幽霊が見えるので死霊術を極めます ~幽霊メイドが導く影の支配者への道~

雪窓

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死霊術革新編

故郷への旅路

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村滞在2日目。
小さな村なので、そんなに見どころはない。ちょっと散歩したらやることが無くなった。

屋敷の事が気になったので、アネットさんを一旦収納し、ネズミくんの側に呼び出して屋敷の様子を見てもらうことにした。
今頃は、屋敷に用意しておいた予備の身体の、黒髪メイド姿になっていることだろう。

僕は宿のベッドでゴロゴロして待つ。今日も暑いな。
『テオ様。こちらは大きな問題はありませんでした』
とアネットさんから通信が。
「大きなってことは小さな問題でも?」
アネットさんが言うには、ニコレットさんとポリーヌさんが僕に相談したいことが溜まっているのだそうだ。
手紙を書こうにも、宛先知らないし困っているとの事。
そういえば、ネズミくんで連絡できることを伝え忘れていたかも。
そのことをアネットさんから2人へ説明してもらうことにした。

早速ネズミくんから通知が来たので、視覚を借りるとポリーヌさんがいた。
遠隔で<念話>を発動して話しかける。
『ポリーヌさん、どうしました?』
『おお!ホントに念話してきたわ、どうなってんのこれ?<念話>の届く距離じゃないでしょ!』
『まぁ、そこは秘密の技術ですので』
『くあぁ!知りたい!悔しい!全く理解できないわ』
『で、要件は?』
『この衝撃で全部吹っ飛んだわ!後で紙にまとめて、もう一度連絡する』
『あ、そっちを見ることもできるので、ネズミくんに見えるように置いてくれれば読みますよ』
『そんなことまでできるんかい!そんな魔術も魔道具も聞いたことないわよぉ、も~。気になって研究どころじゃないなぁ』
ブツブツ言いながらポリーヌさんが離れていった。

すると入れ替わりにニコレットさんが近づいてきた。
<念話>の対象を変更して、ニコレットさんに話しかけると、ちょっと驚いたけどすぐに要件に入った。
錬金術関連の相談なので、横の犬師匠に聞きながら答えてあげた。
『はぁ、そういうことでしたか。疑問が一気に解決しました。これで進みそうです。ありがとうございます』
『いいえ。また何かあればネズミくん経由で連絡してください』
『はい、そうさせてもらいますね。それでは』
と言って、手を振って去っていくニコレットさんは晴れやかな顔をしてた。
目の前に人がいなければ人見知りも発動しないみたいだな。

こうしてこの日からネズミくんはあの二人のアイドルになった。

◇◆◇◆◇◆◇◆

次の日、余りにも暑いので木陰で<そよ風>+<冷却>の魔術を発動させて冷たい風を出して涼んでいたら、セラフィン君から<伝書送信>で連絡が来た。
今日の夕食に招待したい、との事だ。
食事が必要なのは僕だけなので、僕だけ参加させてもらうことにした。
なお、アネットさんとココちゃんは朝から屋敷でメイドをしている。
ナナさんは村の外に散歩に行っている。

夜になって、セラフィン君の家までナナさんに護衛を頼んで向かった。
ナナさんは外で待機し、僕だけ中に入った。
田舎の素朴な手料理でもてなされ、セラフィン君の兄弟たちともおしゃべりをした。
食後にお茶を飲みながら「セラフィンをよろしく頼みます」と言われた。無事に家族の了承が得られた。
ほっと胸をなでおろす。
予定通り明日の朝に出発することを伝え、今日は宿に帰った。

また慌ただしい目覚めを迎え、出発の朝。
ナナさんと御者さんは先に馬車に向かってもらった。ココちゃんは屋敷でメイドをしているので、こっちの体はナナさんが背負って行った。
僕とアネットさんでセラフィン君を迎えに行く。
家の前に家族が集まって、セラフィン君との別れを惜しんでいた。
僕らが行くと、セラフィン君が家族に別れを告げてこちらに走ってきた。
手を振って見送る家族と、振り返りながら手を振るセラフィン君。
「いつか、きっと自由に家族と会えるようになるよ」
僕は誓いを込めて、そう言った。

