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見習い死霊術師編
弟子入り
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結局その次の日は親に外出禁止を言い渡されたので、家の中でおとなしくしていた。
あの老人は何だったのかなとか、どうして鹿の剥製が動いたのかなとか、昨晩見たものについて想像を巡らせているうちに一日が終わった。
そして明くる日、謹慎の解けた僕は真っ先にお化け屋敷へと向かった。
お化け屋敷の周りは昼間でも人通りが無く閑散としている。
きょろきょろと周囲を見回して目撃者がいないことを確認して素早く通用門から侵入した。
今回は一応お招きに与っているので、玄関扉のノッカーをコンコンコンコンと鳴らした。
すると扉の表面からにゅ~っと老人の上半身が現れた。
さすがに面食らっていると、『よう来たの』と笑いながら言って中に引っ込んでいった。
このご老人、かなり悪戯好きのようだ。
やれやれと思いつつ扉を開けて中に入る。
玄関ホールに立った老人が丁寧にお辞儀して。
『あらためて、ようこそ少年。儂はライナス・エルウッドという。もうかれこれ300年ほど幽霊をやっておる』
さ、300年!途方もない年数に思わず固まってしまった。
おっと、いけない。
「えっと、僕はテオです。8歳です。よろしくお願いします」
礼儀作法とかよくわかんないので、見よう見まねで両手を胸の前で重ねて軽く頭を下げる。
『ほう、礼儀正しいのう。いい所の坊ちゃんかな?』
「いいえ。大人がやってたのを真似しただけで」
『そうかそうか。よくできておったぞ』
どうやら上手くいったらしい。
『なにぶんこの屋敷は生きた人間が生活するようになっとらんでな、何のもてなしもできず、すまんの』
「あ、いえ、大丈夫です」
そりゃそうだよな。100年以上人が住んでないんだから。あー、水筒でも持ってくればよかったか。
『キッチンの魔道具を使えばきれいな水だけは出せるぞ。自由に使うとよい』
「はい、ありがとうございます」
魔道具!すごい、そんな高価なものがあるんだ。あとで使ってみよう。
その後、応接室に移動していろいろと話を聞いた。
ライナスさんは約350年前に活躍していた魔術師で、世間には知られていない”死霊術”という特殊な魔術の継承者だったそうだ。
死霊術は僕のように幽霊を見ることのできる人間、”霊視能力者”というらしい、以外には習得できないため弟子を取ろうにもその才能を持つ人を探すところから始める必要がある。
しかし彼は運悪く自分以外の霊視能力者に出会うことができず、死霊術を絶やさぬために自らを幽霊化する秘術を開発し、死後も幽霊としてこの世にとどまり弟子探しを続けていた。
幽霊としての自分を維持するための仕掛けがこの屋敷の地下にあるためここから遠く離れることはできず、死霊術を使って”使鬼”という幽霊の召使を各地に放って調査し続け300年。
その間3人の霊視能力者を発見していたものの、霊視能力者は迫害を受けやすく自分の能力を忌み嫌う場合が多いため、ことごとく勧誘に失敗。
今回たまたま肝試しに訪れた僕が霊視能力者だったため、声を掛けたということだった。
お膝元のこの町で僕が見つかっていなかったのは、それだけ”見えないふり”が上手かったということだろうか。
話を聞き終わって、この屋敷は300年くらい前のものなのかと本筋から外れたところで驚いたりもしたが、要するに早い話が。
「つまり、世にも珍しい死霊術という魔術を使える才能が僕にあるってことですよね!しかも100年に一人くらいの希少な才能が!」
『ま、まぁ。そういうことじゃ』
僕の剣幕にライナスさんは少し引き気味だけど、そんなの気にしてられない。
平々凡々で何の取り柄もないのが取り柄みたいな僕に、こんなすごい才能があっただなんて!
