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対面
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しばらくわいわいやっていると、突然招集がかかったようで、構成員たちは事務所をあとにした。
皆名残惜しそうにしていたが、いつでも会えますよ、と微笑むと、顔を綻ばせながら、出動していった。
「また、来てくださいね。待ってますから。」
いつになく真剣な顔で二宮にそう言われ、少しドキッとした。
「もちろんですよ。お仕事、がんばってきてください。」
すると、二宮は照れたように、早足で出て行った。
みんな行っちゃったし、俺も帰ろうかな、と思っていると、突然ドアが開いた。
そこにいたのは、目を見開いた田嶋さんだった。
「あ、お久しぶりです…。」
突然のことに驚いて呆然としていると、田嶋さんはつかつかと近づいてきて、肩を掴まれる。
「お前、ここで何してる」
凄んだ顔でそう言われて、何か怒らせるようなことをしただろうかと思いを巡らせる。
「事務所の皆に、会いにきたんです。招集かかったみたいなんで、ついさっき出て行っちゃいましたけど。」
そう言うと、壁に強く押し付けられる。
「はっ、もうここにはお前居場所なんてないんだよ、気安く立ち寄るな。」
この人は、こんなに短気な人だっただろうか。もっと、冷静で落ち着いた人だったような気がするが。
「はあ、すいませんでした。まあもう用も終わったところだったんで。すぐに退室させていただきますよ。」
おかしな田嶋さんに付き合うのもなんだか疲れそうだったので、そうそうに退散しようとしたが、再び壁に押し付けられる。
「痛いです。離していただけますか。」
顔からは何を考えているのか全く読めない。不気味に思い身をよじり逃げようとするが、びくともしない。
「組長の犬が、俺に指図するな。」
「いや、俺の居場所がないとおっしゃったので出て行こうとしただけです。出て行って欲しいんでしたら、離していただけますか。」
当然のことを言ったまでだが、なぜか憎々しげに睨まれる。この人はどうしたいんだ。
「はっ、今までお世話になった俺に挨拶もせずに出ていく気か。礼儀知らずが。」
「それはそれは失礼いたしました。お疲れ様です、田嶋さん」
そう言って軽く礼をする。そして田嶋さんの顔を見上げると、苦しげに俺を見つめていた。
「はは、それでいいんだよ」
笑おうとしているようだが、顔は引きつっている。
いい加減俺も出て行きたいのだが、そうさせるつもりはないらしい。田嶋さんはじっと俺を見つめている。
「はは、いいなあお前は、組長に腰振ってりゃ良い暮らしができるんだからよ」
何を言い出すかと思えば。そうなったのはお前のせいだろ、と言いそうになる。
「お陰様で、前よりは贅沢な暮らしができてますよ。まあその分苦労もありますけど。田嶋さんこそ、よかったですね。若頭にまで上り詰めるなんて、出世街道まっしぐらですね。」
皮肉のつもりで言ってやったが、田嶋さんの顔は真顔のまま変わらない。
「ああ、そうだな。ずっと幹部の中でも下っ端としてこき使われてきたんだ。今までの苦労の清算してる最中だよ。」
田嶋さんは能力があったにも関わらずずっとNo.5の地位に甘んじていた。能力が生かせる地位についたことは祝福すべきである。田嶋さんは必ず、近藤組の発展に貢献するだろう。
なのに、なんでこの人はこんなにつらそうなんだ。
皆名残惜しそうにしていたが、いつでも会えますよ、と微笑むと、顔を綻ばせながら、出動していった。
「また、来てくださいね。待ってますから。」
いつになく真剣な顔で二宮にそう言われ、少しドキッとした。
「もちろんですよ。お仕事、がんばってきてください。」
すると、二宮は照れたように、早足で出て行った。
みんな行っちゃったし、俺も帰ろうかな、と思っていると、突然ドアが開いた。
そこにいたのは、目を見開いた田嶋さんだった。
「あ、お久しぶりです…。」
突然のことに驚いて呆然としていると、田嶋さんはつかつかと近づいてきて、肩を掴まれる。
「お前、ここで何してる」
凄んだ顔でそう言われて、何か怒らせるようなことをしただろうかと思いを巡らせる。
「事務所の皆に、会いにきたんです。招集かかったみたいなんで、ついさっき出て行っちゃいましたけど。」
そう言うと、壁に強く押し付けられる。
「はっ、もうここにはお前居場所なんてないんだよ、気安く立ち寄るな。」
この人は、こんなに短気な人だっただろうか。もっと、冷静で落ち着いた人だったような気がするが。
「はあ、すいませんでした。まあもう用も終わったところだったんで。すぐに退室させていただきますよ。」
おかしな田嶋さんに付き合うのもなんだか疲れそうだったので、そうそうに退散しようとしたが、再び壁に押し付けられる。
「痛いです。離していただけますか。」
顔からは何を考えているのか全く読めない。不気味に思い身をよじり逃げようとするが、びくともしない。
「組長の犬が、俺に指図するな。」
「いや、俺の居場所がないとおっしゃったので出て行こうとしただけです。出て行って欲しいんでしたら、離していただけますか。」
当然のことを言ったまでだが、なぜか憎々しげに睨まれる。この人はどうしたいんだ。
「はっ、今までお世話になった俺に挨拶もせずに出ていく気か。礼儀知らずが。」
「それはそれは失礼いたしました。お疲れ様です、田嶋さん」
そう言って軽く礼をする。そして田嶋さんの顔を見上げると、苦しげに俺を見つめていた。
「はは、それでいいんだよ」
笑おうとしているようだが、顔は引きつっている。
いい加減俺も出て行きたいのだが、そうさせるつもりはないらしい。田嶋さんはじっと俺を見つめている。
「はは、いいなあお前は、組長に腰振ってりゃ良い暮らしができるんだからよ」
何を言い出すかと思えば。そうなったのはお前のせいだろ、と言いそうになる。
「お陰様で、前よりは贅沢な暮らしができてますよ。まあその分苦労もありますけど。田嶋さんこそ、よかったですね。若頭にまで上り詰めるなんて、出世街道まっしぐらですね。」
皮肉のつもりで言ってやったが、田嶋さんの顔は真顔のまま変わらない。
「ああ、そうだな。ずっと幹部の中でも下っ端としてこき使われてきたんだ。今までの苦労の清算してる最中だよ。」
田嶋さんは能力があったにも関わらずずっとNo.5の地位に甘んじていた。能力が生かせる地位についたことは祝福すべきである。田嶋さんは必ず、近藤組の発展に貢献するだろう。
なのに、なんでこの人はこんなにつらそうなんだ。
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