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セイなる夜に
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時間帯も遅いせいか、クリスマスマーケットはそこまで混雑していなかった。
西洋風の白いテントが電飾でライトアップされ、おしゃれな屋台には飲食物やアクセサリー、スノードームなんかも売っている。
その非日常感に、見ているだけでテンションが上がった。戸成もきっとそうだと思う。
「何食う?」
「せっかくだしチキン食べたいな~。あとホットワイン飲みたい!」
「ホットワイン?」
それは聞きなれない単語で、戸成に聞き返した。
「飲んだことない? 美味しいよ。けど甘いからせーちゃんは苦手かも」
「そうか。悩むな……」
そうして店でチキンとポテトを買って、あと戸成は例のホットワインを持って、二人横に並んで椅子に座った。
「戸成、ホットワインどう?」
「おいしいよ~。せーちゃんも試しに飲んでみる?」
「……じゃあ、ちょっとだけ」
勧められて、遠慮なく一口もらう。
確かに甘いが、俺が飲めない甘さじゃない。
むしろ温かくてしっかりワインの味がして、美味かった。
「うまいな……俺も買ってこようかな」
「いいじゃん! クリスマスくらいしか飲めないし」
そうして俺は一度席を離れ、すぐそばの屋台へホットワインを買いに行った。
大きめのマグカップひとつ分をなみなみ注がれたが、まあ熱でアルコールは飛ばしてあるから度数は低いだろう。
……そう、俺は失念していた。
ワインは元々、アルコール度数が高いということを。
そして、自分の酒癖の悪さを。
「で、そのお客さん面白くてさー、間違えて子供のコーラにミルク入れちゃったんだよね。オレは見てたけど、キッチンにいたから止められなくて~」
「へぇー……」
チキンとポテトは食べ終わり、ホットワインのマグカップは空になった。
まだワインを飲みながらけらけら笑いながら話す戸成に、俺は返事をしながらその肩を抱いた。
戸成は驚いたように俺を見る。
「……せーちゃん?」
その唇は、ホットワインで少し赤く染まって、つやりと光っていた。。
……ああ、美味しそう。今すぐ食べてしまいたい。
「っ、ま、待って、ここ外だから……!」
「ん?」
俺がその口を舐めようとすると、戸成は慌てて身を引いた。
「せ、せーちゃん、もしかしてかなり酔ってる……?!」
「んにゃー酔ってないよ」
「酔ってるよね?!」
そう言って慌てる戸成……いや、一芽。
景色がふわふわぼやけていって、一芽の声しか聞こえなくなる。
世界に、俺と一芽しかいなくなる。
「……一芽、ほんとに可愛い……」
「っ~~~、ちょ、ちょっと、みんな見てるよ……?!」
名前を呼んでその首に顔を擦り寄せると、一芽は俺の頭を押さえて離そうとする。
構わず、その耳元で囁いた。
「今すぐ抱き潰したい」
「……っ」
「なあ、いいだろ?」
俺がそう言って首にキスをすると、一芽の顔が耳まで一気に赤くなる。
服の中に手を入れてそのベルトに触れると、一芽はガタンと椅子から立ち上がった。
「ほ、ホテル行こ! 今から! そこまで我慢して……!」
「……ん、いいよ」
なんだかよくわからないけど、ホテルは俺も行きたい。立ち上がって、一芽と手を繋いでマーケットを出た。
「どうしよ、高い部屋しかない……まあいっか、クレカ持ってるし……」
一芽はそう独り言をいいながら、ホテルの入口のパネルをタッチしている。
そんな様子を見ていると、だんだん頭が冷めてきた。
「オレ準備してくるから、待っててね」
「あ、ああ……」
気がついたらスイートルームのベッドに座っていて、一芽は早々にバスルームへ行った。
バタン、とシャワー室のドアが閉まった音がして。
「………………しにたい……」
そこでようやく、理性とここまでの記憶が全部蘇った。
「あああ~~~ッッッ殺してくれ……!!!くそ、なんでこんなことに……!!!」
羞恥心が頂点に達して、顔を覆う。広いベッドで暴れる。
疲れてたからとか溜まってたからとか、色々言い訳はできるけどもう遅い。
やばい。恥ずい。人が大勢いるところで、一芽にあんなこと……?!