「やります!死霊術師に僕はなります!」
ずずいっと身を乗り出す僕に、後ろにのけぞりながら。
『お、おぉ…そうか、うむ良かった。まずは一安心じゃ。それでは、今日からおぬしは儂の弟子じゃ。よく励むように』
とライナスさん、いや師匠が言った。
「はい!よろしくお願いします、師匠!」
こうして僕は、師匠の300年越しの初弟子となった。
その後の雑談で判明したが、このお化け屋敷の呪われた噂の数々は案の定、悪戯好きの師匠の仕業だったらしい。
目的はこの地下にある、師匠の生命線ともいえる魔道具を守るためだったらしいが、ついつい興が乗ってしまい脅かすのに趣向を凝らし過ぎてしまったのだとか。
直接危害を加えるようなことはしていないそうだが、それで発狂したり、ぽっくり逝ったりするような脅かし方ってどんだけ…
この屋敷周辺は人気が少ないとはいえ、僕のような子供が何度も侵入していては不審がられる恐れがある、とのこと。
そこで、師匠は猫型の”使鬼”を用意し、これを僕の家に派遣してくれることになった。
”使鬼”は術者が使役する幽霊の事で、簡単な命令を実行させたり、感覚を共有して遠くのものを見聞きしたり、遠隔で魔術を発動させたりすることができるのだそうだ。
使鬼を通じて師匠と会話もできるので、これにより自宅にいる間も修業できる体制が整った。
◇◆◇◆◇◆◇◆
肝試しの後、テオは付き合いが悪くなった、と近所の子供たちは思っていた。
遊びに誘っても「やることがあるから」と断られたり、一緒に遊んでいても心ここにあらずであったりしたからだ。
トビとポールが「お化け屋敷で鹿の剥製が動いた」とあちらこちらで話して回ったので、様子が変わったテオを見て「呪われちゃったんじゃないか」と言い出す子供たちもいた。
そんな噂を聞いたサラがテオの家にやってきたところだ。
「テオ。あんた最近付き合い悪いけど、何やってんの?」
「え、特に何も。強いて言うなら、勉強かな」
「は? 勉強? え、なんで」
まぁ、驚くよね。今まで僕が勉強なんてしたことなかったし。
「うーん、面白いからかな。知らないことを知るのってすっごく楽しいよ」
本当の理由じゃないけど、ウソでもない。
「それだけ? 学校に入ろうとか、そういうのじゃないの?」
サラがわけわからないという感じの顔で聞いてくる。
「まさか。ウチの稼ぎじゃ学校なんて無理だよ」
「ふーん。あのテオが勉強、ねぇ」
まだ納得できないって顔をしてるけど、一応疑問が解消したのか。
「ま、分かったわ。ちょっと心配してたけど、大丈夫みたいだし。
これで帰るね。勉強、頑張んなさい」
「ありがとう。じゃあね、バイバイ」
手を振って見送る。
「さぁて、やるぞ~」
今日も修業開始だ!
弟子入りしたあの日から僕は毎日欠かさず修業をしている。
師匠から指示されたのは、①魔術の基本となる魔力感知と魔力操作の練習、②読み書き計算の勉強、の2つだ。
読み書き計算は明るいうちじゃないとできないので、お昼前にやることにしている。
文字が分かるようになってから、そこら辺の看板や立て札に書いてあることが読めるのがすごく楽しい。
とある店では書いてある品名と、店員の言ってる品名が違ってることにも気づいたし。文字が分かるってすごく大事だと思った。
計算も簡単な足し算なら今までもできてたけど、引き算とか掛け算は難しい。
割り算なんて「なんだそれ!」って思った。
でも仲間内で分け前を計算するのに便利で、知らないと分け前をちょろまかされることもあるらしいから、頑張って覚えようと思う。
そして、お昼を食べてからは魔力関係の練習。
魔力感知については、最初は猫型の使鬼を介して師匠に魔力操作をしてもらってその動きを感じ取ることから始め、今では起きてる間は常に自分の体内の魔力を感知し続ける練習をしている。
ようやく自分の周りにある魔力の感知も、2~3歩までの距離ならできるようになった。
最初の頃は家に閉じこもって集中してやっていたけど、最近は外で遊びながらもできるようになってきた。
時々集中しすぎて周りから変な目で見られることもあるけど。
一方で魔力操作の方は難しい。
今は体内の魔力を操作する練習をしているけど、なかなか思い通りに動いてくれない。とは言え、最初の全くうんともすんとも言わなかった頃に比べれば、随分ましになったけどね。
そんなわけで、現在の最優先は魔力操作の練習だ。
ベッドの上に胡坐をかいて座り、目を閉じて集中する。体内の魔力を感じ取り、合わせた両掌の右から左へと魔力を動かす。
その様子を僕の膝の上にいる猫型の使鬼がじっと見ている。
『あー、ほら。また手元だけに意識が集中しておるぞ。もっと体全体、腹の底を意識して全体の流れを操作するのじゃ』
「はい、師匠」
いけない、いけない。つい1つのことに夢中になる癖があるなぁ。注意しないと。
師匠のアドバイスに従ってやり方を見直す。するとよりスムーズに魔力が動き出す。
『よし、その調子じゃ。今日はその流れを四半刻(30分)は維持するのじゃぞ』
うへー、こりゃきついぞ。
あちこちに意識を向けないと流れが乱れてしまう。む、難しい!
