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西国の幽霊城編
城外の掃討と調査
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南に面した城門前の悪霊を退治したので、次にやることはこの一帯の幽霊を排除することだ。
このために新しく魔術を作ってきた。
<広域霊体格納>と名付けたそれは、視界内の霊体を休止状態にして、その霊体球を物品庫に格納するまでを自動で行ってくれる、組み上げ魔術だ。
組み上げ魔術というのは、既存の魔術を組み合わせて自分の望む魔術を作り出す技術の事。
以前から師匠が簡単そうにやってるのを見てたのだが、実際に自分でやってみるとかなり難しかった。これも書斎で本を読んで、ようやく使えるようになった技術だ。
さて、実際に使うのは初めてなので、うまく動くかちょっとドキドキする。
「よし、やるぞ」
大量の幽霊を視界に収め、<広域霊体格納>を発動する。
すると、数十の幽霊が次々に霊体球に変化し、<物品庫>で格納されていく。全自動なので、僕は見ているだけだ。
「よし、成功だ!」
と思ったら、途中で魔術が停まってしまった。あれ?
『安全のために、上限数を設定しておらんかったか?たぶん、それのせいだな』
と師匠に指摘された。
そうだった、すっかり忘れてた。次は、上限数を300に変更して発動してみた。
うん、今度は全部格納できた。
やっぱり、実際に動かしてみないと気付かないことってあるんだな。いい経験になった。
こうして城門から西に向かって、味方スケルトンに護衛されながら、幽霊を格納しつつ進んで行く。
日が暮れて空が赤く染まってきた頃、西側の悪霊が見える場所まで到達した。
「今日はここまでにしましょう」
味方スケルトンたちにはこの場で円陣を組んだまま待機するよう命じておく。
明日はこの場所から再開する予定だ。
僕たちは、<簡易転移門>で拠点の町まで戻った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
それからはほぼ毎日、悪霊を討ち払い、幽霊を捕獲し、という事を繰り返していった。
味方スケルトンも500体を超えてしまったので、彼らには城下町にいる敵スケルトンを担いで外壁の外へ運び出す任務を与えた。
試行錯誤の末、ずらっと通りに並んで、バケツリレーのようにして敵スケルトンを外に運び出すようにして、作業も高速化した。
彼らは休憩なしで働き続けるため、数日で城下町から敵スケルトンがいなくなってしまった。
敵スケルトンは後でまとめて支配する予定だ。
その後、味方スケルトンには外壁各門の見張りと城下町の巡回を任せている。
結局、最初の悪霊退治から7日目で4体目の悪霊を倒して、幽霊も全て捕獲し終えた。
「いや~、大変だったけど、終わったね」
僕がやれやれと思っていると、ジルベール隊長が。
「まだデカブツが残ってるけどな」
と嫌な現実を突きつけてきた。
「その前に、お呪いの状態も確認しなきゃ」
セラフィン君も加わった。
「はぁー、まだ先は長いなぁ」
僕の口から思わずため息が漏れた。
その翌日。
「それでは、これからお呪いの状態確認を行います。おそらくこういう模様の入ったものが民家の壁などにあると思います。まずはそれを見つけましょう。下手に触らないよう注意してください」
僕が見本の模様を見せながらみんなに指示を出すと、散開して調査を開始した。
しばらくして、ナナさんから通信で見つけたと報告があった。
<感覚公開>してもらって、みんなで見ると、民家の壁の高い位置に、あの模様が刻まれた木の板が打ち付けられていた。木の板はそれほど劣化していないように見える。
