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30.聞こえない音

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 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。
 久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。
 大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。
 福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。
 依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。
 服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。
 南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。
 山城みどり・・・山城順と蘭の娘。
 愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。

 愛宕寛治・・・悦司の父。警視庁警部。
 久保田あつこ・・・警視庁警視正。健太郎の母。
 久保田誠・・・警視庁警部補。健太郎の父。
 草薙あきら・・・元ホワイトハッカーで警視庁からEITOに出向していた職員だったが、今はアマチュア発明家をしている。

 鈴木栄太・・・小学校校長。
 池上葉子・・・池上病院院長。おさむの父学の後輩彰の母。
 蛭田玲於奈・・・オールラウンドドクター。普段は池上病院の泌尿器科を受け持っているが、毒の研究家でもある。

 ==============================
 ==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==
 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ※モスキート音は、医療の分野では、特定の対象を遠ざけるために不快な音として使用されることがあります。
 モスキート音は、英語で「蚊」を意味する「mosquito」に由来し、蚊の羽音のような不快な高周波音を指します。17.6kHz前後の高い周波数を持ち、大音量(100dB前後)で聞かせることで、ストレスを感じさせてその場所を離れたくさせる効果があります。
 モスキート音は、年齢とともに聞こえ難くなるため、ターゲットとなるのは13歳から25歳の年齢層です。
 また、国立精神・神経医療研究センター 神経研究所では、人間が聞くことのできない「聞こえない領域の音」を「ハイパーソニック・エフェクト」と呼び、うつ治療や認知症対策に活用できる可能性について研究を進めています。

 ある水曜日。午後4時。スーパーにて。
 ミラクル9は、お菓子を買いに来ていた。
「ませガキ」と呼ばれる、少年が、ある老人を揶揄っていた。
「おじいちゃん。ここ、トイレじゃないよ。トイレは、あっち。」
「違うんだ。ああ、止めて。止めてくれ。」
 通りがかった満百合が皆を連れて来た。
「おじいちゃんは、何か病気だよ。お前、老人虐めて楽しいのか?」
 健太郎が凄むと、少年は去った。
 少年のツレの少年はゲーム機を持っていた。
 2人は笑いながら去って行った。
「ふう。ありがとう。どういう仕掛けか知らないが、蚊が鳴くような、ウルサイ音が聞こえるんだ。みんな、認知症だと言うが、ぼけてはいない。」
「目眩して、しゃんがんでいたんじゃなかったの?」と、未玖が言った。
「どういう訳か、あの子達が来ると変な音がする。家でも路上でも聞こえないのに。」
「どうしたの?焼き芋あった?」
「草薙さん、それどころじゃない、事件だよ。」と悦司が言い。おさむが経緯を説明した。
「耳に関係しているなら、病院に行こう。」
 午後4時半。池上病院。
 受付で草薙は、院長を呼び出して貰った。
「耳の検査?今日は代診で蛭田先生だけど、いい?」「はい。」
 院長は、事務所エリアから、耳鼻科に電話をした。
「すぐ、診てくれるから。皆は耳鼻科の待合で待機ね。」「はあい。」
 午後5時半。耳鼻科前の廊下。
 皆は、看護師に呼ばれて、診察室に入った。
「ぼけてないことは、すぐに分かった。耳の検査をしたら、珍しいことが分かった。奄美さんは、モスキート音が聞こえるんだ。君たち、その男の子達は、イヤホンしていなかったか?」
「していました、と言いたい所だけど、していませんでした。」と、おさむは言った。
「面白い。その子達は、モスキート音が聞こえない体質だ。奄美産と逆だな。自分達が聞こえない音が、奄美さんには聞こえる。だから、奄美さんを狙って揶揄った。奄美さん。スーパーには、決まった時間に行くのかね?」
「はい。水曜日と日曜日が特売日なので。そう言えば、大体4時位に行きます。」
「先生。モスキート音って、子供に聞こえて大人に聞こえない音じゃなかったんですか?」と、みどりが尋ねた。
「標準的な傾向であって、体質も影響する。今回は両極端な例だな。草薙くん。おさむが言ったゲーム機、違法だな。ゲームのプレイ中にモスキート音が鳴るなんて。好んでプレイするのを見込んだのかな?でなければ、不良品だな。」
「ミラクル9の出番だな、健太郎君。」と、草薙が健太郎の肩を叩いた。
 次の日曜日。午後4時。スーパー。
 奄美が買物をしていると、少年は近づいて来た。
 奄美は、無視して、買物カゴに商品を入れていく。
「あ、なんで?あ・・・補聴器?」
 よく見ると、奄美は補聴器のようなモノを両耳に掛けている。
「ちょっと警察で事情を聞かせて貰うよ。」愛宕警部が、部下を連れて来ていた。
 少年の仲間の少年が逃げようとしたが、おさむ達が立ちはだかった。
 午後7時。久保田家。
「明日、朝礼で校長先生から路上販売で買わないように注意するって。」
 健太郎があつこに報告すると、「実は、お前達が産まれる前、路上販売の外国人から毒が塗ってあったノートを買った生徒が被害にあったことがあった。母ちゃん達が闘っていた敵の罠だった。おねえさまは、明日EITOでも会議するって言っていた。警視庁でも、マスコミやネットを通じて買わないように注意するように呼びかけるよ。」
「巧みなワナだなあ。最初は普通のゲームだが、レベルが上がってモンスターと闘っている内にモスキート音が出てくる。モンスターの声だと思って我慢をする。その特殊な補聴器は草薙君が発明したの?」と、健太郎の父である誠が尋ねた。
「うん。いつか、いじめっ子やっつける為にモスキート音出したでしょ。僕たちが被ったヘッドホンの改良版だって言ってた。」
「奄美さん、だっけ?耳が良すぎたんだね。補聴器付けたら不自然じゃないし、これで安心して買物出来るな。よくやったぞ、ミラクル9。」
 健太郎は、満足げに頷いた。
 ―完―
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