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死霊術革新編
破天荒な魔道具職人
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今日はダヤン商会から連絡があり、魔道具職人の候補を見つけたとの事。
ただ、気難しい人らしく、直接会いに行ってほしいらしい。
どういう人なんだろう…
工房が集まる南地区へ向かい、僕、アネットさん、犬師匠(外出時は犬の使鬼を使ってる)、護衛のナナさんという面々で歩く。
初夏も後半で、暑い日が多くなってきた。今日も暑くて薄着になっている。
そのせいか、ナナさんがやたらと道行く人の注目を集めていた。
地図の通りに歩いて行くと、工房が多く集まる賑やかな通りを抜けて行き、…あれ?通り抜けたぞ。
もう一度地図を見たがもっと先みたいだ。
不安に思いつつもう少し先へ進むと、工房どころか民家も疎らな郊外へとたどり着く。
どう見ても普通の民家と思われる建物が目的地らしい。
「え~、ここか?」
『相当変わり者の職人っぽいのう』
何度もメモを見直して、やっぱりここだと確認する。
こうしていてもしょうがないので、思い切ってノックをする。
「ほーい!開いてるよ」
と中から女性の声がした。
「ごめんください。ダヤン商会に紹介されて来たんですが」
とドアを開けながら事情を伝える。
「お、試作依頼かな?いやー、久しぶりのお客さんだ!あ、ちょっと散らかってるけど座って座って!」
声やしゃべりの調子からは気難しい感じはしないなぁ。
部屋の中は作りかけの魔道具や素材が所狭しと積み上げられており、足の踏み場もないといった状況だ。一体どこに座れと言うのか。
こんな状態なので、ナナさんは外で待っててもらう。
そして声はすれども姿は見えず。声の主はこの混沌の海の向こう側だ。
「すいません、どこに座ればいいですか?」
「ん?そこのソファにでも、ってああ!ごめんごめん、荷物載せちゃってたね」
ドタドタと足音が聞こえ、ようやく声の主が姿を現した。
身長は僕よりちょっと高いくらい。赤毛のぼさぼさ髪を頭の左右で縛ってまとめていて、瞳はブラウンでぱっちりとした目。ぱっと見子供かと思ったけど、顔には経験に基づく強かさが伺える。
オーバーオールを着ているが、胸部は身長にそぐわず意外と大きい。うん、子供ではなさそうだ。
『ドワーフじゃな』と師匠が教えてくれた。
そっか、これがドワーフか。初めて見た。
「あれ?子供とメイド?ああ、お使いかな」
「あ、いえ、僕が依頼人のテオです。ポリーヌさんですか? これがダヤン商会の紹介状です」
「へ~、どれどれ。ふむ、なるほどね。じゃ、詳しい話をしよっか。こっちへどうぞ」
と奥へ戻っていくので後について行った。
奥は作業スペースのようで、作業台とその周辺だけはきっちりと整理整頓されていた。
「そこの椅子に座っといて。お水持ってくるから」
「あ、お構いなく」
「いいからいいから」
とキッチンらしき方へ去っていく。
「なんかすごいですね」
と師匠に話しかけると
『まあ、ドワーフの職人なんぞどれもこんな感じじゃ。使用人を雇えるような大きな工房ならまだましだがな』
種族特性かい。
アネットさんが何か片付けをしたそうにソワソワしてるし。
「お待たせ。ほい、どうぞ」
「ありがとうございます」
コップを受け取って口に運ぶと、ツーンと強い酒精が鼻につく。
「うっ!これお酒?」
「え?水じゃ味気ないから、ちょこっと火酒を垂らすと美味しいでしょ」
いやこれ、”ちょこっと”じゃねぇわ!
っていうか子供に酒出すなよ!
そっと机の上にコップを置く。出してもらって悪いが、これは飲めない。
アネットさんがすっと立って「キッチンお借りしますね」と言って奥へ行った。
ポリーヌさんは気にせず。
「そんで、どんな魔道具をご所望で?」
こちらの要望として以下の事を伝えた。
●接触している物体の表面を人肌程度に温め続けるもの
●指定の音を繰り返し発するもの
●少量の液体を細い管を通して流すもの
●いずれも、できるだけこぶし大よりも小さいもの
魔道具の目的は伝えず機能だけを言った。
なのに。
「はは~ん、自動人形を人間らしく見せるつもりだね、それ」
とかなり近いところまで推測されてしまった。
優秀な技術者ならこれくらいは当然なのか?
