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そろそろ腹を括って聖女を名乗らねばならないみたいです

わかってはいたけど脱力してしまいます

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 困惑している私を余所に、シルヴィオがなぜですかと抗議をしている。私が聞きたいことを伝えてくれて助かります。
 だって、ギディオンの性格はみんなが知っていることだから。

「あー、行先はコクだもんね。妥当じゃない?」
「むしろギディーがいたらめちゃくちゃ楽になるしー。オレっちもさんせーい!」

 えっ、あれ? カノアやリーアンも賛成なの? ますます意味がわからないよ……。ギディオンがいたら楽になるって意味も気になります。
 あのぅ、説明ください! ジッとアンドリューに視線を送ると、苦笑しながらも意図を汲み取ってくれました。さすがです。

「コクの地区は毒の霧が漂っている。魔道具でなんとかなることではあるが……時間制限がかかる。そうなると短時間で素早く開放することになるな」

 ど、毒……!? しかも、耐性のない者だとちょっと吸い込んだだけで死に至る危険があるという。こ、これまでで一番危険じゃない!? っていうかどうしてそんなところに封印されるのぉ!?

「ジュニアスとジーノは毒に耐性があるのよ。それでもギディオンほどではないけれど」
「あ、そーいえば幻獣人の封印場所はばらけさせる必要があったんだっけ。国全体を満遍なく禍獣から守れる結界を張れるようにってさー」

 マティアスが補足説明をし、思い出したようにリーアンが告げる。
 な、なるほど。つまり、誰かがコクに封印される必要があって、その中でも毒に耐性のある二人が選ばれたってことか。

「そうでした……。二人を解放させるために出向く必要があった時に、ギディオンを別の場所に封印することにしたんでしたっけ……」

 自然と解放されたのなら、彼らが勝手にコクから脱出すればいいだけだけど、今回のように誰かが解放しに行く時のための保険として、一番毒に耐性があるギディオンは別の場所に封印されていたってことね。

 えーっと、つまり。
 コクの二人を解放するメンバーは封印されるから決まっていたってことだよね? ジュニアスのストッパーであるマティアスと、毒対策のためのギディオン。

 ちなみに、アンドリューはこの件については初耳だったみたい。当時は子どもだったものね。マリエちゃんや幻獣人たちで話し合って決めたことなのだそう。
 でも、カノアやリーアンはそうだっけ? と首を傾げているけど。わ、忘れちゃったんだね……。

「それじゃあ、決まり、ですね?」

 揉めることなく決まってホッとしたけど、シルヴィオは納得してくれるかな? そんな思いから彼に目を向けながら確認を取ると、シルヴィオはものすごく不満そうに頬を膨らませていた。あー……。

「わーかーりーまーしーたー。はぁ、不本意ながら今回は留守番します……! おい、毒野郎。何があってもエマ様をお守りしやがれ!!」
「ヒヒッ、聖女サマに命令されれば、仕方ないねぇ」

 色々と心配は残るけど、ひとまず決まったってことで良しだよね。はぁ、胃が痛かった。

 出来るだけ急がなきゃ、ということで私はてっきり今から向かうのかと思っていたのだけど、毒の霧が漂う場所で一泊もさせられない! とシルヴィオがいうので明日の早朝から出かけることに。どんなに頑張っても丸一日はかかるだろうって。
 私としても毒の中一泊は眠れそうにもないし、いくらギディオンがいても長居はしない方がいいとのこと。それならとお言葉に甘えさせてもらうことにします。

「せっかく集まっているんだ。今の国王派のことも聞いてくれないか」

 あとは明日に備えてそれぞれが休憩を、と思った時にアンドリューがそう切り出した。もちろん、私は聞いておきたいと思ったけど、幻獣人たちは揃いも揃って嫌そうな顔を浮かべている。
 わ、わかりやすいし隠そうともしないよね、あなたたちは。

「だって、僕たちにとっては獣人なんて相手にならないしー。国のことは興味ないもん。ケーキ食べたら眠くなっちゃったから僕、寝る」
「同感ね。そっちの話は後で重要なとこだけ教えてもらえればそれでいいわ」

 あー、マイペース。気付けばギディオンはすでにこの場にいないし。部屋に戻ったのかな? 素早いですね……。

「オレっちもー! 暇だから禍獣退治してくるぜ! あ、カノアっち! ドアよろしくなー!」
「はいはい、戸締りしてねー」

 リーアンもかー。だけど、禍獣退治はたしかに必要な仕事でもあるからまだマシかもしれない。
 とはいえやっぱりマイペースすぎるよね。アンドリューも苦笑しているし。

「オレは聞きますよ、アンドリュー。エマ様の身を守るためにも必要なことですから」
「シルヴィオが常識人に思えるな……」
「失礼ですね、オレは誰よりも常識人です」

 シルヴィオが本当に常識人かどうかは置いておいて、アンドリューがそう言いたくなる気持ちはとてもよくわかる。

 急に静かになったダイニングで、私はお茶を淹れ直すことにした。ま、まぁほら。事実彼らにはあまり関係のない話ではあるし。国民だけど。王家のゴタゴタなんて聞いてもピンとこないかもしれないし? 国民だけど。

 国民でもなんでもない部外者の私がしっかり話を聞きますから! ええい、ヤケだーっ!

「悪いな、エマ。とはいっても、そう難しい話ではないから」

 気遣いありがとうございます、アンドリュー。でもきっと、冗談でもなんでもなく私にとっては大事な話になると思う。
 だって、禍獣の王やマリエちゃんの話になるんだもの。わずかでも情報は逃したくないからね!
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