借金ホスト

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呼び出し

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あれからというもの、度々神田さんには呼び出されるようになった。返済の期限が迫っているから逃げ出さないようにだとか、返済状況の報告だとか、いろいろかこつけては顔を見せるように言われる。そこまでしなくても、俺は両親やクソ従兄弟と違って借りたものを返さないまま逃げるようなクズではない。だが、そう言う割りには、神田さんはわざわざ家まで迎えをよこす。

「あ、加山さん。わざわざすいません。」
決まって俺の送迎を行うのは、最初に俺を拉致したうちの1人の加山さんだった。見た目は完全ヤクザのそれだし、俺の時みたいにたまにキツイ取り立てもするようだが、普段は神田さんの事務所で事務仕事をする真面目な人だと分かった。俺みたいな債務者に対してもかなり紳士に接してくれる。

「いえいえ、社長のワガママに付き合っていただいて、こちらこそすいません。」
まあ確かに、神田さんの急な呼び出しには困り果てることもあるが返済を待っていてもらっている分、こちらとて断れない。でも、別に嫌なことをされるわけではないし、美味しいご飯に連れて行ってもらえることもあり、別に迷惑とは思ってはいなかった。

しばらくして、神田さんの事務所に到着する。
「き、きたのか!瑞樹!遅いぞ!」
加山さんにドアを開けてもらい、俺が先に中に入ると、奥の机に座っていた神田さんが慌てて立ち上がる。ずかずかと近づいてきて俺の目の前に立つ。

「は、早く今月分を出せ!!!」
ぶっきらぼうに言い放つが、顔が赤く火照っている。ふふ、なんかこの人、恐い人らしいのに、可愛いんだよなあ…。
「な、なにをもたもたしてんだよ!!今月分!払えないの?払えないなら、殺すよ!い、いや、ちょっとだけなら待ってあげてもいいけど…いやダメだ!払えないならなんとかして払わせる!」
赤い顔でコロコロと言い分を変える神田さんは、拗ねた子供のようで可愛い。
思わずふふっ、と笑ってしまうとさらに顔をかーっと真っ赤にし、憤慨したように眉を釣り上げる。

「な、なにがおかしいのさ!!!も、もう!払えないなら、か、身体で払ってもらうからね!!1日だって待ってあげないから!」
怒ったようにがーっとまくしたてられるが、身体でなんて、またわけがわからないことを。売りでもさせるつもりだろうか。まあ、神田さんのことだ、本気ではないだろうと相手にせずカバンから封筒を取り出す。

「いえ、すいません、今月分持ってきてます。」
分厚い封筒を三つわたす。
「え、え???なにこれ、いくらあるの?」
「2千万あります。今月はがんばったんで、たくさん入ったんです。これ渡すとほとんど手取りなくなりますけど、早く返済した方が神田さんにとってもいいと思って。」
今月はリカさん含めたくさんのお客様のおかげで、今までの倍もの給料が入り、蓮二さんに続いてナンバー2に輝いた。まさかここまで売り上げが伸びるとは思わず、自分でもびっくりしているが、おねだり作戦が効いたようである。今日で4ヶ月目、つまり今までの3千万と今月の2千万で、もう半分返済したことになる。

「早く返済して、見逃していただいたお礼になればと思って。」
喜ぶと思って、俺はにっこりと微笑むが、神田さんの表情は暗くなる。
「いや、いいんだけど…そんな、早く返されると、お前との接点が…って、別にいいんだけどな!早く返してくれる方が!俺金にしか興味ないし!!!」
このように、俺の前では神田さんはキャラが崩壊してしまう。いつもは、チェーンソーで脅された時のように、冷酷で残忍な性格らしいが、俺と話す時はいつも、なんというか、素直じゃない女の子みたいになる。それが俺にとっては可愛くて可愛くて、男なのを忘れてついつい頭をぐりぐりと撫で回したくなってしまう。

「ふふ、はいはい。そうですよね、神田さんはお金が大好きですもんね。頑張ってもっと稼いで早く全額返済しますよ。」
思わず子供扱いしてしまうが、そんなことを気にも留めないで、神田さんはずーんと落ち込んでしまう。もう、なんて言ったら喜ぶんだこの人は。難しいなあ。

「…返済し終わっても、たまに顔見せに来ますよ。俺のこと助けてくれた命の恩人ですから。一生かけて恩返ししますよ。」
もしかしたら、と思って一か八かで言ってみる。もしかしたらすごい勘違いも甚だしい発言かもしれない、と思ったが、口に出してからでは遅かった。

一瞬の沈黙が事務所内に流れる。…やば、外したかな。恥ずかしい。


「~~~~~~~!!!来たいなら、勝手に来れば?」
こっちも見ずに、急にスタスタと座っていた机に戻るが、足取りは軽く、そのまま座って仕事をしようとする神田さんは、鼻歌でも歌い出しそうに機嫌がよかった。

なんだか、すごい喜ばせちゃったようである。あんな一言で、あんなに態度が変わるなんて。…もう、本当に可愛いんだから。
この界隈では恐れられている人だが、俺にとったらかわいい弟、いや妹のようだった。本当に、不思議だったが、年上の彼のことを可愛がりたい気持ちでいっぱいだった。

まあ、言ったら拗ねそうだから、神田さんには言わないけどね。
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