「まぁ、そんなようなものです」
「しっかし、まだブームには早いんじゃない?自動人形って大体10年周期でブーム来るけど、前のからまだ3年しかたってないよ。
今は資金をためて、次に備える時期だと思うけど」
「あ、いえ。そういうのじゃないんで、大丈夫です」
良く分からないので反射的に答えると。
「ほほう!詳しく聞きたいねぇ」
ずずぃっと身を乗り出してきた。
う、失敗したな。
とちょうどそこへアネットさんがお水を入れて戻ってきた。
僕の分の水を机に置くと、隣に座った。
水を飲んで気持ちを落ち着ける。
「えっと、なぜそんなに知りたいんです?」
「うんん?あれ、私の事知らない?」
こくん、と頷く。
「あれま、知らずに依頼持って来たのか。アハハ!ますます面白いじゃない。えっとね、私は自動人形の研究者なのよ。この業界じゃ、結構名を知られてるはずなんだけどね。
知らないってことは、全く畑違いの分野から入ってきたんでしょ」
「そうなりますね」
まぁ、死霊術ですし。
「だからよ!興味あるの、全く違う視点からだとどういうアイディアが出てくるのか。きっと思いもよらない気づきがあると思うのよ!ワクワクする!」
もう目がキラキラしてるよ。本当に好きなんだな、自動人形。
参考になるのかな~、死霊術だよ。
「そうですか。でも、これ以上の事は部外者には話せません」
「ほほ~う。ますます気になるなぁ。”竜の卵が欲しけりゃ巣穴に潜れ”って言うし。いいわ、仕事を請けましょう。守秘契約もサインするし。どう?」
「あ、その前にあなたの実力を知りたいんですが」
「おっとそうだったね。そうだなぁ。よし、前回のコンクールで賞を取った自動人形を見せましょ」
そういってガラクタの山に突っ込んで行って、ガサゴソして戻ってきた。
「じゃ~ん、これよ」
何やら、作業台の上に身長が1尋の半分(約75cm)より小さいくらいで表面がつるっとした人型のものが出てきた。全身鎧を着た人を模ったのかな?
それで、ポリーヌさんが起動の操作をすると、人型の目に相当する部分が光った。
と思ったら、むくりと起き上がった。
おお!スゴイ!
「超小型の自動人形よ。多分世界最小じゃないかな、こうやってちゃんと動くものとしてはね」
自動人形は歩きまわっている。
ポリーヌさんの言葉による指示に従って向きを変えたり、走ったり、止まったりした。
「すごいですね。こんな小さいのに動いてる」
これが使鬼を使った傀儡なら分かるけど、自分の手で作り上げただなんて、全く理解できないぞ。
『いやはや、魔道具の分野は随分と進歩したんじゃな。300年前の自動人形は人間の倍ほどもあって立つのがやっとだったぞ』
と師匠も驚いている。
「言っとくけど、こんな精度で作れるのは大陸広しといえども私だけなんだから」
ポリーヌさんは腕を組んでふんぞり返って、ドヤ顔でそう言った。
師匠と顔を見合わせると、頷いた。
「ポリーヌさん、ぜひ僕たちに力を貸してください」
「任せなさい!」
がっちりと握手を交わした。
その後、契約書にサインしてもらうためと、実際にモノを見ながら話をするために、これから屋敷へ一緒に向かうことになった。
外に出てナナさんのナイスバディを見たポリーヌさんが奇声を上げておっぱいに突っ込んでいくトラブルもあったが、道中はポリーヌさんの自動人形談義やら愚痴やらを聞き流しつつ歩いた。
女性職人は軽くみられるとか、小型軽量の価値を分からないロウガイどもめ、とか言ってたけど、良く分からなかった。
屋敷に到着し、応接室で業務請負契約(こちらの望むとおりの魔道具を作ってもらう内容)と、守秘義務契約書(<信用の楔>付き)にサインしてもらった。
その後で、犯1の永続死体が置いてある部屋にポリーヌさんを案内した。
「え?人?」
「いいえ。死体です」
「し、死体!でも、眠ってるみたい」
と言って手を伸ばすポリーヌさん。
「!冷たい。この見た目なのに本当に死んでるのね。それで、これが?」
「はい。僕たちは死体を元にまるで生きているかのような自動人形、のようなものを作ろうとしています」
