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西国の幽霊城編
1体目の悪霊討伐
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最終的な作戦が決まった。
まずは、城壁の近くに行くために、スケルトンを支配下に置き、味方スケルトンへと変えていく。このスケルトン軍団で敵スケルトンを排除しながら城下町を進むのだ。
城壁周辺の幽霊密集地帯に到着したら、浮遊する幽霊を<霊体支配>で一気に支配下に置く。
この幽霊から150体を戦力に加え、悪霊に吸収されないよう<霊体防護>をかけた上で、最前線とする。僕と師匠とセラフィン君が魔力供給を担当する。
出来れば使鬼たちは参戦させたくないのだが、ジルベール隊長やナナさんが「絶対に戦う」と言うので、希望者だけ<霊体防護>をかけた上で参加させることにした。
幽霊たちと使鬼たちには<霊衝撃>で悪霊を攻撃してもらう。
僕と師匠は、余裕があれば、それらの使鬼を介して<霊素破壊>を悪霊に打ち込んで削っていく。
と言う流れだ。
さて、では前線に立つ使鬼を募集するとしよう。
「俺が先鋒を務めるぞ!」
ジルベール隊長が手を上げて宣言した。
「はい、じゃあ、お任せします」
「よっしゃー!やってやるぜ」
楽しそうだな、ジルベール隊長。
後は、ナナさん、新5人衆、狩猟犬、犬1号2号が強く希望したので、10体で使鬼突撃隊が結成された。
明日の本番に備えて、早めに寝ることにした。
翌日、城門前の悪霊を退治するために出発だ。
昨日と同様、<簡易転移門>で直接平原へ移動する。
あ、そうそう。昨日の実験くん1号はその後も問題なかったので、作戦は変更なしだ。
平原をうろつくスケルトンがいたので、早速支配して頭の光ってる味方スケルトンにした。これで11体。
ジルベール隊長にスケルトン部隊の指揮を任せ、外壁の東門から城下町へ侵入する。
視界に入るスケルトンを次々に頭を光らせながら配下に組み込んでいく。これで58体。
ジルベール隊長は5人衆にも10体ずつ味方スケルトンを指揮させて、敵スケルトンを近づけさせずに前進する。地図と飛空船の猫使鬼の視界を頼りに正解のルートを進んで行く。
もう少し指揮できそうなので、追加で頭を光らせて取り込む。これで88体。
僕たちの前後左右を味方スケルトン部隊が護衛しながら、正解ルートを進むこと1刻(2時間)ほどでようやく城門が見えてきた。
その手前に大量の幽霊がうごめいているのが見える。
僕らを見つけて近づこうとする幽霊もいるが、すぐに城の方に引き寄せられ、何度か繰り返した後諦めていた。ああいうのは既にかなり知能が低下してしまっているのだろう。
味方スケルトン部隊に護衛されながら、幽霊が入って来れない辺りまで進んで一旦停止する。
味方スケルトンの一部を前方に進ませて、城門前の通りにいるスケルトンを排除させた。
では作戦の第1段階。大量の幽霊を支配下に置く。
ここから見える範囲に<霊体支配>を行使すると、全ての幽霊が一斉に動きを止め直立不動になった。
ジルベール隊長たちに頼んで、幽霊を整列させる。
新たに視界に入った幽霊もまた支配下に置き、整列させた。
とりあえず、城門前の通りにいた幽霊は全て支配下に置いたと思う。
整列させた幽霊を数えてみると、およそ400体いるらしい。凄い数だが、まだまだほんの一部に過ぎない。
作戦第2段階。実験くん1号に合計で150体の幽霊との間で霊糸リンクを繋いでやる。そしてそれらの幽霊に<霊体防護>をかけて行く。
師匠にも遠隔から手伝ってもらってドンドンやっていく。
作戦第3段階。使鬼突撃隊の準備をする。
犬1号2号の使鬼を呼びだすと、”幽霊吸引呪”の効果でスーッと城の方に引き寄せられ、整列させた幽霊たちの前まで行って止まった。
ジルベール隊長たちも憑依を解くと、同じように向こうへ行ってしまった。
僕は彼らの偽生体を<物品庫>にしまうと、最後に犯1の憑依を解除すると同時に、自分の偽生体を収納した。
