50 / 54
髑髏屋敷にようこそ①
しおりを挟むんーっ、今日はとても良く晴れた天気ですね! ああ、良かった。
せっかくお客様をおもてなしする準備をしてきましたからね。どんよりした天気よりお日様が出ていた方が良いと思っていたので。
そう、お客様が来るのです。しかも、私の!
まさかギャレック家に来て自分が誰かをこんなにもはやく招待出来るとは思ってもみませんでしたよ。ふふふ、私のお友達ですよ。楽しみです!
先日のエドウィン様との初デートはちょっぴりアクシデントがありましたが、とても楽しくて有意義な時間を過ごすことが出来ました。
そのアクシデント、というのは私がギャレック領に来る際に雇った冒険者のコレットさんとリタさんに遭遇したことなのですけれど。
あの二人は、私が見知らぬ美少年と手を繋いでデートしているのを、浮気現場を見たかもしれないと驚いたのですって!
ふふっ、今思い出しても笑ってしまいます。もちろん、あの二人からしたら笑いごとではないですよね。ごめんなさい、もう笑いません。
それに、私のことを信じてくださったのですよ。私が浮気なんてするわけない、それなら美少年に騙されているんじゃないかって。
美少年が強敵だと、絶対に敵わないとわかっていたのに私を助けるために後を追ってくださったのだとか。
本当に感謝しかありません。私はそれがとても嬉しくて、だからお礼をしたいと思ったのです。
彼らをお誘いした時の理由としては、改めて依頼を受けてくれたことへのお礼ってことにしちゃいましたけどね。だって、ちょっと恥ずかしかったので、つい。
「そんなにソワソワして。まだ約束の時間までずいぶんあるってのに」
「そうはいってもゾイ。初めてのお客さまなのですよ? 楽しんでもらえるといいのですけれど」
「大丈夫さ。ハナ様が彼らのことを考えて準備したんだからね。いやぁ、聞いた時は驚いたけどね」
私としては実家にいた頃たまにしていたことなので当たり前の感覚だったのですが……私の一般人思考と辺境伯家を同一視してはいけませんよね。我がウォルターズ家は庶民派貴族ですし。
そりゃあ辺境伯家の者ならもっと、こう……貴族らしい振る舞いやおもてなしをするのが当たり前でしょう。
そもそも、冒険者を家に呼ぶこと自体があり得ないらしいのですけれど。
でもその点については、誰も何も言いませんでしたね。私が彼らを招きたいと言った時、エドウィン様も二つ返事で了承してくださいましたし。
それと、とある提案も渋々ながら了承してくださいました。うまくいくといいのですけれど。
ゾイを含めた使用人たちも、疑問に思うような素振りも見せませんでしたね。ありがたい限りです。
元々、この屋敷の使用人の方々自体が平民の出が多いのも関係しているかもしれませんね。
それもこれも、実力主義という柔軟な思考をエドウィン様がお持ちだからでしょう。素敵っ!
「おもてなしは、お客様が喜んでこそですから。今日が晴れていて良かったです!」
なにはともあれ、快く許してくれたエドウィン様には感謝しかありません。準備をしてくれた皆さんにも!
もし成功したら、今度はエドウィン様も一緒にやってみてもいいかもしれませんね。ふふっ、また楽しみが一つ増えました!
「じゃあ、庭に行くかい?」
「はい!」
よぉし。おもてなしの準備、頑張っちゃいますよぉ!
こうして、時間ピッタリにギャレック邸にやってきた冒険者の皆さんを迎え入れた私は、早速庭へとご案内いたしました。
「ば、バーベキュー!?」
そこに用意された光景を見て、リーダーのモルトさんが叫んでおります。ああ、やっぱり驚くものなのですねぇ。わかってましたが。
「ギャレック辺境伯邸で、バーベキュー……」
「い、いいんですか? これは……?」
コレットさんとリタさんは呆然として呟いております。ローランドさんも口を開けたまま固まってしまいましたね。
あれ、そんなにですか? 驚くとは思っていましたが、予想以上の反応です。
私は慌てて付け加えました。
「も、もちろん、エドウィン様から許可はもらっていますよ! あっ、でも。バーベキューは食べながら焼くのが醍醐味ですが、さすがにそこまではさせられないと使用人の方々に仕事を取られてしまいました……」
「えっ、ハナ様もしかしてご自分で焼くおつもりだったんですか!?」
「え? ええ。実家ではたまにやってましたから」
コレットに言われて答えると、絶句されてしまいました。あらら?
まぁ、料理長にも「ガーデンパーティーならまだしも、バーベキューを辺境伯邸の庭でやろうとする人は初めてです」って驚かれましたね。
どうやら私は庶民派すぎるみたいですね。でも良いのです。許可はあるのですから!
「みなさんに楽しんでもらうにはどうしたらいいかなって考えたんです。お屋敷の中は、きっと緊張するでしょう? そう思って……」
もしかしたら、お屋敷の中で貴族らしい食事会をしたかったでしょうか。
でもでも、バーベキューで焼く素材はどれも良いものばかりですよ! 豪勢なバーベキューになると思うのです!
「……ぷっ、あはははっ! もう、ハナ様って本当に面白い! 大好き!」
「え? あ、ありがとうございます、コレットさん」
急に笑い出したコレットさんが何を思ったのかはわかりませんが、彼女が噴き出したことで他の三人もようやく笑顔を見せてくれました。
「本当に。ここまで気を遣ってくださったんだ。楽しまないと申し訳ないぞ、お前ら」
「それもそうね。ありがとうございます、ハナ様。すごく嬉しいです」
「あ、ありがとう、ございます」
モルトの言葉に、リタさんやローランドさんまでもがお礼を言ってくれました! 良かった! 喜んでくれたみたいです。
では、心置きなく始めましょうか! んーっ、私も楽しみですーっ!
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される
めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」
ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!
テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。
『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。
新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。
アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる