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変死体発見

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突然のニュースが世間を騒がせた。
ある個人宅にて変死体が発見されたらしい。これが本当の故人宅。なんちゃて。
変死体は発見された家に住む45歳の主婦であり、十何年もずっと引きこもり最小限の外出しかしなかったようだ。そんな年老いた主婦がなぜ殺されたのだろう?ネットでは様々な噂が流れた。
「近所の住人たちに嫌われてリンチ殺人されたらしい」
「実は主婦は常日頃から殺人妄想に囚われている猟奇殺人者で、犯人は同じ家に住む家族だった」
「宇宙人にさらわれて、人体実験に使われていたがやっと解放されたらしい」
等々。そのどれもが真実味を帯びていて本当に真実のように聴こえてくる。噂に便乗して、自分も適当な嘘を言ってみようと試みる者もいた。
「実はあの変死体は魔女狩りに合った人だったんだ!」というトンデモ噂も出たほど。

現場には夫婦の寝室に変死体の主婦。寝室を取り囲むように設置された本棚には、夫婦の所有物らしき推理小説やBL小説が山ほど並べられていた。
捜査員は一冊手に取ると
「変な想いがこもってそうだ…」
そう呟いて慌てて手放した。

検証の結果、驚愕の真実が明らかにされた。
犯人は主婦本人だったのだ。
主婦は何年も前に、愛する夫から「お前を養うのがもう限界だ。サボらずにちゃんと家事をしろ」となじられ、怠惰な主婦と夫は激しい口論に陥り、主婦は自殺未遂をした過去があったのだ。その事件以来ずっと家に引きこもり、しかし外界との接触を完全に断つことなく夫婦で暮らす家周辺にだけ外出を繰り返していたという。
そんな鬱屈した中でも主婦は読書だけに自分の癒しを見出していた。
そう。あの本棚に並べられた推理小説やBL小説は全て、夫婦の趣味を網羅したものだったのである。
主婦はBL本に書かれているプレイを試したくてたまらずに、毎夜夫に行為の強要をしていた。
次第に推理小説に書かれているプレイも実現したくなったのである。
推理小説にあるプレイとは、そう殺人。

「サボらずにちゃんと家事をしろ」という夫のセリフに復讐を果たしたかった主婦には丁度よかったのだ。   

決行した日、妻は夫を殺そうとした。
しかし夫は異世界から現れた存在であり、人から仕掛けられた攻撃を反射できる魔術スキルの持ち主だったのだ。
あえなく引きこもり主婦は死んでしまった。
夫は主婦が死んだ後、異世界にまた戻ってしまい、跡形もなく消えてしまった。

「変な想いがこもってる……」と、捜査員が呟いた一冊の本。
BLの異世界冒険譚。
読者のご明察通り、この本の世界に夫は帰っていったのだ。

現場にあった本棚の小説の中で一際異彩を放っていた一つの「本」。それにはこんなタイトルが書かれていた。
------
【異世界転生してみたら、俺ツエーだった件】
1巻


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