そんな練習を続けて数日。
『さて、それだけ動かせるようになったなら、次の段階に進んでも良さそうじゃな』
「次と言うと?」
『魔術を使ってみる練習じゃ』
「おおー!やった、ついに魔術だ!」
ガバっと起き上がり両腕を点につきあげて快哉を叫ぶ。
ついにあの憧れの、本当は10歳にならないと使っちゃダメと言われている、あの魔術を!僕が!
『おおぅ、そんなに喜ぶとは思わんかったぞ』
猫姿の師匠が目を丸くして身を引いている。
「そりゃ喜びますよ。だってあと2年待たないと使えないはずだったんだから」
『ん~? 2年とな? なんじゃそれは』
猫師匠がきょとんとして首をかしげる。
「えっ? えっと、なんか10歳までは魔力を上手く使えなくて危険だから、って聞いたけど」
『なるほど、魔術の暴走のことか。そんなもん、指導者が悪いに決まっておる。儂なんぞ5歳から魔術を使えたぞ』
「ご、5歳!」
さすがは師匠。天才だ。
『当然儂が指導する限り、暴走なんぞさせんよ(キリッ)』
頼もしいです師匠!
でも猫の姿でドヤ顔は可笑しくて笑っちゃいます。
あの老人は何だったのかなとか、どうして鹿の剥製が動いたのかなとか、昨晩見たものについて想像を巡らせているうちに一日が終わった。
そして明くる日、謹慎の解けた僕は真っ先にお化け屋敷へと向かった。
お化け屋敷の周りは昼間でも人通りが無く閑散としている。
きょろきょろと周囲を見回して目撃者がいないことを確認して素早く通用門から侵入した。
今回は一応お招きに与っているので、玄関扉のノッカーをコンコンコンコンと鳴らした。
すると扉の表面からにゅ~っと老人の上半身が現れた。
さすがに面食らっていると、『よう来たの』と笑いながら言って中に引っ込んでいった。
このご老人、かなり悪戯好きのようだ。
やれやれと思いつつ扉を開けて中に入る。
玄関ホールに立った老人が丁寧にお辞儀して。
『あらためて、ようこそ少年。儂はライナス・エルウッドという。もうかれこれ300年ほど幽霊をやっておる』
さ、300年!途方もない年数に思わず固まってしまった。
おっと、いけない。
「えっと、僕はテオです。8歳です。よろしくお願いします」
礼儀作法とかよくわかんないので、見よう見まねで両手を胸の前で重ねて軽く頭を下げる。
『ほう、礼儀正しいのう。いい所の坊ちゃんかな?』
「いいえ。大人がやってたのを真似しただけで」
『そうかそうか。よくできておったぞ』
どうやら上手くいったらしい。
『なにぶんこの屋敷は生きた人間が生活するようになっとらんでな、何のもてなしもできず、すまんの』
「あ、いえ、大丈夫です」
そりゃそうだよな。100年以上人が住んでないんだから。あー、水筒でも持ってくればよかったか。
『キッチンの魔道具を使えばきれいな水だけは出せるぞ。自由に使うとよい』
「はい、ありがとうございます」
魔道具!すごい、そんな高価なものがあるんだ。あとで使ってみよう。
その後、応接室に移動していろいろと話を聞いた。
ライナスさんは約350年前に活躍していた魔術師で、世間には知られていない”死霊術”という特殊な魔術の継承者だったそうだ。
死霊術は僕のように幽霊を見ることのできる人間、”霊視能力者”というらしい、以外には習得できないため弟子を取ろうにもその才能を持つ人を探すところから始める必要がある。
しかし彼は運悪く自分以外の霊視能力者に出会うことができず、死霊術を絶やさぬために自らを幽霊化する秘術を開発し、死後も幽霊としてこの世にとどまり弟子探しを続けていた。
幽霊としての自分を維持するための仕掛けがこの屋敷の地下にあるためここから遠く離れることはできず、死霊術を使って”使鬼”という幽霊の召使を各地に放って調査し続け300年。