皆に合流後、使鬼に組み込まれた<霊体防護>を起動してもらい、準備完了だ。
いよいよ作戦の最終段階。
『ではみんな、準備はいいね』
『『『おー!』』』
それを聞いて、僕はまず150体の幽霊に命令する。
『では幽霊部隊は悪霊の周囲をぐるりと取り囲むんだ』
<霊体防護>の薄黄色の光に覆われた幽霊たちが一斉に城門前にうずくまる悪霊へと向かって駆けていく。
『ではジルベール隊長』
『おう。野郎ども行くぞ!俺に続けー!』
そう言うと、飛ぶように、いや宙を飛んで悪霊へと突撃していく。
それに続いてナナさんが飛び出し、動物使鬼たちが駆け出し、5人衆も続いた。
◇◆◇
近づく幽霊の気配に気づいた悪霊は捕食のために動き出した。
沢山の幽霊が悪霊を取り囲むように広がって近づいていく。すると、もう少しで悪霊の手が届くと言ったところで止まり、悪霊の周囲を完全に包囲した。
悪霊はどの幽霊に狙いをつけるか迷い、戸惑って、その場で右往左往する。
その時、囲みの外からすごい勢いで何かが悪霊に向かって飛び込んでいった。
ガツン!とそんな音が聞こえそうな勢いで、それが悪霊に衝突し、そこで青白い火花が散った。散った火花に見えたものは、悪霊を構成していた幽霊が剥がれたモノで、幽霊の形に戻ると、周囲へと逃げて行く。
『一番槍はこのジルベール・モロアが頂いた!』
ワハハと高笑いが響く。と言っても霊糸通信越しに、だが。
そしてまた、何かがぶつかって、悪霊の体表で青白い火花が弾けた。
『笑ってないでさっさとやる』
次に突撃した小柄な女性、ナナが、ジルベールに文句をつけながら、悪霊を蹴っ飛ばして、また火花を散らせた。
『おっと、もう来たのか。よし、どちらがより多く削ったか、勝負と行こう!』
ジルベールはそう言うと、拳で悪霊に殴りかかり、次々と火花を散らせる。
彼らが火花を散らせるたびに、それが幽霊の姿となって周囲へ逃げていく。
それを皮切りに、包囲していた無数の幽霊達も突撃を開始した。あちこちで青白い火花が散る。
近づく幽霊を捕食しようとした悪霊は何かが自分の身体にぶつかってくるのを感じ、不快気に身をよじった。しかし、次から次へとガンガンぶつかってくる。その度に悪霊は自身から力が抜けて行くのを感じていた。
ぶつかってくるモノを追い払おうと腕を振り回すが、それらはひらりひらりと身をかわし、捉えきれない。
さらに別の方向からも、次々に悪霊にぶつかって行くものがあった。
犬や屈強な男の姿をした使鬼たちが体当たりをかまし、牙で、爪で、拳で、蹴りで、次々に衝撃を加えていく。
悪霊はたまらず、めちゃくちゃに腕を振り回してそれらを追い払おうとする。
その腕が屈強な男の一人に当たった。
『愛の鞭ありがとうございます!』
そう叫びながら、男は吹き飛んでいった。
悪霊は体から抜けたものを補おうと、周囲を囲む幽霊に手を伸ばし、適当に何体かを捕まえて口に運び丸呑みした。
いつもならこれで身体が大きく強くなる感じがするのだが、今は何も起こらなかった。それどころか、腹の中に違和感があった。
悪霊はその違和感に首を傾げて、昨日も似たようなことがあったのを思い出した。
そして、昨日はその後にとても不快なことがあった、と気づく。
◇◆◇
『うわ、おっかないなぁ』
僕は目の前で暴れまわる、骨の巨人のごとき姿にすっかり尻込みしていた。
僕とセラフィン君は実験くん1号の側で、体外魔力操作によって魔力供給を行っている。師匠も遠隔から手伝ってくれている。
『あ、幽霊が飲み込まれたよ』
セラフィン君が教えてくれた。
『使鬼たちは大丈夫かな?』
『うん、そっちは大丈夫』
『どれ、昨日のように内側から攻めてやるか。今日は儂がやろう』
師匠はそう言うと、遠隔から悪霊の腹の中にいる幽霊越しに<霊素破壊>を使ったようだ。
悪霊が苦し気に悶えて暴れ出した。
『怯むな、攻撃だ!』
『『『おおー!』』』
使鬼の全員が勢いづいて吶喊する。
周囲を囲む幽霊達は足回りを中心に攻め、使鬼たちは背中や頭など高所を中心に攻めている。
僕は幽霊部隊の1体に命令して、膝裏に回り込ませ、遠隔魔術で<霊素破壊>を叩き込む。すると、膝がちぎれて、ふくらはぎから先が分離した。