絶対めちゃくちゃ見られたじゃん。てかキモいって。自重しろ。ほんとしにたい。まぢ無理マリカしよ。
そう俺がジタバタしていると、少し顔を赤らめた一芽が戻ってきた。
「せーちゃん、お待たせ」
「……大変申し訳ございません」
一芽の目の前に、スライディング土下座をする。
「え?! ……あ、酔いさめた?」
「……殺してください……」
「こ、殺さないけど?! 顔あげてよ!」
一芽に慌てて顔を上げさせられ、二人でベッドに座り直す。
「俺……自分で外だといちゃつきたくないとか言っときながら……けど正直元々一芽とめっちゃシたくて……いや理由にならんけど……はあああ」
「よ、酔ってたなら仕方ないよ! ワインって酔いやすいし……!」
「一芽だって、クリスマスマーケットもっと楽しみたかっただろうし……ごめん……」
後悔しまくる俺を、一芽はよしよししてくれる。
一芽は俺がこんなキモいおっさんみたいなことしても、引いてないみたいだ。本当に優しい。俺に惚れてる。
「せーちゃん……もう、えっちする気なくなった?」
「……え?」
「その……オレの方がその気になってきちゃった……」
一芽は落ち着かない様子で、自分のシャツの裾を引っ張る。
俺はその服の中に手を入れた。
「あ、ちょっと……!」
「……勃ってる。可愛い」
「ん…っ、だ、だって、酔ってるせーちゃんめっちゃエロかったし……なんか色々想像しちゃって……」
けれど一芽もかなりそういう気分になってしまったのか、抵抗せずに顔を俺の肩に押し付けた。
「性欲は全然なくなってないから、安心してくれ。朝までいける」
「い、いや、嬉しいけど……ほどほどで……」
そう言われたのは聞かなかったことにして、俺は一芽を押し倒した。
そうして、一日遅れの性なる夜が始まった。
西洋風の白いテントが電飾でライトアップされ、おしゃれな屋台には飲食物やアクセサリー、スノードームなんかも売っている。
その非日常感に、見ているだけでテンションが上がった。戸成もきっとそうだと思う。
「何食う?」
「せっかくだしチキン食べたいな~。あとホットワイン飲みたい!」
「ホットワイン?」
それは聞きなれない単語で、戸成に聞き返した。
「飲んだことない? 美味しいよ。けど甘いからせーちゃんは苦手かも」
「そうか。悩むな……」
そうして店でチキンとポテトを買って、あと戸成は例のホットワインを持って、二人横に並んで椅子に座った。
「戸成、ホットワインどう?」
「おいしいよ~。せーちゃんも試しに飲んでみる?」
「……じゃあ、ちょっとだけ」
勧められて、遠慮なく一口もらう。
確かに甘いが、俺が飲めない甘さじゃない。
むしろ温かくてしっかりワインの味がして、美味かった。
「うまいな……俺も買ってこようかな」
「いいじゃん! クリスマスくらいしか飲めないし」
そうして俺は一度席を離れ、すぐそばの屋台へホットワインを買いに行った。
大きめのマグカップひとつ分をなみなみ注がれたが、まあ熱でアルコールは飛ばしてあるから度数は低いだろう。
……そう、俺は失念していた。
ワインは元々、アルコール度数が高いということを。
そして、自分の酒癖の悪さを。
「で、そのお客さん面白くてさー、間違えて子供のコーラにミルク入れちゃったんだよね。オレは見てたけど、キッチンにいたから止められなくて~」
「へぇー……」
チキンとポテトは食べ終わり、ホットワインのマグカップは空になった。
まだワインを飲みながらけらけら笑いながら話す戸成に、俺は返事をしながらその肩を抱いた。
戸成は驚いたように俺を見る。
「……せーちゃん?」
その唇は、ホットワインで少し赤く染まって、つやりと光っていた。。
……ああ、美味しそう。今すぐ食べてしまいたい。
「っ、ま、待って、ここ外だから……!」
「ん?」