『みんな、あんな感じのを探してください。ひどく劣化したり破損していた場合だけ連絡ください』
と<遠隔会話>越しに指示を出した。
僕もいくつかの建物に入って、同じような木の板をいくつも発見した。いずれの建物でも、木の板は城とは反対の外壁側の壁や柱に打ち付けられていた。どうやら向きも重要らしい。
『テオ坊、見てくれ』
ジルベール隊長から連絡が来た。視覚を繋ぐと、壁の崩れた建物が見えた。そのがれきの隙間にあの木の板らしきものが見える。
『建物が劣化して壊れている所が結構あったぞ。木の板は無事でもこうなりゃ意味ないよな』
『ですね。みんなも建物の状況に気を付けて捜索を続けてください』
『『『了解』』』
半日ほどかけて、南東の区画をあらかた捜索し終えた。その後集合して話し合う。
「思ったより建物が劣化してましたね」
「酷い所じゃ半分くらい崩れてたぞ」
他の人からも同様の報告があった。お呪いの板自体は無事でも建物がヤバいという結論だ。
とりあえずは、味方スケルトンに命じて、倒壊したがれきから木の板を回収させることにした。
その次の日、僕らは城壁沿いのお堀周辺を調べ、何らかのお呪いに関する痕跡を見つける作業に移った。
今度はどんなお呪いか分からないので、怪しいものは全部調べなくては。
建物の壁、道端の石、樹木の根本、立て看板の裏、など隅々まで見ているが、怪しいものは見つかっていない。
「テオ、こっち来て」
とナナさんの声がお堀の方から聞こえた。
行ってみると、ナナさんはお堀の急斜面を降りて水面近くにいた。相変わらず凄い身体能力だな。
「どうしました?」
「水の中に何かある」
と言うので、僕は<浮遊>の魔術を使って水面まで降りて行った。
確かに、何か水の中で揺らめいている黒っぽくて細長いものが沢山見える。
「本当だ、何だろう?ちょっと見てくるね」
僕は<水中歩行>の魔術を発動し、<浮遊>を解除した。
ドボン!と水に落ちるが、<水中歩行>のおかげで水に濡れることも溺れることもない。
まあ、今は偽生体なので呼吸は不要だけれども。
水中で横から見ると、先ほどの黒いモノは水の中に浮かんでいる模様だった。どういう仕組みか分からないが、お呪いの模様らしきものが水中に浮かんでいるのだ。
模様の大きさは縦3尺(45cm)横2尺(30cm)ほどで、城壁と平行に、上下前後左右が半尋(75cm)ほどの間隔を空けて、見渡す限りずらっと並んでいる。
僕が水中に入ったことで、一部は崩れてしまったが、僕が通り過ぎるとまた元通りの模様に戻っていく。どうなっているんだ?
僕は<感覚公開>で見ているものをみんなと共有した。
『なんと、これは初めて見る技術じゃ。水中に模様を描き維持するとは、面白いことを考えるものだな』
師匠も驚いているようだ。
『おそらくは魔道具で維持しているはずだ。水底になにかそれらしきものが無いか?』
と師匠に言われて探してみる。ちょっと暗いので<冷光>で照らして周囲を見渡す。
水底には結構な数の人骨が落ちている。と思ったら動いてるよ。スケルトンが上から落っこちてきたのか。邪魔されても困るので支配して味方にしておいた。
味方になったスケルトンを護衛に付けて水底を歩き回ると、お堀の真ん中あたりでキラッと光が反射した。
近づいてみると、水底の泥に半分埋もれた球体があった。いかにも魔道具という外見なので、多分これだろう。
師匠に報告すると、師匠も「間違いない」と言っていた。
味方スケルトンにこれと似たものを探して、見つけたら手を上げて待機するよう命じる。
探している間にも味方スケルトンは増えており、すでに30体以上になっている。
一度浮上して水から上がる。
水中の景色について、みんなも驚いていた。
「不思議な光景だったね」
セラフィン君も面白がっていた。
「お?テオ坊、あのスケルトン、手を上げてねぇか?」
