上 下
35 / 35

35.落ちていたSD

しおりを挟む
 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。
 久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。
 大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。
 福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。
 依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。
 服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。
 南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。
 山城みどり・・・山城順と蘭の娘。
 愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。

 草薙あきら・・・元ホワイトハッカーで警視庁からEITOに出向していた職員だったが、今はアマチュア発明家をしている。

 白藤峯男・・・みちるの叔父。丸髷署署長。
 藤堂所縁(ゆかり)・・・健太郎の担任。ミラクル9の顧問。
 藤井進・・・伝子のマンションの仕切り隣の藤井の孫。大学卒業後、サラリーマンをしていたが、警察官になった。丸髷署巡査部長。
 橋爪哲夫・・・元丸髷署勤務の警部補だった。今は警備員をしている。
 佐倉晋太郎・・・橋爪元警部補の後輩。丸髷署生活安全課勤務の警部補。

 ==============================
 ==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==
 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 午後3時半。モール近くの公園。
 健太郎達は、野球の練習をしていた。
 おさむが、不審な3人組が公園の近くの家の車庫に入るのを見付けた。
 キャッチャーをしていた、おさむはピッチャーをしていた健太郎に『暴投』する指示を出した。
 健太郎も気づいた。あいつら、怪しい。健太郎は、わざとファウルボールを投げた。
 おさむは、三塁にいた悦司とその家に走った。
 健太郎は、その家の『方向』に投げたのだ。
 3人組は、慌てて、その家の車庫から離れた。
 悦司が、スマホで、その3人の内の1人を写した。
「どうしたの、健太郎君らしくない・・・。」一塁から走って来た藤堂は、おさむの指さす方向を見て驚いた。運転席のドアが開いていた。
 藤堂は、熊本という表札の玄関のチャイムを鳴らした。出てきた、その家の主婦は、事情を聞いて驚いた。
 藤堂越しに、玄関を見た、健太郎とおさむは確信した。
 クルマのキーがあったからだ、靴箱の上に。
 警察には、その家の主人が電話した。
 午後5時。丸髷署。生活安全課。
 佐倉と藤井が出てきた。
「相変わらずのお手柄だね、ミラクル9。熊本さんは、新車を買ったばかりで、販売員と話し込んでいて、気づかなかったんだ。で、その隙を狙って、家の隣の車庫のクルマを3人組が狙った。悦司君が写した写真の男は、指名手配されていた。何軒もの窃盗犯だ。助かったよ。残る2人の内の1人は、その車の販売員で、熊本さんが話していた販売員と同僚だ。」
「まさか、11年も前に流行った『リレーアタック』の模倣犯が出るとは、おかしいと思っていたんだ。」と、いつの間にか来ていた橋爪が言った。
「橋爪さん。『リレーアタック』って何ですか?」と、藤堂が橋爪に尋ねた。
「いい質問をするね、所縁ちゃん。あ。失礼。藤堂先生。まず1人が車から離れた場所でスマートキーを持つ所有者、もしくはスマートキーが置かれている玄関先などに近づいて電波を受信する。受信した微弱な電波は特殊な機器を経由して2人目、3人目と中継され、最後には車のロックを解除するという方法だ。市橋総理がセキュリティーを強化するように車の製造会社・販売店に指示して、セキュリティーシステムも強化した筈だ。」
「詰まりね、健太郎君。マッチポンプだったんだ。あ、マッチポンプって言うのはね・・・。」
 藤井の話の途中で、おさむが割り込んだ。
「放火犯が放火した後、発見者になる。1人2役だ。アメリカで実際に起った事件から、そう言われる。ということは、僕らが見付けた窃盗未遂犯達は、リレーアタックの模倣犯みたいに『偽装』しようとした。」
「販売店の店員がグルじゃあ、犯人は見つかりにくい、ってことかな?」と健太郎が締め括った。
「1番安全なのは、電波が遮断出来るケースに入れることです、ってご丁寧に犯人のリーダーは、熊本さんに説明していたそうだ。」
「クルマ盗んだ後、どうするの?」と、未玖が尋ねると、「売るんだよ、那珂国に。そして、保険会社からもお金が入る。みどり君が拾ったSDに販売店の『顧客データ』が入っていた。その顧客データも売る予定だったんだろうね。なんでばれたかって首を捻って浮いたが、子供達は『千の眼を持っている』のさ、って言ったら、また悩んでいたよ。」
 と、佐倉が言った。
「灯台もと暗し。頭隠して尻隠さず、かな。はい、健太郎君。ドローンなおったよ。」と、草薙が来て、健太郎にドローンを渡した。
「なんで、ここが?」「なんで、ここが?俺を誰だと思ってるの?DDバッジ、誰から貰ったんだっけ?」
 健太郎は頭を掻いた。
「はい、みどり君。」白藤署長が顔を出し、ハンカチを渡した。
「君のもののように綺麗じゃないけどね。SDカードをハンカチでくるんで持って来てくれたお礼だ。備品じゃないから、気にしなくていいよ。」
「気にしなくていいよ、かあさんのだから。」と、悦司が言った。
「ばらすなよ。」と、白藤署長が笑い、皆も釣られて笑った。
 ―完―


しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

人間工房

沼津平成
ライト文芸
人間をつくることができる工房があるらしい。ちょっと覗いてみよう。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

サンスポット【完結】

中畑 道
青春
校内一静で暗い場所に部室を構える竹ヶ鼻商店街歴史文化研究部。入学以来詳しい理由を聞かされることなく下校時刻まで部室で過ごすことを義務付けられた唯一の部員入間川息吹は、日課の筋トレ後ただ静かに時間が過ぎるのを待つ生活を一年以上続けていた。 そんな誰も寄り付かない部室を訪れた女生徒北条志摩子。彼女との出会いが切っ掛けで入間川は気付かされる。   この部の意義、自分が居る理由、そして、何をすべきかを。    ※この物語は、全四章で構成されています。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...