俺がその口を舐めようとすると、戸成は慌てて身を引いた。
「せ、せーちゃん、もしかしてかなり酔ってる……?!」
「んにゃー酔ってないよ」
「酔ってるよね?!」
そう言って慌てる戸成……いや、一芽。
景色がふわふわぼやけていって、一芽の声しか聞こえなくなる。
世界に、俺と一芽しかいなくなる。
「……一芽、ほんとに可愛い……」
「っ~~~、ちょ、ちょっと、みんな見てるよ……?!」
名前を呼んでその首に顔を擦り寄せると、一芽は俺の頭を押さえて離そうとする。
構わず、その耳元で囁いた。
「今すぐ抱き潰したい」
「……っ」
「なあ、いいだろ?」
俺がそう言って首にキスをすると、一芽の顔が耳まで一気に赤くなる。
服の中に手を入れてそのベルトに触れると、一芽はガタンと椅子から立ち上がった。
「ほ、ホテル行こ! 今から! そこまで我慢して……!」
「……ん、いいよ」
なんだかよくわからないけど、ホテルは俺も行きたい。立ち上がって、一芽と手を繋いでマーケットを出た。
「どうしよ、高い部屋しかない……まあいっか、クレカ持ってるし……」
一芽はそう独り言をいいながら、ホテルの入口のパネルをタッチしている。
そんな様子を見ていると、だんだん頭が冷めてきた。
「オレ準備してくるから、待っててね」
「あ、ああ……」
気がついたらスイートルームのベッドに座っていて、一芽は早々にバスルームへ行った。
バタン、とシャワー室のドアが閉まった音がして。
「………………しにたい……」
そこでようやく、理性とここまでの記憶が全部蘇った。
「あああ~~~ッッッ殺してくれ……!!!くそ、なんでこんなことに……!!!」
羞恥心が頂点に達して、顔を覆う。広いベッドで暴れる。
疲れてたからとか溜まってたからとか、色々言い訳はできるけどもう遅い。
やばい。恥ずい。人が大勢いるところで、一芽にあんなこと……?!
絶対めちゃくちゃ見られたじゃん。てかキモいって。自重しろ。ほんとしにたい。まぢ無理マリカしよ。
そう俺がジタバタしていると、少し顔を赤らめた一芽が戻ってきた。
「せーちゃん、お待たせ」
「……大変申し訳ございません」
一芽の目の前に、スライディング土下座をする。
「え?! ……あ、酔いさめた?」
「……殺してください……」
「こ、殺さないけど?! 顔あげてよ!」
一芽に慌てて顔を上げさせられ、二人でベッドに座り直す。
「俺……自分で外だといちゃつきたくないとか言っときながら……けど正直元々一芽とめっちゃシたくて……いや理由にならんけど……はあああ」
「よ、酔ってたなら仕方ないよ! ワインって酔いやすいし……!」
「一芽だって、クリスマスマーケットもっと楽しみたかっただろうし……ごめん……」
後悔しまくる俺を、一芽はよしよししてくれる。
一芽は俺がこんなキモいおっさんみたいなことしても、引いてないみたいだ。本当に優しい。俺に惚れてる。
「せーちゃん……もう、えっちする気なくなった?」
「……え?」
「その……オレの方がその気になってきちゃった……」
一芽は落ち着かない様子で、自分のシャツの裾を引っ張る。
俺はその服の中に手を入れた。
「あ、ちょっと……!」
「……勃ってる。可愛い」
「ん…っ、だ、だって、酔ってるせーちゃんめっちゃエロかったし……なんか色々想像しちゃって……」
けれど一芽もかなりそういう気分になってしまったのか、抵抗せずに顔を俺の肩に押し付けた。
「性欲は全然なくなってないから、安心してくれ。朝までいける」
「い、いや、嬉しいけど……ほどほどで……」
そう言われたのは聞かなかったことにして、俺は一芽を押し倒した。
そうして、一日遅れの性なる夜が始まった。
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