「それがあの仰々しい守秘義務契約の理由か。犯罪じゃないでしょうね?」
「大丈夫です。ここでの実験で罪になることはないです」
「そう。ま、あまり深くは聞かないわ。それで?私はこれを動くようにすればいいの?」
「いいえ。動かすことはもうできます。こんな風に」
と言って、使鬼の犯1を呼んで憑依してもらう。
むくりと永続死体が起き上がる。
「ひっ!びっくりしたぁ。って、え~!!本当に動いてる!どうなってんの?」
「これは魔術の一種で動いてます。だから自動人形じゃないんです。僕たちは傀儡と呼んでます」
「はは~ん、魔法生物系なのね。もう動いてるってことは、生きているかのように見せかける方が私の仕事ってわけね」
「はい、そこをお願いします」
「任せときなさい。ちょっとやそっとじゃ見抜けないくらいのものにしてあげるわ!」
片腕を突き上げて闘志を燃やすポリーヌさんであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
次の日から早速、ポリーヌさんは自宅で魔道具を制作し、屋敷で犯1の永続死体を使って実験をするという日々を送っていた。しかし実験が長引いて、時々ここに泊まり込むようになった。
と思ってたら、いつの間にかポリーヌさんの私物が実験室に増えて行って、あっという間に一部屋を占拠し、2部屋目に突入していた。
こりゃ不味いということで、急遽ダヤン商会に頼んで壁をぶち抜いてポリーヌさんの工房を作ってもらって、そっちに荷物を全部移し、それ以上広げないよう言い渡しておいた。
ついでに、この間新しく使鬼になったメイド見習いのココちゃんをポリーヌさんのお世話につけてあげた。主に片づけのためにね。
そしたら、「メイドまで用意してくれるなんて最高の環境ね!」とか言って、完全にこっちに居ついてしまい、自宅には時々物を取りに行く程度になってしまった。
図々しいというか、我が道を行くと言うか。
やっぱり大した人物だよ、ポリーヌさんは。
ただ、気難しい人らしく、直接会いに行ってほしいらしい。
どういう人なんだろう…
工房が集まる南地区へ向かい、僕、アネットさん、犬師匠(外出時は犬の使鬼を使ってる)、護衛のナナさんという面々で歩く。
初夏も後半で、暑い日が多くなってきた。今日も暑くて薄着になっている。
そのせいか、ナナさんがやたらと道行く人の注目を集めていた。
地図の通りに歩いて行くと、工房が多く集まる賑やかな通りを抜けて行き、…あれ?通り抜けたぞ。
もう一度地図を見たがもっと先みたいだ。
不安に思いつつもう少し先へ進むと、工房どころか民家も疎らな郊外へとたどり着く。
どう見ても普通の民家と思われる建物が目的地らしい。
「え~、ここか?」
『相当変わり者の職人っぽいのう』
何度もメモを見直して、やっぱりここだと確認する。
こうしていてもしょうがないので、思い切ってノックをする。
「ほーい!開いてるよ」
と中から女性の声がした。
「ごめんください。ダヤン商会に紹介されて来たんですが」
とドアを開けながら事情を伝える。
「お、試作依頼かな?いやー、久しぶりのお客さんだ!あ、ちょっと散らかってるけど座って座って!」
声やしゃべりの調子からは気難しい感じはしないなぁ。
部屋の中は作りかけの魔道具や素材が所狭しと積み上げられており、足の踏み場もないといった状況だ。一体どこに座れと言うのか。
こんな状態なので、ナナさんは外で待っててもらう。
そして声はすれども姿は見えず。声の主はこの混沌の海の向こう側だ。
「すいません、どこに座ればいいですか?」
「ん?そこのソファにでも、ってああ!ごめんごめん、荷物載せちゃってたね」
ドタドタと足音が聞こえ、ようやく声の主が姿を現した。
身長は僕よりちょっと高いくらい。赤毛のぼさぼさ髪を頭の左右で縛ってまとめていて、瞳はブラウンでぱっちりとした目。ぱっと見子供かと思ったけど、顔には経験に基づく強かさが伺える。
