隣の夜は青い

No.26

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『教え子』

07 ※R18

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   ☆☆☆


「っ、ひ…あぁッ…!」

 不意に深いところを突かれて、普段よりもずっと高い声が俺の喉から出た。
 せーちゃんの家の、薄暗くした寝室。そのベッドの上。
 今日はオレが手足をついた体制で、後ろから腰を抑えられて挿れられていた。
 これまでと違ってせーちゃんから背を向けているから、いつどこを攻められるかわからないせいで、触られるたびにドキドキする。
 けれど、それは怖いとかじゃなくて……。

「ッ…ぁ、ダメ…っ!」

 また不意に後ろから胸を触られ、身体がびくつく。
 そう口では言うけれど、突然触られることも急に中を強く突かれることも、全部堪らなく気持ちが良くて、どんどん理性が崩されていく感覚がする。

「……一芽、この体位いつもより良い?」

 回らない頭でそう思っていると、見通すようなそんな声が降ってきた。

「……良い、かも……」

 正直に答えると、一度モノを抜かれた。
 不思議に思ってせーちゃんの方を振り返る。けれどせーちゃんは黙ったままオレの腕を引っ張り、膝立ちにさせた。
 そして……片手でそっと、オレの目を覆い隠した。
 真っ暗で、何も見えない。視界が遮られたまま、腰を抱支えられる。

「へ……? ッ、ァあ?!」

 ぱちゅん。そして、また中にせーちゃんのモノがゆっくりと入った。

「な、なに……?!っ、ひ、ぁ……!!」

 そのまま揺すられ、前立腺を擦られ、奥を突かれる。
 目からの情報が何もない分、ナカを抉られる気持ちよさと、卑猥な水音がダイレクトに体に響いた。

「ッ、っ~~~!!」

 強く打ちつけられたとき、ついにびくんと大きく身体が跳ね、ゾクゾクと背筋に快感が襲ってくる。
 それがせーちゃんにも伝わったのか、一度体を離される。息を整えながら振り返ると、せーちゃんの口は弧を描いていた。
 そして、その口はオレの耳元で囁いた。

「見えないまま責められるの、興奮する?」
「…………!!」

 言い当てられた心境に、どきりとした。
 確かに……何も見えないと、いつもより感度が良くなる気がする。
 でもなんだか正直に言うのは変態みたいだし、思わず目を逸らした。

「こ、興奮するかは、わかんないけど……」
「嫌じゃないんだな? じゃあ、そんな一芽におすすめアイテム」

 せーちゃんはそう言って、ベッドの下に手を入れて例の『おもちゃ箱』を漁った。

「今日はこれで、一芽の目を隠したままするっていうのはどう?」

 そうして出てきたのは、ハチマキのような黒い布。けれどハチマキより横幅は広くて、確かに目を隠せそうだった。
 ……それをつけて、何も見えない状態で……?

「……せ、せーちゃんがしたいなら、付き合っても良いよ?」

 ドクドクと高鳴る胸を抑え、そう冷静を装って言うと、せーちゃんはベッドに座り直した。

「じゃあ、する前にセーフワードを決めよう」
「セーフワード?」
「そう。今回は特に目で感情がわからないから、俺が調子乗ってやり過ぎて一芽に嫌な思いさせるといけないし。『やめて』が本当にやめてほしいのかただ言ってるだけなのか、俺がそこを見極めるために一芽が中断したいときに言う合言葉を決めておくんだ」

 そう説明しているせーちゃんの目は、なんでか分からないけどいつもより据わっていた。

「合言葉はなんでも良い。例えば、『ドア』とか『嫌い』とか。最中にあんまり出てこない言葉だと良いな」

 それを聞いて、すぐにいい言葉が思いついた。

「じゃあ……『先生』とか?」

 せーちゃんは目を瞬かせ、そして困ったように笑う。

「すげーの選ぶな」
「だめ?」
「いや、いいよ。一番冷静になれる気がする」

 そうして合言葉は決まり、オレは目隠しをつけられた。

「……せ、せーちゃん、いるよね?」
「…………」
「ねえ、なんか言ってよ……」
「ごめんごめん、いるよ」

 けれど真っ暗な視界は不安で、オレがそう悲痛な声をあげると、せーちゃんはおかしそうに笑ってオレの手を握った。
 わざと放置していたのがわかって、ちょっと拗ねそうになる。けれど空いた方の手がオレの前を突然撫でて、反射的にびくりと身体が跳ねた。

