上 下
4 / 33

4.煩悶

しおりを挟む
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。
久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。
大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。
福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。
依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。
服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。
南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。
山城みどり・・・山城順と蘭の娘。
愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。

物部一朗太・・・満百合の父。モールの喫茶店アテロゴのマスター。
物部栞・・・満百合の母。
大文字(高遠)学・・・おさむの父。
久保田あつこ・・・警視庁警視正。健太郎の母。元EITO副隊長。

久保田誠・・・警視庁警部補。健太郎の父。
久保田嘉三・・・警視庁管理官。健太郎の大叔父。
蔵前・・・久保田家執事。

服部源一郎・・・千香乃の父。シンガーソングライター。自宅で音楽教室を開いている。
服部コウ・・・千香乃の母。

佐藤先生・・・町内鼓笛隊指導の小学校音楽教師。

==============================
==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==


午後1時半。喫茶店アテロゴ。
「辞める?何で?」満百合は、泣きながら、鞄を置いて飛び出して行った。
物部は、EITOに電話をして、満百合を追跡して貰った。
どうやら、モール外れの、小さな公園にいるようだ。
物部達は、自分達も誘拐されたり危ない目に遭ったりしているので、自分達の子供達にもEITOの追跡装置で追えるDDバッジを持たせている。
「やれやれ。」物部は、『ミラクル9』のリーダーである健太郎に電話をした。
モール外れの公園。
「満百合。鼓笛隊辞めるって?何で?張り切ってたじゃないか。」
「健太郎。私ね、私・・・明菜ちゃんに誘われて鼓笛隊に入ったの。」
「それで?」「先生がね、町内パレードにメンバー選んだの。その中に私、入っているの。」「うん。」「でもね、明菜ちゃんは選ばれなかった。鼓笛隊出来た時から入っていたのに。それで、私を誘ってくれたのに。先生はね。私の方が上手いし、太鼓は一個しかないからって言うの。」
「満百合が辞めなくても、いいと思うけど。」と、」みどりが言った。
「そうだわ。先生が選んだんだから、満百合がやればいい。」と、めぐみは言った。
「私もそう思う。」「私も。」未玖と悦子は、口々に言った。
「何かいい方法はないの?」と悦司が言うと、おさむは言った。
「千香乃のウチは、音楽教室だったよね。」
「そうか。千香乃。お父さんかお母さんに頼んでくれないか?」と、健太郎は言った。
千香乃は、スマホを取りだして、電話した。
「お父さんがね。任せなさい、って。」千香乃は笑顔で言った。
午後2時半。小学校。職員室。
鼓笛隊指導の、佐藤先生と服部夫妻が対峙している。
「先生。『参加することに意義がある』って言葉、ご存じですよね。」と、服部が切り出した。
「クーベルタン伯爵の、オリンピック憲章ですよね。」と、佐藤は答えた。
「パレードに出ることは、何かのコンクールですか?どこかに審査員が待っていて点数を付けるとか。」「いいえ。そんなことはありません。」
「音楽に秀でた者のお披露目ではないのなら、希望者全員に参加させればいいのでは?」「でも、太鼓は・・・。」
「太鼓は、用意させます。使用後は、ウチの音楽教室で流用します。」と、2人の横からコウが言った。
「それは・・・でも、満百合ちゃんは辞めると・・・。」
「満百合ちゃんはね、明菜ちゃんに譲りたかったんです。自分を犠牲にして。確かに、音楽的優劣なら、先生の採点通りかも知れない。でも、一生残るんです。先生にとっては、たった一日のイベントかも知れないが。私の知り合いの話をしましょう。ある、音楽好きな子がいました。中学の、暫定的なコーラス部に入りました。彼は毎日熱心に通いました。文化祭になりました。演目は、『筑〇山麓男性合唱団』でした。当時の男声コーラスグループ4人の歌として有名でした。男の子の部員は6人でした。6人の内、熱心に通っていたのは、彼1人でした。文化祭に参加出来たのは、彼を除く5人でした。彼は、音楽を志すのを止めました。それほど大きかったのです。ショックが。元々の男声構成は4人です。何故5人参加したのでしょう。指導音楽教師は、彼の疑問に答えることはありませんでした。その音楽教師の家に遊びに行くほど親しかったのに。コーラス部を勧めたのは、その音楽教師だったのに。随分後で彼は真実を知りました。5人の内の1人の親が、教師を脅してメンバーに入れさせたということを。高校になり、またショックなことがありました。彼は先輩の誘いでまたコーラス部に入りました。男子部員は、彼1人でした文化祭当日、幕が開く前に、部長に参加しないでくれと言われました。部長は、練習だけだと思っていた、と言い、男声が混じると声が濁る、と言ったそうです。方法は、幾らでもあった筈です。今で言えば、『口パク』も一つの方法です。男子部員もいるんだ、と観客に見せれば、部員勧誘の一助になったかも知れません。彼を誘って入部させた先輩は、顧問の先生に頼んで、他の発表会の時に、指揮者として登場させました。交流会の幹事もさせました。でも、その出来事は頭から離れませんでした。時間は残酷です。2度と戻って来ません。彼は、音楽を捨てました。満百合ちゃんも明菜ちゃんも参加する方法は、幾らでもある筈です。彼女達に、『十字架を背負った人生』を歩ませたいですか?コウ、手配してくれ。」
翌日。母の日。
モールをパレードした満百合と明菜の2台の太鼓と笛担当生徒達は、誇らしげに演奏していた。
「良かったな、おさむ。これで、先輩に大目玉を食らわずに済む。健太郎、頼もしいリーダーだ。」
そう言って、服部は、おさむと健太郎の肩を叩いた。
―完―


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

彼氏の前でどんどんスカートがめくれていく

ヘロディア
恋愛
初めて彼氏をデートに誘った主人公。衣装もバッチリ、メイクもバッチリとしたところだったが、彼女を屈辱的な出来事が襲うー

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

「学校でトイレは1日2回まで」という校則がある女子校の話

赤髪命
大衆娯楽
とある地方の私立女子校、御清水学園には、ある変わった校則があった。 「校内のトイレを使うには、毎朝各個人に2枚ずつ配られるコインを使用しなければならない」 そんな校則の中で生活する少女たちの、おしがまと助け合いの物語

処理中です...