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episode4 恋という病
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「蒼、聞こえてる?」
『……うん』
「ごめん、ちょっとだけ話聞いてほしいんだ」
椅子に座って、イヤホンマイク越しに蒼に話しかける。
「オレさ、中三のとき、お母さんが病気で死んだんだよね」
そう言って、当たり前だけど沈黙されて、慌てて言葉を付け加える。
「い、いきなり重たい話してごめん。えっと、前から病気だって知ってたからずっと覚悟はあったんだけど、それでもお母さんがいなくなっちゃったの、すごく悲しくて。けど、めそめそして、お父さんとか周りの人に迷惑かけたくないって思って、それでさ……」
ひとつ息をついて、意を決して、吐露した。
「……なんか、エロいことしてるときって、つらいこととか忘れられるじゃん? だからその時、いろんな人と遊んでた」
「………………」
「まあ、人肌恋しかっただけなのかも。とにかく、そのとき楽しくて気持ちよかったら誰でもいいって思ってた。蒼も、最初はその対象の一人としか思ってなかった。だからあのとき、ノリで誘ったんだ。……けど、蒼のこと本気で好きになっちゃって、蒼と本当に恋人になりたいって思った。そのときは言えなかったけど」
ちょっと自嘲して、そして話を続ける。
「だから四年前、蒼と急に会えなくなったとき、すっごく後悔した。オレがもっと早く、蒼のこと好きだって言えばよかったのにって」
イヤホンの向こうの蒼は、どういう顔をしているかわからないけど、静かに話を聞いてくれているみたいだった。
「今も後悔してる。もっと蒼のこと好きだって沢山言えばよかった。本当はもっと、伝えたかったのに。……オレが蒼と一緒にいたいの、ただ蒼とヤりたいからってだけじゃないんだよ。優しいし、真面目だし、要領いいし、何でもできてすごいなあって憧れてるんだ。そんな蒼の側にいたいなって……」
話しながら、目頭が熱くなる。
「……いつも恥ずかしくて、あんまり言えないけどさ……大好きだよ、蒼」
もう耐えきれなくて、目から涙が溢れた。
「別れたくない」
思わず声が上ずって、目元を袖で拭いた。
『……そ、』
「宙ぁ!!」
突然、そんな大声がイヤホンの外からして、急に部屋のドアが開いた。
「お……お父さん?!」
パンイチのお父さんが部屋に転がり込んできた。
めちゃくちゃ驚いた。
「宙、ごめんな、オレがお前のこと気遣ってやれなくて、そんなに辛い思いしてたなんて、」
「えっ?!えっ、え?!」
オレの腰に抱きついてそう泣きだすお父さんに、状況がわからず混乱する。
「ちょっと、今邪魔なんだけど?!」
そう叫ぶと、イヤホンから笑い声がした。
『また後でかけて』
そう言って通話が切れたのがわかって、イヤホンを外して、お父さんを問い詰めた。
「お風呂入ってたんじゃないの?!」
「いや、入ろうとしたんだけど、シャンプーなくなってたの思い出して、今日買ったやつ部屋に取りに行こうとしたんだよ。それで話し声が聞こえたから、思わず立ち聞きしちゃってさあ」
お父さんはそう言って、眼鏡を外して目元を擦り、
「宙、何にも言わないから、勝手に大丈夫なんだろうって思ってた。けどそんなことないよなあ、お母さんが死んで寂しかったよなあ」
「……寂しいよ、今も」
そう言うと、お父さんに抱きしめられる。
さっきと違う意味の涙が、ぽたりと落ちた。
お父さんは体を離し、優しい顔でオレの頭を撫でる。
「ごめんな、話してる時に邪魔して……その電話のアオイちゃんは、宙の彼女なのか?」
「…あ……」
そう言われて、気まずい思いをしながら答える。
「か……彼氏……」
「……ん?!」
「え、えっと、めっちゃイケメンで優しくて、あと医者で、あの、別に騙されてるわけじゃないから安心して欲しいんだけど……!」
「そ、そうなのか……男……いや、びっくりした……」
お父さんは目をパチパチさせながら言ったけど、次にまたいつもの笑顔に戻った。
「でも、宙の好きな人なら、お父さんはいいと思うなあ」
「……本当に?」
「本当」
お父さんは和やかに頷いて、次に手を顎に当てて、うんうんと頷く。
「確かに宙、お母さんに似て可愛いから、彼氏の一人や二人いてもおかしくないよな」
「どういう意味それ?」
「そのままだよ。はあ、宙の顔見たら落ち着いてきた……なんか、寒いな……」
「その格好なら当たり前でしょ。早くお風呂入った方がいいと思う」
「そうするよ」
お父さんはそう言って、部屋を出ていく。
