幽霊が見えるので死霊術を極めます ~幽霊メイドが導く影の支配者への道~

雪窓

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死霊術革新編

偽生体の完成

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魔道具開発をポリーヌさんにお任せしている間、錬金術師のニコレットさんの方も様子を見に行った。

「一応、在庫の素材で作れる分は作りました。今は素材を発注して納品待ちです。その間に、もう少し入手性の良い素材で代替できないかどうか試している所です」
何やら依頼した以上のことをやってくれているみたいだ。
師匠によると、レシピ製作者であるゲルルフの記憶にもそんな知識は無かったらしい。
ニコレットさんはどうやら相当な逸材のようだぞ。

とりあえず、現在出来上がっている”永遠の血液”で何とかギリギリ2人分あるので、早速トムさんとシメオンさんに<伝書送信>で都合の良いときに来てくれと連絡した。

「ついにできましたか!」
「ようやく化粧から解放されるぞ!」
と速攻でダヤン商会会頭(中身トムさん)とレスコー男爵(中身シメオンさん)がやってきた。
「早いですね、仕事は大丈夫ですか?」
と聞いたら、全てキャンセルしてきたんだとか。おいおい。

地下に行くと、おっとしまった、ニコレットさんがいた。
「ひっ!こここ、こ、こんにち、は・・・」
いきなりの大人物との遭遇に、人見知りが発動し、真っ青になっている。
早急に逃がしてあげないと、ヤバそうだ!
「あー、ニコレットさん。これからお二人に地下を案内するので、上に行っててもらえるかな」
「は、はいぃ!」
すたこらと逃げるように出て行った。
ごめんね、突然。
こっちの2人も心配そうにしてたが、単なる人見知りだから大丈夫です、と言うと納得したようだ。

そして、師匠に手伝ってもらいつつ、2人の体内に”永遠の血液”を注入し終えると。
「おお!体が動かしやすいですな」
と喜んでいたが、それを聞いて<傀儡>を解除しないと身体能力が上がりすぎるのを思い出した。
そのことを伝えて<傀儡>を解除したら、その状態でも十分に動けることに2人とも驚いていた。

血色が良くなるのに半日くらいかかることを伝えると。
「明日からは化粧が要らなくなるな。良かった。あれが面倒で面倒で」
とシメオンさんは大喜びしていた。

2人は軽い足取りで帰っていった。

それを目撃したポリーヌさんが。
「ちょ!あんな大人物が来るなんて、どういうこと!?」
まあ、驚くよね。
レスコー男爵が僕の後見人であること、ダヤン商会がこの屋敷の研究にお金を出していること、などを説明すると。
「テオ、あんたすごい奴だったんだねぇ。ん?てことは研究し放題ってことか!ぃやっほぅ!」
と急にはしゃぎだした。
あなたの方が凄いと思うよ、いろんな意味で。

◇◆◇◆◇◆◇◆

その後、ポリーヌさんの研究は進み、一番にできた機能は「心音」だった。
しかも音だけでなく、実際に”永遠の血液”を循環する役目も果たす、人工心臓を作り上げたのだった。
そこまでする必要があるのか、と正直思ってました。

しかし、その後まもなくして「体温」機能が実装された時に驚くことになった。
どうやったか聞いたら、人工心臓で熱を発生させて人肌の温度になるまで温めただけだという。人工心臓で温まった”永遠の血液”が全身に回ることで、体温を実現するという仕組みらしい。

非常に理にかなっていて、たった一つの魔道具で複数の機能を実現してしまった。
さすがはポリーヌさん。
他はともかく、魔道具職人としては素晴らしいの一言だ。

「涙」の機能は細かい部品が多くて苦労したようだが、これも実現できた。胃の中身から水分を抽出してタンクに貯蔵し、そこから細い管を通して目に水を流す仕組みだそうだ。涙を出すには口の中のスイッチを舌で押すとの事。水を飲めば涙は補給できる。

ここで僕がスイッチを「悲しみ等の感情を検出して自動化」できないかと、気軽に言ってみた。
ポリーヌさんは精神系の魔道具は難しいと渋い顔をしたが、僕が<精神干渉>の魔術が得意だと聞くと。
「え!そんなちっこいのに、めちゃくちゃ優秀じゃないの!」
と目を丸くして驚いていた。
そして、「その難題、挑戦しようじゃない!」と目を輝かせた。
犯1に協力させて、魔道具作成に必要な感情のデータ取りを行った。

お蔭さまで、涙の制御は感情を検出して行えるようになった。
ついでにポリーヌさんは、感情に合わせて心拍数が変わる機能まで追加してしまった。有能過ぎる。

「寝息」の機能は、気道という胸の中の管に空気の流れを操る魔道具を埋め込み、スイッチを入れると定期的に空気の流れを内向き、外向きと交互に切り替えることで実現している。これは簡単すぎて後回しにしていたらしい。

「食事」の機能は最後になった。これは体内にコンパクトに収めるのに苦労したからだ。
まずは、涙と同じように唾液を出す仕組みを組み込んだことで、より自然な食事ができるようになった。
飲み込んだものを水分と固形分に分離し、水分の一部は涙用と唾液用のタンクへ、残りはおしっこの貯まる袋(膀胱というらしい)へと送るようにした。また、固形分はお尻の方(直腸というのがあるらしい)に送るようにした。
これで排泄もどきが実現できたので、より生きてるような状態に近づいた、と言うのがポリーヌさんの主張。