その間3人の霊視能力者を発見していたものの、霊視能力者は迫害を受けやすく自分の能力を忌み嫌う場合が多いため、ことごとく勧誘に失敗。
今回たまたま肝試しに訪れた僕が霊視能力者だったため、声を掛けたということだった。
お膝元のこの町で僕が見つかっていなかったのは、それだけ”見えないふり”が上手かったということだろうか。
話を聞き終わって、この屋敷は300年くらい前のものなのかと本筋から外れたところで驚いたりもしたが、要するに早い話が。
「つまり、世にも珍しい死霊術という魔術を使える才能が僕にあるってことですよね!しかも100年に一人くらいの希少な才能が!」
『ま、まぁ。そういうことじゃ』
僕の剣幕にライナスさんは少し引き気味だけど、そんなの気にしてられない。
平々凡々で何の取り柄もないのが取り柄みたいな僕に、こんなすごい才能があっただなんて!
「やります!死霊術師に僕はなります!」
ずずいっと身を乗り出す僕に、後ろにのけぞりながら。
『お、おぉ…そうか、うむ良かった。まずは一安心じゃ。それでは、今日からおぬしは儂の弟子じゃ。よく励むように』
とライナスさん、いや師匠が言った。
「はい!よろしくお願いします、師匠!」
こうして僕は、師匠の300年越しの初弟子となった。
その後の雑談で判明したが、このお化け屋敷の呪われた噂の数々は案の定、悪戯好きの師匠の仕業だったらしい。
目的はこの地下にある、師匠の生命線ともいえる魔道具を守るためだったらしいが、ついつい興が乗ってしまい脅かすのに趣向を凝らし過ぎてしまったのだとか。
直接危害を加えるようなことはしていないそうだが、それで発狂したり、ぽっくり逝ったりするような脅かし方ってどんだけ…
この屋敷周辺は人気が少ないとはいえ、僕のような子供が何度も侵入していては不審がられる恐れがある、とのこと。
そこで、師匠は猫型の”使鬼”を用意し、これを僕の家に派遣してくれることになった。
”使鬼”は術者が使役する幽霊の事で、簡単な命令を実行させたり、感覚を共有して遠くのものを見聞きしたり、遠隔で魔術を発動させたりすることができるのだそうだ。
使鬼を通じて師匠と会話もできるので、これにより自宅にいる間も修業できる体制が整った。
◇◆◇◆◇◆◇◆
肝試しの後、テオは付き合いが悪くなった、と近所の子供たちは思っていた。
遊びに誘っても「やることがあるから」と断られたり、一緒に遊んでいても心ここにあらずであったりしたからだ。
トビとポールが「お化け屋敷で鹿の剥製が動いた」とあちらこちらで話して回ったので、様子が変わったテオを見て「呪われちゃったんじゃないか」と言い出す子供たちもいた。
そんな噂を聞いたサラがテオの家にやってきたところだ。
「テオ。あんた最近付き合い悪いけど、何やってんの?」
「え、特に何も。強いて言うなら、勉強かな」
「は? 勉強? え、なんで」
まぁ、驚くよね。今まで僕が勉強なんてしたことなかったし。
「うーん、面白いからかな。知らないことを知るのってすっごく楽しいよ」
本当の理由じゃないけど、ウソでもない。
「それだけ? 学校に入ろうとか、そういうのじゃないの?」
サラがわけわからないという感じの顔で聞いてくる。
「まさか。ウチの稼ぎじゃ学校なんて無理だよ」
「ふーん。あのテオが勉強、ねぇ」
まだ納得できないって顔をしてるけど、一応疑問が解消したのか。
「ま、分かったわ。ちょっと心配してたけど、大丈夫みたいだし。
これで帰るね。勉強、頑張んなさい」
「ありがとう。じゃあね、バイバイ」
手を振って見送る。
「さぁて、やるぞ~」
今日も修業開始だ!