と思うと、分離した足が青白い光を放ってバラバラに砕け散っていき、その欠片が幽霊の姿に変化していた。
なるほど、悪霊から解放されるとこういう風になるんだな。
これはどんどん千切って行かなくては。
悪霊はバランスを崩し、四つん這いになっている。チャンスだ。
僕は、四肢の切断を狙って近くにある腿の付け根、臀部へと幽霊を向かわせた。
浮上させた幽霊の視界から、悪霊の背中を攻撃しまくる使鬼のみんなが見えた。
おお、腰のあたりがかなり細くなって、もう少しで千切れそうだ。あっちを手伝った方が早そうだな。
周囲を囲む幽霊達に命令して、腰回りの攻撃に参加させる。攻め手が増えて、一気に削られていく。
そしてついに、悪霊は腰から2つに分断された。
切り離された下半身はバラバラに砕けて、その1つ1つが幽霊に戻っていった。
そこからは、悪霊が急速にやせ細っていった。全身を覆っていた骨の鎧もほとんどが剥がれ落ち、中の悪霊自体が見えている。
『うおりゃー!』
ジルベール隊長が頭部に登り、殴る、蹴る、肘鉄と多彩な攻撃(<霊衝撃>)を加えている。一撃ごとに幽霊が解放されていく。
そして、とうとう悪霊としての存在を維持できなくなったのだろう、残りの部分もバラバラに砕け、普通の幽霊に戻った。
『悪霊、討ち取ったりー!』
ジルベール隊長が雄たけびを上げ、使鬼のみんなも鬨の声を上げた。
とりあえず危険は去ったので、犬使鬼たちは収納した。<物品庫>から偽生体を取り出してジルベール隊長たちに憑依してもらう。こうしないと僕の体内魔力が枯渇してしまうからね。
悪霊の鎧のようになっていた人骨がそこかしこに散らばってしまったので、スケルトンも動員し、みんなにかき集めてもらっている。
一人分が集まったら、支配した幽霊を憑依させてスケルトンにする。もちろん頭も光らせておく。こうして散らばっている人骨をスケルトンにして片づけていった。
およそ50体分になった。
砕けたりして使えなくなった骨は邪魔にならないよう道路の脇に寄せておいた。
ふう、これでひと段落だ。
まずは、城壁の近くに行くために、スケルトンを支配下に置き、味方スケルトンへと変えていく。このスケルトン軍団で敵スケルトンを排除しながら城下町を進むのだ。
城壁周辺の幽霊密集地帯に到着したら、浮遊する幽霊を<霊体支配>で一気に支配下に置く。
この幽霊から150体を戦力に加え、悪霊に吸収されないよう<霊体防護>をかけた上で、最前線とする。僕と師匠とセラフィン君が魔力供給を担当する。
出来れば使鬼たちは参戦させたくないのだが、ジルベール隊長やナナさんが「絶対に戦う」と言うので、希望者だけ<霊体防護>をかけた上で参加させることにした。
幽霊たちと使鬼たちには<霊衝撃>で悪霊を攻撃してもらう。
僕と師匠は、余裕があれば、それらの使鬼を介して<霊素破壊>を悪霊に打ち込んで削っていく。
と言う流れだ。
さて、では前線に立つ使鬼を募集するとしよう。
「俺が先鋒を務めるぞ!」
ジルベール隊長が手を上げて宣言した。
「はい、じゃあ、お任せします」
「よっしゃー!やってやるぜ」
楽しそうだな、ジルベール隊長。
後は、ナナさん、新5人衆、狩猟犬、犬1号2号が強く希望したので、10体で使鬼突撃隊が結成された。
明日の本番に備えて、早めに寝ることにした。
翌日、城門前の悪霊を退治するために出発だ。
昨日と同様、<簡易転移門>で直接平原へ移動する。
あ、そうそう。昨日の実験くん1号はその後も問題なかったので、作戦は変更なしだ。
平原をうろつくスケルトンがいたので、早速支配して頭の光ってる味方スケルトンにした。これで11体。
ジルベール隊長にスケルトン部隊の指揮を任せ、外壁の東門から城下町へ侵入する。
視界に入るスケルトンを次々に頭を光らせながら配下に組み込んでいく。これで58体。
ジルベール隊長は5人衆にも10体ずつ味方スケルトンを指揮させて、敵スケルトンを近づけさせずに前進する。地図と飛空船の猫使鬼の視界を頼りに正解のルートを進んで行く。
