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死霊術革新編
通信用動物の実証実験
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数日後、セラフィン君に疑似体内魔力発生装置を組み込んでもらって実験をする。
セラフィン君が体外魔力操作で装置に魔力を流し込むと、順調に体内魔力が生成され、”永遠の血液”に乗って全身へと広がった。装置の核となったのは僕の体内魔力だったので、当然セラフィン君の体内魔力は僕のものと同じになる。
実験は成功で、セラフィン君は体内魔力を得たし、その操作も問題なく行えた。
これで、<身体強化>や、錬金術など、体内魔力に依存する魔法技術が使えるようになるはず、ということで実際に試して使用可能なことを確認できた。
今後は錬金術も覚えて、ニコレットさんのお手伝いとかできるね、などと話していた。
そして、その夜になって気が付いたのだが、セラフィン君の使鬼を維持するために、僕の体内魔力を送る必要が無くなっていたのだ。
理由は簡単で、偽生体の中で僕の体内魔力を自給自足しているからだ。
これに気付いた師匠は。
『まさか、このような方法で使鬼の常時維持が可能になるとは。歴代の死霊術師には思いもよらない方法だっただろう。
”永遠の血液”の発見に始まり、偽生体の発明、そしてこの体内魔力の発生装置が揃って初めて実現されたのだからな』
死霊術の歴史を変える新たな発明に興奮しているようだった。
そんなにすごい事だったとは、僕もびっくりだ。
とにかくこれでセラフィン君を収納する必要はなくなった。もし望むなら家族の下で暮らすことだってできる。
セラフィン君に聞いてみたら、「魔術の修業をして一人前になってからでいい」との事で、まだしばらくこの屋敷にいてくれるようで、ホッとした。
今回のこの成果、「偽生体に疑似体内魔力発生装置を組み込むことで使鬼の維持に術者の魔力を不要にする改良」、のことを”(魔力)自給化”と呼び、この改良をした偽生体のことを”自給型偽生体”と呼ぶことにした。
この自給化の発見に隠れてしまったが、僕がこの疑似体内魔力発生装置を携帯することで、常時維持可能な使鬼数は一気に増えた。
内外魔力同調法に加えてこの魔道具が発生する体内魔力を使えるからだ。試した限りでは8体までの常時維持が可能だ。
自給型偽生体と組み合わせれば、10体以上の使鬼を常時維持することは十分に可能だろう、と言う話になった。
こうして、この魔道具のおかげで通信用ネズミの実用化が一気に見えてきたわけだ。
ポリーヌさんもまさかこの研究がそっちにつながるとは思っていなかったようで、嬉しい誤算だと喜んでいる。
「でもネズミは無理だわ。小さすぎるもの。せめて猫、できれば小型犬の大きさじゃないと埋め込めないね」
とネズミに関してはダメ出しされた。
ネズミが世界を変えることは無くなってしまいました。無念。
計画は猫もしくは小型犬を使うように、変更を余儀なくされた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
使鬼の常時維持について改善されたため、通信用動物の実用化に目途が付いた。
これを受けて、以前の検討で必要とされた魔術を師匠が開発してくれた。
<中継受付魔僕>(”魔僕”は自動的に特定の手順に沿った仕事を繰り返し行う持続型魔術のこと)と言う魔術だ。魔僕に分類される魔術は非常に複雑で、呪文が物凄く長いのが特徴だ。
詠唱がとても大変だから、どうにかして魔道具化してもらいたいです、ポリーヌさんお願いします。
倉庫にある動物の死体から、猫3体、小型犬2体を選別して実験することになった。
ポリーヌさんに偽生体化(人工心臓のみの簡易版)と魔力自給化をやってもらう。
とりあえず、実験時の魔力供給は僕らが体外魔力操作でやるが、実用化までには何か別の方法を考えてもらおう。
僕と師匠は、墓地に動物の使鬼を入手しに行き、多少余裕をもって、猫4体、犬3体の使鬼を入手してきた。
これで僕の保有使鬼は20体を超えたが、まだ上限に達してはいないようだ。
師匠の話では、歴代の死霊術師の上限数は40前後だったらしいから、まだ余裕だろう。