お風呂の戸が閉まる音が聞こえたから、本当にお風呂に入ったみたいだった。
『……うん』
「ごめん、ちょっとだけ話聞いてほしいんだ」
椅子に座って、イヤホンマイク越しに蒼に話しかける。
「オレさ、中三のとき、お母さんが病気で死んだんだよね」
そう言って、当たり前だけど沈黙されて、慌てて言葉を付け加える。
「い、いきなり重たい話してごめん。えっと、前から病気だって知ってたからずっと覚悟はあったんだけど、それでもお母さんがいなくなっちゃったの、すごく悲しくて。けど、めそめそして、お父さんとか周りの人に迷惑かけたくないって思って、それでさ……」
ひとつ息をついて、意を決して、吐露した。
「……なんか、エロいことしてるときって、つらいこととか忘れられるじゃん? だからその時、いろんな人と遊んでた」
「………………」
「まあ、人肌恋しかっただけなのかも。とにかく、そのとき楽しくて気持ちよかったら誰でもいいって思ってた。蒼も、最初はその対象の一人としか思ってなかった。だからあのとき、ノリで誘ったんだ。……けど、蒼のこと本気で好きになっちゃって、蒼と本当に恋人になりたいって思った。そのときは言えなかったけど」
ちょっと自嘲して、そして話を続ける。
「だから四年前、蒼と急に会えなくなったとき、すっごく後悔した。オレがもっと早く、蒼のこと好きだって言えばよかったのにって」
イヤホンの向こうの蒼は、どういう顔をしているかわからないけど、静かに話を聞いてくれているみたいだった。
「今も後悔してる。もっと蒼のこと好きだって沢山言えばよかった。本当はもっと、伝えたかったのに。……オレが蒼と一緒にいたいの、ただ蒼とヤりたいからってだけじゃないんだよ。優しいし、真面目だし、要領いいし、何でもできてすごいなあって憧れてるんだ。そんな蒼の側にいたいなって……」
話しながら、目頭が熱くなる。
「……いつも恥ずかしくて、あんまり言えないけどさ……大好きだよ、蒼」
もう耐えきれなくて、目から涙が溢れた。
「別れたくない」
思わず声が上ずって、目元を袖で拭いた。
『……そ、』
「宙ぁ!!」
突然、そんな大声がイヤホンの外からして、急に部屋のドアが開いた。
「お……お父さん?!」
パンイチのお父さんが部屋に転がり込んできた。
めちゃくちゃ驚いた。
「宙、ごめんな、オレがお前のこと気遣ってやれなくて、そんなに辛い思いしてたなんて、」
「えっ?!えっ、え?!」
オレの腰に抱きついてそう泣きだすお父さんに、状況がわからず混乱する。
「ちょっと、今邪魔なんだけど?!」
そう叫ぶと、イヤホンから笑い声がした。
『また後でかけて』
そう言って通話が切れたのがわかって、イヤホンを外して、お父さんを問い詰めた。
「お風呂入ってたんじゃないの?!」
「いや、入ろうとしたんだけど、シャンプーなくなってたの思い出して、今日買ったやつ部屋に取りに行こうとしたんだよ。それで話し声が聞こえたから、思わず立ち聞きしちゃってさあ」
お父さんはそう言って、眼鏡を外して目元を擦り、
「宙、何にも言わないから、勝手に大丈夫なんだろうって思ってた。けどそんなことないよなあ、お母さんが死んで寂しかったよなあ」
「……寂しいよ、今も」
そう言うと、お父さんに抱きしめられる。
さっきと違う意味の涙が、ぽたりと落ちた。
お父さんは体を離し、優しい顔でオレの頭を撫でる。
「ごめんな、話してる時に邪魔して……その電話のアオイちゃんは、宙の彼女なのか?」
「…あ……」
そう言われて、気まずい思いをしながら答える。
「か……彼氏……」
「……ん?!」
「え、えっと、めっちゃイケメンで優しくて、あと医者で、あの、別に騙されてるわけじゃないから安心して欲しいんだけど……!」
「そ、そうなのか……男……いや、びっくりした……」
お父さんは目をパチパチさせながら言ったけど、次にまたいつもの笑顔に戻った。
「でも、宙の好きな人なら、お父さんはいいと思うなあ」
「……本当に?」
「本当」
お父さんは和やかに頷いて、次に手を顎に当てて、うんうんと頷く。
「確かに宙、お母さんに似て可愛いから、彼氏の一人や二人いてもおかしくないよな」
「どういう意味それ?」
「そのままだよ。はあ、宙の顔見たら落ち着いてきた……なんか、寒いな……」
「その格好なら当たり前でしょ。早くお風呂入った方がいいと思う」
「そうするよ」
お父さんはそう言って、部屋を出ていく。
お風呂の戸が閉まる音が聞こえたから、本当にお風呂に入ったみたいだった。
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