もう少し指揮できそうなので、追加で頭を光らせて取り込む。これで88体。
僕たちの前後左右を味方スケルトン部隊が護衛しながら、正解ルートを進むこと1刻(2時間)ほどでようやく城門が見えてきた。
その手前に大量の幽霊がうごめいているのが見える。
僕らを見つけて近づこうとする幽霊もいるが、すぐに城の方に引き寄せられ、何度か繰り返した後諦めていた。ああいうのは既にかなり知能が低下してしまっているのだろう。
味方スケルトン部隊に護衛されながら、幽霊が入って来れない辺りまで進んで一旦停止する。
味方スケルトンの一部を前方に進ませて、城門前の通りにいるスケルトンを排除させた。
では作戦の第1段階。大量の幽霊を支配下に置く。
ここから見える範囲に<霊体支配>を行使すると、全ての幽霊が一斉に動きを止め直立不動になった。
ジルベール隊長たちに頼んで、幽霊を整列させる。
新たに視界に入った幽霊もまた支配下に置き、整列させた。
とりあえず、城門前の通りにいた幽霊は全て支配下に置いたと思う。
整列させた幽霊を数えてみると、およそ400体いるらしい。凄い数だが、まだまだほんの一部に過ぎない。
作戦第2段階。実験くん1号に合計で150体の幽霊との間で霊糸リンクを繋いでやる。そしてそれらの幽霊に<霊体防護>をかけて行く。
師匠にも遠隔から手伝ってもらってドンドンやっていく。
作戦第3段階。使鬼突撃隊の準備をする。
犬1号2号の使鬼を呼びだすと、”幽霊吸引呪”の効果でスーッと城の方に引き寄せられ、整列させた幽霊たちの前まで行って止まった。
ジルベール隊長たちも憑依を解くと、同じように向こうへ行ってしまった。
僕は彼らの偽生体を<物品庫>にしまうと、最後に犯1の憑依を解除すると同時に、自分の偽生体を収納した。
皆に合流後、使鬼に組み込まれた<霊体防護>を起動してもらい、準備完了だ。
いよいよ作戦の最終段階。
『ではみんな、準備はいいね』
『『『おー!』』』
それを聞いて、僕はまず150体の幽霊に命令する。
『では幽霊部隊は悪霊の周囲をぐるりと取り囲むんだ』
<霊体防護>の薄黄色の光に覆われた幽霊たちが一斉に城門前にうずくまる悪霊へと向かって駆けていく。
『ではジルベール隊長』
『おう。野郎ども行くぞ!俺に続けー!』
そう言うと、飛ぶように、いや宙を飛んで悪霊へと突撃していく。
それに続いてナナさんが飛び出し、動物使鬼たちが駆け出し、5人衆も続いた。
◇◆◇
近づく幽霊の気配に気づいた悪霊は捕食のために動き出した。
沢山の幽霊が悪霊を取り囲むように広がって近づいていく。すると、もう少しで悪霊の手が届くと言ったところで止まり、悪霊の周囲を完全に包囲した。
悪霊はどの幽霊に狙いをつけるか迷い、戸惑って、その場で右往左往する。
その時、囲みの外からすごい勢いで何かが悪霊に向かって飛び込んでいった。
ガツン!とそんな音が聞こえそうな勢いで、それが悪霊に衝突し、そこで青白い火花が散った。散った火花に見えたものは、悪霊を構成していた幽霊が剥がれたモノで、幽霊の形に戻ると、周囲へと逃げて行く。
『一番槍はこのジルベール・モロアが頂いた!』
ワハハと高笑いが響く。と言っても霊糸通信越しに、だが。
そしてまた、何かがぶつかって、悪霊の体表で青白い火花が弾けた。
『笑ってないでさっさとやる』
次に突撃した小柄な女性、ナナが、ジルベールに文句をつけながら、悪霊を蹴っ飛ばして、また火花を散らせた。
『おっと、もう来たのか。よし、どちらがより多く削ったか、勝負と行こう!』
ジルベールはそう言うと、拳で悪霊に殴りかかり、次々と火花を散らせる。
彼らが火花を散らせるたびに、それが幽霊の姿となって周囲へ逃げていく。
それを皮切りに、包囲していた無数の幽霊達も突撃を開始した。あちこちで青白い火花が散る。
近づく幽霊を捕食しようとした悪霊は何かが自分の身体にぶつかってくるのを感じ、不快気に身をよじった。しかし、次から次へとガンガンぶつかってくる。その度に悪霊は自身から力が抜けて行くのを感じていた。