弟子入りしたあの日から僕は毎日欠かさず修業をしている。
師匠から指示されたのは、①魔術の基本となる魔力感知と魔力操作の練習、②読み書き計算の勉強、の2つだ。
読み書き計算は明るいうちじゃないとできないので、お昼前にやることにしている。
文字が分かるようになってから、そこら辺の看板や立て札に書いてあることが読めるのがすごく楽しい。
とある店では書いてある品名と、店員の言ってる品名が違ってることにも気づいたし。文字が分かるってすごく大事だと思った。
計算も簡単な足し算なら今までもできてたけど、引き算とか掛け算は難しい。
割り算なんて「なんだそれ!」って思った。
でも仲間内で分け前を計算するのに便利で、知らないと分け前をちょろまかされることもあるらしいから、頑張って覚えようと思う。
そして、お昼を食べてからは魔力関係の練習。
魔力感知については、最初は猫型の使鬼を介して師匠に魔力操作をしてもらってその動きを感じ取ることから始め、今では起きてる間は常に自分の体内の魔力を感知し続ける練習をしている。
ようやく自分の周りにある魔力の感知も、2~3歩までの距離ならできるようになった。
最初の頃は家に閉じこもって集中してやっていたけど、最近は外で遊びながらもできるようになってきた。
時々集中しすぎて周りから変な目で見られることもあるけど。
一方で魔力操作の方は難しい。
今は体内の魔力を操作する練習をしているけど、なかなか思い通りに動いてくれない。とは言え、最初の全くうんともすんとも言わなかった頃に比べれば、随分ましになったけどね。
そんなわけで、現在の最優先は魔力操作の練習だ。
ベッドの上に胡坐をかいて座り、目を閉じて集中する。体内の魔力を感じ取り、合わせた両掌の右から左へと魔力を動かす。
その様子を僕の膝の上にいる猫型の使鬼がじっと見ている。
『あー、ほら。また手元だけに意識が集中しておるぞ。もっと体全体、腹の底を意識して全体の流れを操作するのじゃ』
「はい、師匠」
いけない、いけない。つい1つのことに夢中になる癖があるなぁ。注意しないと。
師匠のアドバイスに従ってやり方を見直す。するとよりスムーズに魔力が動き出す。
『よし、その調子じゃ。今日はその流れを四半刻(30分)は維持するのじゃぞ』
うへー、こりゃきついぞ。
あちこちに意識を向けないと流れが乱れてしまう。む、難しい!
そんな練習を続けて数日。
『さて、それだけ動かせるようになったなら、次の段階に進んでも良さそうじゃな』
「次と言うと?」
『魔術を使ってみる練習じゃ』
「おおー!やった、ついに魔術だ!」
ガバっと起き上がり両腕を点につきあげて快哉を叫ぶ。
ついにあの憧れの、本当は10歳にならないと使っちゃダメと言われている、あの魔術を!僕が!
『おおぅ、そんなに喜ぶとは思わんかったぞ』
猫姿の師匠が目を丸くして身を引いている。
「そりゃ喜びますよ。だってあと2年待たないと使えないはずだったんだから」
『ん~? 2年とな? なんじゃそれは』
猫師匠がきょとんとして首をかしげる。
「えっ? えっと、なんか10歳までは魔力を上手く使えなくて危険だから、って聞いたけど」
『なるほど、魔術の暴走のことか。そんなもん、指導者が悪いに決まっておる。儂なんぞ5歳から魔術を使えたぞ』
「ご、5歳!」
さすがは師匠。天才だ。
『当然儂が指導する限り、暴走なんぞさせんよ(キリッ)』
頼もしいです師匠!
でも猫の姿でドヤ顔は可笑しくて笑っちゃいます。
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