ジルベール隊長が水中を指さしている。
あ、本当だ。頭が光っているから良く見える。
「あ、次は僕が潜りたい」
とセラフィン君が言うので、任せた。
同じように<水中歩行>を発動させて、セラフィン君が潜っていった。
<感覚公開>に接続して水中の様子を見る。
手を上げているスケルトンの足元に、先ほどと同じ球体が見えた。先ほどの場所からは30尋(45m)ほど離れている。恐らくはこのくらいの間隔で並んでいるに違いない。
実際、しばらく時間をおいて上空から見ると、一定間隔で光るスケルトンが見えていた。
これで城に幽霊を入れないようにする処置の正体が判明した。
流れの無いお堀の水中にお呪いの模様を浮かべるとは斬新な手法だ、と師匠も絶賛していた。これを使って超巨大悪霊の成長を止めた何者かは、かなり優秀だったとみえる。
師匠によると、この模様のお呪いの効果は「周囲の幽霊を遠ざける」なので、この堀に幽霊は近づけない。つまり、城の中から幽霊というか悪霊を外に出さない効果も期待できる。
ただ、嵐で水が動いたり、日照りで水が干上がったりすると効果が無くなるので、若干不安は残る。
さてこれで、城の外にある各種お呪いの現状については調査が終わった。
城下町の方は、建物の崩壊が問題となりそうだった。
お堀の方は、水が干上がったり流出しない限りは大丈夫のようだ。
今すぐ危険と言うわけではないが、長期にわたって維持するのであれば対策が必要となるだろう。
今日はこれで引き揚げ、今後の方針を決める話し合いをする。<幻影会合>で屋敷と繋ぐ。
結局は、城にいる超巨大悪霊、略して城悪霊をどうするか、と言う話だ。
「断固として戦うべきだ!」
ジルベール隊長が拳を振り上げて主張する。ナナさんも頷いている。血の気が多いなあ。
「無茶を言うな。あれは今まで倒した悪霊とは全く比べ物にならんぞ。半分実体化しているあいつには<霊衝撃>も<霊体防護>も恐らくは通用せんだろう。おぬしら使鬼はなすすべなく喰われて終わりじゃ」
師匠は呆れたように指摘する。
意気込んでいた者も、うっ、と言葉に詰まる。
「あの城悪霊にも通用する攻撃はあるのですか?」
アネットさんが質問すると、師匠が。
「ある。儂とテオの使っている奥義は間違いなく通用する。それ以外となると<霊体操作>の”手”なら通じるかも知らん。だが如何せん手数が足りな過ぎて、消滅させるには何十年と時間がかかるだろう」
「その魔術を使鬼が使えるようにはできないのか?」
ジルベール隊長があきらめきれずにそう聞くが、師匠は少し考えてから首を振る。
「使鬼に組み込むのは無理じゃな。使鬼の魔術基盤では容量不足だ。ただ、魔道具化することはできるかもしれん。と言ってもそれは個人が持ち運べるようなものではなく、攻城兵器並みの大きさになるだろう」
「あ~、なるほど、城攻めか。あのデカさならそうなるわけか」
ようやくジルベール隊長たちも納得したようだ。
このために新しく魔術を作ってきた。
<広域霊体格納>と名付けたそれは、視界内の霊体を休止状態にして、その霊体球を物品庫に格納するまでを自動で行ってくれる、組み上げ魔術だ。
組み上げ魔術というのは、既存の魔術を組み合わせて自分の望む魔術を作り出す技術の事。
以前から師匠が簡単そうにやってるのを見てたのだが、実際に自分でやってみるとかなり難しかった。これも書斎で本を読んで、ようやく使えるようになった技術だ。
さて、実際に使うのは初めてなので、うまく動くかちょっとドキドキする。
「よし、やるぞ」
大量の幽霊を視界に収め、<広域霊体格納>を発動する。
すると、数十の幽霊が次々に霊体球に変化し、<物品庫>で格納されていく。全自動なので、僕は見ているだけだ。
「よし、成功だ!」
と思ったら、途中で魔術が停まってしまった。あれ?