ぶつかってくるモノを追い払おうと腕を振り回すが、それらはひらりひらりと身をかわし、捉えきれない。
さらに別の方向からも、次々に悪霊にぶつかって行くものがあった。
犬や屈強な男の姿をした使鬼たちが体当たりをかまし、牙で、爪で、拳で、蹴りで、次々に衝撃を加えていく。
悪霊はたまらず、めちゃくちゃに腕を振り回してそれらを追い払おうとする。
その腕が屈強な男の一人に当たった。
『愛の鞭ありがとうございます!』
そう叫びながら、男は吹き飛んでいった。
悪霊は体から抜けたものを補おうと、周囲を囲む幽霊に手を伸ばし、適当に何体かを捕まえて口に運び丸呑みした。
いつもならこれで身体が大きく強くなる感じがするのだが、今は何も起こらなかった。それどころか、腹の中に違和感があった。
悪霊はその違和感に首を傾げて、昨日も似たようなことがあったのを思い出した。
そして、昨日はその後にとても不快なことがあった、と気づく。
◇◆◇
『うわ、おっかないなぁ』
僕は目の前で暴れまわる、骨の巨人のごとき姿にすっかり尻込みしていた。
僕とセラフィン君は実験くん1号の側で、体外魔力操作によって魔力供給を行っている。師匠も遠隔から手伝ってくれている。
『あ、幽霊が飲み込まれたよ』
セラフィン君が教えてくれた。
『使鬼たちは大丈夫かな?』
『うん、そっちは大丈夫』
『どれ、昨日のように内側から攻めてやるか。今日は儂がやろう』
師匠はそう言うと、遠隔から悪霊の腹の中にいる幽霊越しに<霊素破壊>を使ったようだ。
悪霊が苦し気に悶えて暴れ出した。
『怯むな、攻撃だ!』
『『『おおー!』』』
使鬼の全員が勢いづいて吶喊する。
周囲を囲む幽霊達は足回りを中心に攻め、使鬼たちは背中や頭など高所を中心に攻めている。
僕は幽霊部隊の1体に命令して、膝裏に回り込ませ、遠隔魔術で<霊素破壊>を叩き込む。すると、膝がちぎれて、ふくらはぎから先が分離した。
と思うと、分離した足が青白い光を放ってバラバラに砕け散っていき、その欠片が幽霊の姿に変化していた。
なるほど、悪霊から解放されるとこういう風になるんだな。
これはどんどん千切って行かなくては。
悪霊はバランスを崩し、四つん這いになっている。チャンスだ。
僕は、四肢の切断を狙って近くにある腿の付け根、臀部へと幽霊を向かわせた。
浮上させた幽霊の視界から、悪霊の背中を攻撃しまくる使鬼のみんなが見えた。
おお、腰のあたりがかなり細くなって、もう少しで千切れそうだ。あっちを手伝った方が早そうだな。
周囲を囲む幽霊達に命令して、腰回りの攻撃に参加させる。攻め手が増えて、一気に削られていく。
そしてついに、悪霊は腰から2つに分断された。
切り離された下半身はバラバラに砕けて、その1つ1つが幽霊に戻っていった。
そこからは、悪霊が急速にやせ細っていった。全身を覆っていた骨の鎧もほとんどが剥がれ落ち、中の悪霊自体が見えている。
『うおりゃー!』
ジルベール隊長が頭部に登り、殴る、蹴る、肘鉄と多彩な攻撃(<霊衝撃>)を加えている。一撃ごとに幽霊が解放されていく。
そして、とうとう悪霊としての存在を維持できなくなったのだろう、残りの部分もバラバラに砕け、普通の幽霊に戻った。
『悪霊、討ち取ったりー!』
ジルベール隊長が雄たけびを上げ、使鬼のみんなも鬨の声を上げた。
とりあえず危険は去ったので、犬使鬼たちは収納した。<物品庫>から偽生体を取り出してジルベール隊長たちに憑依してもらう。こうしないと僕の体内魔力が枯渇してしまうからね。
悪霊の鎧のようになっていた人骨がそこかしこに散らばってしまったので、スケルトンも動員し、みんなにかき集めてもらっている。
一人分が集まったら、支配した幽霊を憑依させてスケルトンにする。もちろん頭も光らせておく。こうして散らばっている人骨をスケルトンにして片づけていった。
およそ50体分になった。
砕けたりして使えなくなった骨は邪魔にならないよう道路の脇に寄せておいた。
ふう、これでひと段落だ。
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