いや、まー、そうなんだけど。傀儡としてはちょっと不便になりそう。悩ましい所だ。
とりあえず、排泄を不要にできないかと言う要望だけは伝えておいた。

なお、これらの魔道具は周囲の魔力を吸収して動作可能なほど、消費魔力が少ないそうだ。
こういう小型化、省魔力化に関してはポリーヌさんが第一人者だという。
さすがは世界最小の自動人形を作った人だ。

この5つの機能を持つ魔道具群とその組み込み方法を確立したことで、とりあえず目的は達成された。

”永遠の血液”と合わせて、死体を生きているかのように見せかけるこの技術を”偽生体ぎせいたい化技術”と名付けた。
その結果として出来上がる、まるで生きているかのような死体を”偽生体ぎせいたい”と呼ぶことにした。

まとめると。
死体+”永遠の血液”=永続死体
永続死体+魔道具群=偽生体
という関係だ。

師匠曰く、この技術は死霊術の歴史の中でも画期的であり、傀儡がバレる恐れなく日常生活を送ることができるため、応用範囲が飛躍的に広がるだろうとの事。

早速この偽生体化措置を、アネットさん、ナナさん、セラフィン君、ココちゃん、の永続死体に施すことにした。

日常的に接していたアネットさん達が永続死体だったと知って、ポリーヌさんは大変ショックを受けていた。
そりゃそうだよなと思ってたら、その理由が違った。
こんなにも自然な人間らしさを実現している僕の技術に嫉妬して「絶対に追いついてやる」と燃える目で睨まれたのだった。
技術じゃなくて死霊術なんだよ。すみません。

ともあれ、これでようやくアネットさんとご家族の、真の再会が可能になったぞ。


ポリーヌさんには偽生体化魔道具を10組ほど作り置きしておいてもらった。
先の4人への施術で僕と師匠も手順を理解したので、トムさん(ダヤン会頭)とシメオンさん(レスコー男爵)の偽生体化は僕らで実施した。
さすがに大人物が傀儡になっていることはポリーヌさんにも知られたくなかったからね。

◇◆◇◆◇◆◇◆

後日、ニコレットさんが研究していた、入手しやすい素材で”永遠の血液”を作る研究が成功したらしい。
これで、より手軽で安価に調合が可能になったという。

その実用試験も兼ねて、動物の使鬼にも永続死体を用意してあげようと思い立った。
お役所から時々犬や猫の死体が送られてきて保管してあったので、その中から見た目のいいのを選んだ。
とりあえず、”永遠の血液”の注入は成功。
使鬼を憑依させて、十分動けることも確認できた。

僕はここまででいいかなと思っていたのだが、動く動物たちを見たポリーヌさんが。
「へぇ、動物型もあるんだ。面白そうじゃない。私に任せてよ」
と言うので偽生体化もお願いした。
時々ポリーヌさんの要請で、動物の使鬼を呼びだして派遣しておいた。

そして数日後、ポリーヌさんに声を掛けられた。
「完成したよ。見て見て」
と手を引っ張られて、地下室へ。

そこにはまるで眠っているかのような犬が2匹、猫が1匹横たわっていた。
「じゃ~ん、さ、動かしてみて」
と言うので、早速使鬼を呼び出して憑依してもらった。
色が黒く、精悍な顔つきの大型犬が犬1号。
明るい茶色で毛足が長くふさふさした中型犬が犬2号。
白と灰色の毛並みで足の長めの猫。

撫でで見るとふさふさの毛並みと、確かな体温が感じられ、まるで生きているようだ。
「これはいいね!よ~しよし」
わしゃわしゃ撫でてあげる。
犬1号2号も気持ちよさそうに撫でられている。
ポリーヌさんは猫を抱き上げて撫でていた。
「ふふん、これだけじゃないよ。ちょっと外に行こうか」
と言って地下室を出る。
どういうことだろう。僕は首を傾げて後をついて行った。

裏庭に作られた鍛錬場に出る。5人衆やナナさん達が使っている場所だ。

そこに何体かある練習用の丸太人形の前に来ると。
「さぁ、その実力をみせるがいい」
と大仰なしぐさでポリーヌさんが言った。
僕はなんのこっちゃ、と思ったが、犬たちには分かったようで。
「ワン(まずは俺が行く)」
と犬1号が前に出た。

その口を大きく開けると「ワオー」と叫んだ、と思ったら丸太人形がドゴッと音を立てて揺れた。
え?なにやったの?

「ワン(次は私ね)」
と犬2号が前に出る。
同じように口を開けると、ゴォーと音を立てて燃え盛る炎の槍が飛び出て、丸太人形を燃え上がらせた!
いやいや!何それ!

「ニャー(仕方ないなぁ)」
猫がポリーヌさんからピョンと飛び降りると、燃えてない丸太人形に素早く飛び掛かり爪をきらめかせた。
と思ったら、丸太が真っ二つに切断された。
はぁああ?

「どうよ?すごいでしょ!」
とドヤ顔のポリーヌさん。
いや、あんた何やってんの!?

ポリーヌさん曰く、警備用に戦闘能力を追加しておいたとの事。
犬1号は風系統の<風槌>の魔道具、犬2号が火系統の<炎槍>の魔道具、猫が風系統上位の<絶裂斬>の魔道具だそうだ。
小型化して組み込むのに苦労したんだ、とか言ってる。

ぼくのおもってたどうぶつたちとちがう。



その日から、魔力に余裕がある時はできるだけ犬猫たちを呼び出して憑依させ、敷地内で遊ばせるようになった。
屋敷のみんなもモフモフに癒されていたようだ。

特に5人衆たちは喜んで犬たちと駆け回っていた。
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