋渡しをしている。
 芦屋二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。
 芦屋三美(みつみ)・・・芦屋産業の会長。実は、EITO大阪支部に多大な資金援助をしている、若き経営者。
 幸田所員・・・南部興信所所員。総子のことを「お嬢」と呼ぶ。
 花菱綾人・・・元大阪阿倍野署の刑事。南部興信所所員。
 横山鞭撻警部補・・・大阪府警の刑事。
 愛川いずみ・・・新。通信担当。EITO大阪支部事務員。

 = EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =

 午後1時。EITO大阪支部。作戦室。
「コマンダー。大阪府警から通信です。アイドルの北別府小夏が脅迫されているそうです。今、一美警部を画面に出します。」大前がいずみに近づくと、いずみの前のPCの画面に芦屋一美警部が出た。
「一美。どういうことや。脅迫されてたら、警察の仕事やろ。」
 大前が尋ねると、一美は、画面にメッセージを出した。
 《今夜のライブで小夏が、恨んでいる奴にやられるらしいぞ。リヴァイアサンバージョン2》
「コマンダー。EITOに警護して欲しいそうです。小夏ちゃんのファンらしいですね。欲得づく、で引き受けますか?」一美は尋ねた。
「お前まで総子の影響か?言葉気イつけえよ。」と、大前は憤慨した。
「もう、先方に『喜んで引き受けます』って一報入れておきましたけどね。」
「頭痛くなって来た。いずみ。薬どこやったかな?頭痛薬。」「薬箱でしょ。」
 紀子が帰って来た。「コマンダー。風邪ですか?頭痛薬やったら、これが一番効きますよ。」紀子は大前に薬を渡し、さっさとコップに水を汲んで差し出す。
「紀子は優しいなあ。」大前は、本当は頭が痛い訳では無いが、さっと、飲んだ。
「この際や。一美。三美に会場の長居公園サッカースタジアムに午後6時頃潜り込める段取りつけて貰ってくれ。」
「了解しました。やっぱり、ファンなんですね。」一美は笑った。
「え?」という大前に、いずみが「一美ネエは、まだ会場の名前言ってませんよ。時間もね。」いずみも笑った。
「ふうん。コマンダーは、ああいうタイプがタイプなんや。ウチは振られたわ。」紀子も調子を合わせた。
「トイレ、行って来よう。」
 大前は作戦室を出て行った。
 午後2時。羽曳野市。あるマンション。
 浮気調査の為、幸田と張り込みをしている総子。
 対象の部屋に、女が帰ってきた。2人が踏み込もうとしたが、突然バッグを持ってやって来た男が女にナイフを突きつけ、女の部屋に飛び込んだ。
「お嬢。あれ。」「ああ、えらいことになってもうたわ。晩にEITOの仕事あるのに。幸田。所長と花ヤンに連絡して。」「了解。」
 幸田に指示した総子は、府警にいる一美に連絡をした。
「了解。横ヤンと警官隊を連れて、そっちに行くわ。さっき起こった郵便局強盗だと思う。」
 午後3時。一美はスマホで懸命に犯人を説得していた。女の部屋の電話番号は、総子から聞いて分かっているので、調べる必要はなかった。
 女の部屋の前。総子と幸田が、やって来た。
「岸上松子さん。泊一郎さんの離婚のことで、やって来たんですけど、開けて貰えませんか?」幸田が大声で怒鳴り、総子はドアの鍵穴から、鏡を通して中を伺った。
 立てこもり男が、玄関ドアの方に向かって来た。
 総子はDDバッジを押した。DDバッジとは、本来はDDメンバーと呼ばれる、大文字伝子の友人知人達の身を守る為に開発された、EITOの通信バッジだが、オスプレイに緊急信号を送れるので、EITOメンバーも利用している。総子達EITO大阪支部のメンバーも、本部詰めのいずみや紀子以外は携帯している。
 総子の信号はオスプレイを通じて二美は確認し、窓を突き破って、突入した。
 男の怒鳴る声を聞き、部屋が静まった後、二美は玄関の施錠を解除して出てきた。
 二美から合図を受けた一美は、横山警部補と共に、警官隊を連れて急行した。
「お嬢。行って。泊さんの依頼は任せといてくれ。追っ付け、所長らも来るやろうし。」と、幸田が言った。
「幸田、あんた、オトナになったな。」総子の言葉に、「元からあんたよりオトナですけどね。」と、幸田は言った。
 午後5時。EITO大阪支部。
「やっぱり羽曳野は遠いわ。長居も近くないけど。」と、言いながら総子は入って来た。
「総子ちゃん、これ新しい装備。着替える部屋なあ、三美さんが主催者に交渉して用意してくれたで。」「ノリちゃん、頼もしいわ。」
 総子は、紀子にハグをした。「え?まさか?」と後ろから、大前が総子達を見て言った。「反対はせんけど・・・。」「何?勘違いするなよ、エロオヤジ。」と、総子はピコピコハンマーで大前を叩いた。
