アオソラ診察室

No.26

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episode3 それはきっと依存症

04

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「花畑くんって、彼女とかいるの?」
「あっ、それわたしも気になってたぁ」
「え?」
 昼休みの休憩時間、そんなことを職場の仲良し先輩二人組に急に聞かれた。
 オレは少し迷ってから、
「ん~、今は彼女はいないかなあ」
 ……彼氏はいるけど。
 そう心の中で付け加えて答えると、先輩二人はけらけら笑う。
「確かに、花畑くん可愛いし、恋愛してるイメージあんまりないわぁ!」
「そうね。ゆるキャラとか好きだよね」
「あはは……」
 この前、性欲強すぎて彼氏に引かれましたけど……なんてことはさすがに言えないから、とりあえず笑ってごまかした。
「そういう先輩たちは?」
「いないいない!」
「そもそも出会いがあんまりないわぁ」
 そう言ってまた、先輩たちはおかしそうに笑う。そんなもんなのかな。
 そしてふと、片方の先輩が思い出したように、
「あ、そういえば私たちね、この前の休み時間、コンビニに行ったら御崎先生に会えたの!」
「え?!」
「そうそう!すごく真面目そうだったわぁ。本当にかっこよかった~!」
「イケメンよね~! 男の花畑くんでも思わない?!」
「はは……」
 わかります~、イケメンですよね! けど、御崎先生ってかわいい男にしか勃たないですよ、例えばオレみたいな。
 なんてことは口が裂けても言えないので、また笑ってごまかしておいた。

 ……でも、そんな話を聞いてたら、早く蒼に会いたくなってしまう。


「蒼~」
 そう言って、蒼の肩に寄りかかる。
 今日もまた、蒼の家に泊まらせてもらうことになった。
 蒼は読んでいた本から顔を上げ、オレの頭を撫でた。
「なんだよ、かわいいな。甘えたか?」
 大きな手が、気持ちがいい。
 けど、オレがしたいのは、そんなのじゃなくて……。
「……ねえ、今日いちゃいちゃしてなくない?」
「したいのか?」
「…………」
 自分で言うのが恥ずかしくて、思わず黙る。
「ん?」
 蒼は本から目を離し、オレに目を合わせてきた。
「…………」
 目をそらす。
「何だよー、何がしたい?」
「……キス、とか」
 そう言うと、笑った蒼に、ちゅっちゅと口を重ねられる。
 甘くて優しい。けど、オレの身体が求めるのは、その逆で……そういうことをされると、余計にむらむらしてきてしまう。
「っ……」
 重ねるだけのキスに耐えられなくて、舌を出す。
 すると、それに答えて、ぺろりと蒼の舌がオレの舌をなめた。
 それだけで、ゾクゾクとして。……ああ、もう、ガマンできない。
 蒼を引き寄せて、本格的に舌を絡める。
 蒼もそれに応えるように、オレの口内を、その生温かい舌で犯した。
 水の音が響く。はあ、気持ちいい。もっと、欲しい……。
 夢中で舌を絡めていると、蒼がふと離れた。
 つうっと、銀の糸が垂れる。
「ん……あおい……?」
「はあ、いや……ちょっと息継ぎさせてくれ」
「あ、ご、ごめん」
 ……しまった、がっつき過ぎた。
 気まずく思っていると、蒼はくくっと笑う。
「相変わらず性欲あるよな」
「っるさい……」
 否定できないのが、悔しい。
 蒼は一つ息を吸って、オレに微笑む。
「……で、したいのはキスだけか?」
 蒼はオレを膝の上にのせる
 恥ずかしいけど、小さな声で答えた。
「セックス、したい……」
「ん、いいよ」
 蒼はそう言って、オレを抱きしめた。そのまままた、深いキスをする。
 口が離れてから、蒼は思いついたようにオレに聞いた。
「たまには、このままここでする?」
「す、する……」
 興奮しながら、ソファの上で跨がり、少しズボンをずらす。
 蒼はそれを一気に脱がした。
 部屋を暗くしないまま、明るい電気の下で、全てが晒される。
「明るいところで見る宙もいいな……もう慣らしてるのか?」
「あっ」
 そう言って穴に指で触れられて、思わずビクッと身体を反らせた。
 指が穴の入り口をなでる。それだけで反応してしまう。
「んっ、もう、慣らしてる、から」
 入り口の部分を、指の腹で撫でられる。ビクビクッと、無意識に背筋が震える。
 腰を揺らすけれど、指は頑なに中に入ってくれない。
 もどかしくて、頭がおかしくなりそうだ。
「ねえ、蒼、早くっ……」
「入れてほしい?」
「うんっ、ほしい、お願いっ」
「んー、まだだめ」
 そう言って蒼は、少し芯を持ってきている前の方を触る。
「んッ、はあ、」
 イきたいのに、イけない。挿れてほしいのに、挿れてくれない。
 そんな感覚に、涙目になる。
「あおい、いじわるしないでよぉ」
「いじわるされるの、嫌か?」
 楽しそうな蒼に、そんなわかり切った質問をされて、声を張った。
「んなの、嫌に決まってんだろ……!」
「本当に?」
 蒼はニヤリと笑って、服を上げ、オレの乳首をつついた。
「んっ、む、胸はダメ!」
「なんでだよ、気持ちいだろ?」
 コリコリと指先でいじられ……ゾクゾクして、変な気持ちがしてくる。
 まずい。必死に、感じないように背中を丸める。
「い、いつも言ってるだろ、あんまり開発したくないんだってば!」
「俺はしたいんだけどなあ……こんなに綺麗で、可愛いのに」
 そう言って蒼は、オレを引き寄せて、乳首をぺろぺろとなめた。
「あっ、あ、ヤだって、アッ!」
 生温かい舌が這う。感じたくないのに、感じてしまう。
 もう手遅れなんだけど、それでもこれ以上、ココで感じる身体にはなりたくない。
「ひあ、あ、あおいっ、だめだってば!」
「……しょうがないなあ」
 慌てて頭をぽかぽか殴ったら、蒼は名残惜しそうにやめた。
 息をつき、整える。
「いじわる……」
「気持ちいくせに」
 蒼はそう笑って、ついに腰を掴み、オレの中に自分のものをゆっくり入れた。
 珍しく、対面座位だ。欲しかった感覚に、頭の中がパチパチする。
「あ、あっ、きたぁっ」
「……入れられるの、好き?」
「すきっ、もっとぉ……!」
「ふ……かわいい」
 腰を揺らしていると、胸にキスを落とされた。
 そこに、赤い痕がくっきりと残る。
 その跡を指でなぞって、蒼の微笑む顔が、鮮明に見えた。

 職場の先輩や、蒼の患者さんは、こんな蒼のかっこいい顔、知らないんだろうな。
 ……っていうか、オレしか知らなくていいかも。
 だんだんそう思ってきて、オレも大概、蒼に依存してるよなって、少し笑えてきた。
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