『安全のために、上限数を設定しておらんかったか?たぶん、それのせいだな』
と師匠に指摘された。
そうだった、すっかり忘れてた。次は、上限数を300に変更して発動してみた。
うん、今度は全部格納できた。
やっぱり、実際に動かしてみないと気付かないことってあるんだな。いい経験になった。
こうして城門から西に向かって、味方スケルトンに護衛されながら、幽霊を格納しつつ進んで行く。
日が暮れて空が赤く染まってきた頃、西側の悪霊が見える場所まで到達した。
「今日はここまでにしましょう」
味方スケルトンたちにはこの場で円陣を組んだまま待機するよう命じておく。
明日はこの場所から再開する予定だ。
僕たちは、<簡易転移門>で拠点の町まで戻った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
それからはほぼ毎日、悪霊を討ち払い、幽霊を捕獲し、という事を繰り返していった。
味方スケルトンも500体を超えてしまったので、彼らには城下町にいる敵スケルトンを担いで外壁の外へ運び出す任務を与えた。
試行錯誤の末、ずらっと通りに並んで、バケツリレーのようにして敵スケルトンを外に運び出すようにして、作業も高速化した。
彼らは休憩なしで働き続けるため、数日で城下町から敵スケルトンがいなくなってしまった。
敵スケルトンは後でまとめて支配する予定だ。
その後、味方スケルトンには外壁各門の見張りと城下町の巡回を任せている。
結局、最初の悪霊退治から7日目で4体目の悪霊を倒して、幽霊も全て捕獲し終えた。
「いや~、大変だったけど、終わったね」
僕がやれやれと思っていると、ジルベール隊長が。
「まだデカブツが残ってるけどな」
と嫌な現実を突きつけてきた。
「その前に、お呪いの状態も確認しなきゃ」
セラフィン君も加わった。
「はぁー、まだ先は長いなぁ」
僕の口から思わずため息が漏れた。
その翌日。
「それでは、これからお呪いの状態確認を行います。おそらくこういう模様の入ったものが民家の壁などにあると思います。まずはそれを見つけましょう。下手に触らないよう注意してください」
僕が見本の模様を見せながらみんなに指示を出すと、散開して調査を開始した。
しばらくして、ナナさんから通信で見つけたと報告があった。
<感覚公開>してもらって、みんなで見ると、民家の壁の高い位置に、あの模様が刻まれた木の板が打ち付けられていた。木の板はそれほど劣化していないように見える。
『みんな、あんな感じのを探してください。ひどく劣化したり破損していた場合だけ連絡ください』
と<遠隔会話>越しに指示を出した。
僕もいくつかの建物に入って、同じような木の板をいくつも発見した。いずれの建物でも、木の板は城とは反対の外壁側の壁や柱に打ち付けられていた。どうやら向きも重要らしい。
『テオ坊、見てくれ』
ジルベール隊長から連絡が来た。視覚を繋ぐと、壁の崩れた建物が見えた。そのがれきの隙間にあの木の板らしきものが見える。
『建物が劣化して壊れている所が結構あったぞ。木の板は無事でもこうなりゃ意味ないよな』
『ですね。みんなも建物の状況に気を付けて捜索を続けてください』
『『『了解』』』
半日ほどかけて、南東の区画をあらかた捜索し終えた。その後集合して話し合う。
「思ったより建物が劣化してましたね」
「酷い所じゃ半分くらい崩れてたぞ」
他の人からも同様の報告があった。お呪いの板自体は無事でも建物がヤバいという結論だ。
とりあえずは、味方スケルトンに命じて、倒壊したがれきから木の板を回収させることにした。
その次の日、僕らは城壁沿いのお堀周辺を調べ、何らかのお呪いに関する痕跡を見つける作業に移った。
今度はどんなお呪いか分からないので、怪しいものは全部調べなくては。
建物の壁、道端の石、樹木の根本、立て看板の裏、など隅々まで見ているが、怪しいものは見つかっていない。
「テオ、こっち来て」
とナナさんの声がお堀の方から聞こえた。
行ってみると、ナナさんはお堀の急斜面を降りて水面近くにいた。相変わらず凄い身体能力だな。
「どうしました?」
「水の中に何かある」
と言うので、僕は<浮遊>の魔術を使って水面まで降りて行った。
確かに、何か水の中で揺らめいている黒っぽくて細長いものが沢山見える。
「本当だ、何だろう?ちょっと見てくるね」
僕は<水中歩行>の魔術を発動し、<浮遊>を解除した。
ドボン!と水に落ちるが、<水中歩行>のおかげで水に濡れることも溺れることもない。
まあ、今は偽生体なので呼吸は不要だけれども。
水中で横から見ると、先ほどの黒いモノは水の中に浮かんでいる模様だった。どういう仕組みか分からないが、お呪いの模様らしきものが水中に浮かんでいるのだ。
模様の大きさは縦3尺(45cm)横2尺(30cm)ほどで、城壁と平行に、上下前後左右が半尋(75cm)ほどの間隔を空けて、見渡す限りずらっと並んでいる。
僕が水中に入ったことで、一部は崩れてしまったが、僕が通り過ぎるとまた元通りの模様に戻っていく。どうなっているんだ?