実験に使う犬猫使鬼の基盤に<念話中継>を組み込んだ後、それぞれの自給型偽生体に憑依させる。そして、通信用動物を5人衆それぞれに1体ずつ割り当て、屋敷の離れたところまで移動して待機してもらう。
僕が<中継受付魔僕>を発動したら、実験開始だ。とても長い呪文で詠唱が大変だった。早く魔道具化して欲しい。
5人衆の1番が2番に通信要求を出すと、僕が何もしなくても魔僕が霊素通信の中継を行って、双方の人間同士が会話できている。(人間と使鬼の間は<念話中継>による念話だ)
それと同時に3番と4番も同様に会話が可能だった。
この間、5番は他の所に通信要求を出してもつながることは無かった。これは予定通りの動きである。
このような実験手順はポリーヌさんと師匠が相談して決めたもので、組み合わせや向きを変えて何度も繰り返し実験して、問題ないことが確認できた。
この瞬間、おそらくこの世界で初めて、一般人でも使える、離れた場所の人と会話が可能となる機能、が誕生したのだった。
この歴史的快挙に、僕らは、特にポリーヌさんは大興奮だ。
屋敷前出張所のピエールさんもダヤン会頭(トムさん)の代理人として立ち合い、この通信用動物の将来性に目を輝かせている。
ピエールさんには「通信用猫3体をダヤン商会に貸し出すので、実際に使って問題ないか確認してください」と検証作業を依頼した。
ダヤン商会なら一流魔術師を抱えているので、魔力供給も問題ないと言っていた。
猫の大きさなら一度魔力を補給すれば半日は持つ。1日に2回、朝と夕に補給してくれれば良い。
ダヤン商会での通信用動物の先行試験に参加した人達は、この機能の可能性を理解し「早くうちの店舗にも導入してくれ」と陳情が殺到しているらしい。
そうなってくると、問題は使鬼の数もあるが、なによりも魔力供給の改善だ。一流魔術師に頼るのは、確保が難しいし、なによりコスト的に見合わない。
僕の保有使鬼の上限はいまだ不明だが、いずれ上限に達するだろう。通信用動物を増やすには、これを回避する方法も見つけ出さないといけない。
とりあえず使鬼の数は増やしておくことになり、さらに猫3体、犬4体の使鬼を追加した。
これで所有使鬼は30体を超えたが、まだ大丈夫みたいだ。
セラフィン君が体外魔力操作で装置に魔力を流し込むと、順調に体内魔力が生成され、”永遠の血液”に乗って全身へと広がった。装置の核となったのは僕の体内魔力だったので、当然セラフィン君の体内魔力は僕のものと同じになる。
実験は成功で、セラフィン君は体内魔力を得たし、その操作も問題なく行えた。
これで、<身体強化>や、錬金術など、体内魔力に依存する魔法技術が使えるようになるはず、ということで実際に試して使用可能なことを確認できた。
今後は錬金術も覚えて、ニコレットさんのお手伝いとかできるね、などと話していた。
そして、その夜になって気が付いたのだが、セラフィン君の使鬼を維持するために、僕の体内魔力を送る必要が無くなっていたのだ。
理由は簡単で、偽生体の中で僕の体内魔力を自給自足しているからだ。
これに気付いた師匠は。
『まさか、このような方法で使鬼の常時維持が可能になるとは。歴代の死霊術師には思いもよらない方法だっただろう。
”永遠の血液”の発見に始まり、偽生体の発明、そしてこの体内魔力の発生装置が揃って初めて実現されたのだからな』
死霊術の歴史を変える新たな発明に興奮しているようだった。
そんなにすごい事だったとは、僕もびっくりだ。
とにかくこれでセラフィン君を収納する必要はなくなった。もし望むなら家族の下で暮らすことだってできる。
セラフィン君に聞いてみたら、「魔術の修業をして一人前になってからでいい」との事で、まだしばらくこの屋敷にいてくれるようで、ホッとした。
今回のこの成果、「偽生体に疑似体内魔力発生装置を組み込むことで使鬼の維持に術者の魔力を不要にする改良」、のことを”(魔力)自給化”と呼び、この改良をした偽生体のことを”自給型偽生体”と呼ぶことにした。
この自給化の発見に隠れてしまったが、僕がこの疑似体内魔力発生装置を携帯することで、常時維持可能な使鬼数は一気に増えた。