僕らは村を出ると北に進路を取った。
次は、リュノール(僕の故郷の町)の南の村に寄ってココちゃんの実家へ行く。

そういえば、ナナさんは家族に手紙とかいいのかな?
「私の家族はもういない。12歳の時に死んだ。それから村はずれの猟師小屋で一人で生活してた。
そんな私をわざわざ馬鹿にしに来てたのがこの体の女。ちゃんと食べないからちんちくりんなんだ、って言って残飯を押し付けていった。
嫌な女だった」
…えっと、それって。
「だから、手紙とかは不要」
「そっか」
「ちょっと行ってくる」
と言って、ナナさんは馬車を飛び出して行った。


夕方に南の村に到着。
この村には宿が無いので、野営することになる。
野営の準備は御者さんとナナさんとセラフィン君に任せ、僕とアネットさんとココちゃんで彼女の実家に向かう。
犬師匠はそこらを散策してくるとの事。

ココちゃんをこちらに呼び出して、偽生体に入ってもらう。
ココちゃんの案内で民家の前に着くと、そのままドアをノックする。
「はぁい」
と言って、ドアを開けたのはおそらく母親だろう。
うん、ココちゃんとそっくりだ。
「ママ!ただいま~」
ココちゃんが飛び付く。
「ココ!まぁまぁ、よく帰って来たね」
ギュッと抱き合う二人。
家の中からさらに人が。
「ココ、元気だったか!」
お父さんらしき人が出てきてその輪に加わった。
さらにもう一人出て来た。
「全然連絡なかったから、詐欺に騙されたかもって心配してたんだぞ」
と、お兄さんらしき人が、鋭いことを言った。
「ま、無事でよかった」

ココちゃんの頭をなでていたお兄さんが。
「あれ、そちらの方は?」
ようやく気づいてくれた。
「初めまして。ココさんの教育役を務めるアネットと申します。そしてこちらが私のお仕えするテオ様です」
アネットさんが自己紹介する。
「こんにちは。テオと言います。いちおうココちゃんの主人ということになりますね」
僕も挨拶する。
と、ご家族の皆さんが困惑して固まった。
「ほら、中に入ってもらって」
とココちゃんが促すと、硬直が解けて。
「あ、ああ。そうだね。どうぞ中へ入ってください」
とお母さんが言ってくれた。
「お邪魔します」
「失礼いたします」
ご家族の待つ居間へと入っていく。
改めて挨拶を交わし、ココちゃんが近況を話す。

当初勤めるはずだった屋敷から変更になったものの、無事にメイドになれたこと。
今、仕事をしながらいろいろとメイドの基礎を教えてもらっていること。
毎日がとても楽しいこと。
などをニコニコしながら話していた。
本当は詐欺で騙されていたわけだが、それを言う必要はないだろう。

「そうか、それはよかったな」
「ええ、あの時送り出した甲斐がありましたね」
とご両親が涙ぐんでいた。
「いやぁ、ペルピナルの商人に『そんな家名の屋敷は聞いたことない』って言われて不安だったけど、あいつが知らなかっただけだな」
お兄さんだけが真実に近づいていたようだ。

そんな感じで少しの間話していたが、仲間が待っているのでと言って切り上げた。
「これからもココの事をよろしくお願いします」
とご両親から頼まれた。
ココちゃんには、今夜は実家に泊まってもらう。
屋敷の家事はアネットさんがこの後戻ってやることになっているから大丈夫。

夜、ココちゃんから通信が来た。
『パパもママも喜んでくれて良かったです。お兄ちゃんにも会えましたし。ありがとうございます、テオ様』
と嬉しそうだった。
ちなみに、アネットさんの教育でココちゃんも僕をこう呼ぶようになってしまった。
『今日はもう寝ますので、収納おねがいします』
「うん。おやすみ」
ココちゃんを収納した。

今夜は、夜番のナナさんを残して、アネットさんとセラフィン君を収納した。
旅の間、暇な時間はひたすら内外魔力同調法の鍛錬を積んで、常時維持可能な使鬼が4体になったので、ナナさんを出しっぱなしでも大丈夫だ。

そういえば初めての野営だなと思いつつ、馬車の荷台で横になった。
外の音がいろいろと気になってなかなか寝付けなかったが、いつの間にか眠っていたようだ。

朝になって、ココちゃんとセラフィン君の使鬼を呼び出す。
ココちゃんは実家に走って行った。偽生体に戻って家族とお別れした後、合流する予定だ。
アネットさんは屋敷の方に呼び出して、向こうでお仕事だ。

さて、今日はいよいよ僕の故郷リュノールに向けて出発するぞ。
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