僕は<感覚公開>で見ているものをみんなと共有した。
『なんと、これは初めて見る技術じゃ。水中に模様を描き維持するとは、面白いことを考えるものだな』
師匠も驚いているようだ。
『おそらくは魔道具で維持しているはずだ。水底になにかそれらしきものが無いか?』
と師匠に言われて探してみる。ちょっと暗いので<冷光>で照らして周囲を見渡す。
水底には結構な数の人骨が落ちている。と思ったら動いてるよ。スケルトンが上から落っこちてきたのか。邪魔されても困るので支配して味方にしておいた。
味方になったスケルトンを護衛に付けて水底を歩き回ると、お堀の真ん中あたりでキラッと光が反射した。
近づいてみると、水底の泥に半分埋もれた球体があった。いかにも魔道具という外見なので、多分これだろう。
師匠に報告すると、師匠も「間違いない」と言っていた。
味方スケルトンにこれと似たものを探して、見つけたら手を上げて待機するよう命じる。
探している間にも味方スケルトンは増えており、すでに30体以上になっている。
一度浮上して水から上がる。
水中の景色について、みんなも驚いていた。
「不思議な光景だったね」
セラフィン君も面白がっていた。
「お?テオ坊、あのスケルトン、手を上げてねぇか?」
ジルベール隊長が水中を指さしている。
あ、本当だ。頭が光っているから良く見える。
「あ、次は僕が潜りたい」
とセラフィン君が言うので、任せた。
同じように<水中歩行>を発動させて、セラフィン君が潜っていった。
<感覚公開>に接続して水中の様子を見る。
手を上げているスケルトンの足元に、先ほどと同じ球体が見えた。先ほどの場所からは30尋(45m)ほど離れている。恐らくはこのくらいの間隔で並んでいるに違いない。
実際、しばらく時間をおいて上空から見ると、一定間隔で光るスケルトンが見えていた。
これで城に幽霊を入れないようにする処置の正体が判明した。
流れの無いお堀の水中にお呪いの模様を浮かべるとは斬新な手法だ、と師匠も絶賛していた。これを使って超巨大悪霊の成長を止めた何者かは、かなり優秀だったとみえる。
師匠によると、この模様のお呪いの効果は「周囲の幽霊を遠ざける」なので、この堀に幽霊は近づけない。つまり、城の中から幽霊というか悪霊を外に出さない効果も期待できる。
ただ、嵐で水が動いたり、日照りで水が干上がったりすると効果が無くなるので、若干不安は残る。
さてこれで、城の外にある各種お呪いの現状については調査が終わった。
城下町の方は、建物の崩壊が問題となりそうだった。
お堀の方は、水が干上がったり流出しない限りは大丈夫のようだ。
今すぐ危険と言うわけではないが、長期にわたって維持するのであれば対策が必要となるだろう。
今日はこれで引き揚げ、今後の方針を決める話し合いをする。<幻影会合>で屋敷と繋ぐ。
結局は、城にいる超巨大悪霊、略して城悪霊をどうするか、と言う話だ。
「断固として戦うべきだ!」
ジルベール隊長が拳を振り上げて主張する。ナナさんも頷いている。血の気が多いなあ。
「無茶を言うな。あれは今まで倒した悪霊とは全く比べ物にならんぞ。半分実体化しているあいつには<霊衝撃>も<霊体防護>も恐らくは通用せんだろう。おぬしら使鬼はなすすべなく喰われて終わりじゃ」
師匠は呆れたように指摘する。
意気込んでいた者も、うっ、と言葉に詰まる。
「あの城悪霊にも通用する攻撃はあるのですか?」
アネットさんが質問すると、師匠が。
「ある。儂とテオの使っている奥義は間違いなく通用する。それ以外となると<霊体操作>の”手”なら通じるかも知らん。だが如何せん手数が足りな過ぎて、消滅させるには何十年と時間がかかるだろう」
「その魔術を使鬼が使えるようにはできないのか?」
ジルベール隊長があきらめきれずにそう聞くが、師匠は少し考えてから首を振る。
「使鬼に組み込むのは無理じゃな。使鬼の魔術基盤では容量不足だ。ただ、魔道具化することはできるかもしれん。と言ってもそれは個人が持ち運べるようなものではなく、攻城兵器並みの大きさになるだろう」
「あ~、なるほど、城攻めか。あのデカさならそうなるわけか」
ようやくジルベール隊長たちも納得したようだ。
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