オーバーオールを着ているが、胸部は身長にそぐわず意外と大きい。うん、子供ではなさそうだ。
『ドワーフじゃな』と師匠が教えてくれた。
そっか、これがドワーフか。初めて見た。
「あれ?子供とメイド?ああ、お使いかな」
「あ、いえ、僕が依頼人のテオです。ポリーヌさんですか? これがダヤン商会の紹介状です」
「へ~、どれどれ。ふむ、なるほどね。じゃ、詳しい話をしよっか。こっちへどうぞ」
と奥へ戻っていくので後について行った。
奥は作業スペースのようで、作業台とその周辺だけはきっちりと整理整頓されていた。
「そこの椅子に座っといて。お水持ってくるから」
「あ、お構いなく」
「いいからいいから」
とキッチンらしき方へ去っていく。
「なんかすごいですね」
と師匠に話しかけると
『まあ、ドワーフの職人なんぞどれもこんな感じじゃ。使用人を雇えるような大きな工房ならまだましだがな』
種族特性かい。
アネットさんが何か片付けをしたそうにソワソワしてるし。
「お待たせ。ほい、どうぞ」
「ありがとうございます」
コップを受け取って口に運ぶと、ツーンと強い酒精が鼻につく。
「うっ!これお酒?」
「え?水じゃ味気ないから、ちょこっと火酒を垂らすと美味しいでしょ」
いやこれ、”ちょこっと”じゃねぇわ!
っていうか子供に酒出すなよ!
そっと机の上にコップを置く。出してもらって悪いが、これは飲めない。
アネットさんがすっと立って「キッチンお借りしますね」と言って奥へ行った。
ポリーヌさんは気にせず。
「そんで、どんな魔道具をご所望で?」
こちらの要望として以下の事を伝えた。
●接触している物体の表面を人肌程度に温め続けるもの
●指定の音を繰り返し発するもの
●少量の液体を細い管を通して流すもの
●いずれも、できるだけこぶし大よりも小さいもの
魔道具の目的は伝えず機能だけを言った。
なのに。
「はは~ん、自動人形を人間らしく見せるつもりだね、それ」
とかなり近いところまで推測されてしまった。
優秀な技術者ならこれくらいは当然なのか?
「まぁ、そんなようなものです」
「しっかし、まだブームには早いんじゃない?自動人形って大体10年周期でブーム来るけど、前のからまだ3年しかたってないよ。
今は資金をためて、次に備える時期だと思うけど」
「あ、いえ。そういうのじゃないんで、大丈夫です」
良く分からないので反射的に答えると。
「ほほう!詳しく聞きたいねぇ」
ずずぃっと身を乗り出してきた。
う、失敗したな。
とちょうどそこへアネットさんがお水を入れて戻ってきた。
僕の分の水を机に置くと、隣に座った。
水を飲んで気持ちを落ち着ける。
「えっと、なぜそんなに知りたいんです?」
「うんん?あれ、私の事知らない?」
こくん、と頷く。
「あれま、知らずに依頼持って来たのか。アハハ!ますます面白いじゃない。えっとね、私は自動人形の研究者なのよ。この業界じゃ、結構名を知られてるはずなんだけどね。
知らないってことは、全く畑違いの分野から入ってきたんでしょ」
「そうなりますね」
まぁ、死霊術ですし。
「だからよ!興味あるの、全く違う視点からだとどういうアイディアが出てくるのか。きっと思いもよらない気づきがあると思うのよ!ワクワクする!」
もう目がキラキラしてるよ。本当に好きなんだな、自動人形。
参考になるのかな~、死霊術だよ。
「そうですか。でも、これ以上の事は部外者には話せません」
「ほほ~う。ますます気になるなぁ。”竜の卵が欲しけりゃ巣穴に潜れ”って言うし。いいわ、仕事を請けましょう。守秘契約もサインするし。どう?」
「あ、その前にあなたの実力を知りたいんですが」
「おっとそうだったね。そうだなぁ。よし、前回のコンクールで賞を取った自動人形を見せましょ」
そういってガラクタの山に突っ込んで行って、ガサゴソして戻ってきた。
「じゃ~ん、これよ」
何やら、作業台の上に身長が1尋の半分(約75cm)より小さいくらいで表面がつるっとした人型のものが出てきた。全身鎧を着た人を模ったのかな?