「ッひぁ、や、急に…ッ」
「うわ、エロ……」

 思わず声をあげると、そんな呟きが聞こえる。次にはぐらりと身体が傾いて、ベッドに倒されたのがわかった。

「ぁ、や…っ」

 せーちゃんの手が、オレの身体をゆっくり撫でていく。それだけなのにドキドキしすぎて、頭が沸騰しそうになった。

「何も見えないの、どう?」
「っ、ん、気持ちい…っ」

 思わずそう素直に口にすると、足を押さえられ、もっと深い行為が始まった。
 犯されて、身体を弄ばれて、オレはただされるがままその快楽を享受する。
 いつもよりも、せーちゃんの吐息の音と体温がずっと分かりやすく頭の中に届く。
 顔が見えないから表情はわからないけど、せーちゃんの息もいつもより上がっている気がした。


 ……それから、どれくらい時間が過ぎただろう。

「ッ…あ、やめ、出ちゃ…ッ!!」
「ははっ、また潮吹いた。かーわい……」

 息ができなくなるくらい攻められ続けて、何度目かの絶頂を超す。
 時間が過ぎるたびに、下半身とシーツが生ぬるく濡れていく感覚がした。
 イきっぱなしで苦しいはずなのに、その気持ちはぜんぶ気持ちよさに変わっていった。

「ほら、一芽、ちゃんと息して」

 ぐっと、また奥までせーちゃんのものが入る。
 お腹の中がせーちゃんの質量でいっぱいになるのが気持ちが良くて、我慢できなくて、また熱い液体がお腹の上に垂れた。

「っぁ…むり、ぃ、いき…できな…っ!」
「喋れてるなら大丈夫」

 もう、呼吸が熱くて、鼓動が早くて、身体が苦しい。
 でも、もっと苦しくなったら、もっと気持ちが良くなるはずだ。

 だから、もっと…………もっと、いじめて。


「…っ、あ…ゃ、やめ……ッやめて、『先生』…!!」

 そうしてもう潮も溢れ出なくなったとき。
 身体の限界を感じて、オレはついにその言葉を使った。
 途端、せーちゃんの動きが止まる。目隠しを自分でとって、まだ太ももの震えが止まらないまま起き上がった。

「……大丈夫か?」

 息を整えながら、渡されたタオルで下腹を拭く。
 ようやくまともな呼吸ができるようになってきて、とりあえず目の前のせーちゃんを睨む。

「いつまでしてるの……ほんとドS……」
「自覚はある。……けど、正直俺もちょっと理性なくなってたし、うまくセーフワード使えたな。単語のおかげで急に冷静になったし」

 せーちゃんはそう言って、満足げにオレの頭を撫でた。

「……あとお前、やっぱMだよ」

 そして、ついにはっきりと指摘される。

「この前やった拘束プレイも、今日の目隠しプレイも、いつもの焦らしプレイも、SMプレイの一種なんだよ。それが楽しめるってことはさ……わかるだろ?」
「う……けど、オレ痛いのとか好きとかじゃないし……」

 一応否定するけど、だんだんとオレも認めざるを得なくなってきた。
 ……だって、途中……「もっといじめて欲しい」って思ったのは、事実で……。
 いや、こんなこと言ったら、あの箱の中身全部使われそうだから、言わないけど?!
 せーちゃんは目を細め、

「大丈夫、これからもっと気持ち良くなるから。……苦しいのも、恥ずかしいのも、痛いのも」
「……そ、そんなわけ……」

 思わず目を逸らすけど、どこか心の底では期待していた。
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