「移動は、外に止まってるオスプレイや。敵はピコピコハンマーやなく、バトルスティックで叩いて来い。」
「分かった、兄ちゃん。」「兄ちゃん?」「死んだ妹さん、房子(ふさこ)って言うんやろ?字が違うけど。これでも興信所の所長夫人やで。兄ちゃんでええやろ?」
 房子は言い捨てると、準備室にポーチを取りに行き、紀子が用意した装備を抱え、外に出て走った。
「ほんまにもう、せわしないやっちゃ。」と、大前は苦笑した。
「兄ちゃんか。違和感ないわ。」と紀子が言い、いずみがピースサインをした。
 午後6時。長居公園内サッカースタジアム。EITOエンジェル用控え室。
 準備された部屋は、意外と大きかった。
「あんたが三美ネエか。ホンマにクリソツやナア。どこで見分けるの?」と、総子が素朴な疑問を投げかけた。
「左目の横にホクロが一美、左目の横にホクロが二美。目の横にホクロがないのが、私。亡くなった両親も、ずっとそれで区別してきたわ。」
「何か悪いことを聞イたんやったら、堪忍やで、ウチ鈍感やさかい。」と総子が言うと、「大前さんが惚れ込む訳ね。いつか平和になったら、ウチの会社手伝って貰おうかしら?」と、三美は、にっこりと笑った。
 総子達は警備の位置についた。
 午後6時半。MCの言葉に導かれて小夏はステージに現れた。歓声は、どよめきとなった。
 と、その時、武装?したファンが5人、ステージに上がった。
 小夏に襲いかかろうとした時、EITOエンジェルの総子達がステージに上がった。
「参上!EITOエンジェル。満を持して。」総子が、そう言うと、棒きれの一団は、あっと言う間に取り押さえられた。
「ちょっと、待ったあ。」客席から現れた男達は、普段着だったが、拳銃を持っていた。
 男達は、50人はいたが、客席とステージの両方を威嚇し始めた。
 男達が現れた時に、総子は長波ホイッスルを吹いていた。長波ホイッスルとは、EITOが開発した、犬笛のような笛で、人間の耳には聞こえないが、オスプレイに緊急信号を送ることが出来る。
 いつの間にか飛来したオスプレイのカタパルトが開き、ホバーバイクが降りて来た。
 ホバーバイクは、民間の発明だったが、EITOが採用、戦闘用に改造されていた。
 エレガントボーイの格好をした大前が、ホバーバイクで降りてくると、水流弾を男達に浴びせかけた。拳銃や機関銃は忽ち使い物にならなくなった。
 すかさず、二美は、警官隊を突入させ、観客を一時避難させた。
 ホバーバイクが去ると、EITOエンジェルは、バトルスティックとペッパーガンとシューターで懸命に闘い、午後8時には、鎮圧した。
 ペッパーガンとは、EITOが開発した、胡椒などを主成分とした丸薬で出来た弾を撃つ銃で、敵の戦意を喪失させる働きをする一方、シューターとは、EITOが開発したうろこ形の手裏剣で、先端にしびれ薬が塗ってある。EITOは銃火器を使わない。刃物も使うことを許されていない。シューターは厳密に言えば刃物だが、殺傷能力は無い。
 EITOは、民間の『対テロ組織』である。自衛隊を揶揄する思想の団体がEITOを非難することがあるが、実態は『救助隊』なのだ。
 一美の指示で、警官隊が武装集団を逮捕連行していった。
 そして、最初の5人は、二美が簡単な尋問を行い、5人は闇サイトに便乗し、小夏に近寄ろうとしたファンだったことが判明した。大前は、この5人を囮にして、リヴァイアサンバージョン2が兵隊を送ってきた、と判断した。それで、大前は5人の処理を小夏自身に決めるように小夏に言った。
 小夏は、自らマイクを持ち、再びライブに参加した者には、グッズを後日プレゼントすることを約束し、帰宅する者には、次回ステージの『優先権』を与える整理券を配ると、放送した。
 これは、三美の独断で、大前に承諾させたアイディアだったが、誰も帰宅しなかった。
 EITOエンジェルは、ライブが終って帰宅する人達の場内整理を行った。
 午後11時。ライブは10時に終ったが、後片付けに時間がかかった。
 後片付けには、二美の声かけで陸自の応援が入った。
 また、三美が社員に命じて、三美の社員も応援に入った。
 午前0時。総子のアパート。
 南部が、帰宅した総子にお茶漬けを出して言った。
「今度、マンションに引っ越そう。三美会長が、エエトコ見付けてくれたから。」
「ホンマ?前から気になってたんやけど、芦屋さん達って・・・。」
「先代の会長とワシは知り合いでなあ。先に食べや。後の話は、寝床で聞かせたるさかいに。」
「寅次郎。」「何や、総子。」「結婚してくれてありがとう。」「水くさいこと、言いなや。」
 2人は目に涙を溜めていた。
 ―完―



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