それで、ポリーヌさんが起動の操作をすると、人型の目に相当する部分が光った。
と思ったら、むくりと起き上がった。
おお!スゴイ!
「超小型の自動人形よ。多分世界最小じゃないかな、こうやってちゃんと動くものとしてはね」
自動人形は歩きまわっている。
ポリーヌさんの言葉による指示に従って向きを変えたり、走ったり、止まったりした。
「すごいですね。こんな小さいのに動いてる」
これが使鬼を使った傀儡なら分かるけど、自分の手で作り上げただなんて、全く理解できないぞ。
『いやはや、魔道具の分野は随分と進歩したんじゃな。300年前の自動人形は人間の倍ほどもあって立つのがやっとだったぞ』
と師匠も驚いている。
「言っとくけど、こんな精度で作れるのは大陸広しといえども私だけなんだから」
ポリーヌさんは腕を組んでふんぞり返って、ドヤ顔でそう言った。
師匠と顔を見合わせると、頷いた。
「ポリーヌさん、ぜひ僕たちに力を貸してください」
「任せなさい!」
がっちりと握手を交わした。
その後、契約書にサインしてもらうためと、実際にモノを見ながら話をするために、これから屋敷へ一緒に向かうことになった。
外に出てナナさんのナイスバディを見たポリーヌさんが奇声を上げておっぱいに突っ込んでいくトラブルもあったが、道中はポリーヌさんの自動人形談義やら愚痴やらを聞き流しつつ歩いた。
女性職人は軽くみられるとか、小型軽量の価値を分からないロウガイどもめ、とか言ってたけど、良く分からなかった。
屋敷に到着し、応接室で業務請負契約(こちらの望むとおりの魔道具を作ってもらう内容)と、守秘義務契約書(<信用の楔>付き)にサインしてもらった。
その後で、犯1の永続死体が置いてある部屋にポリーヌさんを案内した。
「え?人?」
「いいえ。死体です」
「し、死体!でも、眠ってるみたい」
と言って手を伸ばすポリーヌさん。
「!冷たい。この見た目なのに本当に死んでるのね。それで、これが?」
「はい。僕たちは死体を元にまるで生きているかのような自動人形、のようなものを作ろうとしています」
「それがあの仰々しい守秘義務契約の理由か。犯罪じゃないでしょうね?」
「大丈夫です。ここでの実験で罪になることはないです」
「そう。ま、あまり深くは聞かないわ。それで?私はこれを動くようにすればいいの?」
「いいえ。動かすことはもうできます。こんな風に」
と言って、使鬼の犯1を呼んで憑依してもらう。
むくりと永続死体が起き上がる。
「ひっ!びっくりしたぁ。って、え~!!本当に動いてる!どうなってんの?」
「これは魔術の一種で動いてます。だから自動人形じゃないんです。僕たちは傀儡と呼んでます」
「はは~ん、魔法生物系なのね。もう動いてるってことは、生きているかのように見せかける方が私の仕事ってわけね」
「はい、そこをお願いします」
「任せときなさい。ちょっとやそっとじゃ見抜けないくらいのものにしてあげるわ!」
片腕を突き上げて闘志を燃やすポリーヌさんであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
次の日から早速、ポリーヌさんは自宅で魔道具を制作し、屋敷で犯1の永続死体を使って実験をするという日々を送っていた。しかし実験が長引いて、時々ここに泊まり込むようになった。
と思ってたら、いつの間にかポリーヌさんの私物が実験室に増えて行って、あっという間に一部屋を占拠し、2部屋目に突入していた。
こりゃ不味いということで、急遽ダヤン商会に頼んで壁をぶち抜いてポリーヌさんの工房を作ってもらって、そっちに荷物を全部移し、それ以上広げないよう言い渡しておいた。
ついでに、この間新しく使鬼になったメイド見習いのココちゃんをポリーヌさんのお世話につけてあげた。主に片づけのためにね。
そしたら、「メイドまで用意してくれるなんて最高の環境ね!」とか言って、完全にこっちに居ついてしまい、自宅には時々物を取りに行く程度になってしまった。
図々しいというか、我が道を行くと言うか。
やっぱり大した人物だよ、ポリーヌさんは。
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