内外魔力同調法に加えてこの魔道具が発生する体内魔力を使えるからだ。試した限りでは8体までの常時維持が可能だ。
自給型偽生体と組み合わせれば、10体以上の使鬼を常時維持することは十分に可能だろう、と言う話になった。
こうして、この魔道具のおかげで通信用ネズミの実用化が一気に見えてきたわけだ。
ポリーヌさんもまさかこの研究がそっちにつながるとは思っていなかったようで、嬉しい誤算だと喜んでいる。
「でもネズミは無理だわ。小さすぎるもの。せめて猫、できれば小型犬の大きさじゃないと埋め込めないね」
とネズミに関してはダメ出しされた。
ネズミが世界を変えることは無くなってしまいました。無念。
計画は猫もしくは小型犬を使うように、変更を余儀なくされた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
使鬼の常時維持について改善されたため、通信用動物の実用化に目途が付いた。
これを受けて、以前の検討で必要とされた魔術を師匠が開発してくれた。
<中継受付魔僕>(”魔僕”は自動的に特定の手順に沿った仕事を繰り返し行う持続型魔術のこと)と言う魔術だ。魔僕に分類される魔術は非常に複雑で、呪文が物凄く長いのが特徴だ。
詠唱がとても大変だから、どうにかして魔道具化してもらいたいです、ポリーヌさんお願いします。
倉庫にある動物の死体から、猫3体、小型犬2体を選別して実験することになった。
ポリーヌさんに偽生体化(人工心臓のみの簡易版)と魔力自給化をやってもらう。
とりあえず、実験時の魔力供給は僕らが体外魔力操作でやるが、実用化までには何か別の方法を考えてもらおう。
僕と師匠は、墓地に動物の使鬼を入手しに行き、多少余裕をもって、猫4体、犬3体の使鬼を入手してきた。
これで僕の保有使鬼は20体を超えたが、まだ上限に達してはいないようだ。
師匠の話では、歴代の死霊術師の上限数は40前後だったらしいから、まだ余裕だろう。
実験に使う犬猫使鬼の基盤に<念話中継>を組み込んだ後、それぞれの自給型偽生体に憑依させる。そして、通信用動物を5人衆それぞれに1体ずつ割り当て、屋敷の離れたところまで移動して待機してもらう。
僕が<中継受付魔僕>を発動したら、実験開始だ。とても長い呪文で詠唱が大変だった。早く魔道具化して欲しい。
5人衆の1番が2番に通信要求を出すと、僕が何もしなくても魔僕が霊素通信の中継を行って、双方の人間同士が会話できている。(人間と使鬼の間は<念話中継>による念話だ)
それと同時に3番と4番も同様に会話が可能だった。
この間、5番は他の所に通信要求を出してもつながることは無かった。これは予定通りの動きである。
このような実験手順はポリーヌさんと師匠が相談して決めたもので、組み合わせや向きを変えて何度も繰り返し実験して、問題ないことが確認できた。
この瞬間、おそらくこの世界で初めて、一般人でも使える、離れた場所の人と会話が可能となる機能、が誕生したのだった。
この歴史的快挙に、僕らは、特にポリーヌさんは大興奮だ。
屋敷前出張所のピエールさんもダヤン会頭(トムさん)の代理人として立ち合い、この通信用動物の将来性に目を輝かせている。
ピエールさんには「通信用猫3体をダヤン商会に貸し出すので、実際に使って問題ないか確認してください」と検証作業を依頼した。
ダヤン商会なら一流魔術師を抱えているので、魔力供給も問題ないと言っていた。
猫の大きさなら一度魔力を補給すれば半日は持つ。1日に2回、朝と夕に補給してくれれば良い。
ダヤン商会での通信用動物の先行試験に参加した人達は、この機能の可能性を理解し「早くうちの店舗にも導入してくれ」と陳情が殺到しているらしい。
そうなってくると、問題は使鬼の数もあるが、なによりも魔力供給の改善だ。一流魔術師に頼るのは、確保が難しいし、なによりコスト的に見合わない。
僕の保有使鬼の上限はいまだ不明だが、いずれ上限に達するだろう。通信用動物を増やすには、これを回避する方法も見つけ出さないといけない。
とりあえず使鬼の数は増やしておくことになり、さらに猫3体、犬4体の使鬼を追加した。
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